「核燃サイクル」推進か撤退か
衆院選公約を比較した
川口雅浩・毎日新聞経済プレミア編集長
毎日新聞 2021年10月27日
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衆院選で、手を掲げ支持者に訴える候補者。原子力政策も争点の一つだ
=埼玉県内で2021年10月19日、橋本政明撮影

 今回の衆院選の争点の一つは原発をはじめとする原子力政策だ。原子力政策の中で、先の自民党総裁選で河野太郎氏が見直すべきだと主張し、議論を呼んだ核燃料サイクルをめぐる主要政党の政策はどうなっているのだろうか。

 核燃料サイクルとは、原発の使用済み核燃料を再処理し、取り出したウランとプルトニウムを再利用しようとする国策だ。

 ところが青森県六ケ所村の再処理工場はトラブル続きで完成していない。海外に再処理を委託して取り出したウランとプルトニウムを燃料に加工し、既存の原発で使う「プルサーマル発電」も計画通り進んでいない。再処理後に残る「核のごみ」(高レベル放射性廃棄物)の処分地も決まっていない。

 このため河野氏は総裁選で「今の原子力発電の最大の問題は『核のごみ』の処理が決まっていないことだ。使用済み核燃料を再処理してもプルトニウムの使い道がない」などと持論を展開した。

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核燃料サイクルの拠点となる使用済み核燃料再処理工場は完成していない
=青森県六ケ所村で2020年4月24日、本社機から北山夏帆撮影


自民党と公明党は核燃料サイクル推進

 今回の衆院選の主要政党の中で、原発の推進を明確に掲げているのは自民党と「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」だ。

 自民党は核燃料サイクルについて「関係自治体や国際社会の理解を得つつ再処理やプルサーマル等を推進する。再処理工場の操業に向けた準備を着実に進める。高レベル放射性廃棄物について、最終処分に向けた取り組みを着実に進める」としている。これは政府・自民党の従来通りの主張だ。

 公明党は「原発の新設を認めず、将来的に原発ゼロをめざす」としているが、核燃料サイクルについて「関係自治体や国際社会の十分な理解と協力を得ながら、国が前面に立って取り組む」としている。

 公明党の政策は連立政権を組む自民党に近いが、NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長は「核燃料サイクルをやれば余剰プルトニウムが発生する。原発をやめると言いながら、核燃料サイクルを続けるというのは矛盾するのではないか」と指摘している。
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野党各党の対応は?

 一方の野党は立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党が原発の再稼働と新増設を原則として認めず、脱原発を掲げる。日本維新の会と国民民主党も将来の脱原発を目指し、新増設は認めないが、再稼働は条件付きで容認する立場だ。

 核燃料サイクルについて野党各党はどうか。

 立憲民主党は「核燃料サイクル事業の中止に向け、関係自治体との協議による新たな枠組みを構築し、使用済み核燃料は直接処分を行う」と主張している。

 直接処分とは、使用済み核燃料を再処理せず、一定期間貯蔵・管理した後、核廃棄物として地下などに埋めることを指す。再処理を進めてきた英仏を除く欧米諸国の多くは、コストがかさむ再処理路線を捨て、直接処分を採用している。

 共産党は核燃料サイクルについて「再処理しても、使う当てのないプルトニウムと処分場のめどがない高レベル放射性廃棄物という厄介な荷物を抱え込むだけだ」として、「再処理工場を廃止し、核燃料サイクルからただちに撤退する」と主張している。

 社民党も「核燃料サイクル計画は事実上破綻している。再処理工場も直ちに廃止すべきだ」としている。
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候補者の演説を聞く有権者に各党の政策は届いているか
=大阪市西成区で2021年10月24日、加古信志撮影(画像の一部を処理しています)

選挙戦で議論を

 日本維新の会は高レベル放射性廃棄物の最終処分にかかる手続きを明確にするため新法を制定すると主張。国民民主党とれいわ新選組は核燃料サイクルについて選挙公約では明確にしていない。

 原子力政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「核燃料サイクルは進める場合も撤退する場合も、(コストや実現可能性など)議論すべき論点が多い。推進する方が問題は多いが、進めるなら具体的にどうするのか、衆院選で議論してほしい」と話している。

 これまでの党首討論や街頭演説などで、各党の党首らはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や再生可能エネルギーの導入促進には触れるものの、原子力政策については積極的に発言せず、論争を避けているように映る。

 経済対策やコロナ対策など緊急性の高い政策が重視されるのは当然だが、解決が困難な核燃料サイクルを含む原子力政策をどうするのか。各党の政策を比較しながら、党首らの生の声を聞いてみたい。