2006年02月01日

中学校長から学ぶ(1)5

 この時期になると、教育ブログには、卒業式に関する記事がぼちぼち出て来るようだ。わたしもこれから、おりにふれて、卒業式のことを書きたいと思う。

 わたしたちの地域では、卒業生が通う中学校の卒業式に、小学校長は必ず来賓として出席するが、これは、日本中どこでも行われているのかな。


 ここの中学校長は、問題行動の多い子から人気があった。信頼され、慕われていた。
 そういうことが、口コミで伝わるのだろう。この校長以前の卒業生、つまり、その時点でもう20代の卒業生まで、この校長を慕い訪ねてくるようになった。

 「ああいう子たちは、みんな、大変な家庭環境などを抱えています。かわいそうな子たちなのですよ。」
が口癖だった。そして、彼らの話をよく聞いてやっていたようだ。

 それだけではない。地域のお祭りには、はっぴを着て駆けつけ、地域の方、中学生と一緒になって、みこしをかつぎ、町中を練り歩いた。
「こういう場は、彼らがいきいきできる場なんですよ。彼らに対しては、『まちの方々には大変お世話になっているし、また、ご迷惑もかけているのだから、こういう行事は大切にしろよ。』と言っているのです。」
そうおっしゃいながら、中学生が多く参加するようになったのを喜んでいらした。

 わたしは、この校長と話していて、だんだん自分を反省するようになった。と言うのは、わたしは、話しかけてくる子には、積極的に対応したが、そうでない子には、こちらからはあまりふれ合おうとはしなかった。
 出会ったときは、挨拶程度の声かけはするが、その域を出ることはなかった。わたし自身から声をかけることは、その子どもに負担感を抱かせるからよくないと考えていた。

 しかし、この校長は、負担感を抱かせないで、彼らとふれ合うことを実践していた。やはり、日ごろのふれ合い、そして、そのなかで気心が分かり合えるように努力することは、大事なのだ。

 そして、退職までの1・2年だが、わたしは、そういう『かわいそうな子』とも、積極的にふれ合うように努めた。


 さて、卒業式の話題にうつろう。

 その中学校の卒業式が終わり、来賓控え室に戻ったときのことだ。
 校長が、来賓に向かって、参列の謝辞を述べていた。そのさいちゅうに、戸をノックする音。そして、見るからに、それと分かるかっこうの卒業生が、6・7人、思いつめたような表情で入ってきた。その場にいた来賓は皆、何事かと、不安な表情になった。

 すると、代表格の生徒が一人、校長に向かって、深々とお辞儀をし、
「校長先生。長い間、いろいろとご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。〜。」
一人一人がお詫びと感謝の言葉を述べていた。

 校長は、それを聞きながら、
「おお。分かった。分かった。君たちの気持ちはよく分かった。大変うれしいが、ここは来賓の方々がいらっしゃる場だ。あとで、校長室にいらっしゃい。そこで少し話しようよ。」
そう言って手を振った。

 彼らが退出すると、来賓から一斉に、何とも言えないどよめきが起きた。
「よかったなあ。感動したよ。はじめは殴りこみに来たのかと思った。」
そう冗談をおっしゃる方もいた。


 この校長のすごいところはまだある。卒業証書授与のとき、卒業生一人一人に声をかけていることだった。それは、わたしのように、ただ単に、『卒業おめでとう。』などというのとは違って、卒業生一人一人のことをよく把握し、それぞれの子どもに合った声かけをしているのだ。それは、授与の様子を見て分かった。

 小学校とは違い、200人弱もいる卒業生だ。その一人ひとりにというのは、すごいことだと思った。

 最初のころこそ、校長の声かけに、でれでれしたり、斜に構えたり、横柄な態度で卒業証書を受け取ったりする子もいたが、年々、卒業生の態度がよくなっていった。

 わたしにとって最後になった卒業式では、校長の声かけに、こみ上げて来るものがあるのか、涙ぐむ子が続出した。

 歌がまたよかった。小学校と大きく違うのは、男子の声だ。あの低音が胸に響いた。

 式後の来賓の声が、式の感動を表していた。すばらしい中学校になったことを皆さんが喜んでいらした。

 わたしも、その思いはあったが、校長の声かけに学ばせてもらおうと思った。我が小学校の卒業生は、70人くらいしかいない。できなくてどうする。そう思った。

 幸い、わたしだって多くの子の把握はできている。そうでない子については、担任から聞いたり、卒業文集を読んだりすれば、語りかけたいことは出てくるはずだ。そう思って、実践してみた。

 最後の2年間だけだったが、保護者が大変喜んでくださり、ありがたかった。


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  (2)へ続く。


rve83253 at 03:44│Comments(5)TrackBack(0)学校管理職 | 子どもと管理職と

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この記事へのコメント

1. Posted by 笑い上戸   2006年02月01日 11:08
こんにちは
今日のお話好きです。
学校って、先生方が考えているよりももっと、もっと大きな何か(人生に対して)を持っていると思います。
人生のはじめの一歩ですものね、小学校、中学校が。
2. Posted by 奈々氏   2006年02月01日 22:27
 うちの校長先生も小学校ですが,10名以上に一人ひとり声をかけます。また,保護者の方の名前も私よりも知っているかもしれないぐらいです。日ごろの子どもとのふれあいを大切になさっていますので,卒業式には声をかけられると思いますが。。。中学校の200人の生徒に一人ひとり声がけをするというのはすごいと思います。
3. Posted by 奈々氏   2006年02月01日 22:28
訂正です。><

10名以上>100名以上です。
4. Posted by toshi   2006年02月02日 05:14
笑い上戸さん。
 この学校は、卒業生の部活における活躍など、よく、小学校にも教えてくれました。
 小学校の先生も、注目してくれていると分かると、さらにまた、張り切るようでした。
 いい循環が起こるのですね。
5. Posted by toshi   2006年02月02日 05:16
奈々氏先生。
 名前を覚えているということが、すばらしいですね。わたしはこれが苦手で、毎日顔を合わせていないものですから、覚えたつもりなのに、忘れてしまうということが、よくありました。

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