2009年12月01日

政府の事業仕分け 教育編(1) 全国学力調査をめぐって、4

de518286.JPG 新政権による事業仕分けが終わった。

 『こんな手法があったのか。』と、まあ、地方行政府がやっているのは、うすうす知っていたけれど、国となると、やはり驚きの連続だった。


 申し訳ないことに、後では批判をたくさん書かせていただくのに、感動を語るのは、いささか気が引ける面もあるが、

 かつて、国の予算の中身がこんなにはっきり見えてきたことはなかった。いろいろ知らなかったことが分かり、国政への関心がさらに強まったと言えよう。

 今後、こうした手法が、当たり前になっていくことを願う。


 さて、本シリーズでは、事業仕分けのなかで、教育に限定してふれさせていただく。初めは、拙ブログで、何回もとり上げた、全国学力調査にさせていただこう。

 上述のように、仕分けの中身まで、国民に見えるようになったことについては、感謝の念を抱きながらも、その説明や話し合いに対しては、いささか、疑問や批判の念を禁じえない。

 若干、共感できる部分もないではないが。


 
〇本日は、文科省の説明に限定させていただく。調査仕分けの質疑応答編は、次回にさせていただきたい。

   事業仕分け詳報】(1)全国学力テスト「大幅縮減」(25日)

 さあ。この説明の数々。読めば読むほど、おかしな感覚になっていく。

 文科省は、40%の抽出としたにもかかわらず、その説明にあたっては、ほとんど、『これまでどおり、悉皆でやり続けていきたい。』ということの理由を述べているようにしか思えない。

 曰く。同調査の結果をふまえて、学習指導要領を改訂した。
 曰く。同調査の結果をふまえて、都道府県教育委員会と連携して各地域の学力などの状況や課題を検証し、学力向上のための具体的な教育施策の改善策を講じてきた。
 曰く。同調査の継続的な実施を求めるのが世論の大勢である。

 このような趣旨の説明が続く。

 そして、いきなり、何の前ぶれもなく、『これを抽出調査に切り替えて、』とくるのだ。


 政権が変わったことは理解する。しかし、それにしてもこのような説明はないだろう。

 我々だって、かつてヒラだったとき、校長が変わったことにより、経営方針が変わるということはあった。そのとき、職員会議で提案する内容が百八十度変わったとしても、できるだけ合理的な提案となるよう努めたものだ。

 それがない。

 ということは、文科省の官僚は、やはり、悉皆でやることにこだわりたいのではないか。そして、その思いを、不備な説明によって示しているのではないか。

 そう思った。


 それに、上記説明の一点目、二点目は、事実と違うのではないか。


・たとえば、『同調査結果をふまえて、学習指導要領を改訂した。』と言うが、少なくとも、同指導要領改訂の経緯や基本方針を読んでも、そのようなことは書かれていない。
 『教育基本法改正を受け』とか、『PISA調査の結果から』とは書かれているけれどね。

 
・また、二点目についても、地域によっては、同検査の結果を受けての価値ある取組はみられるが、

 それについては、拙ブログでも紹介させていただいた。

 このように、まじめに、真の学力向上に取り組んだ地域、学校もあるにはあるが、それにしても、国との連携などはまったくなかったのである。

 逆に、ご案内の通り、大人が、子どもを犠牲にしての学力狂騒に明け暮れた地域も少なくない。そして、ランキング公表の動きについては、国と対決した地域もあったっけ。

 そういう地域の、『学力向上のための具体的な教育施策の改善策』は、たとえば、大阪府のように(『ふつうの人の自然な感情で、』なる記事をご参照ください。)、とんでもないものであった。


・さあ、第三点であるが、

 これは、上述の価値ある取組例にみられるような、真の意味での、学力向上を願っての賛成なら、大変けっこうなのだが、

 どうも、これまでの報道を見る限り、

 一部市民による検査結果の開示請求や、
 国が公表した都道府県別ランキング、
 さらには、一部行政府の首長による学力狂騒など

に踊らされた結果の賛成であって、これは、マスコミ等の報道のあり方なども含め、決して喜ばしいこととは思われない。

 この学力調査の一側面である、かわいい子どもが犠牲となり、まことに悲惨な状態に陥っていることなど(『リンク先コメント』の12番以降をご参照ください。)、冷静に報道していただければ、ずいぶん傾向が変わるのではないかと思う。


〇ここで、最近の読者の方にわたしの考え方を分かっていただきたく、ちょっとわき道へそれるが、

 わたしは、同調査問題の質の良さからいって、学力狂騒に巻き込まれることなく、冷静、客観的に調査がなされるのであれば、同調査を悉皆で行うことは、子どもがかわいそうということもなく、純粋に教員の指導力アップに役立つはずであり(『民主党政権下で、全国学力調査は?』の記事をご参照ください。)、したがって、同調査の継続実施に賛成するものである。

