日本棋院の苦境 先細りにならぬ改革を
東京新聞 2026年2月12日 08時08分
囲碁界の総本山・日本棋院が、深刻な経営難に直面している。手当支給の対象となるプロ棋士の試験の合格枠を、現行の年6人から4人に減らす方針を打ち出したほか、1971年から拠点とする東京本院会館ビル(東京都)の売却移転案まで浮上している。再建は相当な困難が予想されるが、囲碁界の未来を先細りさせないような経営改革を望みたい。
現状では2029年度、安全な運転資金の確保が難しくなる-。これは、日本棋院の財務状況を分析した「経営改革委員会」が昨秋発表した最終報告の結論だ。
棋院の経常収支は、過去30年間にわたって赤字基調という。棋士への手当や福利厚生費などの支払いが負担になっている。
たとえば23年度、経常費用の総額は約28億9千万円だったが、棋士関係の経費はその半分に当たる約14億4千万円を占めた。
囲碁を楽しむ人の数が減っていることも痛手となっている。
総務省の「社会生活基本調査結果」によると、過去1年間に囲碁をした人は06年に約204万人だったが、21年は約104万人と半減。将棋が06年に約441万人、21年は約337万人と約24%の減にとどまったのに比べ、囲碁は人数自体も減少の割合も厳しい。
当然、棋院の収入も減った。個人や法人の会員からの会費をはじめ、棋戦や大会、講習会など各種事業の収入、寄付金などを合わせた棋院の経常収益は、24年度は約28億円となった。これは、経営改革委が指摘する通り「30年前の半分」という落ち込みだ。
この間、囲碁界は2000年代初頭に人気マンガ「ヒカルの碁」でブームに沸いたが、長続きしなかった。10年代後半からは将棋界が「藤井聡太ブーム」で未曽有の活況を呈するのを横目に、囲碁の人気は低迷が続いてきた。
だが近年は、一力遼五冠(28)が主要な国際棋戦で優勝するなど、日本勢の復調も目覚ましい。この勢いを、囲碁への関心の高まりにつなげたい。それには、若い世代や愛好者が少ない女性へのアプローチも重要だろう。
棋士の合格枠を減らすのは苦渋の決断のはずだ。ただ、若い世代への門戸を狭めては、棋界の活力も、将来の発展の芽もつみかねない。長い歴史を誇るこの知的ゲームを、次世代へつないでいく「妙手」を探ってほしい。


