2006年06月28日

学校における規制緩和3

 かつてわたしの勤務校に、水泳が得意で大好きの用務員さんがいた。

 その用務員、Aさんは、かつては水泳の選手として、国体にも出場したことがあるとのことだった。

 そして、わたしと一緒の勤務校だったそのころは、夏になると、遠泳に挑戦していた。

 夏休みのこと。水泳指導ちゅうのプールを見ては、『いいなあ。わたしも指導したいなあ。』というのが口癖だった。
 
 日ごろ、一生懸命本務に携わり、こなしているAさんだったから、その望みを叶えてやりたい気持ちは多く教員の一致した思いだったが、また、そうしてもらえば、本校の子どもたちの力も伸びるだろうにと思ったが、そのころは、規制の厳しかった時代。とても無理な話だった。

1. 教員免許がない。したがって、指導に携わる資格がない。

2. もし、Aさんが水泳指導に携わったとして、指導中に事故が起きた場合は、責任のとりようがない。

 そんな理由となるだろう。


 しかし、今なら、どうだろうか。

 規制緩和は、この世界でも進んでいる。わたしの勤務校においても、次のようなことをおし進めた。

1. 養護教諭や、栄養職員がどんどん教壇に立つようにしている。

 そして、専門的な知識を生かした授業を行っている。期限を切って臨時の免許を与え、教壇にも立てるようにしている。

2. PTA、地域の方などから、本の読み聞かせ教室などの要望があった。学校としては、授業時間を使って指導していただくことを受け入れた。

3. また、同様に、夏のプール開放の要望があった。水難救助の講習を受けたものが3名以上いることを確認し、これも受け入れた。

4. これは市の施策でもあるので、地域、PTAからの要望があれば補助金もつくことになる。土曜塾と呼ばれるものである。我が勤務校の場合、『竹とんぼ・凧・アクセサリーづくり』『料理・粘土細工・陶芸教室』『手品・囲碁・将棋』『スポーツ関係』など、多彩な取組が行われた。

 こういう時代だから、上記用務員さんも、教員と一緒に指導に携わることは容易だろう。


 ただし、こういう場合、次の2点を課題として克服しなければならない。あくまで私見だが、

1. 万一のことが起きた場合の、責任のとり方である。道義的な面は別として、公的に指導者に責任を負わせることはできないだろう。
 授業時間であれば、校長の直接責任となるだろう。また、それ以外は、参加を許可した保護者の責任でということになろう。

2. 子ども、家庭のプライバシー保護についても、同様のことが言えるのではなかろうか。

 したがって、こういうことを事前によく説明しておく責任が、学校にはあるものと思う。何かあってから実はこうでしたというのではまずい。

 上記の例で言うと、土曜塾などは、学校の施設を使うが、計画、実施などは、地域、PTAである。学校は直接責任を負う立場にない。そういうことを明確にしておかないと、万一のとき、トラブルのもととなる。(ただし、こういう場合でも、学校の施設に瑕疵があった場合は、学校の責任となるだろう。)


 また、指導者への要望も、あらかじめ伝えておく必要がある。

1. 目的の明確化をはかる必要がある。

 地域、PTAも一つの組織体ではあるが、会社、学校などと違い、任意の組織体である。加入も、ぬけることも比較的自由であろう。そういう組織体の場合、目的があやふやなことがある。

 本の読み聞かせ教室を例にとろう。
 ある学級が落ち着かず、保護者が危機感を持ち、少しでも落ち着いた学級になってくれればと思って参加する方は、ご自分のお子さんの学級でやることしか考えていない。
 それに対し、広く子どもの心の豊かさを願ってやろうとしている方は、全学級でやろうとする。
 
 学校としては、代表者と交渉して受けるわけだが、その話し合いで、全学級を対象とした運営を考えていると、実施段階に入ってトラブルとなることがある。
それを防ぐ意味でも、あらかじめグループ全体の意思統一を図ってもらう必要がある。