 しかし、現状では、あまりにも大人の『点数狂騒』がひどく、子どもがかわいそうなので、緊急避難的に、一時凍結したらという思いをもっている。


〇そこで、また、文科省の説明に戻らせていただく。次の説明だ。

「この全国調査の導入に伴いまして、25の道府県はそれまで県独自で国語や算数、数学の学力調査をやっておりましたけれども、それをこの全国学力学習状況調査の導入に伴って、独自の学力調査をとりやめて全国調査に一本化したという経緯もございまして、今から各地方公共団体独自の調査をする、そのために知識の活用など、良質の問題を作成するということになりますとあまりに時間がないわけでございます」

 やはり、説明そのものには批判があるのだが、ただ一箇所。そう。ほんの一箇所、同説明を評価したい点がある。

・まずおかしい点から、

 1.やはり説明そのものは、悉皆でいきたいという趣旨の説明になっている。
 2.それに、25の道府県すべてが一本化したわけではないだろう。
 3.平成19年度、最初の実施時は土足で入り込んでおいて、悉皆をやめるとなると、このような気配りをみせる。変だ。
 4.わたしの経験で言わせていただければ、最大3年の空白など、どうということはない。たった3年なら、ノーハウはとってあるはずだ。問題作成は容易にできるだろう。

・評価できる点は、

 『知識の活用など、良質の問題を作成する』云々のところだ。

 これはほんとうにそうだ。

 拙ブログにおいても、その調査問題の良質なところは指摘させていただいた。今、一つだけ紹介させていただこう。

    全国学力・学習状況調査実施(3−2)算数編

 ところが、同説明では、

 同調査問題がどうして良質と言えるのか。
 良質ということはどういう意味をもっているのか。

などは、何も説明していない。

 おそらく、文科省の官僚も、そこまでは分かっていないのであろう。上記リンク先の、『全国学力・学習状況調査実施(3−2)算数編』では、『学力観の黒船』などと書かせていただいたが、そのような理解はしていないのであろう。


〇同じく国の説明 『抽出40%』

 結論から言えば、事業仕分けで、この抽出率はもっと低く抑えられそうである。

 『まあ、どうだっていいや。』と言ったら読者の皆さんに叱られそうだが、わたしとしては、上記のように、この学力調査を意義有らしめる努力をすべきなのであって、それが実施に移されるのであれば悉皆に賛成だし、今のまま、大人が狂騒に明け暮れるのであれば、子どもがかわいそうだから、廃止に賛成なのだ。

 その方向性が見えないまま、やれ、悉皆だ。やれ、抽出だ。やれ、〇%だと言ってみたところで、あまり意味はない。


〇ただ、ちょっと驚いた。ほんとうにやるのなら、感動だ。

 次の説明である。

 『抽出(調査の誤りだろう。)結果につきましては、問題ごとの回答(解答の誤りだろう。)状況を分析いたしまして、わかりやすい授業アイデアの仕組みなど、個々の授業の改善や、児童、生徒の指導の充実にも生かせるようにしたいと考えているところでございます。』

 
 ほんとうかな。これがほんとうなら、わたしが常々主張する、教員の指導力アップにつながるかもしれない。ちょっと期待感を抱かせた。

 というのは、これまでの調査3回分では、そのようなことはなかった。

 同調査の『解説資料』を見ても、

 たとえば、ある設問についての解説を引用させていただくと、

『事物や事柄といった静的なものの説明や、手順や方法といった動的なものを説明する機会を増やすことが大切である。そのためには、説明的な文や文章を読んだり書いたりする言語活動を多様に経験することが必要である。さらに、目的や意図に応じて説明したことが、相手に理解されているかを確かめたり助言をもらったりすることが重要である。』

 こんな解説では、とても、授業アイデアとか、個々の授業改善や、指導の充実に生かせるようなものではなかった。

 ここは、事業仕分けの説明での一言に過ぎないが、大変重要なことを言っているので、ぜひ、実行に移していただきたい。


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 国の説明はこのくらいにしておいて、次回は、いよいよ、質疑応答編に入りたいと思います。

 わたしからみれば、どうも、ピント外れの議論が多いのですが、それを分かりやすくかみくだいて記事にさせていただくつもりです。

 とりあえず、規模は縮小されました。よかったのか、よくなかったのか、複雑な思いです。

  

rve83253 at 17:45│Comments(0)TrackBack(0)全国学力調査 | 教育制度・政策

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