2016年の最新データを元に算出



今回は、高橋亮平(中央大学特任准教授・元市川市議)が毎年コラムでも紹介している自治体の転入転出超過について最新の2016年のデータを元に紹介していきたいと思う。
自治体にとって人口問題は最も大きな課題の一つであり、2014年に全国896自治体が「消滅可能性都市」と試算された事で自治体現場でも大きく注目される事になった。
少子高齢化という人口の構造的問題はもちろんだが、それに加え地方から都市への人口流出が重なり、2040年頃には、若い女性の人口が半分以下になる市区町村などの基礎自治体が896にも及ぶという試算だ。
今回もこうした視点から全国814ある市区のデータを元に最新状況を共有したい。
2016年1年間で、2,623人の減と最も人口が転出超過となった自治体は北九州市(福岡県)だった。北九州市は2015年の▲3,088人からは転出超過が450人以上少なくなったものの、これで3年連続のワースト1という事になった。単純に今年の問題というより構造的な問題になっている可能性が高い。
次いで2位も毎回の常連となっている長崎市(長崎県)が安定の▲1,547人。
3位は震災の影響もあってか熊本市(熊本県)が▲1,540人で入った。熊本市は2012年には1,321人の転入超過(全自治体38位)だったが2013年以降は年々減り、2015年からも転出超過が約1,100人も増えてしまった。
4位が東大阪市(大阪府)の▲1,507人、5位が青森市(青森県)の▲1,353人、6位が寝屋川市(大阪府)の▲1,294人と続く。
転出超過自治体の常連で2015年ワースト2位だった横須賀市(神奈川県)は、500人以上転出超過を減らして▲1,266人となりワースト7位まで順位を上げた。
逆に日立市(茨城県)は昨年の▲753人から▲1,250人と転出超過が増えてしまい8位となった。
以下、9位が堺市(大阪府)の▲1,206人、10位が那覇市(沖縄県)の▲1,197人だった。

図表: 市区別転出超過ランキングワースト30
170226 コラム転出超過等図表1
市区別転出超過ランキングワースト30


転入超過数では大阪市が最多。次いで札幌市、さいたま市



転出超過で人口が減る自治体もあれば、逆に転入超過となる自治体もある。
全国で最も転入超過になった市区は、大阪市(大阪府)の9,474人の転入超過だった。
次いで、札幌市(北海道)の9,137人、3位がさいたま市(埼玉県)の8,655人となっている。
面白いのは転出超過でワーストだった北九州市の隣で、4位に福岡市(福岡県)が8,471人の転入超過で入っている事だ。
以下、5位が川崎市(神奈川県)の6,839人、6位が名古屋市(愛知県)の5,950人とここまで全て政令指定都市が占める。こうした事からも各地域地域において、都市部に人口の移動がある事も透けて見える。
7位からは世田谷区(東京都)が5,841人、8位が中央区(東京都)4,787人、9位が大田区(東京都)の4,263人、10位が板橋区(東京都)の4,155人と続き、転入超過のベスト30の中に東京23区が14区も入っているのも特徴と言える。

図表: 市区別転入超過ランキングベスト30
170226 コラム転出超過等図表2
市区別転入超過ランキングベスト30


転出超過率ワースト1は夕張市、転入超過率トップは中央区という現実



転出超過も転入超過も人数で見ると、政令市や県庁所在地など人口規模の大きい都市が並んでいたが、実際の自治体への影響を考えると、冒頭で触れた「消滅可能性都市」も含め、むしろ小規模自治体の方が切実な問題になるケースも多い。
そこで転出超過・転入超過を人口で割った率を出してみた。
この転出超過率が最も高かったのは、深刻な財政難から2007年に財政再建団体に指定され事実上財政破綻した夕張市(北海道)で人口比▲2.06%の転出超過となった。
次いで2位が士別市(北海道)で▲1.65%、3位は歌志内市(北海道)の▲1.64%、4位は勝浦市(千葉県)の▲1.50%、5位は美唄市(北海道)の▲1.46%、6位は根室市(北海道)の▲1.35%、7位は対馬市(長崎県)の▲1.35%、8位は芦別市(北海道)の▲1.33%、9位は三沢市(青森県)の▲1.31%、10位は稚内市(北海道)の▲1.29%と続く。
10位のうち7市を北海道が占めるという結果となった。

