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読む政治 立憲、蓮舫氏擁立決定の舞台裏 重鎮の一言が決定打に 涙ぐむ幹部も 図解あり
重鎮の一言が決定打に 涙ぐむ幹部も

毎日新聞社説 戦後80年 沖縄慰霊の日 犠牲強いた歴史忘れない
=沖縄県糸満市で23日午前10時27分、北山夏帆撮影
=沖縄県糸満市の平和祈念公園で23日午前5時57分、北山夏帆撮影
倉重篤郎のニュース最前線 歴戦の仕掛け人・小沢一郎の電撃的戦略 「政局は大きく動く」
立憲よ、なぜ不信任案を出さない 農村を敵に回した自民は凋落する
立憲民主党は内閣不信任案提出を見送る構えだが、なぜいま出して政権交代を狙わないのだと咆哮するのが「政局仕掛け人」小沢一郎氏だ。自民党政治への国民の不信がかつてなく高まっている状況下、闘う野党の不在を叱責し、大変革への戦略を語る。
終盤国会、内閣不信任案をめぐる綱引き、舌戦が激しくなっている。
各紙報道では早くも不信任案提出を見送る動きとなっているが、政界は一寸先が闇である。どんななれ合いをしていても、突発的な事態、世論の動向次第で、物事が急に動くこともある。国会を閉じるまでは緊張感をもって見守りたい。
というのも、少数与党下、不信任案は抜けば首が転がる公算が大の真剣である。会期末が迫る度に惰性で抜いてきた竹光ではない。
内閣不信任案は発議者1人と50人以上の衆院議員の賛同で提出できる。提出されると、他案件に先駆けて衆院本会議で可決か否決かを決める。出席議員の過半数の賛同で可決される。可決されると、首相は10日以内の衆院解散か、内閣総辞職をしなければならない。二者択一、それ以外の選択肢はない。憲法69条に規定された衆院だけの権限だ。
議院内閣制は、過半数を握る与党が政権を運営するわけだから、普通であれば不信任が可決されることはありえない。政争か何かのはずみで与党が割れ、その一部が棄権するか、野党提出の不信任案に賛成するかでなければ起こりえない。
戦後不信任案可決は4回だけだ。2回は吉田茂政権下で、吉田首相はいずれの場合も衆院を解散した。
3回目が1980年5月の大平正芳政権下、角福戦争を背景に自民党内の対立(40日抗争)が激化、野党提出の不信任案に党内反主流派が賛成、可決された。大平首相は衆院を解散、参院とのダブル選挙となり、大平氏の選挙中の病死もあり、自民が圧勝した。4回目は、93年6月の宮澤喜一政権下、選挙制度改革の約束を反故(ほご)にされたとして小沢一郎氏のグループが賛成に回り、不信任案が可決された。宮沢首相も衆院を解散したが、自民党は過半数を失い、小沢氏の根回しによる細川護熙非自民連立政権が誕生した。
不信任案が内閣総辞職につながった例は1回だけ、94年6月、少数与党化した羽田孜非自民連立政権下だ。衆院を解散しても勝てる見込みはなく、前任の細川政権下で実現した選挙制度改革が元の木阿弥(もくあみ)になることを回避するため、採決を待たず本会議開会前に総辞職した。ポスト羽田を巡っては、非自民連立の延長線上で小沢氏が担ぐ海部俊樹氏と、自民、社会両党が組んだ村山富市氏とで首班指名が行われ、僅差で村山氏に軍配が上がった。
ことほどさよう、真剣の不信任案は、政局動乱の因子となり、日本政治の様相を変えてきた。大平、宮澤氏は解散を選んだ。大平氏は圧勝したが、宮澤氏は政権を失い、55年体制崩壊の憂き目にあった。羽田氏は少数与党の軛(くびき)から総辞職を選んだが、その結果自民党が与党に復帰した。
石破茂少数与党政権下の不信任政局は、果たしてどう展開するのか。野党第1党はどうすべきなのか。やはりここは歴戦の政局仕掛け人、立憲民主党の小沢一郎氏の見立てを聞きたい。
一人で有頂天の玉木君は支持されない
この政局どう戦う?
「一言でいうと、内閣不信任案を提出して今度こそ、政権交代だ。本当は昨年11月(の自公少数与党下の首班指名選挙)にできたことだ。84票の無効票がこっち(野党側)につけば勝っていた」
野田佳彦政権ができた?
