No Nukes 原発ゼロ

初代「No Nukes 原発ゼロ」 の後続版です。 政治・原発問題などを中心に、世の中の「気になる動き」をメモします。

エネルギー問題

停滞する再エネ導入 更なる普及へテコ入れを
毎日新聞 2026/2/17 東京朝刊
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メガソーラー開発計画を未然に防ぐため北海道鶴居村が日本ナショナル・トラスト協会と共同で購入する予定のタンチョウのねぐら近くの民有地(左上)=同村で2025年11月26日午後2時14分、山口智撮影

 電力の安定供給と脱炭素化の両立に欠かせない太陽光や風力発電の導入にブレーキがかかっている。
高市早苗政権は「原発の活用」にこだわるが、再生可能エネルギーの更なる普及に向けたテコ入れこそが急務だ。

 2011年の東京電力福島第1原発事故以降、政府の支援策を追い風に太陽光の導入が加速した。23年度の電源構成比率は事故前の約30倍となる10%弱となった。国のエネルギー基本計画は40年度に23~29%に高める方針を示す。

 だが、足元では逆風が吹く。

 メガソーラー開発を巡り、環境や景観への悪影響を懸念する地元との摩擦が顕在化している。北海道では釧路湿原の貴重な生態系を壊すとして反対運動が起きた。

 これを受け、政府は環境規制を強化し、27年度からメガソーラー新設への支援を打ち切る方針だ。乱開発に歯止めをかけることは必要だが、太陽光の普及を停滞させては元も子もない。

 懸念されるのは、首相がこれまでの普及策に否定的な姿勢を示していることだ。「私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことに猛反対だ」と述べた。中国製パネルの使用を問題視しているようだが、圧倒的なシェアを占める中国製を排除しては事業が成り立たない。

 代わりにビルの壁面などに張って使える国産のペロブスカイト太陽電池の導入を推進するという。だが、実用化には時間がかかる。

 国が公募した洋上風力開発の第1号案件も頓挫した。資材価格高騰などが原因だ。このままでは40年度に再エネ比率を4~5割に引き上げる目標を達成できず、50年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする国際公約も守れない。

 原発は再稼働が順調に進んでも40年度の電源構成比率が2割にとどまる。再エネ拡大なしには、人工知能(AI)の普及で増加する電力需要を賄いきれない。

 太陽光は規制強化一辺倒ではなく、地元と共生できる仕組みを整えるべきだ。工場の屋根など新設の余地も大きい。洋上風力は、企業が投資回収を見通せる環境づくりが欠かせない。

 再エネを軸に脱炭素時代に対応したエネルギー戦略を再構築することが求められている。

逆風下の再エネ 課題乗り越え、再び加速を
朝日新聞 2026年1月13日 5時00分
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陽光を発電と農作物で分け合う「ソーラーシェアリング」の
パネルが広がる農地
=2023年、千葉県匝瑳市、竹野内崇宏撮影

 再生可能エネルギーが、さまざまな課題に直面している。2011年の東京電力福島第一原発の事故を受け、政府は支援策を講じて導入を進めたが、環境や景観の観点から大規模太陽光発電施設(メガソーラー)に批判が高まるなど、否定的な言説が飛び交う。

 しかし、再エネは「純国産」エネルギーで、潜在力は大きい。確かに課題はあるが、ネットなどでは事実の誇張や歪曲も目につく。利点を冷静に評価し、再拡大へ官民が力を尽くすべき局面だ。

 ■大切な地域との共生

 先月末、政府はメガソーラーに関する政策を発表した。自然環境や安全、景観などの面で様々な懸念が生じているとし、「地域との共生が図られた望ましい事業は促進する一方、不適切な事業には厳格に対応する」とした。今後、地上設置型の事業用太陽光発電を補助金の対象からはずすことを検討する。

 釧路湿原での事業など各地でトラブルが生じており、違法な開発やパネルの廃棄も見られる。地元の理解と協力が不可欠なだけに見直しは必要だが、政府の姿勢には再エネにブレーキを踏もうとするような印象がぬぐえない。

 政策は「(原油などの輸入に伴う)国富流出の抑制やエネルギー安全保障の観点から、国産エネルギーの確保が極めて重要」との認識を示した上で、再エネとともに原発を最大限活用することをうたう。この二つを温室効果ガスの削減策としても伸ばしていく方針は、昨年決定した第7次エネルギー基本計画でも示されている。