2. 無制限にできることではない。

 授業時間であろうとなかろうと、受け入れには、制限がある。
 
 授業時間ならば、学校の教育課程というものがあり、年間、学習内容は決められている。今は、総合的な学習の時間があるので、比較的、受け入れやすい環境にはあるが、それとて無制限ではない。
 
 授業時間でなくても、子どもの生活時間、施設の関係などとのかねあいがあり、どうしても制約はある。『あの団体には許可しておきながら、うちはなぜ断られるのだ。』と言われても、これはこまる。

 地域・PTAの要望が多いことは基本的にはありがたいが、以上はぜひご配慮いただきたい点である。


 最後に、このような地域、PTAの活動は、子どもにとってどんな意味を持つものかにふれたい。

 子どもの健全な心の育みは、直接的には、家庭、そして、学校が担当するものであろう。
 しかし、それだけでは、弱い。特に、現代という、人の心に対して危機感をもちつつある時代は、地域の教育力は重要である。

 わたしの子ども時代、こういう活動は活発だった。地域ごとに子ども会があり、映画の上映、影絵劇、幻灯などが行われた。

 地域の方は、もちろん教育の素人だ。だから、子どもの理解不能の言葉がとび出すし、まるっきり大人向けの話し方をされると、違和感を感じたこともあった。

 しかし、そういう方はまちにお住まいだから、日ごろよく道などで出っくわす。そのたびに挨拶をする。『ああ。toshiちゃん。』などと声をかけられると、『ああ。ぼくのこと、覚えてくれている。』と思い、無性にうれしかった。

 町の人同士の連帯感も、子どもながらに感じることができた。

 ああ。『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界だね。

 まちぐるみで育ててもらったという実感は確かにある。そして、それが、わたしという人間の人格形成に、多大な影響力があったと、積極的に認め、感謝しているものである。


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rve83253 at 00:40│Comments(10)TrackBack(0)教育風土 | 学校経営

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この記事へのコメント

1. Posted by hirarin   2006年06月28日 04:21
そんな庁務員さんがいたらこの水泳シーズン何度も来てもらいたいですね。
我が庁務員さんも様々な経歴の持ち主で、スキーやバスケットに長けています。なので、放課後(課外活動)を中心に指導のお手伝いをしてもらっていますよ。
栄養士さんや司書さんからは積極的に授業をやってもらっています。あくまでも、サブティーチャーとしてです。メインは担任という体制で活動を進めていますよ。
2. Posted by toshi   2006年06月28日 05:38
hirarinさん
 今はほんとうに多彩な取組がなされていますね。本来の職務はしっかりやってもらうとしても、それぞれが自分の個性を生かして、学校という場で仕事ができれば、やはり、これはすばらしいことだと思います。
 話は違いますが、用務員さんも、地域によっていろいろな呼称があるようですね。庁務員さんというのは初めてうかがいました。
3. Posted by くるみ   2006年06月29日 12:28
「学校における規制緩和」という視点の記事、大変勉強になりました。「規制緩和」ということには思い至りませんでした。そういうことだったのか!と目からウロコでした。
 用務員さん、直接ご指導なさらなくても、「模範演技」や高学年向けなら「選手時代について」のお話など、子ども達に伝えられる事が沢山ありますね。考えただけでなんだかわくわくしてきます。
 また、地域の大人・保護者は、学校側のご意向を踏まえるのを基本とし、特に、守秘義務と学校の応援団であること=自己責任での参加を肝に銘じる必要があるかと思っています。・・・「ご意向」があやふやである現実がありますが、これは、少しずつ前向きなお話をしていくつもりです。

