2006年11月24日

調理員のAさん 〜障がいのある人とともに〜4

a6eb6a73.JPG わたしの教頭時代、わたしの勤務校に、耳の不自由な調理員さんがいた。今、Aさんと呼ぼう。

 着任してすぐ、それを知ったが、正直のところ、びっくりした。
 調理って音で判断する部分もあるだろうから、大変だろうな、また、危険なこともあるのではないかなと思った。

 でも、Aさんは、いつも真剣で、一生懸命な調理員さんで、ものすごく好感がもてた。


 教頭と調理員は、いろいろ話す機会が多い。日ごろの挨拶程度の会話なら、特に不自由はなかった。
 わたしは、手話がまったく分からないが、主に、Aさんは、相手の口の形を見ているようだった。それで、Aさんと話すときは、常に、Aさんの方を向いて、顔を見ながら、口を大きくあけて、ゆっくり話すように努めた。

 なれると、Aさんの話の大体は分かるようになった。


 しかし、業務にかかわる話となると、別だ。ほとんど理解できなくなってしまう。それに、数量が足りないなど、緊急を要する用件も多い。そういうとき、Aさんは、必ず、メモ帳とボールペンをもって、筆談をしてくれた。

 だんだん、わたしの顔を見ただけで、満面の笑みを浮かべて、会釈してくれるようになった。
 うれしかったのは、宴会の折、わたしの隣を選ぶようにして、席に着いてくれたことだ。お酌をしてくれるたびに、Aさんの方を向いて、口の形で、『ありがとう。』と言った。
 おかしいのは、こちらもついAさんの表情等につられ、会話が真剣になってしまう。すると、どうしても大声を張り上げてしまう。


 3年間、共に働いた。
 わたしは自校昇任だったが、校長昇任をとても喜んでくれた。

『校長先生。おめでとうございます。校長先生が、よその学校へ行ってしまうのではないかと思っていましたが、そうではないので、とてもうれしいです。これからもよろしくお願いします。』と言ってくれた。(ただし、校長としては、1年間で異動となってしまった。)


 今春、B小学校に、初任研担当として、着任した。
 
 驚いた。着任の挨拶のとき、Aさんの姿を見つけた。Aさんの顔にも、驚きの表情があった。
 隣に手話をしている方がいた。この方も、調理員さんだった。
『ああ。いいなあ。手話のできる仲間がいるということは、かなり、いい感じで勤務できるのではないか。』
そう、思った。

 あとで、この調理員さんが教えてくれた。

「toshi先生がいらしたということで、Aさん、とても喜んでいましたよ。なんか、以前、同じ学校だったのですってね。やさしくしてくれたって。わたしからもよろしくお願いしますね。」

 ところが、残念なことに、初任研担当では、調理員さんとの接点がほとんどない。だから、顔を合わせることも極端に少なくなってしまう。

 『ああ。もっと話をしたいなあ。』
そう思っている。


 つい先日、教頭先生に電話があった。話の内容で理解できた。

 電話は教育委員会からに違いない。『今度の献立説明会は、手話の方を必要としますか。』そういう問い合わせだった。


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 わたし、いいなあと思うのは、Aさんを特別扱いしないこと。
 むかしだったら、『いいわよ。わたしが教頭先生に話してくるから。』『いいわよ。献立説明会にはわたしが行くから。』となってしまったのではないでしょうか。
 それがやさしさだととらえていた時代が、永らくありました。
 
 Aさんは働く喜びを、わたしたち同様、享受しています。

 なお、調理員さんのことをとり上げた記事は、これまでもあります。
 よろしければ、ご覧ください。

    1月4日 心の教育(4)

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rve83253 at 06:00│Comments(4)TrackBack(0)学校管理職 | エッセイ

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この記事へのコメント

1. Posted by 大山虎竜   2006年11月24日 21:00
5 toshi校長先生のお人柄がにじみ出るようなエピソードですね。
toshi校長先生のような、管理職になりたいと日々精進をしていますが、道は遠いです。
教師は最大の人的教育環境だと思います。
ああ一緒にtoshi校長先生と仕事がしたかったな。
いかん。いかん。
叶わぬ夢を口ずさむことは、現実に負けている証拠ですね。
閑話休題。
以前は、問題解決学習や学び合い学習に懐疑的でしたが、toshi校長先生のブログを読んでいて勉強してみようと思いました。
2. Posted by toshi   2006年11月25日 03:37
大山虎竜さん
 ありがとうございます。
 わたしだって、失敗も多々あります。それもときどきは記事にしていますが、反省とそれをもとにした実践で、何とかがんばってきました。
 教員に限らずですが、今の力に加え、日々一歩でも向上しようとする心とがあれば、人間は大丈夫だと思うのです。

 問題解決学習については、このブログを通し、ずいぶん誤解されていることを知りました。できる子だけの教育、エリート養成などと言われました。この誤解については、すでに少しふれましたが、今、話題がそこになかなかいかないでいます。近いうち、再度記事にしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
3. Posted by tamasige   2006年11月26日 04:21
私もtoshi先生のような教師がいることにほっとし、嬉しく思っています。
先生のとりあえず私のような者をも受け止め、認めそれからご意見やアドバイス・・・このやり方は随分心地よく自然に素直に心に入ってきます。私もこんなに相手を気遣って注意しているか反省しています。若い先生達も先生と出会ってますます、やる気と実力が引き出されている気が致します。いつもありがとうございます。
4. Posted by toshi   2006年11月26日 13:43
tamasigeさん
 そのようにお褒めの言葉をいただくと、恐縮してしまいます。ありがとうございます。
 わたしの立場からすると、おっしゃってくださるように振る舞うと、気持ちが楽なのですね。
 むしろ、むかしのように、肩肘張って生きていたときの方が、ストレスがたまっていたように思います。
 でも、分かったようなことを言っていますが、まだまだですね。
 気軽に、しかし、繊細に、やっていきたいと思います。

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