2009年12月18日

もう一つの調査から、4

f2d85115.JPG わたしは、この結果を予想することができた。

 そのくらい、このクラスの子どもたちは、みんな仲よしだし、やる気も旺盛だ。


 この調査の専門家もおっしゃった。

「このように、学級生活に満足感を抱く子が80%を超えるなどということは、稀有なことです。それが初任の先生のクラスとは、すばらしいですね。」

 わたしは、この結果に、『やっぱりな。』と思いながらも、『稀有なこと』などと言われると、言うに言われぬうれしさを感じた。

 初任者であるAさんは、もっともっと、それを感じたのではなかろうか。



 もとより、学級内の人間関係の豊かさとか、やる気とか、そういったものを数値で表すのは、限界もあるだろう。『参考程度にとどめよう。』と思うこともあるかもしれない。

 やはり、こうした調査に全面的にたよるのではなく、また、それとは逆に、まったく信頼をおかないというのでもなく、本来は、観察法といわれる、担任の目と併用することが望ましい。



 現に、わたしは、この調査結果から、2つのことを思った。そして、その思いは、わたしだけではないようだった。


 
〇この調査結果は、学級全体のみならず、一人ひとりの子どもが学級生活をどう認識しているかも示している。日ごろの子どもたちの姿から、大部分は納得できるが、数人、『あら。どうしてこういう結果になるの。』と思わせる子がいた。

 特に、Bちゃんの結果については、ものすごく、意外な感じをもった。

 一言でいうと、結果が良すぎるのだ。このクラスは居心地のいいクラス。ほとんど何の問題もないという結果なのだ。


 Bちゃんについての日ごろの印象は、『明るいがその明るさに影がある。』といった感じ。『無理して明るくふるまっている。』ようにみえる。

 友人はほしいようだし、よくかかわってはいるが、どうも、自然体ではない。うまく友達をつくれない印象もある。

・口数は多い。
・ふざけて、友達にちょっかいをかけることが多い。
・ときには、『やめろよ。』と言われると、やめるどころか、よけいやりだすことがある。
・発言は多いが、浮いた感じで、友達の支持を受けることは少ない。
・うそが多いが、冗談ともうそともとれるようなうそである。友達から、『違うだろう。そうじゃないだろう。』と言われるようなことがある。
・友達とトラブルと、よく泣く。トラブルの原因は、Bちゃんがつくっていることが多い。

 わたしとの間でも、一度、こういうことがあった。

 このころは、学級閉鎖が多く、3階は、このクラスとずっと向こうのもう一クラスと、その二クラスだけが正常に授業をしていた。

 Bちゃんのグループで、楽しく給食をいただいていた。そのとき、わたしは、気軽な感じで言った。

「いいか。今からいうことは冗談だよ。本気にしないでね。」
「なあに。toshi先生。」
「うん。今日のように、学級閉鎖が多いと、廊下でかけっこができそうだな。」
「うわあ。ほんとうだ。かけっこしても大丈夫だよね。」
「ぶつからないもんね。」
「いやあ。冗談だよ。ほんとうにはやらないでね。」

 そうしたら、突然、Bちゃんが大声を上げ、

「ねえ。みんな。toshi先生がね。『今日は、学級閉鎖のクラスが多いから、廊下でかけっこしてもいい。』って。ほんとうだよ。ほんとうに言ったんだよ。」
「何言っているんだ。冗談て言っただろう。」
「違うよ。冗談なんて言ってないよ。ほんとうにそう言ったんだよ。」
 班の子みんなは、打ち消してくれるが、Bちゃんはニヤニヤしながら言い張った。

 友達から嫌がられる傾向にある原因は、一つにはこういうことがあるのだろう。

 担任のAさんも、もてあまし気味のときもある。

 そんなBちゃんが、いい結果だった。



 それでは、簡単にこの調査を説明しよう。

 合計20問あるアンケート用紙に、一人ひとり自分で答える。

『クラスの人に乱暴されることがありますか。』
『クラスのみんなは、仲よく協力し合っていると思いますか。』
『よく意見を発表するのは好きですか。』
『勉強がもっとできるようになろうとがんばっていますか。』
などの設問に、

『よくある。』『少しある。』『あまりない。』『まったくない。』などから、一つ選んで〇をつける。


 Bちゃんの回答を見せてもらった。

 すると、やはり、意外なところに〇をつけているのが多かったのである。

 たとえば、『友達はあなたの話を聞いてくれますか。』に対し、『よく聞いてくれる。』に〇をつけているとか、

 どうも、『そう思いたい。』という感じで、〇をつけた印象だ。


 ところが、一つだけ、本心で答えたと思うものがあった。

 それは、『学校に行きたくないことがありますか。』に対し、初めは、『まったくない。』に〇をつけたのだが、それを消して、『少しある。』に、〇をつけた。もし、これが、『まったくない。』のままだったら、完全無欠。学級生活には完璧に満足という結果になるのだった。


