2010年07月01日

子どもを知るということ4

df2244fb.jpg 2年生担任の初任者AさんのクラスのBちゃんは、最近、保健室に行くことが増えた。決まって、『おなかが痛い。』とAさんに訴える。ときには、後ろで授業を見ているわたしに訴えに来ることもある。

 そういうときは、弱々しそうでもあるし、つらそうでもある。

 教室ではけっこう明るくふるまっていることもあるから、最初はあまり気にしていなかったが、でも、あまり度重なるとね。


 ひと月ほど前、まだ今ほど多くはなかったが、Aさんに聞いてみた。

「はい。わたしも、ちょっと気になっていました。Bちゃんは、4月にCから転校してきた子で、まだ、友達があまりいないからなのでしょうか。お母さんと話しても、そのようなことをおっしゃっていました。まだ、あまり、新しい学級になじめないようだともおっしゃっていました。」

 Cは遠い土地だ。子どもたちがつかう言葉も、かなり違うだろう。そのようなことが原因かな。だって、教室で見ているかぎり、友達が少ないなどとはとうてい思えない。一人ぼっちという感じなど、まったくないもの。だから、なれてくれば、もともと、明るい子でもあるみたいだから、大丈夫かな。

 そのように思った。


 で、しばらく様子見となったが、

 やはり、保健室へ行く頻度は増したから、今度は、D養護教諭に聞くことにした。この方は、もうかなりベテランだ。子どもにもやさしく接している。

「はい。最近、確かに増えていますね。熱はないのです。トイレへ行けばなおるというものでもないようです。

 それで、Aさんが言うことも原因かなとは思いますが、それに加えて、お母さんがBちゃんの勉強のことで、かなり神経質になっていることもあるようです。

 Bちゃんが言うには、『2年生になると、計算とか漢字とか、急にむずかしくなるから、がんばらないといけない。』が口ぐせになっているようです。それで、Bちゃんは勉強にプレッシャーを感じるようになってしまっているのです。」

 そうか。そうか。そういうことか。


 それで、今度は、Bちゃんの理解度はどうか、特に計算と漢字について、Aさんに聞くことにした。

「いえ。テストの点数は悪くないです。100点もよくとりますし、だいたい、90点以上ですから。」


 続けて言う。

「ついこの前、このクラスのEちゃんがおもしろいことを言ったのです。一緒に、放課後学童クラブにもいっているのですが、そこでのBちゃんは、もう人が変わったように明るくふるまっているのだそうです。それが、Eちゃんには、もう、ものすごい驚きになっているようです。
『教室にいるときのBちゃんと全然違うんだもん。どうしてあんなに違うんだろう。びっくりしちゃうよ。』
と言っていました。」


 そうか。これで、だいたい、よめたぞ。

 Bちゃんの全体像が見えてきた。

 放課後学童クラブは、まあ、勉強とは関係ないものね。子どもたちを拘束するようなものでもない。だから、精神的に安定するのだろう。安心できる場なのかもしれない。



 ここまで聞いて思う。これはもう、お母さんに変わってもらうしかない。

 「お友達が少ないということはないですよ。今の学級になじめないということもなさそうです。授業もよく理解できていますよ。だから、安心してください。」

 そんなメッセージをおくりたい。


 でも、これって、口でいくら言ったってダメだ。『ああ。そうですか。それならよかった。安心しました。』とはならないだろう。



 そんなとき、Bちゃんがすばらしいことをやった。


 音楽の授業に行くときだ。みんな廊下に整列し、音楽室に向かおうとしている。しかし、Bちゃんは教室にいたまま、Fちゃんの机のなかをのぞき、何やら、一生懸命さがし物をしている。

 どうしたのか聞くと、

 「今、Fちゃんは、具合が悪くて保健室へ行っているの。でも、よくなって音楽の授業中に音楽室へ来るかもしれないでしょう。そのとき、Fちゃんがこまらないように、教科書を持っていってやりたい。」

ということだった。


 わたしは、感動した。

 なんとやさしい心の持ち主ではないか。


 別な思いもある。

 『そのようなことをしなくてもいいのではないかな。Fちゃんが仮によくなって音楽の授業に出られるようになったとしても、たぶん、最初は教室に来るだろう。そして、教科書を持って音楽室に行くと思うよ。』

 そう言ってやりたい気もしたけれど、それは口には出さなかった。そのくらい、Bちゃんの心に感動してしまったわたし。

 でも、これはやはり、Aさんからほめてもらおう。

 わたしは、一緒にFちゃんの教科書をさがし、Bちゃんを廊下の列に早く戻すことだけに専念した。


 あとで、Aさんに聞く。

「はい。ありがとうございました。

 音楽室から戻ってきたとき、すぐほめてやりました。

 また、Fちゃんはけっきょく音楽の授業には出られなかったようなので、あとで、Bちゃんのやさしい心をFちゃんにも話しました。toshi先生がいつもおっしゃるように、学級全員の前で話すようにしました。クラスのみんなから拍手までもらって、Bちゃんはとてもうれしそうでした。」

