2006年05月05日

平和教育(1) 朝会の話4

2b1f9495.JPG  いつもよりは長くなるので、この話をするときは、児童全員、体育館の床にすわってもらった。

 毎年、この時期になると、戦争にまつわる講話を行なった。退職した今でも、『今年はどんな話をしようか。』と、思いをめぐらせたことを思い出す。

 わがまちは、61年前のこの時期に、大空襲があった。それで、校長は、平和教育にかかわる講話をすることが慣例となっている。

 「わたしは、戦争がまだ終わらないうちに生まれました。わたしが生まれて7か月後に、日本は戦争に負けて、戦争が終わりました。
 だから、わたしは、戦争中あかちゃんだったわけで、戦争の記憶はありません。でも、わたしが、みなさんと同じ小学生だったころは、両親から戦争に関する話をいっぱい聞きました。

 空襲警報と言ってね。まちじゅうに響くサイレンが鳴るの。それはね。『アメリカの飛行機が来るぞ。焼夷弾をいっぱい落とすぞ。だから、防空壕に早く逃げろ。』っていう合図なの。
 そうすると、みんな家の電気を消して、防空壕に避難します。母の話では、わたしは母におぶさって避難したことが何回もあったようですよ。でも、そのころはまだ小さな空襲で、家が何十軒か、焼けるくらいだったらしい。
 だけど、大空襲と言って、一度の空襲で、まちが全部焼けてしまうような空襲が日本中にあったので、このまちもすぐそうなるのではないかと両親が心配し、わたしが生まれて2か月後の3月に、親戚の家に疎開しました。

 わたしの父は、わたしと同じで、学校の先生だったから、もうとっくに学童疎開と言ってね。自分が勤めていた学校の子どもたちを連れて、遠くに疎開していました。だから、わたしは母と二人だけで、このまちに住んでいました。

 でも、3月に親戚に疎開するときは、父は休みをもらって、帰ってきました。そのとき、初めて、あかちゃんだったわたしの顔を見たのだって。もう生まれて2か月たっていたのだよね。
 引越しをしたわけだけれど、荷物はね、食器や炊事道具や服など、わずかしかなかったようです。戦争中は、日本中、みんな貧しかったし、食べ物も少なかったから、引越しも簡単だったらしい。小さな荷車を引きながら、引越しをしました。

 そして、わたしが生まれて4か月たったときに、アメリカ軍の飛行機が500機くらい飛んできた。焼夷弾をたくさん落としたので、まちじゅうの家が焼かれてしまいました。まちが全部火事になるのですから、それは大変です。
 高学年の子は分かると思うけれど、熱くなった空気は上へあがるでしょう。そうすると、そこへ冷たい空気が流れ込む。その風は、電柱を倒しちゃうくらい強く吹くの。それが火のついた風だからね。逃げても、逃げても、火に包まれてしまう。それで、一万人くらいの人がなくなりました。
 一万人ていうとね。今、このA小学校の子どもの数は、500人くらいですから、A小学校が20校集まったくらいね。それで、一万人になるね。そのくらいの人が、わたしたちのまちでなくなってしまいました。

 戦争って、ひどいよね。・・・。でもね。日本だって、中国っていう国などに、そういうことをしたのです。このあたりは、6年生になると、社会科で勉強しますから、なぜ、戦争なんて起きるのか、どうすれば、戦争などしないですむのか、しっかり勉強してほしいと思います。


 わたしが学級担任だったとき、わたしのクラスの子は、戦争について勉強すると、よく言うことがあったの。
「なぜ戦争なんてするのだろう。死ぬに決まっているのに、死んだら何にもならないのに。」
ってね。皆さんのなかにも、そう思っている人はいると思います。

 ほんとうにね。なぜ、戦争なんてするのだろうね。

 でも、わたしは、これは、子どもの皆さんにも分かることではないかなと思っています。
 と言うのはね。どうでしょう。みなさんのクラスは、みんななかよし。どのクラスもすばらしいクラスと思っているけれど、それでも、気に入らないことがあったり、頭にくることがあったりすると、けんかになることはあるでしょう。

 そういうとき、どうですか。『腹がたつ。あんなやつ、いなきゃいいのだ。』と思うことはありませんか。人間、思うのは仕方ないし、思うだけで済ますならいいのですが、それを、態度に示したり、表情に出したりすることはありませんか。そして、もっとひどければ、そんなことを口に出して言ってしまうことはないでしょうか。

 そういう心が、戦争に結びつくのだと思います。一人と一人ならけんかだけれど、それが国と国となると、『腹がたつ。あんな国なくなればいいのだ。』そう思うと、戦争になるのではないかと思います。

 だから、今のみんなは、どんな人とも仲よくふれあえること。それが大切だと思います。

 速く走れる子は、遅い子に、『もっと速くしろよ。』って言ってしまうことはありませんか。
 跳び箱、7段跳べる子は、4段しか跳べない子に、『何だよ。へただな。』って言ってしまうことはありませんか。

 さっきも言ったけれど、思うことは仕方ない。思っちゃうんだからね。でもね。そう思ったとき、『あっ。いけない。変なことを思っちゃった。』って、反省できたらいいのだと思いますよ。

 そういう子は、遅い子に対しても、遅いままでなかよくできる。4段しか跳べない子に対しても、そのままでなかよくできる。そして、4段の子が5段跳べるようになったとき、一緒に喜んであげられる。みんながそういう心になったら、戦争なんか絶対おきない。そう思います。」


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rve83253 at 22:27│Comments(11)TrackBack(1)子どもと管理職と | 平和教育

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1. これでいい これがいい  [ 青空のもと、今日も元気に! ]   2006年05月08日 09:37
toshiさんのこの記事を読ませて頂きながら、息子との暮らしにふと思いを巡らせました 息子は、毎日、がんばっています一生「完治」することはないらしいハンディはありながらもよく食べ、よく遊び、よく学び、よく眠り、身長も体重もまだまだ当分は右肩上がりを続け...

