2006年03月04日

育つ初任者(2)4

2dc4d410.JPGこの表題は、ほんとうは、『育つ子どもたち』とすべきかもしれない。
 しかし、わたしの立場からみると、それは、初任者が育ったがゆえということで、この表題にさせてもらった。

 今日の話題は、5年生。算数の授業である。
 そして、例の、数年前、学習内容の削減で話題となった円周率をとり上げている。小学校では、円周率は『3』として扱うという、マスコミ等で大々的に宣伝された(?)学習内容である。その論調が、まったくの誤解であることも分かるであろう。

 
 とても楽しい授業だった。子どもだちの実証的な取組に拍手をおくりたくなった。

 はじめに、担任が、
「直径と円のまわりの長さとの関係を調べてみたいと思います。どうしたら調べられると思いますか。」
と問いかけた。

 しかし、わたしは、直径とまわりの長さとの間に関係があるかどうかが、まずは問われるべきではなかったかと思った。

 そして、その関係を、どうやったら見つけられるかが話し合われた。子どもから、『紐を巻けば円周の長さを調べられる。』『紙と輪に点を付けて、一周まわしたところで、また、点を付ければいい。そうすれば、円周の長さが測れる。』
などという意見が出た。

 この辺りでは、フィルムケースのふたとか、トイレットペーパーの芯とか、そのくらいの大きさのもので測るイメージだったようだ。
 でも、子どもから、『もっと大きな物で調べたいよ。』『一輪車がいいんじゃない。』などという声も起きた。学習が楽しくなった。

 そのときだ。これまで黙っていた子が、
「円周率、円周率ってよく言うけれど、それで、3、14だっていうことも分かっているけれど、いったいどういう意味なんだ。」
ぽつんとさりげなく独り言のように、しかし、それにしては大きな声で言った。

 担任は、
「それをこれから勉強するのだよ。」
と、さりげなく言ったが、これはもっと感動してほしかった。
 この子は、単に知識として持っている『円周率』を、もっと実感的に、どう役立つものなのかも含めて知りたがっているのだと思った。
 また、まだ、比例の概念のない子どもたちだけに、たとえば、小さい円でも、校庭いっぱいに描いた大きな円でも、直径と円周の比率は一定とは思っていないのかもしれない。そう思った。

 そして、教室に一輪車が7台持ち込まれた。ここで感心したのは、あるグループの活動だ。文字通り試行錯誤が見られた。というのは、一輪車は、車輪の中心がでっぱっているので、測りにくいのだ。

まずは、そのでっぱりの周辺から、タイヤのついている金属の部分までを測っていた。
これでは半径にならないと言いながら、次は、タイヤの外側までを測る。
これでは、車輪の中心にまで届いていないと言いながら、中心までテープをもっていく。
しかしそれでは、車輪を斜めに測っていることになるから、まだ、正しく半径を測ったことにはならないと言い、さあ、ここでこまったようだった。
一人の子が板を持ってきた。それをタイヤに当てる。そして、車輪と板が直角になるように気をつかいながら、その板と車輪の中心へとテープをわたした。さらに、テープがピンとはること、また、車輪と平行になるように気をつかっていた。

 子どもたちの満足そうな表情を見て、わたしは、思わず、言ってしまった。と言うのは、担任はその場にいなかったからだ。
「すごいよ。君たちのやっていることは。もう、感動だよ。初めっから今のようにやっていたら、それほど感動はしなかったと思う。『ああ。測り方を知っているな。』と思うだけだからな。
 でも、君たちは、そうではなかった。初めはこんなふうに測っていたのだよな。それをだんだんほんとうの半径が測れるように修正していった。それがすばらしいのだ。」

 まさに、自力解決、そして、グループでの試行錯誤という意味で、練り上げをやっていたことになる。

 このようにして、円周率を求めていったが、後で思った。最初に、イメージしていたフィルムケースなどでも測ってみればよかった。そうすれば、どんな大きさの円でも、3,14に近い数値が出る、つまり、一定であることに気づいたのではなかろうか。