「そうか。それはよかった。ではね。その様子を連絡帳に書いて、お母さんにも読んでもらいなさい。」


 そう。お母さんは、『我が子はまだ新しい学校、新しい学級になじめていない。友達も少ない。』と、今も思っている・・・かもしれない。

 そんなお母さんに安心していただくには、こうしたエピソードを適宜お伝えすることが肝要だ。

 親の心が子どもに伝わる。親が安心してくれれば、それは、Bちゃんの心の安定にもつながっていくに違いない。

 そんな話もした。




 さて。問題はもう一つあるね。

 Aさんの授業改善だ。授業も、放課後学童クラブでの生活同様、楽しくて仕方ないものにすることだ。


 でも、もうかなり長くなりそうだから、これは次回へ。

 すみません。よろしくお願いします。


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 わたしは、たとえ個人的なことであっても、みんなの『心のたがやし』につながるエピソードは、学級全員に聞かせたいと思います。それが、学級集団の輪(和)を深め、強めることにもなります。

 このことについて、くわしく書いた過去記事もあります。

 紹介させていただきましょう。

    心の教育(4)

  

rve83253 at 06:57│Comments(6)TrackBack(0)保護者 | 学級経営

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この記事へのコメント

1. Posted by やまびこまま   2010年07月01日 12:03
我が家では子どもが二人とも学童保育にお世話になっていました(下の子は現在進行形)。民営のため6年生まで通所でき、学校とは違う世界で親子共々成長させていただいています。
そこの指導員さんがよく言われるのは「子どもは学童で本当の姿を見せるんですよ、何の遠慮もなく自分の姿をぶつけてくるからとても大変だけどやりがいあります」と。
曰く、優しくて賢い子どもほど、学校だけでなく家でも親に対して気を使っていい子にしているそうです。
Bちゃんのおかあさんは、きっととても頑張っていらっしゃる。そのこと自体は全然悪いことではないけれど、当の子どもがきっと疲れてしまっているのではないかと・・・
お母さんを悲しませたくない、私が頑張らなくちゃ、と。
そんなBちゃんの気持ちに親は気づいていないのかもしれませんね。

先生の授業改善はもちろん大歓迎ですが、担任の先生と学童の指導員さんが「よい形」で連携できると、解決のヒントが見つかるかもしれないと思うのですが。


2. Posted by 常勤講師   2010年07月01日 15:42
はじめましてこんにちは。高校で常勤講師をしています。

とてもためになる話ばかりで、いつも励みにしてます。

来週末に教員採用試験を受けます。義務でなく高校ですが、もう8回目です…。

こちらのブログから受けた良い影響を糧になんとか合格できたら、と思っています。
3. Posted by toshi   2010年07月02日 05:25
やまびこままさん
《担任の先生と学童の指導員さんが「よい形」で連携できると、解決のヒントが見つかるかもしれないと思うのですが。》
 いやあ。もう、ほんとうにおっしゃる通りです。わたしの現職中も、放課後学童クラブの指導員さんとしょっちゅう交流している学級担任は何人もいました。そして、それに、感謝している自分もいました。
 わたし、そのことをうっかりしていました。思い出させていただきました。ありがとうございます。
 さっそく、放課後学童クラブでのBちゃんの様子を見に行ったり、指導員さんと話し合ったりするように言ってみましょう。また、何か新たな情報が入るかもしれませんしね。

 いや。
 Aさんはわたしのブログもよく読んでくれています。だから、きっと、わたしが言わないうちに、行動にうつしてくれることでしょう。

 そういう意味でも、ありがとうございました。

 指導員さんの言葉も、ほんとうにその通りだと思いました。Bちゃんのお母さんが安心してくださるような手だてを、わたしもいろいろ考えてみたいと、あらためて思いました。
4. Posted by toshi   2010年07月02日 05:29
常勤講師さん
 いやあ。ありがとうございます。このようにおっしゃっていただいて、とてもうれしく存じます。今後ともよろしくお願いしますね。
 採用試験、いい結果につながるよう、祈念しています。拙ブログが少しでもいい結果につながるなら、望外の喜びです。
5. Posted by やまびこまま   2010年07月03日 10:14
学童保育というところは本当に不思議な空間だと思っています。我が子がお世話になっているところしか知らないのですが、学年を超えた子どもたちの繋がりがとても自然でいいのです。兄弟がいてもいなくても、皆で遊べる、集団遊びができる、今の時代には貴重なところかもしれません。
「よい形で」と書いたのには意味がありまして・・やはり学校の先生によっては学童に通う子どもと親に対して「偏見」を持っている方もおられるようなのです。母親が働いて子どもを預けているから問題が起こるんだ、と。
お母さんのほうが登校拒否(参観や懇談会など)になってしまうこともあるのですよね。
6. Posted by toshi   2010年07月03日 14:42
やまびこままさん
どこもそうだと思いますが、我が地域も、学童保育と放課後学童クラブは並立しています。学童は地方行政府から補助金は出ていますが、一応民営なのに対し、放課後学童の方は完全に公営ですね。学童の保育の場合たいがい狭いところに、ぎゅうぎゅうに子どもたちが押し込まれているようです。ちょっとかわいそうでもあります。
 『偏見』といったものは、我が地域の場合、おそらくないと思いますよ。運営委員のメンバーには地域の方をはじめ学校長も入っていますし、わたしの場合、情報を入れたり逆にいただいたりしていました。そして、必要なら、個々の担任に、あるいは、朝の打ち合わせなどで、学童保育の努力などを伝えるようにもしていました。
 放課後学童クラブは、学校の施設を使っていますので、同クラブの方からだけでなく、逆に同クラブと交流している教員から情報をもらうこともありました。
 本記事の事例は、初任者に対し、まさにそういう交流の必要性を実感させる好例だなと、やまびこままさんのコメントを拝読して、あらためて、そう思いました。ありがとうございました。

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