2006年08月07日

平和を祈る3

70f18226.JPG 昨日は、広島の原爆の日だった。原爆投下から61年。

 わたしはかつて、2回、広島の平和記念資料館を訪問した。

 5・6年前はなかったのだが、たしか20・30年前は、入口近くに、被爆した後で、救護を求めさまよう母子などの等身大蝋人形が数体あったと思う。

 衣服や皮膚は焼けただれ、指先から皮膚が垂れ下がり、凄惨な人形だった。

 わたしが特にショックを覚えたのは、母親が背負う乳児の姿だった。赤ん坊の焼けただれた姿は、特に悲惨にうつった。

 昭和20年8月6日。わたしは生後7か月だった。だから、この人形は、まさにわたしの姿ともうつった。

 わたしも都市に生まれたし、生まれたまちも空襲にあっている。たまたま住むまちが違っていたに過ぎない。


 この乳児は助かったのだろうか。助かったとしても、その後の人生はどんなだったか。わたしはそこをしばらく離れることができなかった。目頭がグッと熱くなった。

 こんな乳児の被爆者が、いったい何人いたことだろう。いや。いや。乳児だけはない。各世代の被爆者が、それぞれ苦難の人生を歩まれたことだろう。

 
 ここを訪ねるまで、わたしは、『教え子を戦場に送るな』を当然のこととし、その決意をもって指導に当たっていたが、しかし、ここを訪れて感じたことは、『戦場に送るな』どころではない。都市そのものが、つまり戦場でないところも絶大な被害を受けている。
 そのこともしっかり学習内容にしようと思った。

 
 
 あともう一つ、大切なこと。

1. わたしの母は、わたしが20歳のとき亡くなったのだが、生前の言葉で忘れられないものがある。

 「toshiが生まれたときは、戦争も大変な状況になっていたから、『男の子が生まれた。』ということで、おばあちゃん(母の母。すぐ近くに住んでいた。)はとても喜んだのよ。『この子も、やがては兵隊さんになって、お国のために役立つことができる。』っていうことよ。わたしだって、そう思ったわ。教育の力ってすごいね。ほんとう。だまされちゃう。」

2. ある講演会の話。話した人は忘れてしまったが、話された内容でよく覚えていることがある。

「わたしは太平洋戦争中に小学校を卒業したのですが、ある日、担任ではない先生が、なぜだかは分からないが、わたしを呼んで、校庭の隅でしみじみと話し始めたのです。『わたしにも、ついに赤紙が来て、明日出征することになった。もう君に会うことはできないだろう。だから、これだけは話しておきたい。〜。』

 そのとき、わたしは、実に奇異な感じを抱きました。『この先生は、なぜこんなに大仰に話すのだろう。なんかものすごく大変なことが起きたかのように言う。』

 それは当時、出征兵士を見送ることは日常茶飯事だったからです。昨日はあのうちから、今日はこのうちからというような感じでした。だから、自分だって大人になれば、当然出征すると思っていました。そのくらい、出征は、当たり前で、日常ありふれたことだったのです。