 
4. Posted by くるみ   2006年06月29日 12:30
 このご時世なので、万が一の事故等の対策として、「ボランティア保険」の加入は不可欠かと思います。ただし、学校への不審者侵入などで負傷した場合の保障がない点などは、今後の検討課題と思います。
 そして、学校を中心とした地域コミュニティを目指し、取り組む事で、大人たちができることをはじめる、という市民自治を実現するための第一歩と成り得ると期待しています。
 先日の記事にもなさっていましたが、私の地域でも、地域の皆様が登校を見守って下さっています。
転んでバンドエイドを貼ってもらい、お母様がお礼のご挨拶をなさった・・・というエピソードも聞いています。小さな出会いが大きな力となる希望を感じています。仲間を増やしてできることからコツコツやろうと思います!
5. Posted by 大山虎竜   2006年06月29日 18:34
先日のブログで、教頭のお仕事についてふれられていましたね。toshi校長先生みたいに、教頭の仕事の苦労を知ってくださる校長先生のもとで働くことができる教頭先生は、本当に幸せだったと思います。
大山虎竜は、toshi校長先生の教頭時代に比べれば、まだまだ修業が足りません。頑張ります。
6. Posted by toshi   2006年06月30日 02:51
くるみさん
 いつも深くご理解をいただいており、感謝しています。
 でも、現実には、運用としてのむずかしさがあります。
 ほとんどの方は、くるみさんのように、学校の意向を尊重してくださるのですが、なかには、「せっかくやってやるのに、学校はなぜ断ってくるのだ。」とか、これは記事にもしましたが、「むこうは受けたのに、なぜうちの方は断ってくるのだ。」とか、そう言われることはあるのです。
 説明はしますが、分かってくれない方は、やはりいますね。
 あと、絵の募集などの話を持ち込まれることもほんとうに多いのです。これも、まともに受けていたら、正規の教育課程に影響を与えてしまいます。
 でも、長い目で見て、理解していただくよう努力するしかないなと思っています。
7. Posted by toshi   2006年06月30日 02:59
ボランティア保険も、今はどうなのでしょう。
 わたしが現職のころは、いろいろなしばりがあって、けっきょく、活用できませんでした。
 まず、現職の教員には適用されません。教員もボランティアとして活動することはあるのですが、ダメなんです。
 また、たった一回のイベントには適用されません。年間を通しての保険ということです。
 今は分かりませんが、改善されているといいですね。
 また、くるみさんのコメントで思い出したのですが、ボランティアのなかに、不審者が紛れ込んでいるなどということも、我が地域においてありました。だから、募集の仕方なども気をつけなければなりません。
 なんか、むずかしさばかり書いてしまいました。でも、やはり、押し進める方向で、がんばってもらいたいと思っています。それは確かです。
8. Posted by toshi   2006年06月30日 03:04
大山虎竜さん
 みんな、どの校長も、ちょっと前は、教頭だったのですけれどね。やはり、あごで使うような、そんな校長がいることも確かですね。
 修行は、ずっと大切ですね。
 校長になると、直接、評価の対象にしてくれることはなくなりますから、自分で自分を改革していくしかなく、これもまた、けっこうきびしい部分があります。
9. Posted by くるみ   2006年06月30日 07:11
 様々なご経験をお聞かせくださり本当に有難うございます。今後のための勉強になります。
「むずかしさ」というのもやはり現実ですよね。
 『「せっかくやってやるのに、学校はなぜ断ってくるのだ。」』・・・ん〜これはどこででもありますね。私も経験あります。
 ただ、「断わり方・引き下がり方」ひとつですよね。これがお上手な方とそうでない方で結果は一緒でもその後の人間関係が違います。私自身も気をつけたいなあと思いました。
 ある自治体では学校ボランティアがNPOを作っているそうで、やはり守秘義務や学校とのやりとりについてどうしても理解できない?しないボランティアはお引取り願うという対応もしているそうです。
 不審者が紛れ込む、想定内ではあるものの、その選別は非常にむずかしいものと思います。 
 でも、前へ進んでいきたいです。
10. Posted by toshi   2006年06月30日 21:44
くるみさん
 問題点ばかりの指摘で、入稿後は、くるみさんのように前向きな方は、気分を害されたのではないかと申し訳ない思いになりました。ほんとうにすみませんでした。
 でも、前向きにとらえてくださり、感謝しています。いろいろな意味で、真の規制緩和が進むよう願わずにはいられません。
 それも、『まずはやってみよう。』
 その精神が大切ですね。細かいことはその都度、改善を図っていきましょう。

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