No Nukes 原発ゼロ

初代「No Nukes 原発ゼロ」 の後続版です。 政治・原発問題などを中心に、世の中の「気になる動き」をメモします。

毎日新聞

原発解体後の廃棄物 処分場選定に国も関与を
毎日新聞社説 2025/7/6 東京朝刊
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中部電力浜岡原発2号機の廃炉作業現場で、解体のため原子炉から取り外された圧力容器の上ぶた=静岡県御前崎市で2025年4月22日、木許はるみ撮影

 原発の廃炉は、建造物を解体するだけでは終わらない。大量の放射性廃棄物を処理するという難題が待ち受けている。

 運転を終えた中部電力浜岡原発2号機(静岡県)で、商業用原発としては初となる原子炉の解体作業が始まった。炉心にある制御棒などは遠隔操作で細断される。2035年度までに解体を終え、42年度に廃炉を完了する計画だ。
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放射性廃棄物のおおまかな分類と、それぞれの処分についての国の考え方=資源エネルギー庁の資料より

 原発の使用済み核燃料を再処理する際には、「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物が発生する。それとは別に、廃炉作業では構造物や機材などの低レベル放射性廃棄物が出る。処分の責任は電力会社が負っている。

 放射線量が比較的高い制御棒などは「L1」という廃棄物に分類される。人体に影響を及ぼすリスクが長く残るため、原子力規制委員会は4年前、鋼鉄製の容器に密閉した上で地下70メートルより深く埋め、300~400年間管理するという処分の基準を定めた。


 処分場は着工から完成まで、最低10年はかかるとみられる。中部電はそれまでの間、原発敷地内に仮置きする方針だ。

 高レベル放射性廃棄物の場合、国が処分場を決めるとする法律が25年前にできたものの、今も見通しは立っていない。L1も地元自治体から受け入れの同意を得ることが難関となるが、候補地すら絞り込んでいない。長期の管理が必要なことを踏まえれば、対応を電力会社任せにせず、国が選定に関与する仕組みを構築すべきだ。

 L1より放射線量が低い廃棄物も、処分先は決まっていない。一般の産業廃棄物と同じように処理することはできず、当面は環境に影響が出ない形で敷地内の保管を続けるしかない。

 既に老朽化などで24基の原発の廃炉が決まっており、解体はこれから本格化する。廃棄物は1基あたり1万トン前後に上ると見込まれ、膨大な処分費用が必要となる。

 青森県で使用済み燃料の再処理工場が稼働すれば、廃液など処理が難しい廃棄物も新たに生じる。

 国は原発の新増設を進める方針にかじを切り、核燃料サイクル政策の旗も降ろしていない。しかし、厄介な「ごみ」処理の工程とコストを示さないままでは、原子力への国民の不信は解消しない。

読む政治
立憲、蓮舫氏擁立決定の舞台裏 
重鎮の一言が決定打に 涙ぐむ幹部も
毎日新聞 2025/6/25 20:07
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東京都知事選で落選が確実となり厳しい表情で質問に答える蓮舫さん=東京都千代田区で2024年7月7日午後8時22分、宮武祐希撮影

 立憲民主党は参院選(7月3日公示、20日投開票)で、元参院議員の蓮舫氏の比例代表での擁立を決めた。党執行部は年明け以降、擁立に向けて党内や関係先との調整を続けてきたが難航。24日の党会合も紛糾したものの全会一致で承認され、半年がかりでの擁立決定にこぎつけた。ただ、参院選の結果次第では党内の火種となるリスクもはらんでいる。

禍根残しかねない状況で

 24日夕、国会内の会議室で開かれた立憲の常任幹事会では、蓮舫氏の擁立をめぐって激論が交わされた。出席者によると、30人の常任幹事のうち16人が発言。蓮舫氏の2024年の東京都知事選への出馬に関し、「自分の意思で参院(議員)をやめて、国政復帰しないと宣言して出ていった」などと擁立に否定的な意見も相次いだという。

 都連会長を務める長妻昭代表代行は「蓮舫氏を出せば得票も増えるし、議席も増えるはずだ」と擁立を支持したが、参院で影響力を持つ水岡俊一参院会長は黙ったままで発言はなし。このまま意見がまとまらず採決となれば、参院選を前に党内に禍根を残しかねない状況にあった。

