2012年05月06日

浜名湖ボート転覆事件に想いを寄せて、

PAP_0012 カルロスさん、ありがとう。

 もしカルロスさんのブログがなかったら、わたしはこの『浜名湖ボート転覆事件』で亡くなった生徒のご両親が提訴されたことに気づかなかったかもしれない。そして、ブログ村という、ブログ文化を共有し合う仲間のなかに、このご両親がいらっしゃることにも気づかないままだったのではないか。

 それは、公教育に携わる者として、あまりにも申し訳ないことだ。

 今、あらためてふり返ってみる。この事件の記憶は確かにある。当時、まったく不可解な思いがしたものだ。それは、なぜこんな荒天のもとで決行したかということ。その一点に尽きた。

 我が地域では小学校でも宿泊体験学習として、このカッター訓練を行う学校が多い。わたしが勤務した学校はいずれも別な宿泊体験だったのでこのカッター訓練なるものは体験していないが、しかしそれでも、こんな荒天下(たとえ雨天でも、)の決行は考えられない。『小と中とは違う。』となるのかもしれないが、入学してまだ2か月余という時期だった。
 いたましい事件だ。

 今回、カルロスさんの記事に接し、我が子の命を奪われたご両親に想いを寄せさせていただいた。ご両親のブログ『怒りのメゾフォルテ』を拝読した。読んでいるうちにご両親のせつない思い、怒り、そうしたものが何度も胸を突き上げてきた。これはすべてを読まなければ・・・。そう思った。

 そして読み終わった今、いろんな想いがある。

 まずはカルロスさんもおっしゃるように、わたし自身も含め公教育に携わる者全体が反省すべきという意味を込め、また同じ過ちを繰り返すことがないようにという思いも込めて事件をしっかり見つめ把握する努力をしていきたいと思う。

〇なんと言っても衝撃なのは、学校はじめ関係の者たちの誠意のなさ、それに尽きる。これは何なのだろう。

 しかもこの想いは、今が初めてではない。ブログを始めさせていただいてあしかけ8年。この間、わたしは、いじめによる自殺、障害者への差別、教員による体罰など、学校現場、教育行政の宿弊とも言うべき、様々な問題をとり上げてきた。それらに一貫しているのが、この、学校はじめ、教育関係者の誠意のなさなのである。隠ぺい体質、責任回避、そうした風潮も共通している。
 
 それに加え、本事件では、学校はじめ教育関係者の対応の軽さが目立つ。配慮がない。きめの細かさもない。いや、話が逆でそうした軽さゆえに本事件が起きたといっても過言ではない。やはり、ここのところずっと拙ブログで書き続けているが、校長以下、《人の心に寄り添う》気持ちが欠如しているのではないか。
 適当にやる教育活動。そうした習性があるようにみえる。

〇学校はじめ教育関係者と書かせていただいた。ほんとうにこの事件では関係する施設、指導にあたる団体など、また、学校所在地と体験学習を実施したところと県がまたがっているため、関係者が多岐にわたっている。それが事態をさらに複雑にしているようだ。
 でもね。そのそれぞれが自分のおかれた立場で責任を果たす。それが当然ではないのか。それなのに・・・、

 一例を申し述べよう。ここの市長は言う。
「学校教育にまで市の責任が及ぶものではないだろう。市は学校教育に口出しできるものではないし、第一、人事権すらない。」
 これはある意味、筋が通っている。でも、ある意味…だ。
 どこかの市長はそれを破り教育にまで堂々と口を出しているが、こちらのほうがおかしいのだ。これは、その時々の政治勢力の動向によって教育行政が不安定になることのないようにという配慮、つまり民主主義を守り育てるうえで大事だからそうしているのである。
 だから、今回のように、生徒が学校管理下で命を奪われるといった、そんな事件にまで適用させうる理屈ではない。 
 また今の時代、被害者救済の観点から、責任の及ぶ範囲を広げようとする動きもあるように思う。

 裁判になるので今後判決というかたちで示されることになるだろうが、わたしはそう考える。

〇学校教育は、学校が学校の責任において行うものだ。ご両親のブログでは、『学校の正課』と言っているが、このことは、学習指導要領冒頭にはっきり示されている。『第1章 総則 第1 教育課程編成の一般方針の1.』だが、以下のようだ。

 各学校においては,教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの章以下に示すところに従い,生徒の人間として調和のとれた育成を目指し,地域や学校の実態及び生徒の心身の発達の段階や特性等を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとし,これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとする。

 以上ここに示されているように、教育課程編成権は学校にあるのだ。だから、第一義的にはすべて学校が責任を負う。たとえ、学校がどこかに指導を委託したとしても、学校の管理下であることにかわりはない。学校の責任は回避されるものではない。ましてや天候による可否。これは、すぐれて学校長の決断によるのである。

 教委と学校との関係についても、教委が各学校を指導・助言するのはいい。職務だ。しかし、その通りやるか否かはあくまで学校(長)が判断する。まあ、よほどでない限り教委の指導の通りやるだろうけれど、それをもって責任は教委などということはできない。
 だから、ご両親のブログにあるのだが、校長が市民(保護者)に対し、《教委の指示があったので、〜となった。》などと言い訳することは認められない。仮にそうだとしても、学校長の責任なのである。

