2006年03月25日

育つ初任者(5)

645303518_235 今回は個別支援級担任の初任者にふれる。Aさんだ。

 何度も書いて恐縮してしまうが、Aさんは、個別支援教育について専門的に学んだことはない。指導する立場のわたしにしても同様だ。わたしの場合は、担任歴もない。

 それで、師弟同行、まさにともに歩む感じで実践している。

 幸い、教頭は個別支援級担任歴が長かった。そういう意味では、わたしたちは、いろいろと教わることができる点、ありがたかった。


 Aさんは、1年生の担任である。2名の児童がいる。どちらも自閉症傾向とのことだった。

 初めは疲れただろうと思う。ただでさえ、就職したては、すべてが初めての経験だから、四六時中緊張感に襲われる。それにくわえ、気づかぬうちに教室をとび出してしまう子どもの対応に追われがちだ。

 4月終わりごろ、教室をとび出すことについて、『教頭先生に相談してみよう。』と言ったことがある。

 得るものがたくさんあった。たとえば、
「逃げる子をむやみに追っても、さらに遠くへ追いやるだけよ。担任は立ち止まり、手招きして、『こっちへおいで。』そのようにして、相手を来させるようにした方がいいわ。」
などという助言は、わたしも大いに勉強になった。ついわたしも追いかけていた。

 なお、教頭先生の指導について、くわしく知りたい方は、下記のリンク先をクリックしてください。一番下の『Yへの指導』に、それが載っています。

学級づくり


 そんな経緯のなかで、Aさんはだんだん対応が上手になっていった。

 やはり、ほめることが一番。『すごい。』『やったね。』『うわあ、うれしそう。』『がんばったね。』そういう言葉かけがものすごく大事だったし、できるようになった。

 Aさんは、ベテラン教員から、そうしたことの一つ一つを学んでいった。いや、子どもがいる間は、ベテラン教員と一緒にいることが多いから、無意識のうちに学んでいたとも言える。

 個別支援級は時間の流れがゆったりしている。子どものペースに担任は合わせざるを得ないし、自然に根気強く待つ姿勢になった。

 このゆったり感は魅力的だった。気づいたことをノートにメモし、放課後、それを見ながらAさんに話すわけだが、個別支援級の場合は、ノートに記入する間隔がかなりあくようだった。そして、じっと子どもの動きを見守ったり話にのったりすることが多かった。

 
 7月ごろだった。駅までの道を歩いていたら、一人の保護者に呼び止められた。

 お子さんが兄弟で個別支援級に通うBさんのお母さんだった。わたしを見て、思わず話しかけたくなったようだ。

「toshi先生。こんにちは。ちょっといいですか。・・・。」
 
 わたしは何か苦情を言われるのかと思った。しかし、それにしては、にこにこしていらっしゃる。

「A先生は、先生になられたばかりって聞いたのですが、ほんとうですか。」

「ええ。そうですよ。・・・。何か?」
 
「いやあ。先生になられたばかりにしては、すごいなと思いましてね。」

「ああ。ありがとうございます。そんなふうにおっしゃっていただけると、うれしいですよ。」

「だって、親のわたしだって、子どものすることにはいらいらしてしまうことが多いのですよ。それなのに、A先生は、わたしよりかなりお若いはずですよね。だけど、すごく根気強く見守ってくださるのですよね。なんか、最近は、わたしのお姉さんのように見えることもあるのです。」

 わたしは丁重にお礼を言い、さらに、わたしも、わたしが感じているAさんのすばらしさを話した。

・根気強さに含まれると思うが、同じことの繰り返しでも、何度も何度も、丁寧に指導にあたっていること、

・話しかけるのが自然なこと、子どもがやる気になるような言葉かけができるようになったこと、

などを話した。


 そして、駅への道に曲がろうとしたら、なお、わたしにくっついて来た。『あれっ。Bさんの家はこちらではないはずだが。・・・。』そう思ったら、

「toshi先生は、先生になられたばかりの先生をご指導なさっているのですか。」

「ええ。そうですよ。」

「そのtoshi先生が、うちの子たちのクラスにもいらっしゃるから、A先生は、先生になられたばかりなのかなとも思ったのです。

 でも、それにしては、しっかりしていらっしゃるから、ほんとうにそうなのかなって不思議だったのですよ。」

 そして、『さようなら』の挨拶をすると、もと来た道へ戻って行った。

 『うわあ。それを言うために、わざわざ、わたしについていらしたのか。』

 今度は、ものすごく感激の思いにおそわれた。


 次の日、A先生に会うと、わたしはすぐ、その報告を、A先生にだけではない。個別支援級の担任全員に言った。


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rve83253 at 15:26│Comments(9)TrackBack(0)個別(特別)支援教育 | 初任者指導

