2011年11月20日

障害児と問題解決学習と、

PAP_0111 またまたすばらしい授業を見せていただいた。ここ2回にわたりとり上げたA小学校とは別な、B小学校の実践である。個別(特別)支援学級の授業だ。

 同校には、長く個別支援学級の担任を務められたCさんがいらっしゃる。今年度は教務主任ということで担任を外れたが、先日の研究会では、《担任を外れたことがさびしくてたまらない》という想いだっただろう。話しながら言葉をつまらせる場面もあった。

 授業者のDさんも、
「みんなCさんが育てられた子どもたちなのですよ。わたしはただ引き継いだだけなのです。」
と謙遜されていたが・・・、どうして。どうして。

 Dさんのお話の前半は確かにその通りだろう。わたしも長く同校の校内研究にお付き合いさせていただいているからよく分かる。
 しかしね。後半は違うのだ。どういうことか。

 一口で言えば、学級経営に横ばいはない。盛り上がるか下がるかしかない。力があれば盛り上がるし、なければ下がる。だから、力の付いた子どもたちを引き継いでいるなら、たとえ引き継いでいるだけのようにみえても、それは間違いなくDさんの力なのである。育っている学級を引き継ぐということはそれだけの力がないとできないことなのだ。

 それでは、何がそれほどにすばらしいのか。それを述べさせていただくと、1・4・5年生が各2人。3年生が1人、計7人のクラスであるが、1時間の話し合い学習が、見事成立している。ある指導主事の言葉を借りれば、驚異的である。
 それは、後半話し合いにあきて、床に寝ころんでしまったEちゃんのような姿もないではないが、しかし、そのEちゃんにしても床に寝ころんだまま挙手しているときもあった。思わず笑ってしまったが、話し合いに参加していることは確かだった。


 問題解決学習であるから、子どもの切実感、必然性によって生まれる学習問題はある。

 思い出す。昨年度のCさんの授業だ。そのときは、『(学校のお祭りのとき、いらして下さる)お客さんのために作るお菓子は、おまんじゅう型にするかピザ型にするか。』だった。
 ある子は、『ピザ型じゃあ、薄くって食べた気がしない。』と言うし、別な子は、『おまんじゅう型だと、食べているうちに中身がとび出しちゃうこともあるから、食べにくい。』と主張するという対立があった。

 それが今年はさらに進化した。
 単元名は、「まちとなかよし『どきどき まちたんけんたい』 〜もっと知りたいな、ケアプラザのこと」となっている。そして、本時の学習問題は、『ケアプラザのお年寄りといっしょにどんなことができるだろう。』である。
 なおB小学校は、研究テーマに『かかわり合いを大切にした問題解決力をはぐくむ学習のあり方をさぐる。』をかかげ、子ども同士のかかわり合いの充実を目指している。
 言うまでもないが、それは個別支援学級とて同様である。

 いかがだろう。昨年のそれは、いかにも個別支援学級らしいといっては失礼だが・・・、ほほえましい学習問題だったのに対し、今年のそれは、もうすごいものだ。生活科としてふつうの学級の学習問題ととらえても、何らそん色がないではないか。


 さて、
 子どもたちはこれまで、数回、地域のケアプラザを訪ねている。そして、施設の概要、そこで働く人たちの様子やお話、お年寄りの生活などを見たり聞いたりしてきた。

 そこで、本時を迎えるにあたり、子どもたちがどんな意識でいるか、幸い、このB小学校も座席表指導案をとり入れているし、また、7人のクラスであるから、ここでは全員分、書かせていただこうと思う。それでは、どうぞ。

