No Nukes 原発ゼロ

初代「No Nukes 原発ゼロ」 の後続版です。 政治・原発問題などを中心に、世の中の「気になる動き」をメモします。

東京新聞

望月衣塑子記者が社民党党首選を解説
福島氏の再選会見で大椿氏が途中退席…
どうなる党勢回復
東京新聞 2026年4月7日 10時37分

東京新聞チャンネル
社民党党首選の決選投票が4月6日にあり、福島瑞穂党首(参院議員)が再選しました。
3月23日開票の党首選で、福島氏と大椿裕子前参院議員、ラサール石井副党首の候補者3人がいずれも過半数を得られず、福島氏と大椿氏の決選投票になっていました。
6日の記者会見には、大椿氏とラサール氏も同席し、記者から2人への質問も出ました。しかし、党は大椿氏とラサール氏の発言を許しませんでした。
大椿氏は「候補者を平等に扱ってはどうか」などと発言し途中で会見を退席しました。
冒頭、取材した望月衣塑子記者が内容を振り返り、その後、会見をご覧いただけます。動画の最後には退出した大椿氏へのインタビューも見ていただけます。

中国大使館侵入 非を認めて再発を防げ
東京新聞 2026年4月1日 07時58分

 現職自衛官が、刃物を持って中国大使館に侵入した疑いで逮捕された。大使館の安全確保はウィーン条約に基づく義務であり、日本側に非があることは明白だ。日本政府は国際法を尊重する立場から非を認め、事件の検証と再発防止に万全を期すべきである。

 陸上自衛隊えびの駐屯地(宮崎県えびの市)所属の3等陸尉、村田晃大容疑者(23)は3月24日、東京都港区の中国大使館に侵入したとされ、警視庁の調べに「大使に意見を伝えようとした。聞き入れられなかったら自決しようと思った」と供述したという。

 日本政府は木原稔官房長官、小泉進次郎防衛相が「誠に遺憾」と述べるにとどめるが、自衛官が大使館に侵入した事態をより深刻に受け止めるべきだ。中国に強硬姿勢で臨む高市早苗内閣の支持率が高いからといって、自国の非を認めないのは筋違いも甚だしい。

 中国側は容疑者が「中国の外交官を殺害すると脅した」として、日本の「新型軍国主義」が招いた結果だと主張している。動機の解明は捜査を待たなければならないが、刃物を持って侵入した以上、中国側に危害を加える意図があったと疑われて当然だ。

 政府には、捜査が終結した段階で、中国への謝罪も含めて明確な対応を取るよう求める。あいまいな姿勢に終始すれば、中国側の一方的な情報発信が続くだけだ。軍事、経済両面で威圧を強める中国側にこれ以上、対日非難の口実を与えるのは得策でない。

 個人の暴走と安易に片付けず、侵入事件の背景、とりわけ自衛官の教育に問題はなかったのか、SNSにあふれる反中投稿の影響はなかったのか、検証が必要だ。自衛官を対象に文民統制と国際法の順守を徹底し、国益を損なう個人的な行動は厳に戒めるようあらためて指導しなければならない。

 日中関係は台湾有事を巡る首相答弁を機に悪化。昨年12月には中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射も起きており、緊張が高まる日本周辺空海域の最前線では、一人の暴走が偶発的な軍事衝突につながりかねない。

 日本政府は安全保障、貿易両面で対中関係を適切に管理することを怠ってはならない。高市政権が侵入事件に明確に対処せず、問題を長期化させれば、日中関係改善の糸口さえ失いかねない。首相には大局的な判断を求める。

週のはじめに考える 安保法施行10年の現在地
東京新聞 2026年3月29日 07時44分
東京新聞2023-07-28 085056
 当時の安倍晋三政権が成立を強行した安全保障関連法の施行から10年。この間、政府が「平和安全法制」と名付けた法律適用の可否がこれほど注目を集めたことはなかったのではないでしょうか。

 イランへの先制攻撃に踏み切ったトランプ米大統領が、日本や中韓両国、欧州各国に要求していた中東ホルムズ海峡の安全確保に向けた艦船派遣です。

 米東部時間19日の日米首脳会談では高市早苗首相がトランプ氏の要求にどう答えるかが焦点でしたが、高市氏は「法律の範囲内で今後もできることをしっかり行う」との表現でホルムズ海峡への自衛隊艦船の派遣には日本の法律に制約があることを説明し、拒んだのです。