 雰囲気を変えたのは、旧民主党時代に代表経験もあり、蓮舫氏の都知事選出馬時は幹事長だった岡田克也常任顧問の一言だった。

 「要請して(都知事選に)出てもらうことにしたのはこちらだ。それを『(国政に)戻るのはどうなのか』と批判することはいいのか」

 慎重派はなおも不満顔だったが、野田佳彦代表が「出すということに決めさせてほしい」と要請し、流れは定まった。最終的に異論はなく全会一致での承認となった。出席者の中には、参院選前の亀裂を回避できたことに感極まって涙ぐむ幹部もいたという。

 蓮舫氏は参院議員在職中に、立憲や共産党でつくる選考委員会からの出馬要請を受けて24年7月の都知事選に出馬。128万票を獲得したものの3位で敗退した。ネット上では、蓮舫氏のかつての言動などを取り上げたバッシングが横行する中、落選直後の交流サイト(SNS)の動画で「今は、国政選挙はもう考えていない。国政に戻るっていうのはちょっと私の中では違う」と言及していた。

 しかし、都連幹部をはじめ一部の党幹部は都知事選直後から、蓮舫氏に国政復帰を打診。蓮舫氏は当初、難色を示していたものの、かつて所属していた党内グループ「花斉会」を率いる野田氏が代表に就いた昨秋以降、徐々に軟化していった。
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蓮舫氏の参院選擁立をめぐる立憲関係者のスタンス

 年明け以降は、比例代表での擁立に向けて、執行部が党内や支援団体などと調整を続けてきたが、連合傘下の各産業別労働組合(産別)からは、知名度の高い蓮舫氏が当選することで、比例での立憲の当選枠から産別の組織内候補が押し出されることへの懸念が示された。

 山尾志桜里氏の擁立をめぐって国民民主党の支持率が低下したことも、注目度の高い蓮舫氏擁立をちゅうちょさせる要因となった。ネット上の蓮舫氏への批判が他候補にも及び「競っている1人区などで得票が落ちかねない」との懸念も出ていた。

 膠着(こうちゃく)状態が続く中、6月の都議選で、蓮舫氏は各選挙区の立憲候補の応援に駆け回り、立憲は5議席増と議席を伸ばした。マイナスの影響が確認されなかったとして、野田氏は参院選公示前の最後の常任幹事会となる24日に、蓮舫氏の擁立を諮る方針を固めた。

 常任幹事会後の記者会見で、小川淳也幹事長は「慎重な意見や留意すべき指摘はあったが、最終的には全会一致で承認された。知名度と実績があり、都議選においても東奔西走していただき、一定の成果につながった」と語った。蓮舫氏はX(ツイッター)に「寄せていただく思いを国政の場で実現したい気持ちが強まり、歩みを進める決意をした」と意欲をつづった。

 ただ、党内には不満も残る。水岡氏は常任幹事会に先立つ執行役員会で、擁立に反対するネット上の声などを示し、懸念を伝えた。野田氏と距離を置く中堅は「立憲の支持層の受けは悪くないが、無党派層が離れるだろう。蓮舫さん自身に広がりがない」と冷ややかな反応を見せた。

 常任幹事会後、党から報告を受けたという産別幹部は「党で決めたことだからどうにもならない。あとは選挙がどういう結果になるかだ」と述べた。【池田直、富美月、遠藤修平】

戦後80年 沖縄慰霊の日 犠牲強いた歴史忘れない
毎日新聞 2025/6/24 東京朝刊
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「平和の礎」で手を合わせる仲宗根むつみさんの家族。むつみさんの祖母、比嘉ウシさんらが沖縄戦で犠牲になり、この日は孫5人を連れて慰霊に訪れた=沖縄県糸満市で23日午前8時6分、喜屋武真之介撮影

 沖縄は23日、「慰霊の日」を迎えた。80年前のこの日、旧日本軍と米軍の組織的な戦闘が終結したとされる。凄惨(せいさん)な地上戦によって、県民に多大な犠牲を強いた歴史を忘れてはならない。

 先の大戦で、旧日本軍は沖縄を本土決戦に備える時間を稼ぐための「捨て石」にした。首里(現・那覇市)にあった司令部の陥落後も、南部へ撤退して抗戦を続け、多数の住民を巻き込んだ。

 日本側の犠牲者約18万8000人のうち住民が半分を占めた。民間人の犠牲をいとわずに戦闘を長引かせた軍の姿勢は、県民にぬぐい難い不信感を残した。

 懸念されるのは、こうした歴史から目を背けるような動きが出ていることだ。

過去ゆがめてはならぬ
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ひめゆりの塔で行われる慰霊祭を前に合唱を披露する子供たち
=沖縄県糸満市で23日午前10時27分、北山夏帆撮影