 あの先生のしみじみとした話の意味が理解できたのは、戦後になってからでした。〜。」

 ああ。これも、教育と無縁な話ではないだろう。


 言論の自由。これはものすごく大切だ。しかし、それだけではダメだ。

 日本人は、いまだに、大勢に順応してしまう、あるいは、順応させようとする傾向がある。

 これは何も、世の政治に合わせようとする傾向だけではない。反対勢力もそのなかでの大勢に順応してしまう。

 ここはやはり自己確立が必要だろう。

 そういう教育をしなければいけない。


にほんブログ村 教育ブログへ

8月は、戦争、平和に関わる記事を随時掲載したいと思います。
今日も1クリックいただければ、うれしく思います。

人気blog ランキングへ
 
こちらも、どうぞ、よろしく。



rve83253 at 00:50│Comments(11)TrackBack(0)エッセイ | むかし

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by にしこ   2006年08月07日 17:11
私は高校時代の修学旅行で広島に行きました。
原爆ドームや資料館見学し、そして被爆体験された方の生のお話を聞きました。
その時はあまり考えていなかったのですが、被爆体験された方がどんな思いで私達にお話しして下さったか、そのお気持ちを考えると胸が締め付けられるようです。
本当なら思い出したくもない話を、戦争の悲惨さ、原爆の恐ろしさを伝える為に、敢えて私達に話して下さったかもしれないからです。
本当に貴重な修学旅行だったと思います。
夫にこの話をしたら、「そういうのが本当の意味での修学旅行なのかもしれないね」と言われ、思わず頷いてしまいました。

話しが記事とずれてしまってすみません。
2. Posted by piano   2006年08月07日 20:56
平和について、書かれてある記事を見つけてほっとしました。
TBさせていただきます。
3. Posted by toshi   2006年08月08日 01:50
にしこさん
 いやあ、ご夫君のおっしゃる通りですね。そういう修学旅行があることは知っていましたが、すばらしいなと思っていました。単なる観光的なものとは違いますものね。
 わたしは、修学旅行ではありませんが、沖縄で、悲惨な体験談を聞いたことがあります。本土決戦がどういうものかを、身をきられる思いで聞きました。
 
 二度目の広島は、長女が結婚間近の時に、家族旅行でいきました。娘2人とも、あまり被爆のことを知らなかったようで、ショックだったと言っていました。
4. Posted by toshi   2006年08月08日 02:07
pianoさん
 8月6日の記事を読ませていただきました。わたしは、見られなかったけれど、心に残る式典だったのですね。
 アメリカの兵士の広島訪問のテレビはわたしも見ました。おっしゃる通り原爆は正しかったという話も聞きました。すごく残念にも思いしたが、被爆者と真摯に対談して、最後には握手して別れるというところには、心打たれました。
 被爆者もわかってもらおうと真剣に話しているのが印象的でした。
 相手の立場、思いを知るということも大切です。それは現代の教育の目的でもあると思います。まだまだ勉強していきたいと思います。
 
5. Posted by s.keiko   2006年08月09日 03:07
(1)今日の記事を拝見しまして書かずにはいられなくなりました。私は、京都で開催されていました政治塾に参加しておりました。先日の講議は、同志社大学の教授の方が担当されました。内容は、侍従長による昭和天皇の言葉のメモに関してでした。「天皇陛下のメモで国民が大騒ぎをしたのを見ると、この国はまだ民主主義が根付いてないと思いました。」おっしゃいました。確かにそうかもしれません。しかし、その教授は、御自分が、「大学で民主主義の正確な意味を教えているのだろうか?民主主義の精神をきちんと伝えているだろうか?」と自省のお姿をお見せにならなかったことが、とても気になりました。別の参加した方が、男女平等運動の中で、よくTVに出られるフェミニストの女性の元教授が過激な発言をすることで、正しいジェンダーフリーの考え方が伝わらず、むしろ誤解されてしまい、間違ったジェンダーフリーが伝わっていると、指摘していました。
6. Posted by s.keiko   2006年08月09日 03:10
(2)
 また、その教授と同席していた別の学者の両名の方が、皇室典範改正に関して、なんの理由も示さず「万世一系なわけない。常識から考えて、125代も同じ血統が続く訳無い」と断じるのです。井戸端会議ならわかりますが、大学の先生ともあろう方が思い込みや常識で断じる姿に大変驚きました。今の日本では、正確な知識、正しい考えが広まらず、それに伴う精神(他人の存在との関わりで)というものが広まり難いように思いました。その原因の一つが、有識者が無責任な発言が多く、正確なことを伝えようとしてないことのように思いました。
7. Posted by toshi   2006年08月10日 06:44
s.keikoさん
 大学教授なのに、自己確立できない人は結構いますね。主張が薄く観念的。「自分」がないのですね。
 話は具体的がいいですね。「万世一系」でも、「武烈から継体への間には断絶がある。」と主張すれば、妥当性があると思います。
 また、民主主義では、万世一系に何の意味もないという主張でありたいですね。
 天皇メモ騒動については、わたしも、軽い民主主義を感じるのですが、でも、天皇は第一級の時代の証言者ですから、そこに意味を見いだすことも可能と思います。
 この展開のおもしろさは、天皇を絶対的存在とする立場からは困った論理展開を招き、天皇の存在を軽く見る立場からは、天皇の論理を利用したくなるという、ねじれた側面をもつことですよね。
 だから、ふれにくいことなのに騒動となっているので違和感をもつというのなら、納得ということではないですか。
8. Posted by なるほど♪ママ   2006年08月26日 13:05
こんにちは。はじめまして。なるほど♪ママともうします。
つぼみさん、カワセンさんのブログから、こちらを知り、ご訪問させて頂きました。