 福島の事故後、朝日新聞の社説は原発に頼らない社会の実現を主張し、政府の原発回帰を批判してきた。事故の惨禍は、自然災害が多い日本での原発の危うさを示す。発電後に残る「核のごみ」の最終処分はメドが立たない。あくまで再エネが主力であるべきだ。

 再エネの活用で転機となったのは、12年に導入された固定価格買い取り制度(FIT)だ。高値設定を追い風に太陽光の導入が急速に進み、23年度には約20倍に増えた。

 ところが近年はその伸びが鈍り、いまも急拡大を続ける世界の状況とは対照的だ。14年には世界での新規導入量の4分の1近くを日本が占めたが、24年には1%を切った(太陽光発電協会調べ)。

 ■メガソーラー以外にも

 「平地面積あたりの導入量は既に世界一」と限界を指摘する声は少なくないが、メガソーラーのほかにも、さまざまな手法がある。

 既存の建築物を活用する「屋根置き型」や、農業と発電を両立させる「営農型」は、今回の政策でも触れられている。耕作放棄地、空港や道路、鉄道用地などの社会インフラを活用する余地も大きい。屋根置き型では、公共施設への義務づけのほか、民間の事業所や住宅への設置促進策を進めるべきだ。

 技術革新にも期待したい。パネルを曲げられる次世代のペロブスカイト太陽電池の実用化が進めば、ビルの壁面など設置場所は広がる。他の技術も含め、幅広く研究開発を進めたい。

 太陽光以外では、海外で伸びる洋上風力発電が有望だ。政府は遅れを取り戻そうと、秋田と千葉の沖合の3カ所で公募プロジェクトを進めてきたが、落札した三菱商事が資材高騰などによる採算の悪化を理由に撤退した。

 足踏みとなったが、世界で6番目に広い排他的経済水域を生かさない手はない。地元との共生を意識し、支援制度を早急に練り直してほしい。

 太陽光や風力の発電量は天候に左右される。電気は停電を防ぐために需要量と供給量を調整する必要がある。太陽光発電では、夏ほど需要が多くない春秋の晴天時の日中などで、発電を抑える「出力調整」を強いられてきた。

 ■「自立分散型」目指す

 設置された設備を十分に活用する手立てを尽くしてきたか。今回の政策が触れていない大きなテーマだ。

 具体的な対策として、電力会社間の送電網を強化し広域に電気を送ることとともに、蓄電池の設置を進めて余った電気をためることが、かねて課題とされてきた。

 これまでの支援策の検証と有効な方策の検討を急ぎ、着実に進めるべきだ。災害対策や地域振興策として電力の地産地消を掲げる自治体は多い。再エネと蓄電池を組み合わせた「自立分散型」のエネルギー供給は、持続可能な社会づくりにつながる。

 資源量が世界第3位の地熱発電や、中山間地域での小規模な水力発電などを含め、再エネの可能性は大きい。政府が予想する40年度の電力需要は、9千億~1兆1千億キロワット。一方、再エネの潜在的な供給力は、環境省の推計によると1兆1千億~3兆1千億キロワットだ。すべて活用できるとは限らないが、拡大の余地は十分にある。

 地域社会での合意を重ねつつ、「最大限活用」に努めるのに値するのは、再生可能エネルギーだ。

メガソーラー規制 自然を守り再エネ推進を
琉球新報 公開日時 2025年12月30日 04:00

 自然環境との調和と共生を図るため明確なルールが必要だ。再生可能エネルギーの導入推進という基本線は維持しなければならない。

 政府は大規模太陽光発電所(メガソーラー)の規制強化に関する対策パッケージをまとめた。市場価格に上乗せして電気を買い取る制度について、2027年度以降の新規事業は「支援の廃止を含めて検討する」と明記した。環境破壊の恐れがある開発に歯止めをかける狙いがある。

 メガソーラーについて自民党と日本維新の会の連立政権合意書は、2026年の通常国会で「法的に規制する施策を実行する」と明記している。維新が自民に提示した政策要求にも盛り込んでいた。

