総選挙もいよいよ終盤に差し迫ってきた。自民党は300議席を大きく超えるなどと報道され、低投票率が予想されている。
中でも、追い打ちをかける様に、マスコミは「とくに若者の投票率が低い事が問題だ」と煽る。気持ちはよく分かるが、重要なのは、「若者は選挙に行け!」ではなく、「なぜ若者が選挙に行かなければならないのか」を伝え、若者に「選挙に行かなければ!」と思ってもらうことなのだろう。
6年前の2008年、私たちは当時まだ社会的に問題として「世代間格差」という言葉が認識されていなかった中、この「世代間格差」の現状と、その解決のために必要な持続可能な社会システムへの転換を行うための時間軸を加えた長期的視点を持った政策を「ワカモノ・マニフェスト」として発表した。
当時、私たちが意識したのは、「若いのに凄いね」と言われたら、「貶されていると思え」、政府や官僚たち、国会議員たちが、「むしろ本質的には、このワカモノ・マニフェストの方が正しい」と評価されるような、さらに誤解を恐れずにいれば、「本気で潰しに来られる様な政策を提示しよう」と言ってきた。
若者でありながら、こうした質の高い政策を作ろうと、当時、政治家、官僚、研究者、コンサルタントなど各分野を専門とする多くの同世代を巻き込みながら、一方で、それぞれの組織の中では「シガラミ」の中で、曲げられてしまう様な反響の大きいものも、こうした「シガラミ」のない外で創る事で、「本質的な問題解決策」を政策として提起する事ができた。
「ワカモノ・マニフェスト」発表した頃、我々は、現状レベルの社会保障を維持し続けるとしたら、その財源をすべて消費税でまかなうなら25%〜30%にしなければならないと指摘し、増税と同時に本質的な社会保障改革や歳出削減の必要性を訴えた。
当時増税を率先して訴える政党は一つもなかったが、少なくとも前回の総選挙までには多くの政党が、我々が提案してきた方向へと政策を転換してきた。
我々は、現在の与野党各党に、政策のレクチャーなどにも呼ばれた。
もちろんこうした背景には、様々な要因がるのであろうが、個人的には、現状の問題の提示と、将来的に長いスパンで考えられたあるべき政策をシガラミなく提示していく事は、少なくとも良識ある政治家や官僚には伝わっていくのではないかと感じた。
当時からの歴代「ワカモノ・マニフェスト」についても、「ワカモノ・マニフェスト策定委員会」のホームページに掲載せれているので、興味のある方は、見てもらえればと思う。

後ほども各政党マニフェスト評価についても掲載するが、残念ながら、今回のほとんどの政党のマニフェストは、本来議論すべき税と社会保障の問題などについても、抜本的な改革には触れないなど、これまでの流れから見たら、時計の針が戻った感が否めない。
しかし、こうした選挙だからこそ、自分たちはもちろんだが、さらに若い、将来を担うような世代の人たちには、声を大にして上げていってもらいたいと思う。

こうした中、今回の総選挙の公示直前の11月30日に、我々が「ワカモノ・マニフェスト」を提示し、解説するとともに、若い現役の大学生から質問や指摘、さらには提案をもらうというイベント『「ワカモノ・マニフェスト」大激論! 若者(元)VS 若者(現)』をニコ生で行ったところ、3時間半を超す長時間にも関わらず、来場者は3万3千人以上、コメントも1万6千件以上と、この手の放送としては、極めて多くの皆さんに観てもらうと共に、大きな反響をいただいた。
ニコ生の好意で、この放送をより多くの若者に観てもらおうと、タイムシフトが全公開になり、有料会員にならなくても無料でいつでもどなたでも見る事ができる。
是非、一人でも多くの若者にこうした問題提起を共有してもらいたいと思う。

今回は、放送でも紹介したこの総選挙に対する「ワカモノ・マニフェスト2014」と「各政党マニフェスト若者度評価」を紹介していく事にする。
「ワカモノ・マニフェスト2014」と「各政党マニフェスト若者度評価」のPDFはこちら


労働ビックバンで労働雇用の世代間格差の解消を!

