2013年03月31日

『子どもの自主性、主体性、自発性を養う教育』の実際(2) 〜お別れにあたり〜

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先日、ついに学級経営を終えた。数々の、子どもたちの成長の実感を残して・・・。

 冒頭からいきなり話をそらしてしまいます。すみません。

 以前からの読者の方はご存知だが、わたしの学級経営は当初、夏休みまで1・2か月のはずだった。しかし、当地域は相変わらずの教員不足傾向。それで、校長よりこの3月までの延長を依頼されたのだった。そんな経過をたどったので、わたしが今月末で終わることは保護者も熟知している。

 それで今月に入ると、子どもたちから、
「toshi先生は、ぼくたち、わたしたちが3年生になったらもういないのでしょう。」
と言われるようになった。
 「ええっ。ほんとう。」
といった驚きの表情もある。あら。あら。雲行きのあやしくなった顔もある。

 それらとどちらが先だっただろう。

 わたしが教室に向かうと、階段で、
「先生が来たぞう。」
「来たよう。早くしまえ。」
の声。わたしの動向の偵察隊が出現した。

 そんな子どもたちの、あわてたしぐさのなかに、わたしは入っていく。
「うわあ。先生、こっちへ来ないで。」
「見ないで。」
「・・・。」
「toshi先生、わたしたち、何やっていたか分かるう。」
「だめじゃん。Aちゃん。そんなこと言っちゃあ。先生には秘密なんだから。」
「そうだよ。そうだよ。」
 でも、みんなにこにこ顔だ。

 それからすぐ、朝の会や終わりの会で、Bさんたちの、みんなにはたらきかける声が聞こえるようになった。
「toshi先生に秘密の会のことなのですけれど・・・、Aさんがやっていることは、一人ではとても大変そうなので、一緒にやってくれる人はいますか〜。」
「CさんとDさんがやっていることなんですけど、もうかなり集まったようなのですが、まだ出していない人もいるみたいなので、その人たちは明日必ず出してください。」
「toshi先生にお願いがあるのですけれど、何をするのかはちょっと言えませんが、〇〇日ごろの3時間目と4時間目に、学活の時間をとってもらいたいんですけど、いいですか。」

 
 もう読者の皆さんにもお察しいただけると思うが、わたしもかなり理解はできた。年度の終わりにあたり学級は編成替えになるし、また、もうわたしはこの学校にいないしで、お友達やわたしとのお別れ会を計画しているのだろう。

 さあ。この事態に、わたしはどう臨んだか。

・わたしに秘密ということだから、その想いは大事にしてやりたい。それが子どもの自主性、主体性、自発性をさらに養うことにつながる。だから、『見ないで』と言われれば見ないし、『寄らないで』と言われれば、寄らないようにした。

・しかし、このままだと心配事がある。前記事に書いたような、連絡調整不足などからくるトラブルだ。

・また、子どもの秘密を大事にするということは、担任の意図的・計画的な営みがないことを意味するわけで、非常識なお金の使い方をしないか。どだい無理に決まっているようなことをやろうとはしないか。そんなところは気になるところだ。

 だから、遠巻きにしながらも、子どもたちの作業の様子、言動を注意深く見守るようにした。

 もちろん、子どもたちの要望である日時の確保はしてやったけれどね。


 一つ事件が起きた。

 なんか、遠くから見ているだけでも、Eさん、Fさんのやっていることが変ということは分かる。校庭でやることを考えているのではないか。
 聞くと、案の定そうだった。そこで、質問をした。
「ねえ。みんな。この会は、校庭でやることも考えているの。それだったら、校庭が使えるようにわたしはお願いをしなければならないので、秘密とのことだけれどこれは答えてほしい。」
「ええっ。校庭は使わないよ。」
「全部、教室だよ。」
「そう。そう。」
「ねえ。Eさん。Fさん。そういうことだ。校庭ではやらないって。」

 そこには、2人の憮然とした表情があった。気になったので、みんなの前で再度2人に質問をする。
 
「なんで、校庭でもやるって思ったの。そんな話し合いはしたの。」
「話し合いはしていない。でも、1年生のとき、校庭でもやったんだもん。」
「そうか。それで分かった。1年生のときやったから、2年生でもやるに決まっていると思っちゃったんだね。」