 ホルムズ海峡への艦船派遣は、安倍首相自身が、「集団的自衛権の行使」ができる一例として好んで挙げていた典型例です。

 海峡に機雷が敷設され、原油を運ぶタンカーが航行できず、日本に石油が入ってこなければ「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」として戦時には武力行使に当たる機雷除去も可能との論法です。

 しかし、この場合でも「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」することや「他に適当な手段がないこと」が前提ですので、今回のように国際法違反が濃厚な場合には適用できないことは当然でしょう。

 ましてや日本はイランと伝統的に友好関係にあり、イランに敵対行動と映るホルムズ海峡への艦船派遣は得策ではありません。

 高市氏がトランプ氏を批判せず「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」と持ち上げたりした振る舞いには批判もありますが、トランプ氏の無理難題をやり過ごし、ぎりぎりのところで踏みとどまったとも言えます。

◆違憲性は拭い切れない

 とはいえ、安保法が妥当な立法だと言い切ることはできません。安保法の根幹である集団的自衛権の行使は今も、戦争放棄と戦力不保持を規定した憲法9条に違反する疑いが拭い切れないからです。最高裁も安保法が合憲か違憲かいまだに判断を避けています。

 集団的自衛権は日本が攻撃されていないにもかかわらず、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃を実力で阻止する権利です。

 歴代内閣は日本も独立国として集団的自衛権を有するものの、その行使は憲法が許す範囲を超えるため憲法違反との政府解釈を堅持してきました。その解釈を一内閣の独断で変更し、行使容認に踏み切ったのが安倍内閣です。

 2014年7月に行使容認を閣議決定。15年9月には行使を法律的に可能にする安保法の成立を強行。16年3月に施行しました。

 その後、集団的自衛権の行使には至っていませんが、安倍内閣の行使容認が「ありの一穴」となり戦後日本が安全保障政策の基本方針としてきた「専守防衛」のタガが外れ、軍備拡張が進みます。

 例えば防衛費です。おおむね国内総生産(GDP)比1%程度だった防衛費は2倍程度に増え、さらに上積みされる方向です。東日本大震災の復興のための特別所得税も防衛費に転用されます。

 集団的自衛権の行使同様、憲法の趣旨ではないとされてきた「敵基地攻撃能力の保有」も容認に転じ、他国領域に届く長射程ミサイルの配備も進みます。

 安保法で「抑止力はさらに高まる」はずでしたが、周辺情勢を見渡すと軍事的緊張は以前より高まっています。軍拡競争を加速させる「安全保障のジレンマ」に陥っていると言わざるを得ません。

 台湾有事は日本が集団的自衛権を行使し得る「存立危機事態になり得る」とした高市首相答弁に、中国側が激しく反発し、経済的威圧を強めていることも、安保法が内包する危うさの象徴です。

◆憲法9条あるからこそ

 日米首脳会談に同席した茂木敏充外相は帰国後、テレビの報道番組で、ホルムズ海峡に艦船を派遣できない法律の制約が憲法9条から発することを認めています。

 憲法9条があるからこそ、トランプ氏の無理難題をはねつけることができたとも言えるのです。

 9条は、国内外の人々を戦火に巻き込み、多大な犠牲を強いた戦争を痛切に反省し、政府に再び戦争をさせないための条文です。

 日本国民の命と暮らしを守るためのこの条文の趣旨を、いささかも揺るがしてはならない。そうした思いがますます募る安保法施行10年の節目でもあります。

暫定予算編成 国会軽視を猛省せねば
東京新聞 2026年3月27日 08時02分
東京新聞2023-07-28 085056
 政府が2026年度予算の月内成立を断念し、つなぎとなる暫定予算案を27日に閣議決定する。予算案審議がずれ込んだのは、高市早苗首相が衆院解散・総選挙に踏み切ったことが原因だ。にもかかわらず首相は年度内の本予算成立に固執し、衆院通過を急いだ。国会軽視を猛省するよう求める。

