No Nukes 原発ゼロ

初代「No Nukes 原発ゼロ」 の後続版です。 政治・原発問題などを中心に、世の中の「気になる動き」をメモします。

東京電力

東電が再建計画先送り 原発頼みの限界露呈した
毎日新聞  2025/4/9 東京朝刊
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東日本大震災から14年となり、事故を起こした福島第1原発で社員に訓示する東京電力ホールディングスの小早川智明社長
=福島県大熊町で2025年3月11日、岩間理紀撮影

 これで福島復興や電力安定供給の責任を果たせるのだろうか。

 東京電力ホールディングスが、2024年度内に予定していた再建計画の改定を先送りした。収益改善の「切り札」と当て込んだ柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働のめどが立たないためという。

 賠償や廃炉など福島第1原発事故の処理に必要な資金を、東電は国から借り入れている。電力事業に使う資金は、銀行からの融資で賄っている。これら支援の前提となるのが再建計画だ。

 事故翌年の12年に初めて策定され、ほぼ3年ごとに改定されてきた。事故処理費用は当初6兆円と見積もられたが、21年に策定された現行計画では21・5兆円に膨らんでいた。

 その後、福島第1の処理水の海洋放出に伴う漁業者補償などが加わり、23・4兆円に拡大した。国からの借入上限額は、15・4兆円に引き上げられた。今回はこれらを踏まえ、計画の改定が求められていた。

 東電は、国に毎年5000億円ずつ返済することになっている。だが、近年は業績低迷で平均4000億円程度にとどまる。

 「1基動けば1000億円の収支改善効果がある」と期待した柏崎刈羽の再稼働が実現していないのが主な原因だ。当初は19年度に動かせると見込んでいたが、テロ対策の不備など不祥事を繰り返した結果、地元の同意を得る見通しが立たなくなった。

 安全対策費として1兆円超を投じたことが経営の重荷となり、資金繰りも厳しさを増している。電力の安定供給に必要な設備投資さえままならなくなることが懸念されている。

 そもそも、重大事故を起こしながら、原発頼みの再建シナリオを描いたことに無理があった。今年度中を目指す改定では、戦略を抜本的に見直すべきだ。

 収益力向上に向けて、事業再編を加速させなければならない。火力発電部門は19年に中部電力と統合したが、成長性の高い再生可能エネルギー分野などに他社との協業を広げる必要がある。経営合理化を一層進め、財務体質の悪化に歯止めをかけることも急務だ。

 原発に依存しない再建策こそが求められている。

柏崎刈羽原発
再稼働の動き 世論で止めよう
しんぶん赤旗主張   2024年4月27日(土)

 福島第1原発で世界最悪レベルの事故を起こした東京電力が再び原発を稼働しようと動いています。東電が新潟県・柏崎刈羽原発7号機原子炉に核燃料を装填(そうてん)し、原子炉起動に向けた使用前検査を進めています。

 同原発は、テロ対策の不備を理由に原子力規制委員会から核燃料の移動を禁じられていました。昨年12月に禁止命令が解除されたことから、東電は、地元同意の見通しがないまま核燃料装填にふみきりました。既成事実を積み上げて再稼働へと突き進もうという執念は軽視できません。

■政府が強く後押し

 今年3月には、東電から今後の対応方針について報告を受けた斎藤健経産相が、花角英世新潟県知事、桜井雅浩柏崎市長、品田宏夫刈羽村長に電話で再稼働への理解を求めました。資源エネルギー庁長官らも現地に出向きました。

 政府と東電が一体となって再稼働への動きを強めていることは重大です。福島原発の事故も被害も終わりが見えないもとで、東電が原発を再稼働させることは許せません。県民、国民の大きな世論と運動で政府と東電の動きをはね返す必要があります。

 原発回帰に舵(かじ)を切った岸田文雄政権は「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月閣議決定)で、「国が前面に立って」環境整備に取り組み再稼働を進めると宣言し、経産省幹部が足しげく新潟県に通うなど柏崎刈羽原発の再稼働を強力に後押ししてきました。

 テロ対策の不備や不正が相次ぐ東電への不信は根深いうえ、住民の間には能登半島地震で地震による原発事故への不安が強まっています。東電による住民説明会では避難路や屋内退避などへの不安の声が多く出されました。住民の思いを無視して再稼働に突き進む政府と東電の姿勢には新潟県内の首長からも懸念の声が出されています。