 背景にあるのはメガソーラー開発に伴う環境破壊のトラブルである。

 北海道は今年9月、釧路湿原周辺でメガソーラーを建設中の事業者に対し、森林法で定められた許可を得ないまま工事を進めたとして森林区域での工事中止を勧告した。釧路市も「貴重な野生動植物の生息生育環境が脅かされる事態」が懸念されるなどとして、メガソーラー建設を規制する市条例(釧路市自然と太陽光発電施設の調和に関する条例)を9月に制定した。

 自然環境や景観保護の観点からメガソーラー開発に一定の規制をかける条例制定の動きは全国に広がっている。地方自治研究機構のまとめによると、条例制定は2014年の大分県由布市、岩手県遠野市に始まり、12月19日時点で335の県や市町村が条例を制定している。法整備を求める声も高まっていた。

 国際社会が要請する温室効果ガス削減に取り組むため再生可能エネルギー導入は避けては通れない。それは自然環境との調和や地域住民の理解が前提となる。そのための法規制は必要であろう。

 各県の条例も「地域環境との調和」(兵庫県)や「自然環境、歴史・文化的環境等との調和」(山形県)をうたっている。国の進める法整備もメガソーラーと自然環境との調和、共存をしながら再生エネルギー導入を目指すものでなければならない。

 自民と維新の連立政権合意書には「安全性確保を大前提に原発の再稼働を進める」と明記している。メガソーラーに関する法整備によって再生可能エネルギーの導入が鈍化し、原発依存が高まることがあってはならない。

 太陽光発電と並んで再生可能エネルギーの柱である風力発電も厳しい環境にある。三菱商事が今年8月、秋田、千葉の両県沖で進めてきた洋上風力発電所の建設計画から撤退すると発表している。建設費用が入札時の見込みから2倍以上に膨らみ採算が合わなくなったためだ。

 国に求められるのは再生エネルギーに関する事業の育成である。規制だけでなく地域や自然との調和・共生に向けた積極的な施策も必要だ。

「メガソーラーは悪」のレッテル貼り 
地域に根付く施設さえヤリ玉に 
釧路湿原問題が再エネ全否定を招く危機感
東京新聞 こちら特報部 2025年9月21日 06時00分

 全国各地の大規模太陽光発電所(メガソーラー)事業に対する批判が強まっている。法令違反や環境破壊は看過できないが、太陽光発電自体は再生可能エネルギーとして推進すべきものではなかったか。環境に配慮しながら運営されるメガソーラーも含めて全て悪なのか。現場を訪れて考えた。(中川紘希)

◆「市民で発電所を建設したい」実現

 千葉県匝瑳(そうさ)市の農地に支柱が立てられ、3メートル余りの高さに細長いパネルが規則正しく並んでいる。列と列の間隔は広く、足元の大豆畑に日光が降り注いでいた。1メガワット以上の出力でメガソーラーにあたるが、山がパネルで覆われるようなネットで出回る画像とは異なる風景だ。

 「太陽光に否定的な方が見学に来ても『考え方が変わった』と言ってくれることが多い」。農業と発電を両立させるソーラーシェアリングに取り組む「市民エネルギーちば」(同市)の宮下朝光専務(68)は「こちら特報部」の取材に話した。
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市民エネルギーちばのメガソーラー。発電と農業を両立させるソーラーシェアリングに取り組んでいる=千葉県匝瑳市で

 県内の環境団体の代表者らが2014年、「市民で発電所を建設したい」と考えて同社を設立した。衰退する地域農業の再生も目指し、耕作放棄地を活用している。パネルの下で農業法人が大豆と麦を育てている。

 太陽光発電のパネルは、その幅の2倍の間隔を空けて並べている。植物は日光が当たりすぎると成長を止める性質があり、農作物に悪影響を与えない範囲で発電しているという。市民や信用金庫などの出資を受けながら事業を拡大し、現在では23ヘクタールの農地にメガソーラー2基と1メガワット未満の通常の太陽光発電24基を稼働させている。

◆売電収入を地域に循環させる

 批判が絶えない他のメガソーラーとの違いは、売電収入の1割程度を住民や農業従事者に還元する「匝瑳システム」にある。

 農業収入の安定化に役立ててもらうため、農業法人に耕作協賛金として年約1000万円を支払っている。さらに地権者に地代として年約380万円、地元の豊和村つくり協議会にも協賛金年400万円を支払っている。長期休み期間中の小学生を預けられる施設の運営費や移住者への支援金などに使われている。これらとは別に固定資産税も納めている。

