2006年01月05日

民間人校長を迎える前に

d9a786c3.JPGまだ実数としてそんなに多いわけではないと思うが、全国各地で、民間から人材を登用し、公立学校の校長に採用するケースが出てきている。

 今、その正否は問うまい。結論を出すのは時期尚早のような気がする。


ただこれに関連して、思い出すことがある。もう10年以上もむかし、まだ、民間から迎える校長など、誰も考えなかったころの話である。


 この学校の事務職員は、以下のようだった。

ある学年が買うべき教材について失念していると、事務職員の方から声がかかった。
「よう。〇学年の先生たち。〇△の注文をまだしていないけれど、今年は、買わなくていいの。」
「あら。いけない。うっかりしていた。買うわ。買う。買う。・・・。ああ。ありがとう。A先生。助かったわ。」
 A先生は、何の教材を買うかを通して、教育課程に明るかったのである。

◆〇劼匹發箸癲△垢垢鵑任佞譴△辰討い拭1鸞の引率などは、ふつう事務職員はしないのだが、なにせ小規模校だったので、人手不足のおりは、進んで引き受けてくれた。そして、子どもたちともよく遊んでくれた。
 わたしが、1年生担任だったときだ。Bちゃんが、
「toshi先生。今度の遠足に、A先生は一緒に行ってくれるの。」
「ええっ。今度は行かないよ。」
「なんだ。つまんないの。」
そんな調子だった。
 

 あるとき、放課後の誰もいないはずの我が教室に、A先生がいた。ちょうどそこへ、Cちゃんが、忘れ物を取りにやって来た。なじみのA先生を見つけ、
「A先生。何やっているの。」
「うん。調べ物をしているんだよ。」
「ふうん。何を調べているの。」
「教室にあるものが、いつ買った物かを調べているんだ。」
「何で調べているの。」
「そうねえ。もう新しい物を買った方がいいかなっていうこともあるね。」
「そうかあ。分かった。・・・。でも、ずいぶん、ひまな仕事だね。」

 A先生からその話を聞き、職員室にいた先生方はみんな大笑いだった。

 「先生方は、公費で物を買うということがどういうことだか、認識が甘いのだよなあ。」
が、A先生の口癖だった。

 わたしもそうだった。つい、『安売り店で買えば、同じ値段でもっと買えるのに。』と思ってしまう。
 また、急に思いついて、『あれ、買えないかな。』と言うものだから、
「もっと計画的に、予算というのがあるのだから。」
と、あきれられた。
 そういうときのA先生の言葉一つ一つが、自分が教頭になったとき、どれだけ役に立ったか分からない。

 
 あるとき、わたしは校長に言った。
「A先生を見ていると、事務職員出身の校長先生がいたっていいなと思うのですよね。」
校長は、
「ほんとうにそうだなあ。」
と、実にうれしそうにほほえんだ。

ぁ‖燭の教頭は、昇任したては、事務的な仕事で苦労する。まるっきり職種が変わったような錯覚も覚える。なれるまで、1年はかかるのではないか。校長先生や、事務の先生から教わらないと、とてもできるものではない。
 その点、事務職員出身の教頭が誕生すれば、これはもう、お手のものではないか。

 
 冒頭の、民間人校長のことだが、それは、民間人だって立派な方は大勢いらっしゃるだろう。見事な学校経営をされると思う。
 でも、でもだ。その前に、内部にも人材はあるはず。

 そう。何も事務職員だけではないだろう。養護教諭(保健の先生)だっていいし、昨日のブログではないが、栄養士だっていい。
 まずは、そういう人材をじっくり見つめたらどうかと思う。


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rve83253 at 17:02│Comments(11)TrackBack(0)学校、第三の民主化 | 子どもと級外職員と

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この記事へのコメント

1. Posted by Hideki   2006年01月06日 00:13
結構、ナーバスな話題ですね
米国では「病院」の経営者は医者のTOPクラスではなく、医術には余り長けてないが、経営のプロがつくことが多いと聞きます。
名選手、名監督ならず、というのとは違うかも知れませんが、マネージメントスキルとプロフェッショナルスキルとは違うというもののようです。院長がいくら腕の良い医者でも病院は大赤字になっちゃ元も子もない。
ただ、病院の医者のあるべき姿、「医者の思い」を知らない経営者の配下につく医師は不幸なようにも思う。
組織のビジョン(あるべき姿)はTOPが示すものだから。
2. Posted by Hideki   2006年01月06日 00:15
会社社会は、このマネージメントを段階的に学ぶもんですが、学校社会はちょっとそれと異なるのかもしれませんね。米国の病院のように他から経営のプロを招くのも致し方ないかもしれない。
しかしながら、仮に民間から招くにしても、「教える」ということに対するきちんとした思いと、様々な子どもに対する深い理解と、教師であることの「魂」をもった方に、TOP=校長になって欲しい。
現状では、校長の裁量で、その学校が大きく変わるのはまぎれもない事実だと思うから。
それまで本当に素晴らしかった学校が、校長が変わると一転して180度変わってしまうのだから。
3. Posted by hirarin   2006年01月06日 05:39
同感です。
変な理論や経営学をもった人よりも
「情熱」や「夢」を持った方からボスになって欲しいと思います。
でも、民間人校長の時代はきっと近い将来やってくるんでしょうね。
4. Posted by hirarin   2006年01月06日 05:42
同感です。
優秀な方は身近にもいっぱいいます。
こんな人の下で働きたい・・・と思える人が。
とにかく「情熱」や「夢」をもっている人が校長になって欲しいですね。
管理、管理・・・じゃこっちが参ってしまいますから。
5. Posted by Hideki   2006年01月06日 19:54
米国では病院の経営者向けのビジネススクールもあるようで、簡単にそこらの経営者がなれるものじゃないという証ですね。
そもそもボスには
1.夢を抱き、あるべき姿を描け、魂をもつ
2.銭勘定が出来る
3.部下・配下をひっぱる
といった点が必要だと思うのですが、現役教師は1は申し分ないが、2・3に課題がある可能性がある。
そのあたりを研修する仕組みが必要なのかもしれないですね。
一方で、民間の経営者は1が課題になる。ここは、「その人の見極め」…採用する人の目利きが重要になる。
いっぽう、上記3つをバランスよく満たす人もそうそういる訳でもないので、「補佐」する人をつける事が多いです。「ブレーン」「右腕」「懐刀」といわれる人ですね。
そう思うと、学校の校長と、企業の社長では、一緒にならないとは思いますが、全部校長一人の力に委ねるのではなく、分担・補佐役をあてがうという手も考えられます。
6. Posted by toshi   2006年01月06日 23:06
 Hidekiさん。おっしゃること、よくわかります。あまり大きな声では言えないけれど、「名選手、名監督ならず。」は、わたしも感じているところです。
 