 典型的なのが、今年5月に那覇市で開かれた会合における自民党の西田昌司参院議員の発言だ。

 「ひめゆりの塔」の展示を巡り、「日本軍が入ってきて、ひめゆり隊が死ぬことになった。アメリカが入ってきて沖縄は解放された」という趣旨の記載があったと一方的に主張し、「歴史の書き換え」と批判した。「自分たちが納得できる歴史をつくらないと、日本は独立できない」とも述べた。

 ひめゆり学徒隊は看護要員として軍に動員された女子生徒や教師だ。死亡した136人の8割超は軍の解散命令を受けた後、戦場に放り出される形で犠牲となった。西田氏の発言は沖縄戦の実相を反映しておらず受け入れられない。

 日本外交史が専門の野添文彬(ふみあき)・沖縄国際大教授は「発言は事実をゆがめるものだ。県民は沖縄の歴史が本土と共有されていないという疎外感を抱き、戦争がまた繰り返されるのではないかと不安を募らせている」と指摘する。

 こうした状況だからこそ、戦争体験を語り継ぐ重要性が増している。当時を知る人が少なくなり、記録や証言を伝えようとする若者たちの活動が注目されている。

 狩俣日姫(につき)さん(27)は、修学旅行向けの平和学習プログラムを提供する企業「さびら」を仲間と立ち上げた。戦跡を案内して体験者たちの証言を紹介するだけでなく、生徒たちが「平和構築のために必要なこと」といったテーマで議論する場も設けている。

 自身が受けた平和教育に物足りなさを感じたのが起業のきっかけだった。「体験者たちが貴重な話をしてくれても、予備知識なしでは難しかった。戦争が始まった理由もきちんと説明してほしいと感じた」と振り返る。

 「過去をないがしろにしないことが大切だ。戦後100年、200年と教訓を伝えていかなければならない」。活動を通じてそうした思いを強くしている。

我が事として考えねば
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「平和の火」の奥に広がる摩文仁の海を眺める人たち
=沖縄県糸満市の平和祈念公園で23日午前5時57分、北山夏帆撮影

 80年たっても沖縄の「戦後」は終わっていない。安全保障の名の下に米軍基地を押し付けられ、住民が負担を強いられる「構造的差別」が続いている。

 本土復帰まで27年間の米軍統治時代に、強権的な手法で住民の土地が奪われ、基地が建設された。今も飛行場や演習場など日本にある米軍専用施設の7割が集中する。

 基地負担軽減を求める県民の声を無視する形で、米軍普天間飛行場の県内移設計画が政府によって強引に進められている。2019年の県民投票では、名護市辺野古の埋め立て反対が7割に達した。

 駐留米兵による性的暴行事件も後を絶たない。にもかかわらず政府は、米兵訴追の障壁となっている日米地位協定の改定に取り組んでいない。事件を把握しながら県に連絡しなかったケースも判明した。人権をないがしろにするような対応は許されない。

 敗戦後に本土に置かれた米軍基地は整理・縮小が進められたが、沖縄には重い負担が残ったままだ。野添教授は「在日米軍が沖縄で実施している訓練をもっと本土が引き受け、負担軽減に取り組むべきだ」と訴える。

 中国が海洋進出を強める中、沖縄・先島諸島に自衛隊の新たな拠点が相次ぎ開設されている。台湾有事を念頭に先島の住民を九州などに避難させる計画も発表された。沖縄が再び攻撃の標的にされかねないとして、地元から上がる反発の声に耳を傾けるべきだ。

 今求められているのは、安全保障上の負担を「沖縄の問題」としてではなく、日本が直面する我が事として考える姿勢だ。沖縄戦の歴史や実相と向き合うことこそが、その出発点となる。

倉重篤郎のニュース最前線 
歴戦の仕掛け人・小沢一郎の
電撃的戦略 「政局は大きく動く」
小沢一郎氏=東京都千代田区で2023年7月24日、北山夏帆撮影拡大
小沢一郎氏=東京都千代田区で2023年7月24日、北山夏帆撮影

