2006年11月07日

鉄は熱いうちに打て(2)4

e086a5a5.JPGやはり1年生を担任し、半年ほどたったときのことである。

 Aちゃんが深刻そうな表情で、わたしに言いにきた。

 その前にお断りだが、この学校は集団登下校をしていなかった。豊かな田園が広がる地域ということもあり、『家が近いもの同士、誘い合わせて。』といった感じだった。まだ、不審者騒動はなかったころの話である。


 話の内容は、以下の通りだ。

 「先生。こまっていることがあるのだけれど、あのね。Bちゃんがね。わたしに、『わたしと一緒に帰らなくちゃだめ。他の人と一緒に帰っちゃだめ。』って、言うんだよ。」
「ええっ。ほんとうかよ。そりゃあ、おかしいなあ。・・・。それで、Aちゃんは、どう答えたの。」
「うん。・・・。それで、こまっちゃったの。何も返事しなかった。」
「そうか。わかった。それだと、Aちゃんは、Bちゃんとは一緒に帰りたくなくなっちゃっただろうね。」
「そんなことはないよ。Bちゃんとも一緒に帰りたいし、CちゃんやDちゃんやEちゃんとも一緒に帰りたいんだよ。」
「そうかあ。Aちゃんはえらいなあ。そんなことを言われても、Bちゃんとも帰りたいなんて。・・・。要するに、いろんな子と一緒に帰りたいんだね。」
「そう。だって、みんな、おうちが近くなんだもの。」
「みんな、一緒に帰るっていうわけにはいかないのか。大勢いれば、楽しいだろうに。」
「うん。わたしは、その方がいいのだけれどね。Bちゃんは、どうしても、わたしとだけ一緒に帰りたいんだって。」

 わたしは絶句してしまった。

 しばらく対応策を考えた。

 そして、翌日、学級のみんなに話をもちかけることにした。


 ただし、絶対、Bちゃんを悪く言わないことだ。
Bちゃんにしたって、『わたしはいけないことをしている。』とか、『Aちゃんを独占してやろう。』とか、そんな意図で言ってはいないのだ。やむにやまれぬ気持ちで言っているに違いない。
 だから、その気持ちに対しては、共感してやることが大切だ。


 「わたしは、Aちゃんの気持ちも、Bちゃんの気持ちも大切にしてやりたいのだけれど、でも、これ、よく考えてみると、2人ともうれしくなるやり方ってないんだよね。
 それで、わたしもこまっているのだ。何かいい方法はないかと思ってね。」

「そんなの無理だよ。Bちゃんが譲るしかない。」
「それは、Bちゃんのわがままだよ。」

 そういう声に混ざって、
「Bちゃん。どうして他の子と一緒に帰るのはいやなの。」
やさしく聞く子が現れた。

 Bちゃんはこまったようにして、下を向く。

 わたしがとりなす。
「うん。それは、理由なんかないのかもしれないよ。Aちゃんとじゃなきゃいやだっていう気持ちなのだよ。」

 すると、Fちゃんだ。

 おどけて、おもしろおかしく、
「ぼくが一緒に帰ってあげますよ。」

 みんな、どっと笑う。つられて、Bちゃんも・・・。

 わたし、

「そうか。それはありがたい。・・。どうだ。Bちゃんと一緒に帰ってもいいよっていう子は他にいるかい。」

 うれしい。CちゃんもDちゃんもEちゃんも、また、それ以外にも手を上げている子がいる。
「そうか。それはありがとう。・・。どうだ。Bちゃん。みんな、ああ言ってくれている。これからさあ、2日にいっぺんはAちゃんとだけ帰るようにして、もういっぺんは、みんなと一緒に帰るっていうのは、どうかな。・・・。あっ。そうか。Aちゃんにもそれでいいかどうか、聞かなければいけないな。・・・。Aちゃんはどうだろう。いいかな。」

 これはもう、にこにこしながら、オーケーしてくれた。

 Bちゃんも、とまどいながらも、微笑をたたえて、了解。

 最大級の賛辞を送った。
「うわあ。うれしい。もう、解決の方法はないかと思っていたよ。・・・。みんなのやさしさと、Bちゃんの心の広さで解決できたね。」


 一週間くらいたって、Bちゃん、吹っ切れたかのようだった。

「toshi先生。もう、わたし、誰とでも帰れるよ。昨日はね。初めて、Gちゃんと一緒に帰ったの。これからも、ときどき、一緒に帰ろうねって約束したんだよ。」
「ええっ。ほんとうかよ。『ときどき』って約束したのが、いいねえ。」

 Bちゃんも、心からの笑顔を見せてくれた。


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 わたしは、性善説論者ではありません。あえて言えば、性無説、または、性白紙説です。でも、それでも、一定の、子どもへの信頼感というのは持ち続けていました。

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  (3)へ続く。


rve83253 at 09:16│Comments(3)TrackBack(0)学級経営 | 児童指導

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この記事へのコメント

1. Posted by 山田正   2006年11月09日 01:21
先生、はじめまして。山田正(http://kyoiku.info)と申します。ランキングからやって参りました。いつも楽しみに拝読させていただいております。もしよりしければ、相互リンクをお願い致します。お許しをいただければ、私の上記ブログの右上にもリンクを貼らせていただければと願っております。今週からとても寒くなりました。くれぐれもご自愛くださいませ。
2. Posted by toshi   2006年11月09日 21:02
山田 正 さま
 
 コメント、ありがとうございます。せっかくのご依頼ですが、わたしは、どちらかと言えば、中学受験に反対する立場です。
 地域のこと、進学する公立中学校のことなどありますから、すべて反対する気持ちはありませんが、基本的には、子どもらしい子どもを育むという観点を大切にしています。
 山田さんが、リンクされるのはかまいませんが、わたしの方は、そういうわけですので、辞退させていただきたく思います。
 ご希望に添えず、申し訳ありません。
3. Posted by 山田正   2006年11月10日 00:29
校長先生、丁重なお言葉をいただき、本当にありがとうございます。わけ隔てなくこどもを愛するお気持ちに共感したいと願っておりましたが、また出直して参ります。これまで通り、校長先生のブログ運営を応援しております!

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