 会社と違うところは、銭勘定ができなければいけないのは、その通りなのですが、金銭的な意味での儲けを考える組織ではないので、まったく100%人間関係の勝負だということです。
 担任と子どもとでも、人間関係が信頼で結ばれていないと、心はもちろんですが、学力だって身につくものではないという、これは校長にしたところでまったく同じだと思います。
7. Posted by toshi   2006年01月06日 23:14
次に、会社とも病院とも違うと思うのは、教育については、その道の専門というものはあるにしても、市民誰もが、教育のあるべき姿、指導法、指導内容について、学校と対等に話ができるところではないでしょう。専門家の話は分からないという部分が、極端に少ないのではないかと思うのです。
 このブログにしても、こうやって教育論を戦わせていることが多いのですが、これは、会社の営業内容や、病院の治療などでは、およそ無理なのではないでしょうか。
 それだけに、校長は、市民との対話に努力すること、それこそ人間関係を豊かにすること、そして、信頼関係で結ばれることが大切になると思うのです。
 あれ。結論はさっきと同じになってしまいましたね。
8. Posted by toshi   2006年01月06日 23:42
部下、配下を引っ張るという点についてですが、これは、もう、つい最近まで、校長は、ほとんど実質的権限はありませんでした。ですから、12月16日に書きましたように、「魔法」が使えなければいけないわけです。
 この点、民間人校長は、慣れないでしょうから、少し心配な点ではあります。
 分担、補佐役の大切さは、これはもうまったく同感です。今は、学校は小規模化していますから、教職員の数は減り、いい人材は得がたくなっています。いい人材に恵まれれば、ああ、これはどこも一緒ですね。
9. Posted by toshi   2006年01月06日 23:53
hirarin先生。投稿、ありがとうございました。
 わたし、あるところで、
 「夢のない社会科はいらない。夢で終わる社会科もいらない。」という言葉を聞いたことがあります。
 いい言葉だなと思いました。そして、これは、校長の学校経営にも当てはまる言葉ではないかと思いました。
 「夢のない学校はいらない。夢で終わる学校もいらない。」
10. Posted by 檸檬   2012年02月13日 21:03
5  はじめまして、公立中学校の事務職員です。

 6年も前の記事にコメント失礼いたします。偶然、グログラムのランキングで目にとまりました。

 いろいろなカテゴリがあるので、事務職員に関係するものはあるかな……、と探していたらたどり着きました。

 わたしもこの方と同じような考えで働いています。公費の適正な執行から公教育費の貧困、果ては無償を目指しています。
 なかなか、先生が書かれたような見方で事務職員を見てくれる校長は少ないと思います。子どもを思い、学校で働いているのは先生だけではありません。もう少しこういた実践が事例が広がるように日々発信している次第です。

 いまは、育児休業中ですが……(笑)。

 
11. Posted by toshi   2012年02月14日 17:50
檸檬さん
 いいえ。6年も前の記事にコメントをいただけるなんて、これもブログのよさだなと思いました。ありがたく思っています。どうぞ、今後ともよろしくお願いします。
 公費の適正な執行。その、《適正》とはどういうことかについて、この事務職員から多くのことを学ばせていただきました。管理職になってそれがどれだけ役立ったか分かりません。
《子どもを思い、学校で働いているのは先生だけではありません。》
 そうです。その通りです。わたしは、これも過去記事ですが、《学校で働くものは皆教育者》という記事を書いたことがあります。本コメントのtoshi欄にURLを貼りつけました。よろしかったらご覧ください。
 今、育児休業中だそうですね。どうぞ、子育てに邁進していただければと思います。わたしの歳では無理でしたが、わたしが管理職だったときの男子教員が、わたしの退職後、育児休業を取りました。互いに1年ずつ交代するようにして取ったようです。
 時代は変わったなと認識するとともに、大いに励ましたものでした。今は復帰し、がんばっています。

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