 宮下氏は「売電収入を地域に循環させ元気にしたい。都会の大企業が売電収入だけを搾取するようなやり方とは異なる」と話した。災害時には発電を地域に開放しており、2019年の台風で停電が起きた際も6日間に延べ150人がスマートフォンの充電などに使った。

◆「利権」「自然破壊」根拠のない批判
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災害時に地域のために開放される太陽光発電を活用した電源
=千葉県匝瑳市で

 ただネット上では同社に関わる不確かな情報も拡散されている。2017年にメガソーラーの落成式を行った際に脱原発を目指す元首相の小泉純一郎氏、細川護熙氏、菅直人氏が出席した画像について、あるアカウントがX(旧ツイッター)で今月14日、「日本を壊し続けている」などと文章を付けて投稿。「利権がある」「太陽光は自然破壊だ」などのコメントが相次いだ。

 椿茂雄共同代表(74)は「利権の根拠がわからない。政治的な立場が違う3人でも同じ事業に期待してくれただけでは」と戸惑う。ネットの批判に「私たちも自然に負荷をかける事業には反対だ。一方で地域と調和し共生を目指す太陽光発電があることも知ってほしい」と話した。

 宮下氏も「不正確な情報全てを正すことはできない。それよりも地域でコツコツと良い事例を積み上げていくことの方が重要だろう」と話した。

◆地域に貢献する仕組みで受け入れられた

 再エネ推進を目指す公益財団法人「自然エネルギー財団」の尾身悠一郎上級研究員は、匝瑳市の取り組みについて「メガソーラーであっても、地域の経済や課題解決に貢献する仕組みにすることで、住民も受け入れられることを示している」と話した。

 電力会社「自然電力」(福岡市)が、2021年に始めた長野県王滝村のスキー場跡地でのメガソーラー事業の地域支援策も特徴的だ。同社は2039年まで毎年、売電収入から10万〜50万円を村に寄付する。

 寄付金は、村外に進学した学生がUターンした場合などに奨学金の返済を補助する取り組みの資金に充てられている。村教育委員会の担当者は「小さなまちにとって大きな財源だ。若い人の定住促進に役立っている」と話した。

◆建設中止…ネットは盛り上がり

 一方で自然電力は今月4日、岩手県大船渡市のメガソーラー計画について、人件費や資材高騰などを理由に中止すると発表した。市によると、自然破壊などへの懸念により住民の中で賛否が分かれていた。

 ネットは「正しい判断だ」「他の事業も中止にすべきだ」などと盛り上がった。

 ただ同社電源開発本部の高尾康太本部長は、事業では福島第1原発事故による放射能汚染で使えなくなった牧場跡地の活用を予定していたとし「地域課題への貢献も考えていた。メガソーラー全てを一律に見るのではなく、中身を見て是非を考えてほしい」と話した。

◆環境団体は「関心高まりありがたい」
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自然電力がスキー場跡地に稼働させているメガソーラー。
住民からは見えないように景観に配慮されている
=長野県王滝村で

 メガソーラー問題で注目されているのが、北海道・釧路湿原国立公園の周辺での「日本エコロジー」(大阪市)の計画だ。国の特別天然記念物タンチョウなどへの影響の懸念を訴えてきた釧路自然保護協会の神田房行会長は「急速に全国の関心が高まっている。反対の声が上がるのはありがたい」と話す。

 ただネット上では太陽光発電自体を否定する主張も広がる。神田氏は「太陽光は、場所を選び環境に配慮した形で推進していくべきだと考えている。釧路の問題が、再エネを全否定したり原発を推進したりするための議論に利用されかねない面はある」と複雑な思いを明かした。

 なぜ今、メガソーラー批判が高まっているのか。

◆再エネに中立的な層にも不安が

 先の尾身氏は「これまでも太陽光発電自体を否定する層がいて『パネルは消火できない』『温暖化の原因』などのデマを流していたが、情報の拡散はグループ内にとどまっていた」とみる。ただ釧路湿原の乱開発の映像が広まり「エコをうたうメガソーラーが自然破壊になっているという矛盾が浮き彫りとなり、再エネに中立的な層にも不安が広がった」とみる。