 新潟県は、福島原発事故の原因、健康と避難生活への影響、避難方法の「三つの検証」を行い、多くの課題が示されました。

 花角知事は「三つの検証が終わるまで再稼働の議論はしない」「再稼働の是非は県民に信を問う」と公約してきたこともあり、柏崎刈羽原発の再稼働について態度を明らかにしていません。しかし知事は昨年、検証総括委員会を廃止し、「三つの検証」の幕引きを図りました。予断を許さない状況です。再稼働の是非を議論するうえで、福島原発事故の検証は不可欠です。「三つの検証」をあいまいにせず、県民的な議論を行うべきです。

■地震国という危険

 能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県)で変圧器が壊れて外部電源の一部を失うなど深刻なトラブルが続出しました。現行の避難計画が机上の空論であることも浮き彫りになりました。道路が寸断されれば逃げられず、家が壊れれば屋内退避もできません。

 日本は世界有数の地震・津波国です。福島原発事故でも能登半島地震でも明らかなように、日本で原発を稼働させることはあまりにも危険です。日本社会の現在と将来のために、原発回帰の自民党政治を終わらせ、原発ゼロの日本をつくりましょう。


東電の原発管理 安全安心にはほど遠い
2023年12月27日 07時45分
東京新聞2023-07-28 085056
 原子力規制委員会は、東京電力柏崎刈羽原発の事実上の「運転禁止命令」を解除する。「お墨付きを与えたわけではない」と規制委自身が言うように、安全上の不備が今も相次ぐ東電の「再生」は道半ば。東電に「安全文化」が定着したとは言い難い。このまま原発の運転を認めてもいいのだろうか。

 柏崎刈羽原発では2021年の1月から3月にかけて、運転員が同僚のIDカードを使って中央制御室に入る規則違反や、外部からの侵入者を検知する機器の不具合が長期間にわたって放置されていたことが発覚した。

 このため規制委は同年4月、柏崎刈羽原発での核燃料の移動を禁止した。燃料の装塡(そうてん)ができなくなれば、原発は動かせない。すでに新規制基準への適合審査を終えていた6、7号機を含め、事実上の運転禁止命令だった。

 規制委は東電に是正を求め、原子力規制庁が追加検査を実施。その結果、「自律的な改善ができる状態にある」として、命令の解除を決めた。ところが、禁止命令が出た後も、柏崎刈羽では、東電のずさんさが浮き彫りになるようなトラブルが続いている。

 今年6月、不審者の侵入を感知する照明の電源が、半年以上も入っていなかったことが明るみに出た。10月には、違法薬物の陽性反応が出た職員が核燃料を扱う「防護区域」に入るのを見逃した。係員が陰性と見誤ったためという。

 未曽有の事故を起こした東電福島第1原発内でも同じ10月、放射能汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)の配管を洗浄中の作業員が、誤って高濃度の汚染廃液を浴び、病院へ運ばれるという事故が起きている。

 「評定は『優』や『良』ではなく『可』だ」と規制委の伴信彦委員。山中伸介委員長も「どのような判断になろうとも、規制委が東電にお墨付きを与えたわけではない」という。こうした逃げ口上ともとれる発言と運転禁止解除の判断に整合性があるとは思えない。

改善の余地は多く残り、安心にはほど遠い。規制委は厳正な監視役としての責任を果たすべきだ。

東電と原発 疑い残る「安全文化」
朝日新聞 2023年12月18日 5時00分
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東京電力柏崎刈羽原発。左から5、6、7号機=2023年6月18日午後2時12分、
新潟県柏崎市、刈羽村、朝日新聞社機から、岩下毅撮影

 東京電力に原発を動かす資格はあるのか。原子力規制委員会が年内にも、新潟県にある柏崎刈羽原発の事実上の運転禁止命令の解除の可否を判断する。安全を最優先する文化が東電に根付いているのかには依然大きな疑義があり、厳格な見極めが必要だ。

 規制委は2021年4月、再稼働の主な審査を終えていた6、7号機を含む柏崎刈羽原発で、核燃料の移動を禁止した。テロ対策の不備が相次いだためだ。事務局の原子力規制庁が追加の検査をし、今月6日に不正侵入対策などの全項目が改善されたとする報告書案を示した。