・1年生Eさん 授業への参加にはムラがあり、たくさん発言する日とまったく興味を示さない日とがある。ふだんお年寄りとふれ合う機会は少ないので、本単元の実践を通しそうした経験をさせていきたい。
・1年生Fさん 近くに祖母が住んでいるのでふれ合う機会は多い。いろいろ知りたい気持ちはあるが、なかなか質問はできない。ケアプラザのお年寄りとも、積極的に接するようにしたい。
・3年生Gさん 前回訪問したとき、お年寄りに話しかけていた。ものおじせず積極的であるが、状況判断は乏しい。お年寄りの気持ちを考えてまわりの様子を見ながら言葉を選んでふれ合えるようにしたい。
・4年生Hさん 近くに住む祖父母とバリアフリーテニスに参加している。今回、「ケアプラザに行ってみたい。」と一番に希望した。ケアプラザのお年寄りとも積極的にふれ合えるようにしたい。
・4年生Jさん  日ごろお年寄りとのふれ合いは少ない。しかし、Hさんの誘いもあってバリアフリーテニスに参加するようになった。会話は苦手でコミュニケーションをとることはむずかしい。自分のできるふれ合い方をみつけさせたい。
・5年生 Kさん ふだんお年寄りと接する機会は多い。お年寄りとゲームをしたいという提案に対し、『バクダンゲームなら動かなくてもできると、お年寄りのことをよく考えていた。さらにいろいろな体の状態のお年寄りがいることに気づかせたい。
・5年生 Lさん 訪問先以外のケアプラザも知っていて、デイケアサービスの送迎の車について、みんなに教えてあげていた。いっそうやさしい気持ち、やさしい言葉でお年寄りとふれ合えるように支援したい。


 それでは、いよいよ一時間の授業記録に入らせていただく。(なお、考察は次回に譲らせていただきたい。)
・学習の流れがあっちこっちへ行っていないか。
・子どもは見通しをもてているか。
 そんな観点で見ていただけたら幸いである。

