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米軍ヘリ、六本木でタッチ・アンド・ゴー 
密集地を低空で旋回
毎日新聞 2021/3/3 06:00
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キャプチャ.PNG--222東京・六本木の米軍ヘリポートに着陸し、30秒後に2回目の離陸をする米海軍ヘリ「シーホーク」
=東京都内で2020年8月21日午後0時55分、大場弘行撮影(写真は動画から)

 在日米軍ヘリが首都・東京の中心部で日本のヘリであれば違法となる低空飛行を繰り返している問題で、米海軍ヘリ「シーホーク」が渋谷駅や六本木ヒルズ周辺を低空で旋回するなどした後、六本木の米軍ヘリポートに着陸し、わずか数十秒後に離陸する様子を毎日新聞が確認した。

専門家は「タッチ・アンド・ゴー」と呼ばれる離着陸訓練と指摘している。離着陸を5回繰り返したこともあり、人口密集地で事故の危険性がある訓練が行われている。

 毎日新聞は昨年7月から約半年かけて都心を一望できる高さ200メートル級の複数地点から調査する中で、こうした飛行を確認した。


 シーホークは昨年8月21日午後0時45分ごろ、神奈川方面から渋谷駅周辺を経由して六本木のヘリポートに着陸。6分後に飛び立ち、約2キロ離れた渋谷駅上空で旋回した。その際の高度は駅直結の商業ビル「渋谷スクランブルスクエア」(高さ約230メートル)を下回り、このビルを軸に円を描くように六本木方面にUターンした。再び六本木のヘリポートに低空で接近して着陸すると、今度はわずか30秒で飛び立ち、渋谷スクランブルスクエアの横を通過して神奈川方面に飛び去った。

 今年1月5日には午後1時45分ごろに六本木上空に飛来し、六本木ヒルズと東京タワーの間(約1・5キロ)にある人口密集地を高度200メートル台で通過。家屋やビルがひしめく山手線南部エリアを周回した後にヘリポートに着陸し、40秒後に離陸した。

この後の約25分の間に離着陸を4回繰り返し、六本木ヒルズと東京タワーの間を200メートル台の高さで4回通過しており、着陸して20秒で離陸するケースもあった。
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米軍機によるタッチ・アンド・ゴーとみられるおおよその航路(1月5日)

 六本木のヘリポートは神奈川などにある米軍基地から米国の要人らを運ぶ際に使われるが、昨年8月21日と今年1月5日の着陸時に乗降者はいなかった。8月はヘリの乗組員が着陸後にヘリポートに降りて機体の写真を撮影していた。

 在日米軍司令部は取材に対して離着陸訓練をしているかどうかの質問に答えず「全ての飛行は任務に不可欠であるものか、訓練と即応のためのもの」としている。

東京都の担当者は「都心でタッチ・アンド・ゴー訓練をするという連絡は受けたことがない」と話している。【大場弘行、加藤隆寛】


専門家「大惨事になりかねない」

 毎日新聞が記録した映像を確認した複数の専門家は「典型的なタッチ・アンド・ゴー訓練だ」と指摘した。人口密集地での低空飛行を伴っているため「大惨事になる可能性もある」と懸念する声が出ている。

 元陸将で陸自のヘリパイロット経験がある山口昇・国際大副学長
「市街地にある六本木ヘリポートへの着陸は難易度が高い。これは着陸に慣れるための訓練で渋谷駅の高層ビルを目印に使ったのだろう。新しく輸送任務に当たるパイロットの訓練だったのかもしれない」と分析する。
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東京・六本木の米軍ヘリポートに2回目の着陸をした後、わずか30秒で離陸して南青山エリアを低空で通過する米海軍ヘリ「シーホーク」。後方に見えるのは六本木ヒルズ
=東京都港区南青山で2020年8月21日午後0時55分、加藤隆寛撮影(写真は動画から)

 元海上自衛隊のヘリパイロットでヘリ部隊を率いた小原凡司・笹川平和財団上席研究員も「必要な慣熟訓練」としつつ、「人口密集地では通常、必要最低限の回数しかやらない。繰り返したのはパイロットの飛び方がまずくて教官から指導が入った可能性もある」と述べた。

 元運輸安全委員会統括航空事故調査官としてヘリ事故の調査を手がけた第一工業大の楠原利行客員教授
「高層ビルが建ち並ぶ中での離着陸訓練は乗組員、地上にいる人たちの双方にとって危険だ。ヘリはいつ何が起きるか分からない。エンジンストップなどの機体の異変やパイロットの急な体調悪化もある。安全を確保できる場所でなければ大惨事になりかねず、米軍は訓練だと言えば何でもありになっているのではないか」と疑問を投げかけている。【内橋寿明】


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 「特権を問う」は首都・東京の低空飛行など在日米軍や日米地位協定にかかわる問題を独自取材をもとに掘り下げて伝えています。情報を「つながる毎日新聞」にお寄せください。LINEで動画も送れます。