 山中伸介委員長らは現地調査を終え、近く東電社長との面談を経て、最終的に判断する。解除になれば再稼働に向けて地元同意の段階に移る。

 だが、こうした手続きが進む一方で、東電に原発運転を任せていいのかと思わせる事態が最近も続いている。

 柏崎刈羽では今年6月、不審者の侵入対策用の照明の電源が入っておらず、約7カ月間点灯していなかったことが発覚した。10月にも薬物検査で陽性反応が出た社員を防護区域に入れる事案があり、花角英世・新潟県知事が「3年前からあきれるような事案が続いている」として是正を求めた。

 規制庁は今回、東電が原発を運転する事業者の責任として、福島第一の廃炉に「主体的に取り組み、やりきる覚悟とその実績を示す」という基本姿勢にのっとっていることも確認したという。

 だが、福島第一では10月に多核種除去設備(ALPS〈アルプス〉)の配管を洗浄中に高濃度の汚染廃液を浴び、作業員の男性2人が入院した。原発内での除染だけで対応できず病院に運ばれたのは、11年の事故直後以来の事態である。

 法律に基づく実施計画違反は明らかで、東電の管理体制の甘さは見過ごせない。報道発表も修正を繰り返し、安全文化に関わる「正確な情報発信」でも課題を露呈した。

 規制庁はこの件は「現在検査中」としながら、全体としての廃炉の取り組み姿勢には問題がないと結論づけた。規制委の山中委員長も報告書を受け、「規制当局が介入して改善してもらう状況は脱した」と述べたが、現状ではうなずきがたい。

 禁止命令は、規制委が安全文化などの適格性も審査して「お墨付き」を与えた後に、テロ対策の不備が発覚して出された。同様の事態が繰り返されないと、地元を含めた社会全体に説得力をもって語れるのか。東電、規制委ともに責任の重さを銘記すべきだ。

【処理水問題】放出の目的は何だ(9月28日)
福島民報  2023/09/28 08:53

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受け、インタビューに応じた前原子力規制委員長の更田豊志氏は、今後の廃炉について処理水問題以上に難しい局面が続くとの見方を示した。専門家としての冷静な視点からの的確な指摘と受け止めたい。

 更田氏は今後の課題として、約880トンと推定される溶け落ちた核燃料(デブリ)や容量の多い汚染がれきの処分を挙げて「(処理水より)ずっと難しい。関係者の理解を得て処分するのに途方もない時間がかかるだろう」と述べた。デブリや汚染がれきを最終的にどう処分するのかは議論すら始まっていない。

 「途方もない時間がかかる」という言葉は、処理水の海洋放出までの経緯を見てきて、その通りだろうと感じる。処理水の場合、科学的見地に立てば放出しても人や環境への影響は無視できると評価されている。それでも県内をはじめとする漁業者は最後まで反対の姿勢を崩さず、風評への懸念が拭えないままの放出となった。更田氏は「苦渋だが不可避の選択だった」と振り返った。

 高レベル放射性廃棄物のデブリなどの最終処分に対する反応はどうなるだろう。通常の原発の使用済み核燃料は、最終処分の可能性を探るため二つの自治体が手始めの調査に乗り出したばかりだ。長崎県対馬市長は調査の前段で受け入れないと表明した。原発事故で生まれたデブリとなると、最終処分への壁は高くなるのは容易に想像できる。

 だとしても、漁業者の十分な納得を得ないままに海洋放出という「苦渋」の選択をした目的は何だったのか、思い出してほしい。政府、東電は林立する処理水のタンクは廃炉の妨げとなると主張し、海洋放出に突き進んだ感は否めない

漁業者ばかりでなく、新たな風評に不安を持っていた県民も廃炉を進めるためならば、致し方ないと受け入れた面が間違いなくある。

 処理水の放出から1カ月が経過し、2回目の放出も始まる。放出の際に岸田文雄首相は「今後数十年の長期にわたろうとも、全責任を持って対応する」と約束したが、それは当然のことだ。海洋放出の目的を踏まえれば、できるだけ早期に廃炉の最終形までの道筋をつけることこそが求められる。(安斎康史)

