51冊目 海部美知『パラダイス鎖国』

☆☆☆☆★(4.0 素晴らしい)


パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54) [新書]
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書) [Kindle版]


「Japan as No.1」の時代が過ぎ去り、国際的な存在感を失っている日本。一方で、国内の生活部門では賞品・サービスの品質向上が進み、世界でも稀なほどに過ごしやすくなっている日本。

そういった二律背反の状態を上手く表現したのが、「パラダイス鎖国」という言葉である。本書の前半では、日本がいかに「パラダイス」で、いかに「鎖国」しているかを描写している。

その中で著者が繰り返し指摘している日本の性質が、「皆の同意を得られる分野はどんどん前進するが、議論の分かれる分野は停滞する」というもの。例えば、ブロードバンドネットワークの整備は、皆が得をするのでどんどん進む。一方、年金制度の改革は痛みを伴うので、全く進まない。


本書は2008年の本だが、2013年の今読み返すと、日本の「パラダイス」が着々と崩壊しているのが見て取れる。2008年当時はまだ萌芽に過ぎなかったスマートフォンは、今やガラケーよりもはるかに強力な存在感を発揮している。衰退の芽が出ていた電機産業は、本格的な再編の時を迎えている。

50冊目 大栗博司『重力とは何か』

☆☆☆☆☆(5.0 文句なし)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)
重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書) [新書]
重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書) [Kindle版]


本書のタイトルは「重力とは何か」だが、その実態は宇宙論の本である。重力とは何かを探ることで、宇宙の深淵に迫ることになる。


私も含め、多くの「一般人」は、相対性理論くらいまでなら、イメージとしては理解していると思う。「速く進むと時間が遅く感じるってやつね」とか、もう少し正確に理解している人なら「一定なのは光速だけで、時間や距離は伸び縮みするってことだよね」とか。

また、量子論についても、「シュレディンガーの猫」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。量子論の世界では、確率でしか物体の位置を観測できない、といった話も。

しかし、その先、最新の宇宙論である超弦理論(超ひも理論)についてはどうだろう。私の場合、「名前は知ってるけど、どういう理論なのかは全然知らない」だった。「大統一理論」という言葉は聞いたことがあっても、それが何と何を統一する理論なのかは知らなかった。

「超弦理論」とは、相対論と量子論との間で生じる矛盾を解消する、「大統一理論(の、最有力候補)」なのである。


じゃあ、具体的にどういう理論なの? といわれると、お手上げです、と言わざるをえない。本書にも一応説明はあり、恐らくは噛み砕いて分かりやすく書かれた説明なのだろうけど、私の手には負えなかった。


本書で超弦理論が理解できるかは読者次第だが、相対論〜量子論、そして相対論と量子論の矛盾までは、何とか付いていくことができたし、理解も進んだ。説明もイメージ重視で分かりやすい。

そして何より驚いたのは、宇宙の秘密の奥深くまで人類が進んでいること。

The most incomprehensible thing about the world is that it is comprehensible.
(世界で最も理解不能なことは、それが理解可能なことである)
-- Albert Einstein

49冊目 久保田裕之『他人と暮らす若者たち』

☆☆☆★★(3.0 良い)

他人と暮らす若者たち (集英社新書)
他人と暮らす若者たち (集英社新書)


現在契約中のアパートが3月に契約更新になる。現在のアパートは家賃はとても安くて助かっているのだけど、都心までやや遠い(新宿・渋谷まで約40分、港区等だと1時間ちょっと)のがネックで、引越しを考えていた。

しかし、家賃はできるだけ低く抑えたい。そこで浮上したのが「シェアハウス」という選択肢。家賃・生活費を低く抑えられるというスケールメリットがあるし、ギークハウスのようなコンセプトシェアハウスであれば、仲間ができやすいというメリットもある。


参考書として本書『他人と暮らす若者たち』を読んでみた。シェアハウスの定義から始まって、日本におけるシェアの現状、シェアを実際に行なっている人へのインタビュー、著者自身のシェア経験からくる体験談とQ&Aが載っている。

特に注目したのは、第6章のQ4「異性の友だちを連れてきて泊めたりしてもいいの?」。住居がプライベートな空間である以上、性の問題は重要である。この点、それなりに深く掘り下げているのには感心した。

ただし一点、個人的に残念な点があった。それは、体験談が個室のあるシェアばかりで、個室のないシェア(学生寮のような、1つの寝室に多段ベッドを置く方式等)にはほとんど触れていない点。私が検討していたシェアハウスは個室のないシェアだったので、個室のないシェア特有の問題等が知りたかったのだが、この点は具体的な話が載っていなかった。

本書は、体験談のところだけを抜粋して読んでもよいが(そうできるような章立てになっている)、シェアハウス論の部分も面白い。

著者自身がシェアハウスを継続的に行なっていることからも分かるように、シェアハウスに対する論調は肯定的である。しかし、著者自身も初めてのシェアでは悩んだという話や、シェアハウスにまつわる不都合な点も指摘しており、バランスがとれている。
プロフィール

ryo511

カテゴリ別アーカイブ
  • ライブドアブログ