 暫定予算案は4月1~11日分で週明け30日に成立する運びだ。一般会計の歳出総額は約8兆6千億円。社会保障関係費や地方交付税交付金に加え、4月から拡充される高校授業料無償化、小学校給食無償化の経費も盛り込まれ、本予算成立の遅れによる国民生活への直接的な影響は回避される。

 本予算の徹底審議を求める野党側は、早くから暫定予算の成立に協力する姿勢を示しており、首相が本予算の年度内成立にこだわり続けたことは理解に苦しむ。通常国会冒頭の解散が予算成立の遅れを招いた責任から逃れようとしたのなら、身勝手というほかない。

 与党側は衆院予算委員会の審議を過去20年間で最短の59時間にとどめ、野党の反対を押し切って採決を強行したが、少数与党の参院で同じ手法は通用しない。

 暫定予算の編成に当たり、首相ら政府側はあくまで本予算が年度内に成立しない「不測の事態」に備えるためと強弁したが、参院で「数の力」を持たない現実を直視していないのではないか。

 予算案の審議に衆参両院で2カ月を費やす慣例は、国民の代表で構成する国会が予算案を審議し、議決すると定めた憲法に基づく。自民党が衆院選で大勝したからといって憲法が求める財政民主主義を軽視していいはずはない。

 米国とイスラエルによるイラン攻撃が長期化すれば、原油を中心に一層の物価高騰が予想される。政府の財政出動には限界があり、国民への節約の呼びかけ、早期の停戦に向けた外交努力も必要だ。首相が与野党の主張に耳を傾け、生活支援と外交の両面に細心の注意を払うべきは当然であり、政権運営に慢心は許されない。

 後半国会は、国家情報会議などの設置法案や、国旗損壊罪の創設法案、衆院議員定数を1割削減する法案も審議される見通しだ。いずれも国民の賛否が分かれる法案で、国会で審議を尽くす必要がある。本予算の年度内成立に固執した身勝手を反省し、「数の横暴」を二度と繰り返してはならない。

中国大使館への陸自隊員侵入なぜ起きた?
元隊員はどう考える? 
SNS上では「自衛隊の教育が背景」とも
東京新聞 こちら特報部 2026年3月26日 


 陸上自衛隊員が在日中国大使館に侵入した事件を巡り、交流サイト(SNS)上で、防衛大学校などでの「偏向」した教育が背景にあるのではないかという真偽不明の臆測が広がる。

台湾有事を巡る高市早苗首相の発言を受けて日中関係が悪化する中で起きた事件。求められる日本側の対応とは。(松島京太)

◆「外部の論客が偏向『講演』を学生たちに」

 25日昼、事件から一夜明けた東京都港区の在日中国大使館。北京冬季五輪や、北京や上海の都市部を紹介する写真がデザインされた外壁の前で警察官がにらみをきかせ、物々しい雰囲気が漂っていた。
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陸上自衛隊員による侵入事件があった在日中国大使館=25日、東京都港区で

 事件は24日午前に発生。大使館に侵入した疑いで3等陸尉(23)が逮捕された。3等陸尉は他国の軍隊の少尉に相当し、防衛省のウェブサイトで「幹部」と位置付ける。

 事件を受けてSNSでは、男の過激な行動について、背景に自衛隊の教育がある、という趣旨の投稿がされている。それと結びつけて再注目されているのが、防衛大学校の等松春夫教授が2023年に発表した論考「危機に瀕(ひん)する防衛大学校の教育」だ。

 論考では、防衛大の自衛官教官について「安直な陰謀論に染まる」と指摘し、そうした教官の企画で「外部から来た論客が教室で、政治的に偏向した『講演』を学生たちに行う」などと内部事情を伝える。公表の際も複数のメディアで取り上げられ、話題となった。

◆独身隊員の境遇考えると「ハマる人いるかも」

 果たしてそんな教育が、自衛隊員に影響を及ぼしているのだろうか。
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日本語と中国語で事件についての報道官コメントを伝える
在日中国大使館のSNS投稿

 元陸自レンジャー隊員の井筒高雄氏は「若干の影響はあるかもしれないが、数時間程度の講演で、そこまで極端な思想に染まるとは思えない」と首をかしげる。

 その上で、井筒氏は「自衛隊内では『南西シフト』など、明らかに中国を仮想敵として考える作戦や訓練が実施され、中国への脅威の感情が共有されている。大使館侵入は常軌を逸した行動だが、そうした自衛隊内の考えが土台にあるのではないか」と推察する。

