レーダー照射 日中 衝突防ぐ冷静さを
朝日新聞 2025年12月9日 5時00分

中国軍のJ15戦闘機。写真は6月に自衛隊機P3Cに異常接近した際に撮影された中国空母「山東」の艦載機=6月8日撮影、防衛省提供
沖縄本島南東の公海上空で6日、中国軍機が自衛隊機にレーダー照射を行った。射撃の準備と受け止められ、偶発的な衝突にもつながりかねない極めて危険な挑発行為である。決して容認できない。
中国海空軍の西太平洋への進出は常態化しており、警戒・監視を続ける自衛隊との間で緊張が続く。意図せざる衝突を防ぐ冷静な対応と枠組みづくりが不可欠だ。
日本側の説明によれば、照射を行ったのは、演習中の中国空母「遼寧」から発艦したJ15戦闘機。領空侵犯に備えて緊急発進した航空自衛隊のF15戦闘機に対し、2回にわたり断続的に行われた。
射撃目標を定める火器管制用モードだった可能性が高いという。攻撃されうるというサインであり、航空自衛隊関係者は「拳銃の銃口を向けられ、引き金に手をかけられた状態」と例える。政府が「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為」として、中国側に抗議し、再発防止を求めたのは当然だ。
中国側は「訓練区域に自衛隊機が接近し、安全を脅かした」と批判するが、照射の正当な理由にはならない。
高市首相の台湾有事に関する発言を契機に、中国政府は日本側への対抗措置や、高市政権への批判を強めており、軍も同調している。ただ今回の事態が、直接連動したものなのかどうかは、慎重に見極める必要があろう。
中国軍は近年、海軍力を強化し、西太平洋への進出を急拡大させている。台湾統一を最重要目標とする習近平(シーチンピン)政権が、米軍の接近阻止に力を入れているためだ。11月には3隻目の空母「福建」が就役、4隻目の建造も伝えられる。
監視活動に当たる自衛隊との接点が増えれば、その分、不測の事態が生じる可能性も高まる。6月には、空母「山東」の艦載機が2回、海上自衛隊の哨戒機に異常接近する事案があったばかりだ。
日中両政府は23年3月、防衛当局間のホットラインを開設したが、ほとんど機能していないという。運用の仕方をめぐり、双方に認識のズレがあり、今回の件でも、使われることはなかったようだ。
互いの意図を見誤ることで、偶発的な衝突が起き、事態がエスカレートする恐れがある。今こそ両国は本気で、ホットラインを実効性あるものにしなければならない。
今回の事態を受け、首相は「冷静かつ毅然(きぜん)と対応する」と述べた。防衛当局間の意思疎通を促すためにも、首脳や防衛相レベルでの対話が重要となる。率先して政治の責任を果たしてもらいたい。




日刊スポーツ 2023年11月17日8時6分
