2009年12月16日

A先生の講演から 人権週間に寄せて3

992ff3ce.JPG 人権週間は通り過ぎてしまったが、昨日、我が勤務校では、人権教育にかかわって、A先生の講演があった。全校の子どもたちが体育館に集まり、A先生のお話を聞いた。保護者も数人いらした。

 なお、A先生は、かつてB養護学校(現B特別支援学校)長でいらした。
 

 それでは、何はさておき、A先生の講演を採録させていただこう。

 ただし、わたしが聞き取ったメモをもとに書き記しているので、その点は、ご承知ください。(ただし、末尾の2編の詩は、おっしゃったとおりに書いています。)




 では、講演記録を、どうぞ。
    


 みんな、どのクラスも、きちんと入ってきて、きれいに並び、座っていますね。見事でした。えらかったです。


 最初に皆さんに質問したいと思います。動物のサイとゾウがいますね。皆さんはどちらが好きですか。(挙手する子ら。ゾウの方が3倍くらい多かったかな。)

 はい。いいです。分かりました。

 次は動物のことではないのですが、サイにはね、いつも追いかけられています。朝は、『早く起きなサイ。』『顔を洗いなサイ。』『早く食べなサイ。』『早く学校へ行きなサイ。』学校へ着くとね。今度は、『早く席に着きなサイ。』『教科書、ノートを出しなサイ。』

 それに対し、ゾウはね、やる気が出てくるのです。『さあ、朝だ。起きるゾウ。』『顔を洗うゾウ。』『早く食べるゾウ。』『学校へ行くゾウ。』『勉強するゾウ。』ってね。さあ、やる気が出てくるでしょう。やっぱり、ゾウの生活をしたいですね。

 でもね。あるとき、その話をしたら、1年生に言われちゃった。『校長先生。言わなければいけないサイもあるよ。』『ふうん。なあに。』『おやすみなサイとごめんなサイ。』

 これにはね。びっくりしました。なるほど。これは大事だね。1年生から教えてもらいました。

 
 次に、2枚の絵を見てもらいます。

 1枚目はね。みんなの心。赤くピカピカに光ったハートだよね。でも、それが、こんなになっちゃうこともある。今度は、青くギザギザのトゲがいっぱいあるハート。どうしてこうなっちゃうのだろうね。

 (何人も挙手したが、指名された子が答える。)
「けんかするから。」
「いじめるから。」
「いじわるしたから。」
「乱暴したから。」
「心が傷ついたから。」

 はい。よく分かりました。では、こっちの赤くピカピカに光ったハートは。

 (同じく、)
「仲良くできたから。」
「約束を守ったから。」
「いいことをしたから。」
「お母さんのお手伝いをしたから。」
「無視しないでやったから。」

 はい。よく分かりました。皆さんの発言を聞いていると、言葉が大切なのだなと思いました。やさしい、親切な言葉は、こちらの赤くピカピカのハートになるのですね。


 ところで、みんなにはお友達がたくさんいると思います。今日はね、障害のある子のお話をするのですが、障害児のお友達にも、しっかり親切にしたいよね。

 今、校長先生からご紹介いただきましたが、わたしは、B特別支援学校、当時は、B養護学校と言いましたが、その学校に勤めたことがあります。

 今から、そこのビデオをお見せしますので、B養護学校ってどのような学校か、どこが皆さんの学校と同じか、どこが違うか、よく見てください。



(以下、ビデオを映写しながら。)

 これは登校風景です。B養護学校にはスクールバスがあります。バスが行くところまでは、バギーや車いすでやってきます。今写っている子は、こうしてリフトで持ち上げられて車内に入ります。介助の人に抱きかかえられている子もいますね。バスには、運転手さんと介助員さんが乗っています。

 はい。バスが学校に着きました。B養護学校にはこういうバスが5台あります。かわいいバスでしょう。バスの向こうがB養護学校です。そして、カメラが移りますが、はい、今見えてきたのは、B養護学校とつながっているB小学校です。

 はい。この子は、自分で歩くことができるたった一人の子です。ほとんどの子は、歩けないしお話することもできません。バギーや車いすで移動します。

 ここは、小さいけれど、ホールと言って、みんなが集まる場所です。そのずっと向こうに扉があって、そこから先はB小学校です。ふだん扉は開いていますので、自由に行ったり来たりすることができます。

 ここは、教室です。教室の横にはトイレがついています。


 はい。次は、朝の会の様子です。今、訓練室では、マッサージが行われています。先生達に混ざって、B小学校の子も、こうして養護学校の子のマッサージをしてくれています。

 この子は今、立つ訓練をしています。こちらは皆、こんにゃくをさわっています。さわった感じがどんなかを勉強しています。みんなのする勉強とはだいぶ違うね。


 今度は給食室です。ミキサーなどを使って、すべての食べ物をドロドロにしています。こうしないと食べられない。

 この子は食事ができないので、鼻にくだを通しています。このくだは胃まで通っています。今、ちゃんとくだが胃に入っているか確認しています。

(ビデオ映写は、ここまで。)


 ある年、B小学校の1年生にC君という子がいました。よくB養護学校に遊びに来てくれました。

 最初は、養護学校の子の様子を遠くからじっと見つめていました。近寄れなかったのです。なぜって聞くと、こわいと答えました。なぜこわいのと聞くと、自分と全然違うからということでした。