 一方で「火力発電も使い続ければ気候変動や地球温暖化を深刻化させ環境を破壊する。メガソーラーだけを批判するのは論理的ではない」と批判した。

◆乱開発業者を擁護するつもりはない

 東京大の江守正多教授(気候科学)もメガソーラーを巡るデマの拡散に警戒する。「日本エコロジーの乱開発は(自然を保護すべきである)国立公園で行われている」という誤解が広がっていたことを受け、公園外の行為であることをXで発信した。「業者を擁護するつもりはない。ただ誤解され実態以上に悪い印象になり、再エネ全てが悪であるかのような言説が広がることをけん制したかった」と説明する。

 森林伐採を伴う太陽光発電も、火力発電の量が減れば二酸化炭素(CO2)排出も減るため、地球温暖化対策には役立つといい、冷静な議論を呼びかける。江守氏は「乱開発への反対の声が高まるのは結構なことだ。ただ、そこで発電できないなら、どこでできるのかまで考えてみてほしい」と語った。

◆デスクメモ

 こちら特報部は、釧路湿原周辺のメガソーラー乱立で希少種への影響が懸念されることを7月23日に報じた。環境破壊につながる事業に警鐘を鳴らそうとしたからだ。だが、環境に配慮しながら地域農業の再生を目指す取り組みまで否定されなければならないのだろうか。(義)

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原発回帰いっそう鮮明
エネ基本計画原案 新規建設も踏み込む
しんぶん赤旗 2024年12月18日(水)

スクリーンショット 2024-12-18 172448 国の中長期のエネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画」の原案が公表されました。
17日に開かれた経済産業省の審議会で示され、意見を踏まえさらに検討するとしました。

 原案で原発については、東京電力福島第1原発事故以降、政府自身が掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」の文言を削り、
再生可能エネルギーと合わせ「最大限活用」を打ち出しました。事故の教訓を投げ捨て、原発回帰をいっそう鮮明にした形です。

 さらに原発の新規建設について踏み込み、岸田文雄政権が2022年12月に決めた「GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針」で廃炉を決めた敷地内と限定していたのを、
電力会社が同じなら敷地外でも可能にし、新規建設をしやすくする方針としました。新規の原発についても「開発・設置に取り組む」としました。

 原案は2040年度の電源構成に占める原発の割合を「2割程度」、太陽光など再生可能エネルギーの割合を「4~5割程度」に、LNG(液化天然ガス)や石炭などの火力発電を「3~4割程度」と温存する方針です(図)。

 現行の計画は30年度に原発は20~22%、再エネは36~38%、火力を41%(うち石炭を19%)などにするとしており、新しい計画はその先の10年後も大きく変わらない目標となりました。再エネについて現行計画にあった「最優先の原則」で取り組むとの文言がなくなりました。

 G7(主要7カ国)で唯一、廃止期限を表明していない石炭火力については、「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」などとし、火力発電を分類した目標を示していません。

エネルギー基本計画原案骨子

 17日に経済産業省が審議会に示した第7次エネルギー基本計画の原案の骨子は次の通りです。

・2040年度の電源構成で原発の比率を「2割程度」とする
・原発の「可能な限り依存度を低減する」方針を削除
・原発は再生可能エネルギーとともに「最大限活用する」
・原発の建て替え方針を緩和
・新規の原発の「開発・設置に取り組む」と明記
・再生可能エネルギーの比率を「4~5割程度」にする
・火力を「3~4割程度」とする

 エネルギー基本計画 
エネルギー政策基本法に基づいて策定されるもので、電力や電源について国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す計画。少なくとも3年ごとに情勢の変化などを踏まえ改定されます。現行計画は2021年10月に閣議決定。今回が第7次計画で、40年度にめざす電源構成を示し、政府の温室効果ガス削減目標の裏づけとなります。

エネルギー計画 福島の教訓 忘れたのか
朝日新聞社説 2024年12月18日 5時00分
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 経済産業省が次期エネルギー基本計画の素案を示した。東京電力福島第一原発の事故後に掲げてきた「原発依存度を可能な限り低減する」という方針を削除し、
「次世代革新炉」の開発・設置を盛り込んだ。重大な事故の教訓を投げ捨てるような変更であり、強く反対する。