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福島第一原発 ALPS水・海洋排水に関する
12のディスインフォメーションを指摘する

Hiro Ugaya 烏賀陽弘道
2023年8月24日、日本政府と東京電力は福島第一原発からの「ALPS水」を海洋への排水を始めました。

同時に、総理官邸だけでなく外務省、経産省など政府のほか自民党議員から、排水を正当化するプロパガンダ情報が猛烈な数、主にTwitter上に流れてきました。

それらを記録・観察・分析するうちに気づいたのは、ディスインフォメーション(意図的に流される虚偽情報)が多数含まれていることです。

そしてさらに深刻なのは、特に根拠も確かめずに、その政府のディスインフォメーションを無邪気に信じている人が多数SNS上に現れてきたことです。

そうした政府や東電の流しているディスインフォメーションの中で、特に問題が深いものを12点ピックアップして、なぜ虚偽なのか、なぜ問題なのかを指摘しました。

これをご覧いただいて、読者・視聴者の判断材料にしてほしいと考え、この動画を作成しました。

ふだんはライブでやる内容なのですが、エビデンスとなる資料の引用が多いので、その資料を画面に加えることができるよう、録画にしました。

もちろん、烏賀陽の取材の範囲ですから、信じないこともご自由です。

私自身、政府や議員、東電から根拠のある反論を聞きたいと思っています。こんなディスインフォメーションがわが祖国の政府によって堂々となされるとは、私もできれば信じたくありません。

私の懸念が杞憂に終わることを切に祈っています。

中国と処理水 冷静な対話こそ必要だ
朝日新聞 2023年8月29日 5時00分
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北京市朝陽区のスーパーでは漬物用の粗塩を除き、
すべての銘柄の食塩が売り切れていた
=2023年8月25日、林望撮影

 安全や健康にかかわる問題で市民が懸念を表明するのは当然だ。正当な抗議も認められるべきだ。しかし、現に起きているのは無関係の市民や施設を標的としたいやがらせだ。中国政府には事態の沈静化を図る責任があるとともに、日本側も冷静に対応し、ねばり強く対話を呼びかけていく必要がある。

 東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出が今月24日に始まったのと同時に、福島県内の飲食店や東京の公的施設などに対し、中国発のいやがらせ電話が多数かかってきた。電話をかける様子の動画もSNSに多く投稿されている。

 また、江蘇省蘇州や山東省青島の日本人学校では、石やタマゴが投げ入れられたという。

 中国政府は「国際的な公共利益を無視した極めて自分勝手な行為」などと放出に反対。根拠を十分に示さずに日本の水産物を全面禁輸とした。こうした動きに呼応したとみられる。

 中国では、電話はもちろんSNSも監視下にあり、不適切と判断された投稿は直ちに削除され、警察に拘束される場合もある。通常なら取り締まりの対象になるような電話や投稿が相次いだのは、当局が容認したとみられてもやむを得まい。

 処理水の海洋放出に中国の市民が懸念を抱くことは理解できる。朝日新聞の社説は、安全確保と風評被害対策で日本政府と東電が負うべき重い責任を指摘し、国内外で説明と対話を尽くすよう訴えてきた。

 一方、科学的な議論に応じないだけでなく、正確な情報を国内に伝えず、不安ばかりをあおる中国政府の対応も、極めて責任を欠いたものといわざるをえない。中国のスーパーで食塩の買い占め騒動が起きたのも、情報不足がもたらした混乱といえるだろう。

 思い出されるのは、2005年や10年、12年に起きた反日デモだ。この時も当局の対応が鈍く、中国外務省から「大衆の義憤は理解できる」という発言が出た。こうした姿勢が投石や放火などの被害を拡大させた。

 今回のいやがらせは投稿閲覧数を稼いで利益を得る目的もうかがわれ、従来の反日行動とは異なる面がある。とはいえ、中国経済の停滞で、若年失業率は20%を超える深刻な状況にある。日本が不満のはけ口になりかねないリスクは十分にある。

 忘れてはならないのは、こうした悪質行為に及ぶのは、中国人のごく一部にすぎないということだ。日本では多くの中国人が普通の生活を営み、また、大勢の中国人が日本観光を楽しんでいる。中国への反発から、彼らを排斥したり責めたりする言動は決してあってはならない。

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