 後日、算数研究会のベテランに、この感動を話した。
「初任者の学級だが、その担任は、すばらしい子どもを育てているよ。」

 すると、その教員が言うには、
「すごいですね。
 でも、わたし、その逆を見たことがありますよ。ちょうど自力解決の場面だったのですけれど、みんなが一生懸命円周や直径を測っているときに、一人だけ、『もうできた。わかった。』と言って悠々としているのです。ノートを見ると、それぞれ、直径、円周の長さが書かれていて、それを割って、3,14って書いてありました。」

 それで、その教員は、わざとびっくりしてやったのだそうだ。
「すごい。これは、奇跡よ。ぴったり3,14になるなんていうことはめったにないわ。」
その子は、きょとんとした顔をしたそうだ。

 そう。上記初任者の授業だって、いろいろな数値が出てきた。測り間違いは別として、だいたい、3,03くらいから、3,30くらいの間に分布したかな。

 実際に測って見れば、3,14になることはめったになく、数多く測り、その平均を出すことによって、限りなく3,14に近づくのだということをこの子は知らなかった。もう、3,14になるものと決め付けていた。

 それで、直径だけ測り、それを3,14倍して円周を出し、あたかも、直径と円周で、3,14が出たかのようにノートに書いたのだった。

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   (3)へ続く。

rve83253 at 23:48│Comments(5)TrackBack(0)算数科指導 | 初任者指導

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この記事へのコメント

1. Posted by 大山虎竜   2006年03月05日 10:23
5 おお、いい授業ですね。
指導教官としてのtoshi校長先生の力量の高さが容易に伺えます。
分かる喜び、できる楽しさを大事にしていきたいでうすね。
教師って、人が成長する姿を見ると幸せを感じる職業ですね。
人間が好きだから、やっていえる仕事ですね。
2. Posted by アロマぽっと   2006年03月05日 14:44
ちょうど我が娘が小5なので、娘のクラスと重ねながら、読ませていただきました。
初任者の先生でも、こんなにすばらしい授業ができるのですね。
娘に受けさせたいですよ。
子どもの成長に寄り添った授業。
先生も子ども達もお互いに育ち合えて素晴らしいです(^^)v
初任者指導をされている先生が、みんなtoshi先生のようにあたたかな眼差しをもった先生だったらよいのになぁ。
それにしても、地域によって、学校によって、随分授業の質が違うように感じてしまうのですが・・・
3. Posted by toshi   2006年03月05日 16:55
大山虎竜先生
 おっしゃる通りですね。子どもの伸びようとする心に接していると、わたしのような年の者は、若さのエキスを毎日もらっているような気になります。これは、初任者も一緒です。たまに子どもの前でえばっている初任者もいますが、そうでなく、子どもとふれあいながら伸びていく初任者からは、やはり若さのエキスをもらっているような気持ちになります。
4. Posted by toshi   2006年03月05日 17:01
アロマぽっとさん
 初任者は、なかなか子どものよさに気付かなかったり、見ていなかったりすることがありますから、その辺の気付きを大切にしています。
 地域によって、学校によって、授業に質の違いが出るというのは、これは、認めないわけにはいきませんね。やはり、あります。
 愛情を持って工夫し、向上を求める教員でありたいなと思います。
 教育についても、地域、各学校の風土といったものがありますから、これについては、初任者ではどうしようもなく、管理職のリーダーシップが求められるところだと思います。
5. Posted by 教心ネット   2006年03月07日 03:10
>小学校では、円周率は『3』として扱うという
>まったくの誤解であることも分かるであろう。
円周率が3になったというのはホントにとんでもない誤報でしたね。いまだに、ちまたでは「円周率を3にするなんて、ゆとり教育はけしからん」ということを言う人が少なくないのは驚きです。

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