立憲よ、なぜ不信任案を出さない 農村を敵に回した自民は凋落する

 立憲民主党は内閣不信任案提出を見送る構えだが、なぜいま出して政権交代を狙わないのだと咆哮するのが「政局仕掛け人」小沢一郎氏だ。自民党政治への国民の不信がかつてなく高まっている状況下、闘う野党の不在を叱責し、大変革への戦略を語る。

 終盤国会、内閣不信任案をめぐる綱引き、舌戦が激しくなっている。

 各紙報道では早くも不信任案提出を見送る動きとなっているが、政界は一寸先が闇である。どんななれ合いをしていても、突発的な事態、世論の動向次第で、物事が急に動くこともある。国会を閉じるまでは緊張感をもって見守りたい。

 というのも、少数与党下、不信任案は抜けば首が転がる公算が大の真剣である。会期末が迫る度に惰性で抜いてきた竹光ではない。

 内閣不信任案は発議者1人と50人以上の衆院議員の賛同で提出できる。提出されると、他案件に先駆けて衆院本会議で可決か否決かを決める。出席議員の過半数の賛同で可決される。可決されると、首相は10日以内の衆院解散か、内閣総辞職をしなければならない。二者択一、それ以外の選択肢はない。憲法69条に規定された衆院だけの権限だ。

 議院内閣制は、過半数を握る与党が政権を運営するわけだから、普通であれば不信任が可決されることはありえない。政争か何かのはずみで与党が割れ、その一部が棄権するか、野党提出の不信任案に賛成するかでなければ起こりえない。

 戦後不信任案可決は4回だけだ。2回は吉田茂政権下で、吉田首相はいずれの場合も衆院を解散した。

 3回目が1980年5月の大平正芳政権下、角福戦争を背景に自民党内の対立(40日抗争)が激化、野党提出の不信任案に党内反主流派が賛成、可決された。大平首相は衆院を解散、参院とのダブル選挙となり、大平氏の選挙中の病死もあり、自民が圧勝した。4回目は、93年6月の宮澤喜一政権下、選挙制度改革の約束を反故(ほご)にされたとして小沢一郎氏のグループが賛成に回り、不信任案が可決された。宮沢首相も衆院を解散したが、自民党は過半数を失い、小沢氏の根回しによる細川護熙非自民連立政権が誕生した。

 不信任案が内閣総辞職につながった例は1回だけ、94年6月、少数与党化した羽田孜非自民連立政権下だ。衆院を解散しても勝てる見込みはなく、前任の細川政権下で実現した選挙制度改革が元の木阿弥(もくあみ)になることを回避するため、採決を待たず本会議開会前に総辞職した。ポスト羽田を巡っては、非自民連立の延長線上で小沢氏が担ぐ海部俊樹氏と、自民、社会両党が組んだ村山富市氏とで首班指名が行われ、僅差で村山氏に軍配が上がった。

 ことほどさよう、真剣の不信任案は、政局動乱の因子となり、日本政治の様相を変えてきた。大平、宮澤氏は解散を選んだ。大平氏は圧勝したが、宮澤氏は政権を失い、55年体制崩壊の憂き目にあった。羽田氏は少数与党の軛(くびき)から総辞職を選んだが、その結果自民党が与党に復帰した。

 石破茂少数与党政権下の不信任政局は、果たしてどう展開するのか。野党第1党はどうすべきなのか。やはりここは歴戦の政局仕掛け人、立憲民主党の小沢一郎氏の見立てを聞きたい。

一人で有頂天の玉木君は支持されない

 この政局どう戦う?

「一言でいうと、内閣不信任案を提出して今度こそ、政権交代だ。本当は昨年11月(の自公少数与党下の首班指名選挙)にできたことだ。84票の無効票がこっち(野党側)につけば勝っていた」

 野田佳彦政権ができた?

「野田政権はできない。細川政権のことを思い出してほしい。あの時の第1党は社会党だったが、それ(社会党党首首班)でまとまったかということだ。昨年11月も野田氏でまとまったか、という問題だ」

 誰ならまとまった?

「僕は、あの時は玉木(雄一郎・国民民主党代表)君でいいと思った。黙ってぱっと根回ししようと。でも誰も政権を獲(と)りにいく気がなかった。立憲も誰も」

 玉木氏本人は?

「一人で有頂天になっていた観があった。あれでは支援されない。維新の中はごちゃごちゃだったし。だけどね、野田君も政権交代こそ政治改革だと何回も言い続けてきた。それだけにこの局面は自分が譲ってでも、野党政権を作らないと言行不一致になる。僕はそう思う」

 不信任案通る?

