公明党結党60年 原点回帰、行動で示して
東京新聞 2024年11月20日 07時54分
結党60年を迎えた公明党が斉藤鉄夫新代表の下で再始動した。
10月の衆院選では8議席減の24議席に後退し、当時の石井啓一代表も落選。比例代表は過去最低の約596万票に落ち込んだ。
支持母体である創価学会の高齢化に加え、「清潔な政治」「平和の党」という立党の精神より自民党との連立維持を優先したことが退潮の要因だろう。党再生には原点回帰を行動で示すほかない。
公明党は長く野党だったが、1999年の連立参加後は政治改革や安全保障政策で独自色を抑え、自民党に譲る場面が目立った。合意に向けて妥協することは与党の責任だと弁解しても、党の看板政策が色あせたことは否めない。
斉藤氏は結党60年に当たり「還暦には新しく出発するという意味がある。党再生の仕事を全力でやっていきたい」と述べた。まずはこれまでの自民党との関係を総括することから始めるべきだ。
衆院選では裏金に関わった候補35人を推薦し、自民党が非公認とした2人も含まれる。見返りに公明党が公認候補を擁立した小選挙区や比例代表での集票を期待した党利党略というほかない。有権者から裏金事件の自民党と「同じ穴のむじな」(山口那津男元代表)にみられて当然である。
衆院選敗北後も「政治とカネ」を巡る対応が十分とは言えない。15日にまとめた政治資金規正法再改正の要綱案では、金権腐敗の元凶とされる企業・団体献金の禁止に触れなかった。「廃止しても問題ない」(斉藤氏)と言いつつ禁止に踏み込まないのは、存続を望む自民党への配慮ではないか。
自民党への追従は安保政策でも顕著だ。第2次安倍政権以降、集団的自衛権の行使や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、殺傷能力のある武器の輸出解禁を相次いで容認した。いずれも当初は難色を示しつつ、結局は押し切られた。自民党の「歯止め役」と言い張っても、空虚に響く。
公明党は選択的夫婦別姓の導入や核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を唱えてきたが、自民党が同意せず実現していない。与党が衆院で過半数割れした今こそ、主張が重なる野党と手を結び、自民党に政策転換を迫るべきだ。
形骸化が指摘されてきた国会を与野党の実質的な審議の場とするために、公明党が主導的役割を果たすよう期待したい。