 駐屯地内の寮で生活する独身隊員らの境遇にも触れて「消灯後にこっそり見られるのはスマホぐらい。そこでSNSの極端な主張にハマる人がいてもおかしくはない」と話す。

◆両国のためにも、思想や動機調査、公開を

 井筒氏が懸念するのは、偏った考えを持った自衛隊員が「暴走」することだ。「戦争は小さな現場の衝突から発展する。自衛隊員に共有すべきはそういった歴史の反省なのではないか」

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防衛省(資料写真)

 事件を受け、中国外務省の報道官は「『新型軍国主義』が勢いに乗って害となすことを改めて示している」などと批判。

台湾有事を巡り、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」になり得るとした昨年11月の高市首相の国会答弁の後、訪日自粛要請や日本産水産物の輸入手続き停止と中国の対日措置が相次ぐ中、さらに暗雲が垂れ込める。

 事態の打開のために、東京大の阿古智子教授(現代中国研究)は「侵入した自衛隊員がどのような思想や情報に感化されて事件を引き起こしたのか、詳細に調べることが重要だ」と求める。

 阿古氏は2024年9月に中国・広東省で日本人男児が刺殺された事件で、故意殺人罪で死刑が執行された中国人の男の動機が明かされないまま幕引きとなったことに触れ、同じ道を歩まないことが肝要とする。

「日本側だけでも専門家を交えた調査を行い、公開できる部分は公開すべきだ。それが長い目で見たときに両国の関係を良い方向へと築き上げることにつながる」と述べた。

すっかり後退した「脱原発」の機運…
 自民はすっかり再稼働推進、
野党も「ゼロ」主張から「活用」派が増えて
東京新聞 2026年3月12日 06時00分

 東京電力福島第1原発事故から15年を経て、国のエネルギー政策は「原発回帰」が鮮明だ。先の衆院選では、人工知能(AI)の普及などに伴う電力需要増を理由に再稼働推進を掲げた自民党が圧勝し、「原発ゼロ」を訴えた勢力は大きく議席を減らした。東日本大震災を機に与野党で高まった「脱原発」の機運は、すっかりしぼんでいる。

◆官民一体で原子力産業の再興を図る構えに

 高市早苗首相は11日、福島市内で開かれた追悼復興祈念式に出席し、震災の教訓を後世に受け継ぐ決意を示した。一方、原発事故に関しては、1年前の石破茂前首相と同じ文言で「いまだ多くの方々が避難生活を余儀なくされている」などと触れただけだった。
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東日本大震災の追悼復興祈念式を終え、記者の質問に答える高市首相=11日、福島市で(代表撮影)

 事故の翌年の衆院選では濃淡こそあれ、主要政党が原発の積極活用から距離を置いていた。与党の民主党が「2030年代に原発稼働ゼロ」を主張したほか、野党の自民は「原子力に依存しない経済・社会の確立」を公約した。

 だが、自民は徐々に姿勢を転換。岸田政権は2022年に「原発を最大限活用」という方針を示し、高市政権も昨年10月、自民と日本維新の会の連立政権合意書に「安全性確保を大前提に再稼働を進める」と明記した。日米関税合意に基づく対米投資では原発建設が有力案件とされており、官民一体で原子力産業の再興を図る構えだ。

◆廃止を訴える勢力は大きく議席を減らして

 原発ゼロを主張する野党も少数派になった。民主を源流とする立憲民主党は綱領に原発ゼロを掲げてきたが、衆院選前に公明党と合流して中道改革連合を結党する際、条件付きながら再稼働容認に転じた。国民民主党や参政党、チームみらいは原発活用の立場だ。

 原発廃止を訴える共産党は、衆院選で公示前の8議席から半減し、れいわ新選組は1議席しか確保できなかった。これに伴い、国会論戦でも原発そのものの是非を巡る議論は低調になっている。(近藤統義)
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原発事故で「東北の鬼」に
武藤類子さんの15年 「誰も責任を取らない」
裁判が終わっても、抗い続けるのは
東京新聞 こちら特報部 2026年3月10日 06時00分

