2006年03月22日

皆、教育者4

5d7ba99f.JPG 今は卒業式シーズン。この季節になると思い出すのは、むかし、わたしが勤務した学校の卒業式だ。

 特長的なことはいくつかあったが、今日はそのうちの一つ。生花について。

 用務員さんが、式の数週間前に校庭の桜を枝ごと切り取り、用務員室で温度管理をする。そして、卒業式には見事に満開の状態にしてしまう。その他、各種草花、桜の太い幹一本、ドラム缶を半分に切った物などを用意して、舞台を飾る。それはもう、天井に届くかといわんばかりに仕上げる。

 式開始数分前に幕が上がる。すると、式に参列する誰もが、この『作品』に圧倒される。それだけの豪華さ、迫力をもっていた。これは用務員さんの誇りだった。
 
 この用務員さん(Aさん)は、ある年、飼育小屋の改修工事をしてくれた。こんな大変なことは、業者に発注してもよかったが、Aさんは、『こんなことぐらい自分でやる。』とおっしゃって、がんばった。昔かたぎというか、いい意味の頑固さをもち、骨身を惜しまなかった。


 以下は、飼育小屋が完成した後で、Aさんから聞いた話である。もっとも、以下の話に関わる光景は、わたしも断片的に見ていたから、まったく知らなかったわけではない。
 
 この話には、数人の子どもが関わる。
 初めは、『Aさん、何やっているの。』と言って、作業の様子を見守っていた。
「飼育小屋を作っているのだよ。あっちこっちこわれかかっていて、台風でも来れば、ひとたまりもないからね。」
「ふうん。大変だね。いつごろできるの。」
「さあ、わからないなあ。他の仕事もたくさんあるからねえ。1ヶ月くらいかかるかなあ。」

 だんだん、そばに寄ってくる子どもがふえていった。
 しかし、そのうちに、材木を運んだり、Aさんが木を切ろうとすると、その端を押さえたりして、手伝うようになった。

 そんななかで、Aさんと子どもたちは、日ごとに親密さをましていった。

「いつもそうやって手伝ってくれるのはありがたいが、早くおうちに帰らなくていいのかい。おうちの人が心配するのではないかな。」
「うん。大丈夫だよ。今日もAさんと一緒に飼育小屋作りをするから、遅くなるって、お母さんに言ってあるから。」

 Aさんが驚くと同時に感激したのはその数日後だ。
「用務員さん。悪いんだけれど、明日は、ぼく、おうちの都合で学校を休まなければならないんだ。だから、このお仕事もできないので、ごめんなさい。」
そう言ったという。

 「いやあ。驚いちゃったよ。・・・。一緒に何人もの子が、『手伝って』くれていると、わたしは思っていたのだ。その点は、ほんとうによく手伝ってくれたよ。何人もやってくれていたが、この子だけは、ほとんど毎日だった。そうしたら、『明日は来られない。』とわざわざ言いにきてくれただろう。もう、参ったよ。完全に自分の仕事と思っているのだね。」

 ほんとう。もともと、やらなくていいことだ。Aさんの仕事をおもしろそうと思ったかもしれない。仲良しの友達を誘いもしたのだろう。初めは、そこまで、のめりこむとは自分でも思っていなかっただろう。そして、仕事をしだしても、初めはやはりお手伝いの気持ちだったのではないか。
でも、やっているうちに、自分の仕事という意識になったものと思われる。

 この子は、飼育小屋完成まで、とうとうやり通した。

 Aさんが驚いたのは、もう一つ。いろいろ教えることもあったようだが、ほんとうにこの子は、腕に自信をつけたようだ。


 わたしは自分が校長のときに、教職員に言ったことがある。日ごろの、用務員、調理員の、子どもを思う気持ちを具体的事例を通して話しながら、最後に言った。

「用務員さんも調理員さんも、職場を学校としている限り、子どもとのふれあいはあるでしょう。ですから、学校で働く人はみな立派な教育者なのです。」

 
 さて、調理員に関わることは、もうすでにこのブログに書いている。再度ご覧いただければと思う。

 また、本記事とは内容がまったく異なるが、子どもの『仕事』という意味では、微笑ましい記事が、わたしのホームページにものっている。ご覧いただけたらありがたい。後半の、『生活科の一こま』の方である。


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rve83253 at 00:50│Comments(8)TrackBack(0)子ども | 子どもと級外職員と

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この記事へのコメント

初めまして♪
家庭教師をやっていますMと言います!
ブログランキングから遊びに来ました!
最初は手伝いだった仕事を自分の仕事だと考え、「明日は来られない」とわざわざ言いに来てくれるなんて、感動します。
僕が、用務員さんの立場だったら、感動も半端じゃないでしょうね(^^)
本当に驚きです。
また、遊びにきます!
2. Posted by ぷあママ   2006年03月22日 12:09
初めまして!ブログ村からやってきました。
現在2児の母ですが、ずっと夢だった
養護教諭を目指して、今年再チャレンジするものです。
ブログ、ホームページ読ませていただきました。
教員を目指すものとして、とても役に立ち、
また、子どもたちとのエピソードの数々に
感動しました☆
用務員さんとのエピソードも感動です。
学校に勤めている限り、誰もが教育者、そのとおりだと思います。
また遊びにきます!
3. Posted by スモッカ   2006年03月22日 14:23
なるほど、先生以外はなかなか接する事が
ありませんでしたが、こういう事もあるのですね。



4. Posted by マーガレット   2006年03月22日 16:52
はじめまして
ブログランキングからとんできました。

教育実習の時に 指導教官から始めに言われたことは
「そこの学校の影で働いている方から 学びなさい」ということでした。
本当に用務員さんや 事務の方の仕事振りこそ専門職だな と感じたことが多かった気がします。
子供たちもそういうところ よく見ていますよね。

素敵なサイトに出会えました。
また遊びに来ます♪
5. Posted by toshi   2006年03月22日 21:01
Mさん。コメント、ありがとうございます。
 19日のブログ、『あこがれの先生(1)』で述べたように、このころなのですが、道徳の研究をしていました。それで、本日の記事のエピソードを使って自作教材とし、授業をしたことがあります。
 自作教材は、もう一つあり、それも、いつかは記事にしましょう。
 どうぞ、これから、よろしくお願いします。
6. Posted by toshi   2006年03月22日 21:20
ぷあママさん
 初めてのコメント、ありがとうございます。
 2人のお子さんのお母さんで、養護教諭を目指していらっしゃるとのこと。すごいなあと思います。
 うちは、17日の記事にも書いたように、妻は養護教諭でした。長女が1歳のときに退職しましたので、ちょうど反対になりますね。
 どうぞ、夢がかなうことを祈っています。
 今後とも末永く、よろしくお願いします。
 
7. Posted by toshi   2006年03月22日 21:30
 スモッカさん
 いつもお世話になります。ありがとうございます。
 用務員さん、調理員さんとも、子どもとふれあうのが職務ではありませんが、子ども大好きの方だと、子どももなついていきますね。
 今日の記事のようなことは、わたしの経験の中でも、いくつかはあります。
 これからも、時々紹介させていただきますね。どうぞ、よろしくお願いします。
8. Posted by toshi   2006年03月22日 21:37
マーガレットさん
 初めてのコメント、ありがとうございます。
 おっしゃること、よくわかります。ほんとうに、子どもは、大人の生き方から、いろいろなことを学んでいるのだと思います。うそ、ごまかしはすぐ見抜きますね。こちらも真剣であることを要求されます。
 どうぞ、これから末永くよろしくお願いします。

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