「出せば通ると思う。野党は全部賛成する。立憲、維新、国民民主、共産、れいわと。それだけで230(過半数233)票だ。出れば間違いない。棄権する人もいるかもしれないという記事があるが、こんな時に棄権はできない。次の選挙で落とされる」

 解散だとダブル選だ。

「石破君は選挙をやるというが、それもいい。その方が早く片がつく。自民党は勝てない」

 石破氏は野党は参院で精一杯(せいいっぱい)、ダブルは自民有利だと。カネと組織がある。

「カネは借りればいい。勝つとなればいくらでも集まる。天下の回りものだ」

 山崎拓氏は「野党の虚を突く空き巣狙い」とまで言う。

「立憲の衆院若手はハッスルしている。1年もたたないうちに1期生は2期生になる、こんないいことないだろうと僕が言うと皆喜んでいる。他グループでも野田君に不信任出せと言ってきている」

 元気ないのは中堅以上?

「彼らの中にはわかったようなことを言う人がいるようだが、政権への志が低すぎる。文句を言いながら現状で満足している。野党第1党のポジションのままが居心地がいい」

 選挙協力や選挙後の算段抜きでは無責任と言う。

「解散は向こうがするので、こっちがするわけではない。不信任が通れば石破政権は総辞職すべきだ。これが筋だ。でも解散するかもしれない。それが憲法69条の許すところだからだ。ただ、僕は石破氏が解散権を行使できないように自民党内が動く可能性もあると見ている」

 どうしてそう思う?

「選挙に勝てないからだ。地方の牙城が崩れている。自民党は農村がすべての基盤だったのに、農村を敵に回すようなことをしているのが石破政権だ。小泉進次郎農相を使って米価を2000円にした。これではコメを作る農家はいない。農家に死ねということだ。農村の過疎化と離農が進み、美田はすべて荒れ果てている。選挙やってみなさい。自民が絶対負けるから。2000円でいいのかと。解散なんかどーんと来いだ。手っ取り早くていい」

 誰を首班候補に戦う?

初閣議に臨む細川護煕首相(当時)ら=首相官邸で1993年8月9日、東京本社写真部員撮影拡大
初閣議に臨む細川護煕首相(当時)ら=首相官邸で1993年8月9日、東京本社写真部員撮影

「起きる前に考えても妙案は浮かばない。細川連立政権の時も僕が最初から細川氏と思っていたわけではない。選挙に勝てるとは思っていたが、細川首班とは思っていなかった。だが、選挙結果を見てこれは細川氏でいくしかないと直感的に判断した。細川氏(日本新党代表)と武村正義氏(さきがけ代表)は自民党と連立したがっていた。それをピッと感じ、先に彼らを取り込んだ」

 自民との連立を封じた。

「だから、やってみなければわからない。社会党があれだけ減る(137→77議席)とは思わなかった。社会党の連中も山岸章連合会長もシュンとなってしまった。そこで僕が『何を言うか。(野党各党議席を)足して見ろ、こっちが上だ』と。社会、公明、民社各党の一任を取って一気に(細川首班で)根回しした。選挙結果が出てからだ。天の神様が啓示を与えてくれる」

立憲も凋落、票はれいわなどに行く

 今回も玉木カードか?

「玉木氏も峠を越した感がある。ボロが出る前に僕の言うことを聞けばよかったのにね」

 ではどんな顔ぶれ?

「思わぬ人が出るかもだ。そうなった場合自民党がどうなるか。細川政権があと1、2年続けば完全に自民党は崩壊した。今回選挙をやって野党に負けてみなさい、自民党は完全に崩壊する。いまだって石破氏を担ぐ人たちと右派勢力の間にはミシン目がある。メディアはそのへんを見誤っている。自民党は公明党がついて永久に与党だという頭しかない」

 リスキーな解散はせず石破氏の首を挿(す)げ替える?

「という方が自民党にとってはいいだろう。それでこっち(野党側)と話をして多数与党を形成する。過半数に足りないんだから、(首班指名で)いい人を選べばいい。自民党とは限らない。それが彼らの生き残る道だ。フレキシブルに考えなければ駄目だ」

 複雑な政局?

「全く複雑ではない。ガラガラポンだもの。簡単だ。ぱっぱっぱっと。与野党の軛がなくなり事実上ばらけてしまう。選択が自由になる」

 自民内のポスト石破は?