〇それにしても、思う。学校はじめ教育関係者は、何でこんなにも謝罪を拒むのだろう。これも先ほど同様、学校をめぐる不祥事の多くに共通している。でも、わたしには理解できない。

 ご両親は誠意ある対応に対しては、その誠意を認めていらっしゃる。そんなことも書かれていた。そうしたご両親をなぜこんなにも悲しませ、怒らせてしまうのだろう。謝罪がないという学校、行政に対しては、厳しく反省を促したいと思う。

 
〇ご両親のブログを拝読して、わたし自身も過去に過ちをおかし、大いに反省を迫られたことが書かれていることに気づいた。これは、学校管理職に限らず言えることだと思うので、やや具体的に述べてみたい。

 ブログは言う。

・当初、出港前、学校長は、教諭から「この程度の雨」であれば実施できる旨の報告をうけて了承した。
・しかし,昼過ぎから雨量にも変化があり天候は悪化していった。
・さらに出港時は土砂降り状態になっていた。
・そして、出港20分後からは風も強くなってきた。

 わたしは冒頭、注意報発令中の決行はありえないし、そもそも雨天での決行もあり得ないと述べた。『それは小学校の感覚だろう。』と言われればその通りだが、そういう立場だ。

 だから、以降の記述は、仮に『決行もありえた』としてという意味になるが、
 このように徐々に事態が悪化していくケースは判断が非常にむずかしい。いったん決断すると、どうしても自身の決断に拘束されがちとなる。
 一気に暴風雨になるならまだ決断しやすいのだが、『徐々に徐々に』というのは、一番困る。特に、『もう準備は完了した。後は出港を待つだけ』となってしまったら・・・、ああ。そう思うだけでも、ドキドキしてきた。

 実は、先述のように、わたしもこうした経験をもっている。事件・事故になったわけではないが、決断ができず、ずるずるひきづられてしまい気をもむ結果になった経験をもっている。今思い出すだけでも忸怩たるものがある。
 それだけに、こういう状態におちいったときは、勇気ある決断をされるよう、自省の気持ちも込め全国の現職の皆さんに切望したい。


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 ご両親はブログに、
『あまりに誠意がない。あまりに想いが通らない。そうしたことを繰り返し味わわされていると、これは、自分がおかしいのではないかという想いに襲われることがある。』
そんな意味のことも書かれていらっしゃいました。そう。こういう経験はわたしももっています。

 そういうとき、ブログは大きな力になりうるのではないでしょうか。想いを共有でき、寄り添うことのできる仲間。
 僭越ではありますが、カルロスさんが手を差し伸べてくださったのを契機に、そうした輪が広がればうれしく思います。わたしも微力ながら連帯できればと念じております。

rve83253 at 17:20│Comments(6)TrackBack(0)学校管理職 

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この記事へのコメント

1. Posted by カルロス   2012年05月06日 22:22
先生がこのように書いてくださって本当に私の役割が一つ果たせたように思います。私も気づくのが遅く気づいたときは本当に頭が狂いそうなぐらい自分を恥じました。ご家族の前で私たちはいったい何をしていたのだろうと思います。
先生の記事の重みと深み、そして、それでも足りない私たちの職責の厳しさを、先生にきちんと整理していただいて、私もあらためて勉強になり、反省させられています。
先生のご指導を賜りながら、私もご家族の方々をできる限り支援できればと思います。
ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
2. Posted by toshi   2012年05月07日 07:36
カルロスさん
 とんでもありません。わたしの方こそ、貴ブログに多くを教えられました。いつも本当にお世話になっております。ありがとうございます。
 カルロスさんのご要望もあり、また、わたし自身も同じ思いがありましたので、謝罪の気持ちも込めながらいただいたコメントを削除した部分もあります。申し訳ありません。お許しください。
3. Posted by カルロス   2012年05月07日 10:56
本当に先生には教えていただくことが多く、私自身の未熟さを痛感いたします。
こちらにもあたたかいコメントを賜り、恐縮いたしております。
ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
今後ともご指導のほど、よろしくお願いいたします。
4. Posted by toshi   2012年05月07日 17:17
カルロスさん
 申し出を受け止めていただき、ありがとうございました。なお、貴ブログへのコメントはむずかしくなかったのですね。画面認証とか出たものですから、むずかしいと決め込んでいました。大変失礼しました。
5. Posted by にさ   2012年09月06日 23:09
そんな事件をおこした小プロは、現在、将来小学校の教師の育成を行っている大学で教師になる学生に向けて宿泊体験学習の安全対策等を含めた実習を受け持っている。
なんとも複雑な気分だ。
6. Posted by toshi   2012年09月08日 17:46
にささん
 何ともはや、あっていいことでしょうか。考えられないですね。
 大津市の事件にしても、世論におされるまでは、おかしな雰囲気が漂っていました。一部だと信じたいのですが、おかしな教育行政はあとをたたないようです。

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