 「私たちはいま、静かに怒りを燃やす東北の鬼です」

 2011年、東京電力福島第1原発事故の半年後に東京で開かれた集会で、福島県三春町から参加した武藤類子さん(72)が約6万人の聴衆に語りかけた言葉だ。

 その後、東電旧経営陣の幹部3人を刑事告訴した告訴団団長として、数々の原発訴訟の法廷に足を運び、事故の責任を問い続けてきた。各地で再稼働が進む今、何を思うのか。武藤さんの15年を追った。(片山夏子)

◆「国は国民を守らない。私たちはすてられたのだ」

 2011年9月19日の「さようなら原発集会」。東京・明治公園を埋め尽くした人たちを前に、武藤さんはこう呼びかけた。「福島のみなさん。どうぞ一緒に立ち上がってください」

 福島県内や避難先から何台ものバスを連ね、被害に遭った自分たちこそ「原発はいらない」と声を上げようと、誘い合って会場に来た人たちだった。
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「さようなら原発集会」で脱原発を訴える作家の大江健三郎さん(中)。右端が武藤類子さん=2011年9月19日、東京都新宿区の明治公園で

 「みなさん、福島はとても美しい所です。(中略)3.11原発事故を境に、その風景に、目には見えない放射能が降り注ぎ、私たちはヒバクシャになりました」

 「毎日、毎日、いや応なく迫られる決断。逃げる、逃げない。食べる、食べない。(中略)さまざまな苦渋の選択がありました」

 事故から半年たって鮮明になってきたこととして、武藤さんは言葉を継いだ。

 「真実は隠されるのだ。国は国民を守らないのだ。事故はいまだに終わらないのだ。(中略)大きな犠牲の上になお、原発を推進しようとする勢力があるのだ。私たちはすてられたのだ」

 事故から15年がたつ今、このときの自分の言葉が武藤さんの胸によみがえる。

◆悲しみや悔恨、絶望が入り交じった猛烈な怒り

  2012年、福井県の関西電力大飯原発3号機が再稼働する際、首相官邸前は子どもを連れた母親や若者、会社員など、危機感を持った人で埋め尽くされた。だが今、国は原発を最大限活用するとし、各地で再稼働が進む。

 「あんなすさまじい事故が起きたのに、たった15年で忘れられていく。考えてみると、あのときもう今の状況を感じていたのかもしれない」

 明治公園の集会で「東北の鬼」という言葉を使うかは悩んだという。事故から半年の自分の心情をどう伝えたらいいのか。
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原発事故前まで喫茶店をやっていた所で事故から15年を振り返る武藤類子さん=福島県田村市で

 武藤さんがスピーチの内容を考えていたとき、頭によぎったのは、全国各地の民俗舞踊を習う中で、かつて見た岩手県北上地方を中心に踊られてきた「鬼剣舞(おにけんばい)」の躍動する舞だった。

 原発事故でぼうぜんとした後、襲ってきたのは悲しみや悔恨、絶望が入り交じった猛烈な怒りだった。

◆搾取され蹂躙されてきた東北、象徴するのが「鬼」

 「その怒りを表現したのがあの言葉だった。東北は歴史の中で貧しく、中央から虐げられた土地だった。電気だけでなく、人やさまざまな物が搾取され、いろいろなことで蹂躙(じゅうりん)されてきた。『鬼』は東北が中央からどう扱われてきたかという悲しい一面を象徴していると思うのです」

 火にはさまざまな表情がある。まきの表面をなめる炎は濃い赤で激しく動く。やがて明るい朱色のなめるような炎となり、さらに中心が火の玉を抱いたように白くなるという。

 「時間がたつにつれますます困難を極める福島の中で、エネルギーを内包したおき火のような冷静で静かな怒りを、私たちの生きる尊厳を奪うもの、命をないがしろにするものに、ぶつけていかなければならない」

◆里山喫茶で意識するようになった「コンセントの向こう側」

 武藤さんが原発問題に取り組み始めたのは、1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故だった。

 「そのころ姉が骨髄性白血病を発症した。私たち姉妹が育った時代は米ソの核実験の最中だった。もちろん因果関係の立証はできないが、私が原発に向き合う一つのきっかけになった」
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 チェルノブイリ原発事故後、反原発運動は各地で盛んになった。武藤さんも「脱原発福島ネットワーク」を結成し、自治体や東電との交渉をしてきた。1988年に東京であった2万人デモでは、延々と続くデモ隊の列に「世界は変わるかもしれない」と感じた。しかし、原発は増設されていった。