実は、下の子の小学校で昨年より、不定期ですが、本の読み聞かせをはじめました。今、2学期の本のリストアップや、予定の検討をしています。

読み聞かせを始めようと思ったきっかけが、その時、こどもが、親や、友達を殺してしまう、胸の痛くなるニュースが、毎日の様に、流れて、何か、今の自分に出来る事は?と、考えた時、思いついたのが、「小学校での読み聞かせ」でした。

そして、一番の願いは、「1人ひとりの命を大切にする事」「お互いの人権を大切にする気持ち」を育てたいという事です。

9. Posted by なるほど♪ママ   2006年08月26日 13:09
>・・・ここを訪れて感じたことは、『戦場に送るな』どころではない。都市そのものが、つまり戦場でないところも絶大な被害を受けている。そのこともしっかり学習内容にしようと思った。

>  あともう一つ、大切なこと。
1. わたしの母は、わたしが20歳のとき亡くなったのだが、生前の言葉で忘れられないものがある。
「・・・わたしだって、そう思ったわ。教育の力ってすごいね。ほんとう。だまされちゃう。」

>言論の自由。これはものすごく大切だ。しかし、それだけではダメだ。
>ここはやはり自己確立が必要だろう。
>そういう教育をしなければいけない。

やはり、大事な事は「教育」なんですね…。
10. Posted by なるほど♪ママ   2006年08月26日 13:10
最近の社会状況から、背筋の寒くなる流れもあり、
これからの、未来を背う子ども達に、間違った方向にだけは、進んで欲しくないと強く、感じているのです。
歴史観を、子ども達にどう伝えればいいのか、親が(私も含め)、きちんと、正しく理解していない現状があるので、改めて、勉強しなくては…と、おもっています。

こちらのブログから、大切なヒントを沢山頂きました。また、多くのいろいろな事を学びたいとおもいます。どうぞ、これから、宜しくお願いいたします。
11. Posted by toshi   2006年08月27日 00:30
なるほど♪ママさん

 わたしの現職最終校も、地域やPTAの方々による本の読み聞かせ教室が盛んでした。本の読み聞かせはもちろんですが、それを離れても、ストレートな子どもとのふれ合いが、子どもの育ちに、いい効果をもたらしていると思いました。

〜そして、一番の願いは、「1人ひとりの命を大切にする事」「お互いの人権を大切にする気持ち」を育てたいという事です。〜
 
ほんとうに今、日本人の心はどうなってしまったのだろうと思うような事件が相次いでいますね。なるほど♪ママさんがなさっているような営みがますます大事になっていくものと思われます。ありがとうございます。
 
なお、校長時代の子どもへの講話も記事にさせていただいています。本コメントのわたしの名前のところをクリックしていただくと、すぐ出るようにしましたので、もしまだご覧になっていなければ、よろしくお願いします。

コメントする

名前
URL
 
  絵文字