 「原発依存度低減」は、安倍政権下での14年の第4次計画で「エネルギー政策の出発点」として盛り込まれた。その後も現行の第6次計画まで維持され、形骸化への圧力にさらされつつも、原発回帰への歯止めになってきた。

 ところが、今回の経産省素案はこれを削った上で、「再エネと原子力をともに最大限活用することが極めて重要」と明記した。方針としては百八十度の転換に等しい。

 一時は東日本の壊滅さえ現実味を帯びた事故からまだ14年足らず。廃炉の終わりは見えず、復興も道半ばだ。過酷な災害が多い国土の条件や、未解決の「核のごみ」の問題など、原発の抱える根本的な難点は変わらないままだ。

 事故の「深い反省」の上に歴代政権が維持してきた基本姿勢を、原発推進派が大多数の審議会の議論だけで変えることは許されない。政府はより多様な声を踏まえ、計画のあり方を熟慮すべきだ。

 足元の現実とも乖離(かいり)している。既存原発の再稼働さえ、電力会社の不祥事や地元の不安などで、経産省の想定通りには進んでこなかった。素案が示す40年度の電源構成に占める原発の割合は2割で、現行目標の30年度に20~22%と同程度だ。

 一方で、原発の建て替えについては、同じ電力会社なら他の原発の敷地内も認める方針を示した。岸田政権が2年前に「最大限活用」を打ち出したときでも「廃炉を決定した敷地内」に限っていたが、早くも緩めた。事実上の新増設容認にほかならない。

 経産省は最近になって40年度時点で原発新設に経済的な優位性があるとの試算を示したが、素案では脱炭素電源の「事業・市場環境整備」も強調している。原発の採算確保のために国民負担を生じさせないか、疑問が拭えない。

 素案は、国際的な温室効果ガス削減目標との整合性も問われる。40年度の電源構成で火力発電の比率を3~4割としているが、石炭火力の廃止は示さず、水素の利用や二酸化炭素の地下貯留を織り込む。高コストで普及には技術革新や適地確保が前提だ。

 過去の計画も原発や火力への楽観が、エネルギー構造の転換を遅らせてきた。同じ過ちを繰り返してはならない。

温室ガスの削減目標 脱炭素への野心が足りぬ
毎日新聞 2024/12/2 東京朝刊
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各地で深刻化している地球温暖化。酷暑の中、
設置されたミストを浴びながら水分補給をする中学生
=静岡市葵区で2024年7月7日、宮間俊樹撮影

 地球温暖化は人類が直面する最大の環境問題である。日本は先進国として、実効性の高い対策を進める責務がある。

 環境、経済産業の両省が温室効果ガスの新たな削減目標案を公表した。2035年度に13年度比で60%減らす。現在掲げている30年度46%減の延長線にある。この削減ペースを維持すれば、国際約束としている50年の排出量実質ゼロを達成できるという。

 パリ協定に基づき、各国は来年2月までに35年の削減目標を提出することになっている。今回の案は、脱炭素社会実現までの道筋を示すことで、企業の対策強化や市民の意識改革を図る狙いもある。

 ただ、この目標では不十分といわざるを得ない。

 国際社会は、産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅を1・5度までに抑えることを目指している。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」などの分析では、35年には世界全体で13年比66%減とすることが必要だ。

 対策を強化しなければ、今世紀末の気温は3・1度上昇すると、国連環境計画(UNEP)が予測した。今年は最も暑い1年となる見通しで、自然災害も激甚化している。

 1・5度目標の達成は遠のくばかりで、削減ペースの加速は喫緊の課題だ。とりわけ温室効果ガスを大量排出してきた先進国には積極的な貢献が求められている。

 日本は再生可能エネルギーの普及を進め、国際社会から批判の強い石炭火力発電への依存度を下げなければならない。

 温暖化対策は、経済を底上げし、次世代によりよい環境を残すための投資と位置づけるべきだ。

 これまでも省エネ効果の大きな青色発光ダイオード(LED)など日本発の技術が世界の対策に貢献してきた。最近では、軽量で曲がることから設置場所の制約が少ない「ペロブスカイト太陽電池」が国際的に注目を集める。

 アジア・太平洋地域には、経済成長に伴い排出量が急増している国が多い。日本が培った技術や排出削減を促す資金の提供などの支援も強化したい。

 新たな技術開発を促し、国際競争力も高める。そのためには野心的な目標の設定が不可欠だ。

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