 無力感と絶望感に襲われる中で、自分にとっての脱原発とは何かを考え、暮らしを見つめ直した。田村市の自然豊かな里山で喫茶「燦(きらら)」を始めた。夏の日差しを遮るよしず、太陽光発電、まきストーブ…。この電気はどこからくるのという「コンセントの向こう側」を意識するようになった。

◆「長い間恐れていたことが現実になった」

 だが福島の事故で生活は一変する。かすかな山鳴りの後、木造の家がぎしぎしと音を立て食器が割れた。そして夕方、約45キロ離れた福島第1原発での「全交流電源喪失」をラジオで知る。
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原発事故前まで喫茶店をやっていた所で見送ってくれる武藤類子さん=福島県田村市で

 「長い間恐れていたことが現実になった」

 メルトダウン(炉心溶融)という言葉が頭の奥でこだました。子どものいる友だちに「逃げた方がいい」と伝え、吹雪の峠を家族と避難した。

 1カ月後に福島に戻ると現実が待っていた。山の恵みも出していた喫茶店は「安全な食材を提供できない」と閉めた。

 「放射線健康リスク管理アドバイザーと呼ばれる専門家が安全キャンペーンを繰り広げ、国は事実を隠し、被害を矮小(わいしょう)化していた」

 事故の真実が明らかになり、責任が取られれば少しは事態は変わるのではないか…。

◆「真実と責任が明らかにならなければ同じことが起きる」

 2012年、武藤さんは仲間と「福島原発告訴団」を結成。原発事故の責任を問い、約1万4000人で福島地方検察庁に当時の東電経営陣や政府関係者、学者ら33人を刑事告訴、告発した。だが2013年9月、全員不起訴処分に。東京の検察審査会に不服申し立てをした。
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原発事故前まで喫茶店をやっていた所で事故から15年を振り返る武藤類子さん=福島県田村市で

 「個人を訴えるしかなかったが、人の罪を問うのは怖かった。でも真実と責任が明らかにならなければ同じことが起きると思った」

 2014年7月、東京第五検察審査会は東京電力旧経営陣3人を起訴相当の議決。喜んだのもつかの間、2015年1月に検察は再び全員不起訴に。2回目の検察審査会が開かれ、3人は強制起訴された。

 「東電が大津波が原発を襲う可能性を把握し、いったんは対策を検討していたことなどさまざまな事実がわかってきた」

 武藤さんは全公判で法廷に足を運んだ。だが東京地裁と高裁で無罪判決が出され、昨年3月、最高裁の上告棄却で確定した。

◆誰も責任を取らず終わった裁判…それでも

 多くの人の人生を根こそぎ変えるような原発事故が起きたのに、被害者の十分な救済がされず、誰も責任を取っていない。
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東京電力旧経営陣2人の無罪が確定することを受け、記者会見する福島原発告訴団の武藤類子さん=2025年3月6日、東京・霞が関で

 「これで裁判での責任追及は終わってしまうのか」

 ぼうぜんとした。準備から13年走り続けてきた。事故後、ずっと何か考えているように頭が休まらず、夜中に何度も目を覚まし、眠れたのかわからない日々を過ごしてきた。大好きな音楽も聴けなくなっていた。

 国は今エネルギー基本計画で「原発の最大限活用」とし再稼働を進める。福島第1原発からは処理水の海洋放出が始まり、国は除染で出た8000ベクレル以下の汚染土を各地で再利用しようとする。

 「福島の復興のための再利用? とんでもない。放射性物質をあえて拡散するなんてありえない。15年で福島の事故を忘れ、原発の最大限活用とは堪え難い愚かしさと思う。理不尽で絶望的な現実の中でも、現実を見つめ、その中に小さくても光が見いだせると信じて、諦めずあらがい続けたい」

◆デスクメモ

 原発事故後に取材した福島出身の女性は、母子で自主避難した知人女性が自死をしたと明かし「不条理」と話した。この国が原発を手放さず再稼働を進める後ろに置き去りにされた人々の思いがある。コンセントの先はどこにつながっているか。首都圏に暮らす私たちも問われている。(恭)

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