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日本の労働・雇用慣行の特徴は、年功序列・終身雇用と、それに付随する新卒採用偏重にある。日本の労働・雇用慣行の維持には経済成長が必要となるが、現在はそれが厳しくなっている。失われた10年においては、中高年の正規雇用を維持するために、新卒採用が抑制され、就職氷河期世代が生まれた。正規雇用の削減は、非正規雇用の増加によって代替された。日本の賃金は年齢によって決定される年齢給であるため、一度非正規雇用になってしまうと、正社員になることは非常に困難である。
日本の正社員の解雇の難しさはOECD加盟国中第一位であり、ILOやOECDからもたびたび非正規雇用労働者との格差是正勧告を受けている。よって労働契約法を改正し、金銭による解雇を明文化することで、両者の格差是正につなげる。なお、従来も(厳しい条件付きながら)一カ月分の賃金に相当する予告手当の支払いにより解雇は可能とされていたが、これを数カ月〜半年分に拡大することを目指す。よって、従来から必ずしも終身雇用が保証されていなかった中小・零細企業労働者にとって、これは明白な規制強化である。
雇用調整助成金のように、特定の正社員だけを優遇する制度は廃止するべきだ。これから就職する学生や失業者の参入を妨げず、万人に公平な失業給付や職業訓練という形で幅広くサポートを提供すべきである。長期的には、給付付き税額控除のような形で、就労意欲を損ねない形での現役世帯向け社会保障の導入を図りたい。人材市場の流動化を妨げているものは、国の制度の中にもある。退職金優遇税制はその代表だ。退職時の「ご褒美」を手厚くしていると、年功序列の「後払い」システムがなくならず、社員が企業に従属せざるを得ない。長期勤続にメリットがあった時代なら意義のある制度だっただろうが、技術革新の早い昨今、早急に見直すべき制度だろう。既に2011年度より「3年内既卒者の新卒扱い」という形で企業側への要請がなされているが、これを一歩進めて新卒採用自体の見直しにつなげたい。日本社会は3月末に卒業して4月1日より新組織にシームレスに進む前提で成り立っているが、バブル崩壊以降、このラインに綻びが生じ、多くの既卒未内定者を生み出している。彼らに対するキャリアパスを整備するのは喫緊の課題である。

01 金銭解雇の明文化および規制強化
02 「同一労働・同一賃金基本法」の制定
03 雇用調整助成金の廃止
04 全労働者対象の、再就職訓練と雇用保険のセット
05 退職金優遇税制の廃止
06 新卒一括採用の見直し


【小見出し】高齢世代と若者世代の格差は1億円!

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高齢世代が受け取る生涯の純受益額(=受益−負担)は約5,000万円のプラスだが、将来世代の純受益額は約4,500万円のマイナスと、高齢者と若者で1億円近い格差が生まれている。その原因の一つが賦課方式の社会保障システム(年金・医療・介護)にある。賦課方式の社会保障システムでは、高齢化の進展によって若年世代に過重な負担を強いることになる。世代間格差のもう一つの原因が、財政赤字の拡大である。消費税が8%に増税せれたが、これは「止血剤」に過ぎない。現状のままでは、いま200%の日本の公的債務残高の対GDP比は引き続き上昇していくことが見込まれており、日本の財政破綻リスクは依然高い。
政治的影響力の弱い若者・将来世代は、社会保障負担の増加や財政赤字の先送りによって、政治的影響力の強い高齢・現在世代から搾取される可能性を持つ。それを防ぐために「世代間公平に関する基本法」を制定すべきである。「基本法」には、「社会保障の受益と負担の調整を担う独立機関」の設置を盛り込む。社会保障の受益水準やベース財源(社会保障給付を賄うための財源)は、政治が決定するが、その受益・負担の調整は「独立機関」が行うことで、若者・将来世代に及ぶ不利益を緩和するのである。実際には、社会保障に事前積立を導入することが求められる。また、財政赤字による将来世代への安易なツケ回しを防ぐために、消費税などを増税することで公債残高の対GDP比を引き下げていかねばならない。

01 世代間格差を是正するため、世代間公平に関する基本法の制定
02 社会保障の受益と負担の調整を担う独立機関の設置
03 受益水準やベース財源(公債は除く)は政治が決定し、社会保障予算をハード化
04 世代間公平の観点から、社会保障に事前積立を導入し、その負担水準や積立の経路は独立機関が決定する
05 公債残高の対GDP比引き下げの観点で消費税を増税


世代間格差の原因は高齢者の声を過度に反映する政治!