この記事へのコメント

1. Posted by 今日   2006年05月06日 19:01
とっても、分かりやすい「平和教育」のお話ですね。

このようなお話でしたら、すべての子が、いちどで、分かって、しまいますね。
ここにも、真の教育改革がありますね。

このような話、教育の財産ですね。
有難う御座いました。


* 本日は、ご丁寧なコメント、有難う御座いました。
研修の大切さを書いていましたが、とっても、有益な情報で、感謝しております。
TB、させていただきます。
2. Posted by kei   2006年05月07日 02:24
toshi先生のお話は、心の中にすとんと落ちます。先生の信念を先生自身の言葉で語ってくださっているからだなあと感じます。こんなふうに朝会でお話をいただけたら子どもたちは幸せですね。
「思うことは仕方ない。」という言葉が特に身にしみました。「思ってはいけない。」なんて言われたら、きれいごとの話になってしまいます。思っても口に出す前に、「果たしてそれでいいのかな?」と自分自身に問い直す力を私もつけていきたいなと思います。その生き方が、目の前にいる子どもたちに伝わっていくのではないでしょうか。
3. Posted by toshi   2006年05月07日 06:04
今日様
 ありがとうございます。実物を用意して話したこともありました。わたしが勤務した学校のなかに、校舎改築の際、校庭から大量に焼夷弾の外枠が出ました。それを見せて話したこともありました。

 話は変わりますが、今日様のブログ『日本の教育は、これでよいのかな』とリンクさせていただけるでしょうか。

 『文科省も方針を変えた。』という、今日様の記事には、うれしさを感じました。
4. Posted by toshi   2006年05月07日 06:19
keiさま

 お久しぶりです。現場はいかがですか。なつかしい思いもあるではないですか。お元気にご活躍ください。

 自分で自分を客観視できる力、感情のおもむくままでなくですね。そういう力を養うことは、今の時代、特に大切なのではないでしょうか。

 そんなことも意識して話させていただきました。
5. Posted by aoisora   2006年05月08日 09:43
こんにちは
戦争は嫌、という気持ちは大勢の人が持っていると思うのですが、じゃあ自分に何ができるか、というと、大きいことなんてとてもできるものではないし、、、という思いが、自分にはありました。でも、普段の自分の身近な暮らしの中に、できることはこんなにいっぱいあるんだよ、ということを、教えて頂いたような気持ちです。とても素敵なお話だと思いました。ありがとうございます。
6. Posted by toshi   2006年05月09日 05:34
aoisoraさん

 コメントとTB、ありがとうございました。

 『これじゃなきゃいけない。』
 そう思うのは自由ですが、それが妥当性のあるものか。それを自分で判断するのはむずかしいですよね。一人よがりだったり、価値が時代とともに変化したりするからです。
 あと、こうやってコメントのやりとりをしていても、話をかみ合わせてくれないとき、一例ですが、枝葉の部分にこだわって、記事全体を見てくれないときなどは、むなしさを覚えますよね。
 
 ただ、むずかしいこともありますね。自分は、何もしていないのに、相手から一方的にけんかをうられることもあるからです。国同士でも、そういうことがないとは言えないような気がしています。
7. Posted by aoisora   2006年05月10日 08:08
おはようございます

私の方にもコメントを残して頂いて、ありがとうございます。

同じ記事を見ても、人によって心惹かれたりひっかかったりする場所もいろいろあるということなのでしょうね。私の場合は、toshi先生のお話を読ませていただいて、目から鱗、、なことが本当に多くて、こういったやりとりをさせて頂ける事が、実際の暮らしの中の前向きパワーのエネルギーにもつながっている、と感じているんですよ。

むなしさも、時には感じていいものですよね。感じちゃうものですから(^^)ね、先生。

疲れた時は休む、でも、あきらめはしない。それでいいのかな〜、と思い始めた私です。

8. Posted by toshi   2006年05月10日 20:22
aoisoraさん

 いやあ、ほんとうに、aoisoraさんのおっしゃる通り。人によって、心惹かれたり、引っかかったりはさまざまですね。
 でも、それを知るのもいい勉強。このブログをはじめてから、だんだんそういう気になってきました。やはり、成長させてもらっているのだという感じがします。
 
9. Posted by 今日   2006年05月11日 05:20
返信、遅れてしまいました。
ごめんなさい。

リンク、光栄です。

こちらも、させて戴きます。
「良く行くページ」に入れさせて戴きます。
10. Posted by mihoko   2015年09月15日 23:16
記事を読ませていただきました。
大変勉強になるお話でした。
私も、7~8月は戦争をテーマに絵本の読み聞かせをしています。
身近な事柄と結び付いたお話しは、子供たちも理解しやすかったことと思います。
明日、娘たちに、伝えようと思います。
ありがとうございます。
11. Posted by toshi   2015年09月19日 17:25
mihokoさん
 リンク先記事をお読みいただき、ありがとうございました。
 強行採決により、違憲の可能性の高い法案が通ってしまいましたね。戦争する可能性が高まったというしかありません。この上はどれだけ国民がノーと言い続けられるかだと思います。国民の覚悟が改めて問われます。
 わたしも未来の国民をはぐくんでいるのだという覚悟をあらためて感じさせてもらいました。
 お嬢さんにお伝えくださるとのこと。大変ありがたくうれしく思いました。

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