桜を見る会と首相 疑惑晴らせぬなら辞任を
<琉球新報社説>
2019年12月3日 06:01

 疑惑のオンパレードだ。公的行事の私物化や法律違反、反社会的勢力が出席した疑い、マルチ商法企業が招待を利用し被害者の拡大につながった可能性にまで問題は広がっている。

 安倍晋三首相が自身主催の「桜を見る会」に、預託商法を展開して破綻した「ジャパンライフ」元会長を首相推薦枠で招待した疑惑が新たに浮上した。同社のチラシには招待状の写真が掲載されていた。政府のお墨付きを得たかのように招待状が宣伝に悪用され消費者の被害が拡大したのなら、大問題だ。

 反社会的勢力の出席も、事実なら、税金で接待したことになる。反社勢力の排除に先頭に立って取り組むべき首相が「功労者」と同等にもてなしたとなれば、知らぬ存ぜぬで済まされる話ではない。

 吉本興業の芸人が振り込め詐欺集団の会合で「闇営業」をしていたことが発覚した際には、大きな社会問題になった。明るみに出ている数々の新たな疑惑は、首相の進退を左右する問題と言える。

 さらに、首相の事務所スタッフがツアーに参加する地元支援者らに同行して上京する旅費を政治資金で支払っていた。事務所や後援会に「収支、支出は一切ない」と説明してきた首相の説明と矛盾する。政治資金規正法に違反する疑いが強まってきた。

 推薦名簿の破棄も、首相枠など招待者を隠蔽(いんぺい)するためと考える方が自然だ。共同通信の取材に各省庁は推薦名簿の保存期間を3~10年と答えたが、首相推薦名簿を破棄した内閣官房は1年未満とした。共産党国会議員が名簿を資料要求したその日に破棄したことへの後付けではないか。

 過去には選挙区の有権者にうちわを配ったケース、観劇会に招いたケース、秘書が香典を渡すなどしたケースで閣僚が辞任した。

 多数の後援者を国費を使って接待したり、一流ホテルの飲食を格安で提供したりする行為が許されるとは思えない。「前夜祭」の収支を含め多くの疑惑に対し、首相は身の証しを立て、疑念を払拭(ふっしょく)する責任がある。それを果たせないのなら辞任すべきだ。

 国会は法律を作るところだ。ルールを定める国会議員には高度な規範意識と倫理観、清廉さが求められる。首相であればなおさらだ。

 先月23、24日に共同通信が実施した世論調査では、「桜を見る会」に関する首相の発言を「信頼できない」とした回答は69・2%に上り、「信頼できる」は21・4%にとどまった。政権はこの結果を重く受け止めるべきだ。

 首相は破棄した名簿データの復元について「不可能であると報告を受けている」と参院本会議で述べた。根拠を示さない釈明に説得力はない。本当に復元できないなら、調査を指示して名簿を作り直すべきだ。国会で予算委の集中審議に応じて、説明責任を果たすことは首相の責務だ。


桜を見る会 これで責任は果たせぬ
<朝日新聞社説>
2019年12月3日05時00分

 安倍首相はなぜ、一問一答形式の委員会質疑に応じないのか。「桜を見る会」をめぐる一連の疑問について、一方通行の答弁で済む本会議への出席にしか応じないということ自体、説明責任を軽んじる行為と言わざるを得ない。

 首相がきのう参院本会議で答弁にたった。野党は参院規則に基づいて予算委員会の開催を要求している。委員の3分の1以上の求めがあれば、委員長は委員会を開かねばならないと定められているにもかかわらず、与党が応じないのはルール無視もはなはだしい。答弁の矛盾やごまかしを突かれるのが嫌だと見られても仕方あるまい。

 招待者名簿の廃棄をめぐる首相の説明は、野党議員の資料請求とは全く無関係という、政府の従来の立場をなぞるだけだった。一方、電子データの復元はシステム上、不可能と明言した。菅官房長官は先週まで「復元はできない」と言いながら、その根拠は示していなかった。相変わらずの説明の小出しは、不誠実きわまる。

 多くの消費者被害を出したジャパンライフの元会長が、桜の会の招待状を宣伝に使い、首相の推薦枠だった可能性も指摘されている問題については、招待者も推薦元も個人情報だとして「回答を控える」の一点張り。

一般論として「会が企業や個人の違法、不当な活動に利用されることは容認できない」と語ったものの、首相との関係を信じて契約した被害者の証言も明らかになるなか、人ごとのような反応ではないか。

 毎年、会の前夜に開いていた後援会の懇親会の会計処理についても、納得のいく新たな説明はなかった。

ホテル側と相談した際、費用などの明細書は示されなかったというが、にわかには信じがたい。ホテル側が「営業の秘密」を理由に資料提供に応じないとも語った。政治資金規正法や公職選挙法違反の可能性まで指摘されているというのに、本気で疑念を払拭(ふっしょく)するつもりがあるのだろうか。

 今国会は残り1週間。与党は会期の延長はせず、首相の説明もきのうの参院本会議で区切りとしたい考えだという。首相の保身を優先した幕引きなど、決して許されない。

 首相は桜を見る会の運用について「私自身の責任において全般的な見直しを行う」と繰り返し、招待者名簿の保存期間の見直しにも言及した。

しかし、政治の公平・公正に関わる重大な問題である。小手先の対応では、信頼回復はおぼつかない。まず、何よりも、さまざまな疑問について、首相が真摯(しんし)に説明を尽くすことが出発点にならなければいけない。
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