「野田政権はできない。細川政権のことを思い出してほしい。あの時の第1党は社会党だったが、それ(社会党党首首班)でまとまったかということだ。昨年11月も野田氏でまとまったか、という問題だ」
誰ならまとまった?
「僕は、あの時は玉木(雄一郎・国民民主党代表)君でいいと思った。黙ってぱっと根回ししようと。でも誰も政権を獲(と)りにいく気がなかった。立憲も誰も」
玉木氏本人は?
「一人で有頂天になっていた観があった。あれでは支援されない。維新の中はごちゃごちゃだったし。だけどね、野田君も政権交代こそ政治改革だと何回も言い続けてきた。それだけにこの局面は自分が譲ってでも、野党政権を作らないと言行不一致になる。僕はそう思う」
不信任案通る?
「出せば通ると思う。野党は全部賛成する。立憲、維新、国民民主、共産、れいわと。それだけで230(過半数233)票だ。出れば間違いない。棄権する人もいるかもしれないという記事があるが、こんな時に棄権はできない。次の選挙で落とされる」
解散だとダブル選だ。
「石破君は選挙をやるというが、それもいい。その方が早く片がつく。自民党は勝てない」
石破氏は野党は参院で精一杯(せいいっぱい)、ダブルは自民有利だと。カネと組織がある。
「カネは借りればいい。勝つとなればいくらでも集まる。天下の回りものだ」
山崎拓氏は「野党の虚を突く空き巣狙い」とまで言う。
「立憲の衆院若手はハッスルしている。1年もたたないうちに1期生は2期生になる、こんないいことないだろうと僕が言うと皆喜んでいる。他グループでも野田君に不信任出せと言ってきている」
元気ないのは中堅以上?
「彼らの中にはわかったようなことを言う人がいるようだが、政権への志が低すぎる。文句を言いながら現状で満足している。野党第1党のポジションのままが居心地がいい」
選挙協力や選挙後の算段抜きでは無責任と言う。
「解散は向こうがするので、こっちがするわけではない。不信任が通れば石破政権は総辞職すべきだ。これが筋だ。でも解散するかもしれない。それが憲法69条の許すところだからだ。ただ、僕は石破氏が解散権を行使できないように自民党内が動く可能性もあると見ている」
どうしてそう思う?
「選挙に勝てないからだ。地方の牙城が崩れている。自民党は農村がすべての基盤だったのに、農村を敵に回すようなことをしているのが石破政権だ。小泉進次郎農相を使って米価を2000円にした。これではコメを作る農家はいない。農家に死ねということだ。農村の過疎化と離農が進み、美田はすべて荒れ果てている。選挙やってみなさい。自民が絶対負けるから。2000円でいいのかと。解散なんかどーんと来いだ。手っ取り早くていい」
誰を首班候補に戦う?
「起きる前に考えても妙案は浮かばない。細川連立政権の時も僕が最初から細川氏と思っていたわけではない。選挙に勝てるとは思っていたが、細川首班とは思っていなかった。だが、選挙結果を見てこれは細川氏でいくしかないと直感的に判断した。細川氏(日本新党代表)と武村正義氏(さきがけ代表)は自民党と連立したがっていた。それをピッと感じ、先に彼らを取り込んだ」
自民との連立を封じた。
「だから、やってみなければわからない。社会党があれだけ減る(137→77議席)とは思わなかった。社会党の連中も山岸章連合会長もシュンとなってしまった。そこで僕が『何を言うか。(野党各党議席を)足して見ろ、こっちが上だ』と。社会、公明、民社各党の一任を取って一気に(細川首班で)根回しした。選挙結果が出てからだ。天の神様が啓示を与えてくれる」
立憲も凋落、票はれいわなどに行く
今回も玉木カードか?
「玉木氏も峠を越した感がある。ボロが出る前に僕の言うことを聞けばよかったのにね」
ではどんな顔ぶれ?
「思わぬ人が出るかもだ。そうなった場合自民党がどうなるか。細川政権があと1、2年続けば完全に自民党は崩壊した。今回選挙をやって野党に負けてみなさい、自民党は完全に崩壊する。いまだって石破氏を担ぐ人たちと右派勢力の間にはミシン目がある。メディアはそのへんを見誤っている。自民党は公明党がついて永久に与党だという頭しかない」
リスキーな解散はせず石破氏の首を挿(す)げ替える?
「という方が自民党にとってはいいだろう。それでこっち(野党側)と話をして多数与党を形成する。過半数に足りないんだから、(首班指名で)いい人を選べばいい。自民党とは限らない。それが彼らの生き残る道だ。フレキシブルに考えなければ駄目だ」
複雑な政局?
