膨張続く防衛費 規模ありき、国会で正せ
<東京新聞社説> 2025年1月24日 08時10分
2025年度予算案で防衛費は約8兆7千億円に上り、過去最大を更新した。政府は23~27年度の防衛費総額を43兆円と定め、年1兆円程度のペースで増額してきた=グラフ。24日召集の通常国会では「規模ありき」で続く防衛費膨張を正す論戦に期待したい。
政府は、国内総生産(GDP)比1%程度で推移してきた防衛費を関連予算を含めて5年間で2%へと倍増させる方針。
3年目に当たる25年度も敵基地攻撃能力(反撃能力)の整備を重視し、長射程ミサイルの配備や開発に3100億円余り、標的を探知・追尾する小型衛星網の構築に約2800億円を計上した。
外国の領域を攻撃する敵基地攻撃能力の整備は憲法9条に基づく専守防衛を形骸化させかねない。計画が妥当か、国会での審議を徹底することが欠かせない。
政府は、5年間で43兆円の防衛費について「必要な防衛力の内容を積み上げた」と説明する。
しかし、国防費をGDP比2%以上とすることは、1期目のトランプ米政権が北大西洋条約機構(NATO)加盟国など「同盟国」に求めてきたことだ。
トランプ氏は2期目の大統領就任に際して5%への増額要求に言及。日本にも防衛費をさらに積み増すよう求める可能性があるが、唯々諾々と応じるべきではない。
円安や物価高騰により米国からの防衛装備品購入は割高になっている。米政権の歓心を買うための装備品購入はやめ、必要な装備に絞って整備すべきではないか。
25年度予算案には自衛隊員の処遇改善のために4千億円余を計上した。自衛隊の人手不足への対応も防衛費の膨張要因だ。
一方、財源確保はめどが立たない。政府は法人税、たばこ税を26年度から増税する方針だが、所得税増税は再び先送りした。国民に負担増を求められないのは防衛費倍増自体に無理があるからだ。
野党には防衛費を規模ありきで増額したり、その財源を増税で賄ったりすることには反対意見が強い。通常国会では政府方針を追認するのではなく、防衛力の在り方について徹底審議すべきである。