 そのことを学年主任のCさんに言うと、

 「ああ。わたしも、Bちゃんが、こんなに、『学級生活に満足』と出たのは意外でした。

 なるほど。『学校に行きたくないことがありますか。』にだけ、本心で答えたのは、分かるような気がします。学校に行きたくないとか行きたいとかいうのは、家にいるときの気持ちですものね。そこに友達はいませんから、

 それで、無理せず、正直に答えることができたのではないですか。」

 そうか。そうなのだ。その通り。

 わたしは、Cさんの分析に、感服してしまった。そして、担任のAさんに言った。

「もっともっと、Bちゃんに寄り添ってあげよう。Bちゃんがみえみえのうそをついたとしても、友達にちょっかいをかけたとしても、Bちゃんの気持ちには寄り添ってあげよう。

 ダメなことはダメとしながらも、そうせざるを得ない気持ちは受容してやろう。」

 そのようなことを言った。

 『無理しなくったって、自然体で生活したって、大丈夫だよ。安心して本心をさらけ出して、無理せず生きていこうよ。それでも十分みんな支えてくれるよ。』

 そんな暗黙のメッセージを送れたらすばらしい。


〇もう一つ、この調査の分析に当たって、調査の専門家の先生がおっしゃったことだ。とても印象的だった。
 
 
 このクラスで、学級生活に満足感を抱くグループに属さなかったのは、6人だけである。そのことについて、次のような指導があった。

 満足感を抱くグループに属する子が8割を超えているクラスで、そこに属すことができないということは、この6人は、ちょっとかわいそうな状態かもしれません。みんながあまりにも楽しく充実した生活を送っているだけに、そういう学級の雰囲気に、何となく、疎外感というか、取り残されているというか、そんな思いでいることも考えられます。

 したがって、この6人については、ちょっと担任の先生が心に留めて、言葉をたくさんかけてやるとか、認めてやる部分を増やすとか、そういう配慮をしてやる必要があるでしょう。

 これは一般論ですが、なかなか満足感が得られないのは、家庭や学級で、なかなか認めてもらえないために、がんばっているのに達成感を得られないとか、自己肯定感にとぼしいとか、他人から何か言われないかとびくびくしているとか、さびしいとか、そういう気持ちでいることが考えられます。


 そこで、研修会終了後、Aさんとわたしで、この6人について分析してみた。

 4人は、講師の先生のおっしゃるような配慮が必要と思われた。しかし、残りの2人は、それほど心配することはないのではないか。今でも、十分学級生活をエンジョイし、張りをもって生活しているように思われる。たまたま答えが、自分にきびしいというか、辛口で答えただけではないか。まあ、でも、そうは言っても、日ごろの学級生活を心に留めておくことは大切だ。

 そういう結論になった。


 驚くことがあった。

 Dちゃんについてだが、Aさんとわたしとで、まったく逆の見方をしていた。

 わたしは言う。

「Dちゃんについては、何も心配要らないのではないか。すごく明るく楽しそうに生活している。友達も多そうだ。」
「いえ。そうでもないのです。一見そう見えるのですが、でも、時に、さびしそうな表情をしていることもあるのです。」
「ええっ。ほんとうかよ。わたしは、そんな表情を見たことないなあ。」

 でも、これは、Aさんの言う方が正しいのだろう。わたしは四六時中このクラスにいるわけではないのだから。それに何といっても、担任の目は、調査結果と同一だもの。


 また、わたしの知らないことを、担任はけっこう把握していた。

 Eちゃんについては、人に何か言われると、すぐへこんでしまう。自己肯定感がもてないのだそうだ。

 Fちゃんについては、2人だけの母子家庭で、母親が多忙なため、ほとんど顔を合わせている時間がない。それで、学級においても、さびしそうな表情が多い。これについては、やはり、Aさんが父親役をかってでることも必要だろう。

 Gちゃんについては、学級でも一番理解力があり、すばらしい発言も多い。しかし、なかなか親にほめてもらえない。そのため、がんばっているのだが、そのがんばりを自分で判断できない。

 これもやはり、Aさんが、『よくやったね。』『がんばっているね。』などと、努力している姿を自覚できるよう、認めてやることが大切だ。

 そういう結論になった。


 調査と言うのは万能ではない。しかし、有力で、客観性のある評価であることも間違いない。

 これを武器として、よりよい学級経営を目ざせるはずである。


 残りほぼ3ヶ月となった。さらに、しっかりと子どもとともに、よりよい学級集団にしていきたいと思う。


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 同調査は、担任にとっても、きびしい側面をもつものです。自分の学級経営をもろに問われるといった側面があります。

 そういう意味では、全国学力調査とともに、教員の指導力アップにつながる調査と言えるのではないでしょうか。

 我が勤務校が本調査を積極的に受け入れ、講師の指導をあおいでいる姿勢に、わたしは、敬意を表したいと思います。



rve83253 at 23:54│Comments(0)TrackBack(0)学級経営 | 子ども

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