「これがまた面白い。誰を選ぶかすったもんだだ。時間をかければいい。欧州を見なさい。新政権の形を決めるのに1カ月、2カ月かけている。野党だってどうするかということになる。それがはっきりするまで首班指名しなければいい。政治空白が起きるとの批判があるが、すでに予算は通っており、予算執行は役人がする。むしろ政治家はいない方がいいくらいだ。しかも、暫定的に石破政権が残るから空白も起きない。各党とも自らを鍛え直すいいチャンスだ。みんなしてじっくり考えればいい」

 不信任案出さないでこのまま国会を閉じたら?

「立憲民主党はさらに国民の支持を失う。だって不信任案は50人以上の賛同者が必要で、立憲しか出せない。その立憲が年金法案で自公とわけのわからない(基礎年金の底上げ)合意をした。野田君は何を考えていたのか。あんこのない年金案だと批判していたのに、あの合意にも全くあんこはない」

 仮に参院単独選挙になった場合、自公過半数割れの可能性は?

「過半数割れまでにはいかない気がする。立憲の人気が凋落(ちょうらく)して票が分散、れいわや国民に行く。自民党も駄目だが、よろよろしながら一定の数はとるだろう。だからこのままおかしな状態が続く。日本にとって悲劇だ」

岸田文雄暫定政権もあるかもしれない

 自公は連立拡大狙う?

「連立といっても簡単ではない。僕が自由党党首で98年自民党と自自連立した時は、安全保障から国会改革まできちんと政策合意した。今の党首討論はその名残だ。枝葉末節はいいが、根幹政策はしっかり付き合わせなければならない。立憲は、食料、エネルギー、安保、憲法など根幹政策で何の結論も出ていない。連立する以上は我々はこうだ、だから君たちもこれを呑(の)め、という話でなければ」

「だから僕は、昨年11月にも『慌てふためいて首班指名をするな。野党の頭をこっち撫(な)であっち撫でとなるような脆(もろ)い政権では駄目だ。何もできない』と言ったんだが、石破氏は首班指名を受けたくてバタバタしてやっちゃった」

 石破氏に直接助言した?

「石破氏に伝わるように言ったつもりだ。度胸がないからできなかった。『根幹部分の政策で合意し、ちゃんとした政権を作らないと毎回苦労するよ』と。実際そうなってしまった」

 自民のポスト石破は?

「僕が聞きたいくらいだ。林(芳正官房長官)君の名前が出ているようだが、岸田文雄暫定政権はあるかもしれない。本人もその気になっていると聞いている。林君は人をかき分けてなる、というタイプではないようだ。親父(おやじ)さん(林義郎元蔵相)もそうだった。自民党は、旧安倍派が全部駄目だというわけではないが、やはり裏金問題で味噌(みそ)をつけ、右翼のイメージが強いから無理だ。宏池会、経世会、麻生派3派で保守中道政権を作るしかないだろう」

 進次郎人気は親父譲り?

「親父(純一郎氏)は、こう言ったら世の中がどう反応するか、処世の知恵がある。だから5年半も政権維持できた。進次郎君はまだそこまでいかないのでは。2000円で農民が反発するとわかっていない。野党もそうだ。小泉君と野党3党首揃(そろ)って農民のことがわからない」

 山本太郎氏はどうか?

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れいわ新選組の山本太郎代表

「時流に乗っているから今は伸びている。共産党の票を食っている。ただ、真の野党ができれば行き詰まるだろう、とは太郎君にも言っている。玉木君も維新もそうだが、枝葉末節の話でポピュリズムに乗っているようでは駄目だ。一時は持て囃(はや)されるがすぐにぽしゃる。本チャンで行かないと」

 本チャンの野党とは?

「フリー、フェア、オープンな政党だ。フリーだけだと新自由主義になってしまうのでフェアが必要だ。僕は自民党的な政党が一度潰れて復活してくれればいいと思っている。自民党は日本人の体質そのものだから、一つあっていい。それともう一つオープンでリベラルな政党が欲しい。簡単に言えば保守2党論だ」

「僕の勘だが、久しぶりに政局が大きく動きそうな気配がする。どうしても動かなければ僕も動く。皆腹の中ではこのままでは駄目だと思っている。ちょっとしたきっかけがあれば、動く」

