参院選買収事件 業界頼み選挙検証せよ
東京新聞 2025年9月20日 07時55分
7月の参院選で自民党比例代表候補に投票する見返りに、報酬の支払いを約束した公選法違反(買収約束)容疑で、警視庁と7県警の合同捜査本部がパチンコ店運営会社「デルパラ」(東京都)の社長李昌範容疑者らを2度にわたり逮捕した。
買収の背景には、ギャンブル依存の社会問題化や遊技人口減少などパチンコ業界の危機感があったとみられるが、票や政策をカネで買うことは許されない。会社ぐるみの選挙違反が疑われる中、構造的な問題も解明せねばならない。
李容疑者らは7月、1都7県の同社などの従業員に対し、参院選比例代表に自民党から立候補して落選した「全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)」の阿部恭久理事長に投票するよう呼びかけ、報酬として3千円か4千円を支払うと約束したとされる。
会社幹部は店長に対し、違法な報酬を残業代名目で支払うよう指示し、店長が朝礼で従業員に投票を呼びかけていた、という。
買収対象はパチンコ店の従業員200人以上に上り、平成以降の国政選挙で最大規模の選挙違反事件となる見通しだ。
買収を呼びかけた側だけでなく応じた従業員側の順法意識の低さも問題だが、従業員側は「阿部氏に投票しないと、社内で不利な扱いを受けるのでは」との懸念から従わざるを得なかったのかもしれない。
合同捜査本部には買収約束の動機や経緯に加え、全日遊連側の関与があったのか否か、全容を解明するよう期待したい。
全国のパチンコ店舗は遊技人口の減少により、1995年の約1万8千店から2024年の約6700店にまで減少した。ギャンブル依存が問題化したことで、政府は射幸心を抑制する出玉制限など規制強化にも取り組んできた。
パチンコ業界に吹く逆風に対抗するため、業界は19、22年の前々回と前回の参院選で自民党候補の支援に回ったとされる。今回の参院選では組織内候補の擁立にこぎ着けたが、買収事件の背景には、業界以外に支持が広がらない焦りがあったのではないか。
派閥裏金事件のように「政治とカネ」を巡る自民党の体質があったからこそ、起きた事件だともいえる。自民党自身も、企業や業界頼みの選挙運動が適正だったのか検証しなければならない。


