みどりの日 価値を確認し守りたい
朝日新聞 2025年5月4日 5時00分
50本以上の樹木が2週間のうちに伐採された公園
=2024年6月、大阪市北区、鈴木智之撮影
=2024年6月、大阪市北区、鈴木智之撮影
若葉がまぶしい季節、休日に公園や散策で緑を楽しむ人や、森や林の憩いを求めて遠出する人もいるだろう。きょうは、みどりの日。身近な木々について考えてみたい。
樹木は木陰をつくり、騒音をさえぎり、憩いの場となる。熱中症対策や地球環境の改善にも役立つ。雨水がしみこみやすい緑地を増やせば水害リスクの軽減につながる。
一方で、植えてから年月が経つと、大木になって扱いに困ることも、老木になって弱ることもある。大量の落ち葉や果実の落下、野鳥のフンや騒音、根が道路を持ち上げる問題もおきる。定期的な点検や手入れが必要だが、お金や人が限られる自治体では手が回りきらない。
近所の木が急になくなったり、極端に枝が切り詰められたりしたのを目にした人も少なくないだろう。「量から質」への転換として伐採を進める自治体もある。
国土技術政策総合研究所の調査では、街路樹は2002年の679万本をピークに、22年には629万本まで減った。公園や道路の樹木をどう維持管理していくのか、転換期にきているという。
倒木や枝の落下も相次ぐ。昨年、東京都日野市ではイチョウの枝の落下で30代の男性が亡くなり、京都の清水寺近くでは桜が根元から倒れて60代の男性が大けがをした。
国土交通省の調査では、都市公園や道路の倒木や枝の落下による事故が約3年半に全国で1732件起きていた。
木を切る開発で業者や行政と住民が対立する例もある。東京の明治神宮外苑地区の再開発計画では、球場やラグビー場の建て替えや高層ビル2棟の新築計画に伴う大規模な伐採が問題になった。道路整備による並木の伐採で行政と住民が対立する例もある。
これまで緑に親しむ環境を享受してきた人々は、それが失われると突然知らされれば不信感を抱く。計画の初期から住民と対話を重ねられる制度こそが必要だ。
私たちには良好な環境のもとで生活する権利、それを未来に残す義務がある。そのためには、必要な情報を得られることや意思決定の過程に参加できることは欠かせない。
街の緑のあり方を住民、行政、専門家、事業者、環境団体などが手間をいとわず議論して知恵を出し合うのが理想だ。景観を維持し、よりよい近隣関係を築ければ、地域の価値は高まる。開発と環境保護は二項対立ではない。
日々変わる緑に季節を感じ、旅先で見慣れない街路樹を楽しむ連休。緑の多様な価値を再認識して守りたい。