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少子高齢化の進展と、若者の低投票率、若者が政治や社会に声を上げないことが、高齢者の声を過度に反映するシルバーデモクラシーを生み出している。こうしたシルバーデモクラシーの状況は、高齢化によって、今後ますます進展していくことが予想される。
世代間格差の是正や、持続可能な社会システムへの転換など、中長期的なスパンを視野に入れての政策判断には、未来をより長く生きる若者が当事者として社会参加・政治参加することで、シルバーデモクラシーに歯止めをかけることが求められる。
少子高齢化の中でさらに低下しかねない若者の政治的影響力を高めるために、若者参画基本法を制定することで、立法過程や意思決定過程(審議会等)に若者の意見を取り込むことの義務化や、合わせて若者政策全般を確実に実施するための若者政策担当大臣を設置する。また、シルバーデモクラシーに歯止めをかけるために、選挙権年齢を16歳、被選挙権年齢を成人年齢へ引き下げると共に、選挙区を地域別でなく世代別に分ける世代別選挙区制度や、子どもの選挙権を親が持つドメイン投票を導入することで、各世代の年齢構成に近い形で若者の声や代表者を議会に送る仕組みを構築する。同時に、SNS等ICTを活用した直接参画の仕組みの整備や、政治リテラシーを育成するための政治教育の義務化など、ユースデモクラシー構築のためのインフラ整備を行う。

01 若者の意見反映を義務付ける若者参画基本法の制定と若者政策担当大臣の設置
02 世代別選挙区制度とドメイン投票の導入、選挙権を16歳・被選挙権を成人年齢へ年齢引き下げ
03 SNS等ICTを活用したオープンガバメントや直接参画の仕組みの構築
04 政治教育の義務化
05 官邸フェローや政治任用促進による政策人材の流動化


日本の社会保護支出は高齢者に偏っている!

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日本では、労働や子育て・教育等への社会保護支出が少なく、雇用状況の悪化が、結婚・子育て・育児・教育環境の悪化に直結する状況になっている。統計からも非正規労働者は結婚・出産が困難であることが示されている。また、出生率も低迷から抜け出せていない。日本の終身雇用・年功賃金制度の下では、女性が出産・育児を経て、再び職場復帰することが非常に困難になっており、仕事と育児の両立支援や、ワークライフバランス施策も不十分である。
「高齢者=弱者」、「若者=強者」というステレオタイプはすでに崩壊しており、むしろ若者こそが大きなリスクにさらされている。その結果、結婚・出産・育児が困難になっている。日本の社会保護支出は高齢者向けに偏っており、この配分を若者向けに振り替えていくことが必要である。労働・経済のリスクの上昇が、出産・育児にまで影響を与えてしまっている今の状況を緩和することが必要となる。具体的には、給付つき税額控除等による子育て世帯への再分配の強化や公教育の立て直しによって、出産・子育てのコストを引き下げ、子育てを「社会化」していくことが求められる。また、出産・育児のコストの大部分は、女性の就業継続が困難になることによる機会費用増大である。労働・雇用の流動化を進めると共に、仕事と育児の両立支援・ワークライフバランス施策の推進によって、出産・育児の機会費用を引き下げていかねばならない。

01 若者向け社会保護支出の対GDP比を引き上げ
02 給付つき税額控除などによって子育て世帯への再分配を強化し、子育てを社会化
03 公教育の立て直し
04 仕事と育児の両立支援・ワークライフバランス施策の推進