図表: 市区別転出超過率ランキングワースト30
170226 コラム転出超過等図表3
市区別転出超過率ランキングワースト30

逆に転入超過も率で見ると、最も転入超過率が高かったのは、中央区(東京都)の人口比3.61%の転入超過だった。率で見ても東京だったという結果だ。
2位は福津市(福岡県)の2.36%増、3位は印西市(千葉県)の2.19%増、4位は流山市(千葉県)の2.11%増、5位は向日市(京都府)の1.64%増、6位は千代田区(東京都)の1.63%増、7位は稲城市(東京都)の1.52%増、8位は合志市(熊本県)の1.39%増、9位は港区(東京都)の1.37%増、10位は習志野市(千葉県)の1.36%増と続いた。
転入超過率のベスト30自治体を都道府県別に見ると、1/3以上に当たる11自治体が東京都、次いで千葉県が4、茨城県・埼玉県・京都府が3、愛知県が2、大阪府・福岡県・熊本県・沖縄県が1となった。

図表: 市区別転入超過率ランキングベスト30
170226 コラム転出超過等図表4
市区別転入超過率ランキングベスト30


人口移動は東京の一人勝ち。ワーストは北海道、熊本、兵庫・・・



日本全体の人口移動の構造については、都道府県のデータを見た方が分かりやすい。47ある都道府県だが、その中で転入超過になっている自治体は7都府県しかないのだ。それ以外の40道府県は、全て転出超過という事になるのだ。
最も転入超過が多いのは東京都で74,177人の転入超過となっている。この数は2位の4.6倍もの数になり、この点からも東京の一人勝ちである事が分かる。
2位は千葉県の16,075人、3位が埼玉県の15,560人、4位が神奈川県の12,056人と上位4つを首都圏の4都県で占めており、この4都県で日本全体の転入超過131,659人の約90%もを占めているのだ。
それ以外地域で転入超過になっているのは5位の愛知県6,265人、6位の福岡県5,732人、7位の大阪府1,794人しかないのだ。
逆に転出超過についてはどこかが突出するというわけではなく、幅広く多くの地域から転出している。
その中でも最も転出超過となったのは北海道で▲6,874人、次いで2位が熊本県の▲6,791人、3位が兵庫県の▲6,760人、4位が静岡県の▲6,390人、5位が青森県の▲6,323人、6位が新潟県の▲6,189人、7位が福島県の▲5,839人、8位が長崎県の▲5,573人、9位が岐阜県の▲5,031人、10位が鹿児島県の▲4,473人と並ぶ。
傾向から言えば、北海道や東北、九州の自治体が多く並んだ印象がある。
こうした大きな傾向を認識した上で、各基礎自治体は自らの状況を認識しながら対策を行っていく必要があるという事だ。