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この記事へのコメント

1. Posted by にしこ   2006年03月25日 22:09
「個別支援学級の担任に一番必要なのは子どもに接するセンスなのかもしれない。」
以前、ある掲示板で個別支援学級の担任の先生について教えて頂いたことです。
「(障害の)知識が豊富でもセンスがないと、子どものありのままの姿を見ることが難しい」というお話もありました。
この『センス』という言葉は、子どものありのままの姿を見る力とそれに合わせていく力なのかもしれません。
知識が豊富な事よりも、子どもと接する『センス』の方が大事だと私も思っています。
(もちろん知識もあってセンスもある先生が一番理想ですが)
そういう意味でA先生は、子どもと接するセンスのある方だったのでしょうね。
toshi先生のお話でA先生がとても素敵な先生だという事が伝わってきます。
2. Posted by hirarin   2006年03月26日 03:15
A先生の温かい人柄が個別支援学級の子どもにもしっとりと伝わり、保護者にも響いたのだと思います。
私も個別支援学級の子どもたちと毎日廊下で接していますが、寝不足だったり、不機嫌だと、すぐにその子にばれてしまいます。教育の一番大切なところに気付かされます。
私のブログにもコメントいただきありがとうございました。
ついに異動が決まりました。
2年間大学院に内地留学してきます。
「学び合う教室」の文化について研究する予定です。
また勉強させてください。
3. Posted by venus_san   2006年03月26日 08:10
こんにちは
私もセンスが大事だと思います。
でもこのセンス・感性というのは
目的意識があるか無いかで
大きな差が出ると思います。
A先生は多分バランスの取れた方
だったのでしょうね
4. Posted by Hideki   2006年03月26日 10:36
マリオの場合、小学生の6年間で、担任が入れ替わり、都合6人の方の先生と接することとなりました。全員が正教師の方ではなく、そのうち3人は講師の先生でした。
こういうと誤解を招きそうなので、ちょっと怖いのですが、結果として正規の教師の方よりも、むしろ臨時で入ってこられた講師の方のほうが上手く接して、マリオ達の心をつかみ、リードしてくれたように思います。
中には養護からきたベテラン教師の方もいらしたのですが、この方が一番ひどかったくらいです。
もちろん、5〜6年のとき受け持ってくれた教師の方はとても上手く、良く接してくれる方は教師・講師に関わらず上手だということです。
思うに、障害児教育…とくに自閉症については、まだ良く理解が進んでいませんので、表面的な経験・キャリアはあまり関係ないように感じます。
5. Posted by Hideki   2006年03月26日 10:37
お話にあった「言葉かけ」一つにしても、一生懸命やる人はダメでした。
それよりも、子どもと文字通り一緒になって遊べる人の方が良かったように思う。自閉症児と一緒に学ぶことを楽しめる人じゃないとやっていけない気がします。
結果として、自閉症児・健常児にかかわらず、子ども達が自然にまわりに集まってくる、子どもが自然体になれる、ひらたく言えば、子ども達が「良い先生だ」と皆が口に出してくれる、そんな先生が、マリオ達とはうまく関わり、上手に導いてくれたように感じてます。
親が評価する良い先生というのは全くアテになりませんが、子どもの評価する「良い先生」というのは、結構的を得ていると思う。
6. Posted by toshi   2006年03月27日 00:03
にしこさん
 センスという言葉、いいですね。
 教員になりたての先生のなかには(いや、ベテランでもいますが、)まるっきり大人と話しているような話し方でしか、話せない人がいます。これでは、ふつう級でも、大変です。
 子どもと会話がはずむような先生がいいですね。
7. Posted by toshi   2006年03月27日 00:22
hirarin先生
 あっ。そういうことだったのですか。それは、よかったですね。2年間ですか。すごいな。
 わたしたちのころは、定数の問題があり、小規模校に勤めていたわたしは、とうとう内地留学できませんでした。おおいに力をつけて、さらにすばらしい先生になってください。ブログは続けられますか。そう願っています。
 どうぞ、今後ともよろしく。
 個別支援級担任は、教育の原点を学ばせてもらっているのだと言います。先生がおっしゃっていることは、まさにこのことだなと思います。
 1月30日の『人間性を問われる』は、お読みいただいていることと思いますが、先生のコメントにかかわります。
8. Posted by toshi   2006年03月27日 00:26
venus_sanさん
 初任者は、純粋ですね。学ぼうとする姿勢が身についているようです。どんどん伸びていく姿を見るのは、楽しいものです。こちらとしても、仕事のしがいがあるというものです。
9. Posted by toshi   2006年03月27日 00:37
Hidekiさん
 わたしが勤務した学校は、大体担任が固定されていました。保護者から大変信頼されていた方で、管理職だったわたしに対しても、保護者は常に感謝の思いを話してくれました。
 今勤務している、この学校は、やはり、毎年担任が変わるようです。保護者からの信頼は今一つだけに、この初任者の純粋さには、心打たれるものがありました。
 正規教員より臨時的任用職員の方がいいというのは、我々管理職も、よく口にしますよ。これ、個別支援に限りません。
 もっともわたしは、人であり、一概にそうは言えないと思っているのですがね。

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