 そうしたら、他の子たちが口々に、
「そんなの変だよ。ぼくたちのクラスは、(1年生のとき)校庭ではやらなかったもん。」
「そうだよ。それに、プログラムにも校庭でやることなんか書いてないじゃん。」
「あっ。Gちゃん。プログラムは言っちゃあだめだよ。秘密なんだから。」

 けっきょく、Eさん、Fさんたちがやろうとしていることは、休み時間、任意にやってもらうことにした。それで一件落着。

 これは、わたしに秘密にしていることにかかわる。つまり、『学活』という授業時間をつかって学級全体で話し合うことができないわけだ。
 そのため、どうしても、意思の疎通に限りがあり、全体での共通理解が図りにくくなる。


 もう一つ。難題が発生。

 それは、前記事でもふれた個別支援学級のHさん(前記事の『その3』に登場するEさん)との交流にかかわる。

 担任のJさんには、こういう会が予定されていること。それは前もって話していた。それで、その会にはHさんも参加させてほしいというお話をいただき、了解していた。

 そんななか、直前になると、Jさんから質問されたのだ。

「toshi先生。どんな内容になるのか、教えていただけませんか。Hさんに参加は無理というものがないか。前もって把握しておきたいものですから。」

「あっ。そうですか。分かりました。でも、ちょっとこまったなあ。・・・。わたしには秘密ということでやっていますので、よく内容を知らないのです。

 それともう一つ。実は前、お別れ会とお伝えしたと思いますが、どうも、そうではないようなのです。ある子ども、それはKさんなんですけれど、『先生は、お別れ会、お別れ会って言うけれど、お別れ会じゃないんだよ。《toshi先生 ありがとう会》なんだよ。』ともらしてくれましてね。わたしはびっくりしたのです。ですから、そんな趣旨の会らしいのですが、それでもHさんにはいらしていただけますか。」
「ああ。それはまったく問題ありません。Hさんはtoshi級のみんなもtoshi先生も大好きですし・・・、そんなわけなので保護者も、むしろ積極的に、参加を望まれると思います。・・・。arigatohnokai

 そして、・・・そうなのですか。toshi先生への、ありがとうの会なのですね。そのことは、事前によくHさんに話して理解させておきます。」

 それで内容までは、分からないままでいいことになった。

 そう。またまた、話をそらすが、これまで2回あった個人面談では、Hさんの保護者とも面談していた。だから、一定の信頼関係はできていたといっていい。それでも、担任のJさんにそのように言っていただいて、わたしは大変うれしくなった。


 ここで、訂正が入る。ありがとう会の内容の件だが・・・、

 個別支援学級には4人の担任がいる。それで、Jさんは、同級担任の皆さんにこのことを話したらしい。そうしたら、『やっぱり会の内容は、事前に把握しておきたい。そうして、少しでも安心できる状態で参加させたい。』という結論になったのだそうだ。

 それもそうだ。そう思い、会の前日、子どもたちに言った。

 「『先生には秘密!』ということだったけれど、個別支援学級のHさんのことで、〜。
 そんなわけで、何をするのかは教えてもらいたいのだ。分かってくれるかな。」
「うん。いい。・・・。いいよな。みんな。」
「いい。いい。だって、Hさんにも来てほしいし。」
「賛成。Hさんに安心してって言いたい。」
「それにね。もう明日なんだから、toshi先生にばれたっていい。」
「いや。わたしは反対。Hさんだって、一緒に楽しくできるものばかりだと思うから、そう言ってくれればいいじゃん。」
「それなら、toshi先生に話すんじゃなくて、Bさんに(個別支援学級の教室へ)行ってもらって、BさんからJ先生に話せばいいじゃん。」

 あくまで『秘密』にこだわる子もいたが、もう前日になったのだから、何をするのかの中身だけならtoshi先生に話してもいいという結論になった。

ここでも、『子どもたちの心に寄り添い、納得を得る』ことを大切にしての指導を心がけた。そうすることによって、Hさんへの理解、Hさんとの共生の概念がより強化されたと思うし、事態に臨んで、どう身を処したらいいかという、『人としての生き方』をも学んだと思う。
 

