日米首脳会談 説明なき一体化の加速
社説 2024年4月12日 5時00分
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首脳会談に臨み、握手を交わす岸田首相(左)とバイデン米大統領
=10日、米ワシントン、岩下毅撮影

 自衛隊と米軍の「指揮統制」の連携強化、対中国を念頭に置いた米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」との協力、日米の防衛産業をつなぐ当局間の定期協議の新設――。

 岸田首相とバイデン大統領のワシントンでの日米首脳会談は、安保分野での協力の深化が前面に押し出された。日米を地球規模で協働する「グローバル・パートナー」と位置づけた共同声明は冒頭、「日米同盟は前例のない高みに到達した」とうたう。1960年の日米安保条約改定以来の「最大の変化の一つ」と評する米高官もいる。

 だが、それに見合う国民への説明は後回しになっていないか。加速する日米の「一体化」に幅広い支持が得られるのか。岸田政権の今後の姿勢が問われる。

 指揮統制の連携が求められる一因は、自衛隊の敵基地攻撃能力の保有にある。米軍任せだった「矛」の役割の一部を日本が担うため、運用面での調整が不可欠となった。

 自衛隊が今年度中に陸海空の部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を設けるのに併せ、米側も在日米軍司令部の体制を強化。平時・有事を問わず、連携を強める。

 政府は、有事でも自衛隊と米軍の指揮系統は別だと強調する。具体的な枠組みづくり次第だが、圧倒的な装備や情報力を持つ米国に対し、日本が本当に主体的な判断ができるのか、心もとない。

 防衛産業の連携では、日米でのミサイルの共同開発・共同生産や、米軍の艦艇や航空機の日本の民間施設での整備が念頭にある。AUKUSとは兵器開発に必要な先端技術分野での協力を検討する。

 日本は先の防衛装備移転三原則と運用指針の改定で、殺傷兵器の輸出に道を開いた。英国、イタリアとの共同開発の合意が先に立つ形で、日本から第三国への戦闘機の直接輸出も認めた。国際的な枠組みを先行させ、なし崩しに武器輸出を拡大するようなことが繰り返されてはならない。

 日米が同盟強化を急ぐ背景には、急速な軍拡を続け、既存の秩序に挑戦する中国の存在がある。ただ、経済分野も含め、中国への対抗のみが突出すれば、かえって地域の不安定化につながりかねない。

 共同声明は中国の強引な海洋進出を批判し、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘する一方、中国との率直な意思疎通の重要性や共通の関心分野での協力にも言及している。言葉だけに終わらせず、首脳や閣僚級の直接対話といった実際の行動が、日本にも強く求められる。