図表: 都道府県別転入超過ランキング
170226 コラム転出超過等図表5
都道府県別転入超過ランキング


転入超過全国2位の千葉県で基礎自治体の人口超過を見る



より具体的に地域の状況を見ていくため、今回、東京に次いで転入超過が全国2位となった千葉県を例に見ていきたいと思う。
千葉県は、県知事選を3月26日に控えており、こうした機会に県内の人口流動についても把握しておく必要がある。有権者の皆さんもこれを機会に共有してもらえればありがたい。
千葉県の転入超過を推移で見ると、2010年に全国4位の14,187人の転入超過であったが、2011年になると▲120人(15位)と逆に転出超過になり、2012年には▲8,188人と福島県に次ぐワースト2位に転落した。2013年は2,442人(8位)、2014年は8,364人(4位)、2015年は10,605人(4位)と転入超過が毎年増え、2016年はさらに前年比1.5倍以上の16,075となり全国2位となった。
直接的間接的なものも含め、東日本大震災で転出超過になっている状況から一気に転出超過を伸ばしている状況と言える。
こうした中、県内で最も転入超過が多かったのは、3,582人(全国11位)の流山市(千葉県)だった。次いで2,701人(全国19位)の柏市、3位が2,304人(全国23位)の船橋市と続く。
流山市と柏市の場合、つくばエクスプレス(TX)の開通による影響が大きいと思われる。ららぽーとなどのショッピングモールの建設と共に流山市のおおたかの森や柏市の柏の葉などの新興住宅地にタワーマンションなどの建設が進む。船橋市においても新船橋にイオンモールができ、周辺に多くのマンションが新設された。
流山市は2010年の転入超過2,204人から2011年に▲470人の転出超過に転じたが、その後、2012年に721人増、2013年1,392人増、2014年2,387人増、2015年2,989人増、2016年3,582人増と常に転入超過を伸ばし続けている。
ただ転入超過も率で見ると、こうした流山市、柏市、船橋市以上に高かったのが、全国3位の2.19%の転入超過率となった印西市だった。
2位に流山市の2.11%(全国4位)が入り、3位が習志野市の1.36%(全国10位)、4位が浦安市の0.97%(全国20位)、5位に0.67%(全国41位)で柏市が入り、6位が四街道市の0.47%(全国63位)、7位が市川市の0.44%(全国68位)、8位が袖ケ浦市の0.38%(全国86位)、9位が船橋市の0.37%(全国87位)、10位が木更津市の0.33%(全国98位)と続いた。
ただ、千葉県の中にも逆に転出超過となっている自治体もある。
最も転出超過率が高かく37位になったのは、全国でもワースト4位に入った勝浦市で▲1.50%(全国811位)と次点の2倍近くとなっている。
次いで36位が銚子市の▲0.81%(全国771位)、35位が八街市の▲0.73%(全国753位)、34位が君津市の▲0.63%(全国705位)、33位が山武市の▲0.59%(全国686位)、32位がいすみ市の▲0.55%(全国662位)、31位が鴨川市の▲0.55%(全国658位)、30位が匝瑳市の▲0.49%(全国607位)、29位が香取市の▲0.48%(全国600位)、28位が富津市の▲0.15%(全国354位)と並ぶ。
こうして見ていくと、県内の中でも課題が見えてくる。
また、転入超過を前年比較も見てみた。
2015年との比較で2016年に1,078人増と最も転入超過が多くなったのは浦安市(全国8位)だった。
全都道府県中最多だった千葉県全体の転入超過の前年比が5,470人増だった事から考えても、その1/5を浦安市が引っ張った事が分かる。
次いで977人増えたのが印西市(全国10位)、以下、799人増の船橋市(全国14位)、639人増の柏市(全国23位)、593人増の流山市(全国25位)となっている。
逆に前年比で転入超過が最も減ったのが▲771人の千葉市(全国791位)、▲445人の木更津市(全国772位)、▲425人の八千代市(全国769位)、▲197人の白井市(全国703位)と続き、いすみ市(全国658位)は転出超過が▲135人増えた。
こうして地域ごとの人口移動の状況を見ると、国全体としての問題の他に、都道府県の中での課題、各基礎自治体で次に打たなければならない状況も見えてくるのではないかと思う。
松戸市で部長職を務めていた時期は、まさに千葉県、特に北西部の人口が急激に転出超過になってきた時期で、その原因究明と対策の検討に努めたが、状況は少しずつ変わってきている。
こうした状況の中で、県知事選を前に、千葉県の人口対策はどうあるべきか、またそれ以外の地域の皆さんにも、「我がまちの将来」を考えてみる一つの参考にしてもらえればと思う。

図表: 千葉県内市別転入超過率ランキング
170226 コラム転出超過等図表6
千葉県内市別転入超過率ランキング



高橋亮平
高橋亮平(たかはし・りょうへい)
中央大学特任准教授、NPO法人Rights代表理事、一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、千葉市こども若者参画・生徒会活性化アドバイザーなども務める。1976年生まれ。明治大学理工学部卒。26歳で市川市議、34歳で全国最年少自治体部長職として松戸市政策担当官・審議監を務めたほか、全国若手市議会議員の会会長、東京財団研究員等を経て現職。世代間格差問題の是正と持続可能な社会システムへの転換を求め「ワカモノ・マニフェスト」を発表、田原総一朗氏を会長に政策監視NPOであるNPO法人「万年野党」を創設、事務局長を担い「国会議員三ツ星評価」などを発行。AERA「日本を立て直す100人」、米国務省から次世代のリーダーとしてIVプログラムなどに選ばれる。テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、BSフジ「プライムニュース」等、メディアにも出演。著書に『世代間格差ってなんだ』、『20歳からの社会科』、『18歳が政治を変える!』他。株式会社政策工房客員研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員も務める。
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