2010年04月22日

『日本の教師に伝えたいこと』を読んで (3) 語彙の指導をめぐって4

705b9bda.jpg 大村はま先生の著作『日本の教師に伝えたいこと』を読んで、大変勉強になったのは、『語彙を広げる指導』の意味あいだ。

 わたしは、これまで、語彙を広げるということは、言語指導の一環としてしかとらえていなかった。


 しかし、大村先生は、明確に、

 『言葉をふやすということは、ただ分からない言葉を分かるようにするということだけではありません。生きた言葉を増やしていくということは大変なことで、一つの生活を理解するか体験するか、何かをしなければほんとうの意味での言葉は増えないでしょう。』とおっしゃっていた。


 わたしは、目からうろこが落ちる思いだった。

 ほんとうにその通りだなと思った。


 大村先生は、このことを、「アイヌ、その意味は『人間』」の単元を実践されたなかで語られている。

 アイヌ民族の生活を知れば知るほど、それが自分たちの生活にはないだけに、どんな言葉をつかって表現したらいいか、言葉を求めて頭のなかをぐるぐるかけめぐっていく。

 そして、それこそが、言語感覚とか、語彙を増やしていく力になるのだ。

 そうおっしゃる。


 わたしは、この文章を読んで、『なるほど。これこそが、究極の語彙指導なのだろう。』と思った。

 これにくらべたら、『辞書を引いて分からない言葉を調べる。』などということは、もちろん大切に指導していくけれど、『生きる力』のまえでは、小さな、小さな指導にすぎないなと、心から納得させられた。


 そして、突然、『ああっ。』と思った。

 それは、『ああ。そういう実践なら、数年前の初任者の授業に、似た場面があったなあ。』と思い出した。過去記事にある。今、リンクさせていただこう。

    育つ初任者 スーホの白い馬

 この授業では、初任者の学校の校長先生が、『発言を聞いていて、子どもたちは、語彙が豊富だなとも思いましたよ。』と感想をおっしゃった。


 しかし、振り返ってこの記事を読んでみると、『語彙が豊富』というより、まさに、『どんな言葉をつかって表現したらいいか、言葉を求めて頭のなかをぐるぐるかけめぐっていく。』姿ではなかったか。


 この初任者の授業のすばらしさは、以下のようだ。

 教科書には、『白馬が死んだ。』と書かれているのである。

 それなのに、『命を落とした。』の方がもっといい表現だという意見があらわれて、クラスのみんながそれを支持したのだった。

 もちろん、お話のすばらしさ、そこから受けた感動が、そうさせたのだとも言い得る。

 『死んだ白馬はかわいそうだ。』『なんて身勝手なとのさまなのだ。』など、など。


 お話をしっかり読みこんだからこそ、そして、心を打ったからこそ、真剣に、よりいい言葉を模索することができたと考える。


 そう。今回、大村先生の著作を熟読させていただいて、そのような思いがかけめぐった。



 話を一歩進めさせていただこう。

 大村先生の著作に戻るが、

 大村先生は、別なところで、

『年がかわり、子どもがかわっても、かつてやった単元を再度とり上げるということは、しなかった。
 それは、子どもにとって常に初めてやる学習である以上、指導者である自分の心も、常に初めてとり上げる単元ということにし、新鮮さを共有したかったからである。』

とおっしゃっている。


 このことは何を意味するか。

 教科書は、ほとんど使わなかったということになるね。

 まあ、理屈のうえでは、一回は使えることになるが、それでも実際は、ほとんど使わなかったのではなかろうか。

 常にご自分で、単元(教材)を発掘されたということになる。


 そう。これも、すごいことだよね。

 
 でも、そうだとすると、同氏は、『全国一律の基礎・基本』という考え方を排除しているように思われる。

 だって、A単元はA単元特有の語彙、B単元にはB単元特有の語彙があるはずだもの。まったく一律にはならない。

 そのようなことより、子どもたちの生活経験に根差し、あるいは、想像をめぐらして、豊かに語彙を獲得していくことを大切にする。
        

 昨日、全国学力調査が実施されたけれど、まったくそういうことを超越した学力を大切にされたと言い得る。


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 話が脇道にそれるので、バナーの下に書かせていただきますが、

 社会科において、生きてはたらく社会的思考を大切にして授業を行うとすれば、同一単元を二度と組むことはできません。これは、宿命といってもいいようなもの。

 なぜなら、学習対象である社会事象は、年々変化するものだからです。

 その辺は、下記の記事にくわしく書いています。

 どうぞ。よろしかったら、ご覧ください。

    ダイナミックな社会科へ

 

rve83253 at 00:15│Comments(0)TrackBack(0)教育観 | 国語科指導

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