   ◇   ◇

 進次郎氏のコメ安値路線はむしろ自民党の選挙基盤を弱体化させているとの見立て、なかなか興味深い。


おざわ・いちろう

 1942年生まれ。立憲民主党所属の衆院議員。時々刻々の政治状況を鋭く捉え、長年政界のキーマンであり続けている

くらしげ・あつろう

 1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部を経て、2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員

(サンデー毎日6月29日号掲載) 

真夏前でも油断は禁物 意外と知らない
梅雨型熱中症 リスクと対策は
毎日新聞 2025/6/18 11:00
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夏の日差し=東京都内で、米田堅持撮影

 日本列島は18日、太平洋高気圧の影響で朝から晴れて気温が上がった。梅雨まっただ中の各地で連日、真夏のような異例の暑さが続いている。専門家は「梅雨時は熱中症のリスクが高い。この時期だからと油断しないで」と注意を呼びかけている。

 総務省消防庁によると、5月以降に熱中症で救急搬送された人は今月15日までに4799人(速報値)で、65歳以上の高齢者が約6割を占める。発生場所は住居が約3割で最も多い。全国的に高温となった17日には、神奈川県や埼玉県などで死者も確認された。

 熱中症は体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりすることで発症する。

 熱中症といえば真夏の炎天下をイメージしがちだが、梅雨時にも発症しやすい。済生会横浜市東部病院の谷口英喜医師は「湿度が高いと汗が乾きにくく、体温が上がりやすい。喉の渇きも感じにくく、気づかないうちに水分不足になる『隠れ脱水』に陥りやすい」と語る。

 実際に、「梅雨型熱中症」のリスクはあまり知られていない。

 パナソニックがエアコンを所有する20~60代に5月に実施したアンケートでは、回答した514人のうち、梅雨型熱中症について「言葉も内容も知っている」と答えた人は13%だけ。「例年、熱中症対策をしている」との回答は67%に上ったが、対策を始める時期は「7~8月」が46%、「6月」は35%だった。

熱中症対策と応急処置のポイント

 一般社団法人「臨床教育開発推進機構」理事の三宅康史医師は、早い時期から対策をとるべきだと指摘。予防にはエアコンで室温と湿度を下げることや、こまめな水分補給が有効という。

 三宅医師は目安として「室温28度以下、湿度70%以下」を挙げる。特に、風通しが悪い室内での運動は注意が必要だと強調する。

 暑い日が続くと、人の体は数日から2週間程度で暑さに慣れるとされる。発汗量が増えて体内の熱を逃がしやすくなるためだ。ただ、梅雨入り直後の時期はこうした体の調節機能が追いついていないことがある。

 三宅医師は「意識的に体を動かしたり、ぬるめのお湯にゆっくりつかってリラックスしながら汗をかいたりすることで、暑さへの順応が促される」と語る。【岡田英、川口峻】

松尾貴史のちょっと違和感
消費税めぐる発言 都合のいい時だけ「財源が」
毎日新聞 2025/6/15 東京朝刊
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松尾貴史さん作

 自民党の森山裕幹事長は8日、徳島市で開かれた会合で、消費税についてこう語ったそうだ。

 「消費税をゼロにするという政党もあるし、5%に下げるという政党もある。しかし、歳入が減った分の財源をどこに求めるかという説明がないし、恒久的な財源としての位置付けがない」「消費税の減税は慎重の上にも慎重であるべきだ。新しい財源が今はない」

 当欄で何度も書いているけれど、自民党幹部らは都合のいい時だけ「財源が」と言い出す。2027年度までの5年間で防衛費を43兆円程度に増額する計画が進行中であるが、これほどの増額にもかかわらず、果たして財源の議論を十分したのだろうか。

 また、法人税はこれまで何度も引き下げられているが、自民党幹部から「法人税の減税は慎重の上にも慎重であるべきだ。財源がない」という主張を聞いたことがない。なぜ消費税減税には「慎重の上にも慎重」で、法人税減税はためらいがないのか。大体、消費税廃止や減税を主張する政党に「財源の説明がない」というのは全くの誤りで、記者会見などで提示している。

 多くの国民は生活に必要なものを買おうにも家計の「財源」が足りずにあえいでいる。経済成長には国民の消費促進が重要なのに、消費をするたびに罰金のように1割ずつ徴税され続けることで、消費がさらに冷え込むのは小学生にもわかる理屈だろう。