 そう。そう。もう一つ、大事なことがあった。それは、先述の『校庭云々』にかかわる。わたしは子どもたちに言った。

「これまで、みんなの気持ちを考えて、わたしは、みんなの『秘密』を大切にしてきた。しかし、それだけに心配なことがある。それは、この前の『校庭』の問題は、前もって分かったからよかったが、会が始まってから、『ああだ。こうだ。』とトラブルが起きないかということだ。そうしたことが起こる可能性があるということ。これは分かってもらえると思う。

 そこでだ。そうしたことが起きたとして、会の最中、トラブルをめぐって話し合っている時間は絶対ないよね。そんなことをしていたら、いくら時間があっても足りなくなってしまう。
 だから、もしそうなったら、わたしに任せてほしい。わたしが、『こうしなさい。』と言ったら、すぐそうしてほしい。それでいいかな。」

 ちょっと不満そうな顔もあったが、Lさんだ。
「『toshi先生、ありがとうの会』なのだから、そこでけんかがあったら、toshi先生は悲しくなってしまうと思うから、それでいい。」
と発言し、すぐ『了承』の運びとなった。


 そんな経過をたどりながら、やっと当日を迎えることとなった。

 休み時間のうちから、Bさんたち数人の指示のもと、整然と机やいすを移動し始めた。教室の飾りつけも始まる。分担が決まっていたわけではないだろう。しかし、てきぱきとことは進んでいった。

 Bさんに、
「toshi先生は、そこに座っていてください。」
と言われる。

 続けて口々に、
「そうだよ。先生はね。黙って見ていればいいの。」
「けんかになったらね。・・・。お願い。」
「けんかなんかしちゃダメだよ。・・・。先生。絶対けんかしないようにするからね。」

 なんか、会が始まらないうちから、目頭が熱くなるのを覚えた。

 〜次回に続く。〜

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 前述の、トラブル発生時のことですが、これは危機管理の発想につながります。いくら、『子どもの自主性、主体性、自発性』と言っても、非常事態に際しては、のんびり話し合わせているわけにはいきません。これは強権発動も必要になります。ただし、子どもたちの了解はあらかじめとっておく必要があるということですね。

 学校運営レベルでも、同じことが言えます。校長の『強権発動』。あまりふだんから使ってはいけませんが、危機に際して素早い行動が求められるときは、絶対必要になります。

 さて、当日はどうなったでしょうか。わたしの強権発動はあったでしょうか。それでは、次回まで。


rve83253 at 11:17│Comments(4)TrackBack(0)学級経営 | 特別活動指導

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この記事へのコメント

1. Posted by yoko   2013年03月31日 17:23
お久しぶりです。
担任お疲れ様でした。
子供達にもtoshi先生にも、思い出深い月日になりましたね。「ありがとう会」のお話楽しみにしています。素敵な子供達ですね。もちろんtoshi先生も。
2. Posted by まさみ   2013年04月01日 15:54
いきなりの担任復活から、あっという間の1年近く。
そしてお別れはいつでも辛いものですね。
でも子供たちが成長していくためのハードルを一つ無事に飛ばすことができたのですから本当にお疲れ様でした。
今度お会いする時に、色々お話聞かせてください。楽しみにしております。
3. Posted by toshi   2013年04月01日 16:00
yokoさん
 うわあ。ありがとうございます。ほんとうにお久しぶりですね。お元気そうで、何よりです。
 20年ぶりの学級経営は楽しく充実していましたが、やはり感覚がにぶったことや老化(?)からくるボケ症状などもあり、学年の先生はじめ子どもたちに多大なる迷惑をかけてしまいました。
 思い出深いことは確かです。墓場までもっていきたい思い出がたくさんできました。

4. Posted by toshi   2013年04月01日 17:10
まさみさん
 すごい。うれしいなあ。
 約40年前巣立っていった、あのまさみさんですね。わたしの担任歴もすごく長くなったものです。
 もうすぐまたお会いしますね。よろしくお願いします。 

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