 でも、何週間かたつと、仲良しになりました。養護学校の子の手をつかんで握ってくれるようになりました。

 ある日、B小学校の1年生の朝の会におじゃまし、
「養護学校の子とどこが違うの。」
と聞きました。
「違うところは、話ができない。かけっこもできない。・・・。」
違うところがいっぱい出てきました。

 それでね。次は、こう聞きました。
「同じところはない。」
すると、
「がんばるゾウという心は同じです。」
と答えてくれました。それを聞いてね。すごくうれしかった。そこにいるみんなが拍手しました。


 そのC君が話したことを、詩にしました。今、紹介します。



 神様 Dちゃんの病気治して


 先生あのね、先生、この前、
「みんな、1年生になったのだから、お友達100人つくりましょうね。それには、養護学校のお友達もつくるといいね。」
って言ったでしょ。

 そのことを、登校班のお兄ちゃん、お姉ちゃんに言ったんだ。
そうしたら、
「養護学校のお友達をつくりに行こうよ。」
と言って養護学校に連れて行ってくれたんだ。

 養護学校に行って、ぼく、びっくりしちゃった。
中は、ジュータンがふかふかで、
廊下だって教室のようにあったかいんだよ。
それに、おもちゃ屋さんみたいに
電車や自動車のおもちゃや遊び道具が
いっぱいいっぱいあるんだよ。

 養護学校のお友達を見て、
ぼく、最初はこわかったよ。

 だって、
おしゃべりが全然できない子もいるし、歩くこともできない子がいるんだよ。
鼻にチューブが入っている子もいるんだよ。

 でもね、ぼく勇気を出して、
1年生のDちゃんに、
「友達になってくれる。」
って聞いたんだ。

 Dちゃんはぼくを見て、「にこっ」と笑ってくれたんだ。
白い歯に朝日が当たって、ピカッと光ったんだ。
ぼく、うれしくなって、「Dちゃあん。ありがとう。」って言っちゃった。

 だから、今は、全然こわくないよ。

 お母さんにDちゃんのこと話したら、
「神様にお祈りしたらいいね。」
って教えてくれたんだ。
 だから、ぼく、寝る前に、
「Dちゃんの病気が早く治りますように。」
ってお祈りしてるんだ。

 先生。あのね。
Dちゃんの病気、きっと治るよね。
先生もお祈りしてくれる?


 でも、そのDさんは、入学して1ヶ月後に亡くなりました。お医者さんからは、『入学までもたない。』と言われていたのです。

 お葬式でね。おばあさんは、わたしに言ってくれました。
「この子は親孝行な子です。入学式までちゃんと生き抜いてくれました。」

 このDさん、入学式の日は、きれいなかわいいピンク色の服を着て、たった一人入学しました。

 でも、がんばって、おしっこもいけたし、給食も食べられるようになった。

 亡くなった日も、お母さんはいつも通り世話をして、その後、用事があってDさんのところへ行ったら、息をしていなかった。

 でもね。Dさんは、一ヶ月だけれど、生きる勉強をしっかりやったのです。

 わたしは、そのDさんに送る詩を書きました。

 今、それを読みます。


 おやすみ Dちゃん

 先生、この子は親孝行な子です
 なにしろ 親や わたしに
 入学する姿を見せてくれたのですから
 と おばあさんの声

 六年という年月を
 あらんかぎりの命の炎を
 燃やし尽くして
 あなたは静かに ねむりについた

 あなたの寝顔の
 何と安らかなことか

 命の炎の消えるのを知ったあなたは
 大好きだった三人の先生を家に招き
 かっぱえびせんを 音を立てて かんで見せ
 声を立てて笑い
 おえしゃくをふりまいた

 そして 主治医の先生に別れを告げ
 真夜中 一人旅立って行った

 生きることのすばらしさと
 生きることの尊さを
 みんなに教えてくれたあなた
 
 あのはにかみの表情と
 体の重みとぬくもりを
 わたしたちは いつまでも忘れない 

 おやすみ Dちゃん


 さ わたしの話は終わりです。

 Dさんの分まで、ぼくも、わたしも、みんな、がんばって生きるゾウ。

 そう思ってくれたら、うれしいです。



 講演は以上だ。子どもたちも、父母の皆さんも、教職員も、シ−ンと静かに聞いていた。心に染み入るようだった。



 わたしは、話の途中から、障害者とその家族を悲しませる、どこかの市長のブログを思い浮かべていた。

 あの市長さんは、障害者とその家族の思いに、自分の思いを重ねることはまったくできないようだった。

 1年生だって、『がんばるゾウという心は同じです。』と答えることができる。それを市長ともあろう者ができない。

 こういう学校を充実させなければいけない立場のはずなのにね。


 時はちょうど、人権週間。

 悲しくなった。


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 A先生については、拙ブログで、何度か記事にさせていただいたことがあります。今、おもなものにリンクさせていただきましょう。

    校長先生の授業(2) TOSSとくらべて

    ある書物から、

    
 なお、これらの記事に登場するB養護学校(現B特別支援学校)についても記事にさせていただいたことがあります。それにもリンクさせていただきましょう。

    人権教育(15)交流をテーマの総合的な学習の時間


rve83253 at 00:31│Comments(0)TrackBack(0)人権教育 | 交流教育

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