 なお、Tは指導者のDさん。Cはだれが言ったかは不明だが、子どもの発言。そのほかは、上記座席表指導案に示された子の発言である。

T1 ケアプラザのお年寄りと何ができるか、考えるのだったね。ついこの前行ったときのことを思い出してね。(前時の最後に書いた『見つけたよカード』を配る。)
C2 Mさんに会ったよ。
T3 Mさんは何をする人でしたか。
H4 おじいさんやおばあさんの世話をする人。
T5 そう。デイサービスのお仕事だったね。
L6 日帰りって言ってた。朝来て、夕方くらいにバイバイする。
T7 どんなふうに来て、どんなふうにバイバイするの。
H8 車で来ます。
L9 中に車いすが入るようになってる。それで、押してもらって入る。ケアプラザの車。特別なの。
T10 次はどうするの。
K11 大きいのは3台で、小さいのは1台ある。それで、お茶を飲んだりゲームをしたりする。
T12 ゲームをしたりするのは何て言うのだっけ。
K13 レクリエーション。
H14 お風呂に入るって言ってた。
T15 それ、レクリエーションに入るかな。
L16 ゲーム。午前中に健康チェックをする。風邪ひいている人がいないか、熱ある人がいないかみたい・・・で、学校みたいにする。
T17 お風呂のことでどうぞ。
K18 歩ける人は、階段を使って下りていく。
L19 階段が何段もあるじゃん。
T20 車いすで、そのままお風呂に入るのね。
F21 2個のボタンがあって、(写真を示しながら、)ウィーンて下りるの。
L22 レクリエーションの後、ご飯の準備をする。たぶん、お昼ご飯だよ。
H23 ご飯の後もレクリエーションをする。その後はおやつ。
L24 ご飯のとき、お箸の準備とお口の体操をする。細かく刻むと言ってた。
H25 おやつの後は、車で帰る。
T26 はい。そんな一日でしたね。・・・。それでレクリエーションのところで、みんなはお年寄りと一緒に遊ぶのでしたね。どんなことをやってみたい?できるかな。?
E27 トランプ。
K28 バクダンゲーム。
L29 カルタ。
J30 ビンゴゲームは。
G31 だるまさんが転んだ。
C32 ええっ。できるかなあ。
G33 ぼく、だるまさん、大好き。
E34 しんけいすいじゃく。
T35 トランプ遊びを2つ言ってくれました。
K36 音楽。みんなでリコーダーを吹く。鍵盤ハーモニカも。
L37 つけたし。演奏をおじいさん、おばあさんに聞かせるといい。心が晴れ晴れする。
J38 進化版。ゆきだるまさんが転んだ。
H39 ぬり絵。
T40 ああ。それ、やっていたおじいさん、おばあさんがいたねえ。
L41 ぬり終わったら、音楽の発表会をするといい。
T42 そうね。みんなできるかな。
C43 できなあい。
K44 2つにした方がいい。かるたやトランプやだるまさんが転んだは、お年寄りが早く動けないから、ダメ。早くできない。
H45 お年寄りで速く走れない人もいる。だから、だるまさんが転んだはダメ。
L46 ボオッとした人がいそうだから、バクダンゲームはダメ。ボールを受け取れない。ビンゴゲームは聞き取れない。
J47 音楽とぬり絵の2つがいい。
G48 音楽はできない人もいるし、落としてしまうこともある。
K49 音楽はぼくたちがやるんだよ。お年寄りに聞かせるんだよ。
G50 それなら、聞かせるって書いといてください。
T51 ああ。そう。書いとけばよかったね。
E52 音楽は耳が聞こえない人もいる。
K53 バクダンゲームの反対に反対。ゆっくりやったらいいんだよ。
L54 トランプは、ばばぬきのような、ゆっくりできるものならいい。
K55 トランプは、手に持てない人もいるからダメ。
T56 そうだ。手の不自由な人もいたねえ。
H57 みんなでぬり絵ならできる。
E58 バクダンゲームはダメ。目が見えない人もいる。
H59 ケアプラザの人が助けてくれるから、大丈夫だよ。
T60 そうね。2種類くらいなら、お年寄りもできそうよ。同じ人が最初から最後まではいられない。この中から2つ選べるかな。
H61 ビンゴも大丈夫だ。
L62 聞き取れないよ。早口だし。
T63 だるまさんは消してもいい?
T64 カルタも消していいかな。カルタとトランプは似ているね。
K65 似てないよ。カルタは厚い。
H66 カルタはいい。トランプと同じで、おじいさん、おばあさんに合わせて、ゆっくりやればできる。
T67 2つにできるの。
T68 トランプ、カルタ、音楽、バクダンゲーム、ぬり絵でよい?ビンゴゲームはどうする?
T69 来週行くとき、2つやって、残りはまたその後行ったときにするね。
T70 それじゃあ、2つ手を上げて、多いのにしていい?
C71 はあい。
J72 あれ。だるまさんはいつ消えたの。
(挙手の多い2つに決定する。)
T73 それでは今度やる2つを発表します。ビンゴゲームとぬり絵です。それでは全員がやりたい方を選んでください。
(自分のやりたい方に自分の写真付きのカードを貼りに行く。)
(以下、2つは、貼りに行きながら、)
J74 Lさんはどっちにするの。一緒にやろう。
H75 ぼくは最後に貼る。最後でいい。
H76 1年生2人だけじゃあ、ちょっとね。(と言いながら、ビンゴの方に貼った。)

 以下、略。

 書きっぱなしですみません。先に申し上げたように、この授業記録の考察は次回にまわさせていただきます。

 
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 『個別支援学級も、問題解決学習はできる。』という趣旨で記事を書かせていただきました。しかし、正確に言えば、一口に障害のある子どもと言っても、その障害は子どもそれぞれ異なりますし、簡単に、《できる》と言い切ってしまうことはできません。
 それに関し、昨年度、B小学校Cさんの言葉で忘れられないものがあります。
「皆さんに、『子どもが育っていますね。』と言われることは、それはうれしいことです。しかし、どんなに子どもが育ったといっても、やはりできないことはあります。できないことはどんなにがんばったってできないのですから、助けを求める。そうした力をもつことも彼らにとっては大事なのです。」

 そう。そういう広い意味での問題解決力を考えていかなければいけません。

 なお、ふつうの学級に発達障害のある子がいる場合の実践については、多分に試行錯誤的ではありましたが、わたしの実践を過去記事に掲載しています。よろしかったらご覧ください。
    発達障害児と問題解決学習と、 (3)  
 これも、広い意味での問題解決力を養う。それは何も障害のある子どもだけではありません。学級の子ども全員に養っていくのです。


rve83253 at 23:10│Comments(0)TrackBack(0)個別(特別)支援教育 | 問題解決学習

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