 日本の税収は過去最高になったはずだが、森山氏はどこか別の国の話をしているのだろうか。多めに徴税していたのであればそれを減らすだけでいいのではないか。徴収していた税額を減らす、あるいはなくすために、「財源」は必要ないだろう。もし国民のために使う予算として必要だという主張が真実なら、行政や国会の無駄遣いをやめて予算を組み直すべきだ。自民党は与党として支出の見直し、検証をすべきなのに、その取り組みについては怠慢の一言に尽きる。無駄を精査する姿勢などを示さずに、消費税の税収だけを聖域のように扱うことに大義は感じられない。

 百歩譲って森山氏の言う「財源」論が正しかったとしても、予算の使い道や優先順位があまりにもおかしいのは周知の事実である。是正の努力をせずに、減税の時にだけ「財源が」というのはあまりにも不誠実だ。

 よく政府や与党が発する「消費税収は全額が社会保障費に使われている」という主張が疑わしいことは、もう国民の間に広く知られてしまっている。さらに東京都議選や参院選が目前に迫っている時期にこういう発言ができるとは、森山氏はなんと「勇気」があるのだろう。もちろん、褒めてはいない。

 世界的に見ても高額と言われる議員報酬をもらっている立場で、こんな話ができる神経を疑う。長期間政権の座にいるにもかかわらず、日本経済は衰退したままだし、少子高齢化問題の深刻化に対して何の成果も出せていない。そんな「無能さ」をさらしつつ、「慎重でなければならない」などという上からの物言いには怒り心頭だ。

 森山氏は会合で「今回の参院選で与党が過半数を失うと、大変なことになる」と、意味不明な「脅し」も忘れなかった。「大変」とは一体どんな状態なのだろうか。「過半数を失うと大変」なのは、自民党の中だけの話ではないのか。(放送タレント、イラストも)=6月10日執筆

東電元役員の賠償否定 不問にできぬ事故の責任
毎日新聞 2025/6/10 東京朝刊
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 株主代表訴訟の控訴審判決で、東京電力の旧経営陣に13兆円超の賠償を命じた1審判決が取り消され、心境を語る原告・弁護団=東京都千代田区で2025年6月6日午前11時42分、幾島健太郎撮影

 事故の責任が明確にならなければ、地震大国で原発を稼働させることへの不安は拭えない。

 東京電力福島第1原発事故で、元役員らの賠償責任を否定する判決を東京高裁が出した。4人に対し、13兆円余を東電に支払うよう命じた1審判決を取り消した。
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東京電力福島第1原発事故を巡り、東電株主が旧経営陣の責任を問う株主代表訴訟で控訴審判決が言い渡された東京高裁の法廷=2025年6月6日午前10時57分(代表撮影)

 株主が経営責任を問うために起こした裁判だ。津波による事故を予想できたかどうかが争われた。

 事故の9年前、政府が地震予測の「長期評価」を公表し、巨大津波を起こす地震が発生する可能性を示していた。これに基づく東電の試算でも、敷地の高さを大幅に上回る津波が想定された。

 だが、旧経営陣は外部の専門家に改めて確認する方針を決め、対策を先送りした。

 高裁は、長期評価は十分な根拠が示されていなかったり、異なる見解もあったりしたと指摘した。

 事故を防ぐには原発を停止させるしかなかったとした上で、それほどの切迫感を抱かなかったのは、やむを得ないと認定した。取締役としての職責を怠ったとは認められないと結論づけた。

 長期評価の信頼性は高く、津波の襲来は予想できたと認めた1審の判断を覆した。旧経営陣の刑事裁判でも、今回の判決と同様の考え方により、最高裁で無罪が確定している。

 しかし、原発でひとたび事故が起きれば、放射性物質が広範囲に飛散し、甚大な被害を招く。運転する電力会社の経営陣は、万が一にも起こさない措置を講じなければならない。

 高裁は、福島の事故を経験した今なら、取締役は一層重い責任を課されるべきだと付け加えた。

 ただ、津波の正確な予測が難しいことは、事故前から分かっていたはずだ。あらゆるリスクを想定し、より安全な対策を取ることが経営陣の責務だろう。高裁の結論には疑問が残る。

 事故から14年が経過しても帰還困難区域が設けられ、多くの人々が避難生活を送る。廃炉の見通しは立たず、除染ではぎ取った土の最終処分地も決まっていない。

 こうした課題に東電は正面から向き合うべきだ。刑事上や民事上の責任を免れたとしても、人々の暮らしや故郷を壊した社会的責任を不問に付すことはできない。

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