長射程ミサイルの配備 懸念に応えねば無責任だ
毎日新聞 2026/4/10 東京朝刊
地上発射型の国産ミサイル「25式地対艦誘導弾」の発射装置
=熊本市東区の陸上自衛隊健軍駐屯地で2026年3月17日、玉城達郎撮影
=熊本市東区の陸上自衛隊健軍駐屯地で2026年3月17日、玉城達郎撮影
新たな負担を押し付けるばかりで、懸念の声に正面から応えようとしないのは無責任だ。
防衛省が、長射程の「スタンドオフミサイル」を陸上自衛隊の健軍駐屯地(熊本県)、富士駐屯地(静岡県)に初配備した。健軍は射程約1000キロの地対艦型で、中国沿岸部や北朝鮮まで届く。富士には島しょ防衛用に変則軌道で飛ぶ高速滑空弾が置かれた。
相手国のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)としても使える。能力保有は2022年決定の安全保障関連3文書で明記されており、今回、運用段階に入った。
一方、配備地の周辺住民からは「相手国から攻撃目標にされるのではないか」「有事の際にどこへ避難すべきか」などと不安の声が上がる。ところが、政府は十分に説明していない。
健軍には3月上旬、県などに事前連絡しないまま、関連機材を運び込んだ。大まかな計画は発表済みだったとはいえ、地元への配慮を欠いた。

参院予算委員会に臨み、小泉進次郎防衛相(右)と言葉を交わす高市早苗首相=国会内で2026年3月25日、平田明浩撮影
富士では、1967年に地元と「ミサイル基地化しない」との合意を交わしており、整合性が問われた。小泉進次郎防衛相は「移動式のため合意には反しない」と釈明したが、詭弁(きべん)に近い。
いずれも要望があった一般住民向けの説明会は開かれていない。ミサイル配備によって、地域が引き受けるリスクは高まるはずだ。そうした状況変化について理解を得る努力をしなければ、国として責務を果たしたとは言えない。
確かに、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。中国など周辺国のミサイル技術の急速な向上や、配備弾数の増加なども指摘される。
だが、外国の領域を直接攻撃できる反撃能力の保有は、日本の原則である専守防衛を形骸化させかねない。運用で判断を誤れば、国際法が禁じる先制攻撃とみなされる恐れもある。
初めて9兆円を超えた今年度の防衛費で、長射程ミサイル関連は1兆円近くを占める。財政が悪化する中、裏付けとなる財源の議論は深まっていない。
緊張緩和のための外交も含めた中長期の戦略について、政府は国会などで説明を尽くすべきだ。