世代間格差是正政党は一つもない。各政党マニフェスト若者度評価

冒頭でも少し触れたが、今回の総選挙における各政党のマニフェスト、残念ながら、世代間格差の是正や、持続可能な社会システムへの転換という視点から見ると、これまで少しずつ進んでいた時計の針が、逆に戻ってしまった感が否めない。
本来議論すべき最も大きな社会課題である税と社会保障の問題などについても、抜本的な改革には触れない政党が多いほか、
また、「マニフェスト」そのもののイメージが悪くなったこともあってか、多くの政党がこのマニフェストを使わなくなっている。問題は、タイトルを「マニフェスト」にしなくなったことではなく、これに乗じて、期限や予算などを記すという「マニフェスト」で進化した公約は、旧来通りの抽象的で総花的な「選挙公約」へと戻った感がある。
また、面白いことにタイトルでは「マニフェスト」という言葉を避けながら、多くの政党の公約を政党ホームページからダウンロードすると、そのファイル名の多くが「manifesto2014.pdf」などとなっている事だ。
有権者、国民は、タイトルなどはどうでもいいが、少なくとも期限や財政的な裏付けなどを明確にして行く必要性については、求めていく必要があるのではないだろうか。

今回も「各政党マニフェスト若者度評価」は、ワカモノ・マニフェスト策定委員会のメンバーで「労働・雇用」、「財政・社会保障」、「政治参画」の3分野について、各政党のマニフェストを、世代間格差の是正など若者にとってどうかという「若者度」と、政策の妥当性、政策の明確性、財源の裏付け、実現のための具体策やロードマップといった「政策評価」の2つの軸で評価し、各メンバーの評価を平均化してまとめた。
2014総選挙版「各政党マニフェスト若者度評価」は、以下の通りだ。

労働・雇用
  若者度(▲100〜+100点)
   自民17.5・公明12.5・民主11.3・維新65.0・次世代42.5・共産▲17.5
  政策評価(▲100〜+100点)
   自民11.3・公明5.0・民主▲5.0・維新40.5・次世代25.5・共産▲17.5

労働雇用については、非正規雇用労働者の待遇改善や「同一労働同一賃金」の法制化や労働法制に関する規制緩和などについて具体的に明記された政党がプラス評価につながり、一方で、一見若者にとってプラスにつながりそうにも見える、非正規雇用の正規雇用化は、一流企業など二階建て部分に入る企業においては効果がある様にも感じるが、多くの国民が働いている中小企業はじめとした一階部分を考えれば、むしろ若者にとってはマイナスに働くと評価された。

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財政・社会保障
  若者度(▲100〜+100点)
   自民7.5・公明7.5・民主21.3・維新63.3・次世代33.8・共産▲25.0
  政策評価(▲100〜+100点)
   自民8.8・公明6.3・民主8.0・維新33.8・次世代11.3・共産▲21.3

財政社会保障については、これまでもワカモノ・マニフェストでも提案してきた「事前積立」など年金の抜本的な構造改革に踏み込んでいる政党、またさらに、持続可能な社会システムへの転換へ給付削減など痛みを伴う改革に踏み込んだ政党が高評価となった。歳入庁の設置や、マイナンバーなども評価につながっている。
消費税については、増税をうったえる政党がなくなり、期日をつけて延期とした政党が若干の評価につながる一方で、軽減税率はマイナス評価に、逆に経済弱者に対してはコストが低く抑えられる給付付き税額控除がプラス評価になった。

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政治参画
  若者度(▲100〜+100点)
   自民11.3・公明43.8・民主10.0・維新0.0・次世代0.0・共産10.0
  政策評価(▲100〜+100点)
   自民20.0・公明48.8・民主10.8・維新0.0・次世代0.0・共産12.0

若者の政治参画については、すべての政党にとって関心が弱い。一方で政権政党がはじめて「18歳選挙権」についてマニフェストに明記したほか、さらに2016年までと期日を切った政党の評価が高くなった。また政治教育についての記載も評価対象となった。

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合計点
  若者度(▲100〜+100点)
   自民12.1・公明21.3・民主14.2・維新42.8・次世代25.4・共産▲10.8
  政策評価(▲100〜+100点)
   自民13.3・公明20.0・民主4.6・維新24.8・次世代12.3・共産▲8.9

この「各政党マニフェスト若者度評価」解説についても『「ワカモノ・マニフェスト」大激論! 若者(元)VS 若者(現)』で説明しているので、納得のいかない方、疑問のある方、興味のある方は、ぜひご覧いただければと思う。

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高橋亮平
ワカモノ・マニフェスト策定委員会
中央大学特任准教授
NPO法人Rights代表理事
NPO法人 万年野党 事務局長
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