「全く複雑ではない。ガラガラポンだもの。簡単だ。ぱっぱっぱっと。与野党の軛がなくなり事実上ばらけてしまう。選択が自由になる」
自民内のポスト石破は?
「これがまた面白い。誰を選ぶかすったもんだだ。時間をかければいい。欧州を見なさい。新政権の形を決めるのに1カ月、2カ月かけている。野党だってどうするかということになる。それがはっきりするまで首班指名しなければいい。政治空白が起きるとの批判があるが、すでに予算は通っており、予算執行は役人がする。むしろ政治家はいない方がいいくらいだ。しかも、暫定的に石破政権が残るから空白も起きない。各党とも自らを鍛え直すいいチャンスだ。みんなしてじっくり考えればいい」
不信任案出さないでこのまま国会を閉じたら?
「立憲民主党はさらに国民の支持を失う。だって不信任案は50人以上の賛同者が必要で、立憲しか出せない。その立憲が年金法案で自公とわけのわからない(基礎年金の底上げ)合意をした。野田君は何を考えていたのか。あんこのない年金案だと批判していたのに、あの合意にも全くあんこはない」
仮に参院単独選挙になった場合、自公過半数割れの可能性は?
「過半数割れまでにはいかない気がする。立憲の人気が凋落(ちょうらく)して票が分散、れいわや国民に行く。自民党も駄目だが、よろよろしながら一定の数はとるだろう。だからこのままおかしな状態が続く。日本にとって悲劇だ」
岸田文雄暫定政権もあるかもしれない
自公は連立拡大狙う?
「連立といっても簡単ではない。僕が自由党党首で98年自民党と自自連立した時は、安全保障から国会改革まできちんと政策合意した。今の党首討論はその名残だ。枝葉末節はいいが、根幹政策はしっかり付き合わせなければならない。立憲は、食料、エネルギー、安保、憲法など根幹政策で何の結論も出ていない。連立する以上は我々はこうだ、だから君たちもこれを呑(の)め、という話でなければ」
「だから僕は、昨年11月にも『慌てふためいて首班指名をするな。野党の頭をこっち撫(な)であっち撫でとなるような脆(もろ)い政権では駄目だ。何もできない』と言ったんだが、石破氏は首班指名を受けたくてバタバタしてやっちゃった」
石破氏に直接助言した?
「石破氏に伝わるように言ったつもりだ。度胸がないからできなかった。『根幹部分の政策で合意し、ちゃんとした政権を作らないと毎回苦労するよ』と。実際そうなってしまった」
自民のポスト石破は?
「僕が聞きたいくらいだ。林(芳正官房長官)君の名前が出ているようだが、岸田文雄暫定政権はあるかもしれない。本人もその気になっていると聞いている。林君は人をかき分けてなる、というタイプではないようだ。親父(おやじ)さん(林義郎元蔵相)もそうだった。自民党は、旧安倍派が全部駄目だというわけではないが、やはり裏金問題で味噌(みそ)をつけ、右翼のイメージが強いから無理だ。宏池会、経世会、麻生派3派で保守中道政権を作るしかないだろう」
進次郎人気は親父譲り?
「親父(純一郎氏)は、こう言ったら世の中がどう反応するか、処世の知恵がある。だから5年半も政権維持できた。進次郎君はまだそこまでいかないのでは。2000円で農民が反発するとわかっていない。野党もそうだ。小泉君と野党3党首揃(そろ)って農民のことがわからない」
山本太郎氏はどうか?
「時流に乗っているから今は伸びている。共産党の票を食っている。ただ、真の野党ができれば行き詰まるだろう、とは太郎君にも言っている。玉木君も維新もそうだが、枝葉末節の話でポピュリズムに乗っているようでは駄目だ。一時は持て囃(はや)されるがすぐにぽしゃる。本チャンで行かないと」
本チャンの野党とは?
「フリー、フェア、オープンな政党だ。フリーだけだと新自由主義になってしまうのでフェアが必要だ。僕は自民党的な政党が一度潰れて復活してくれればいいと思っている。自民党は日本人の体質そのものだから、一つあっていい。それともう一つオープンでリベラルな政党が欲しい。簡単に言えば保守2党論だ」
「僕の勘だが、久しぶりに政局が大きく動きそうな気配がする。どうしても動かなければ僕も動く。皆腹の中ではこのままでは駄目だと思っている。ちょっとしたきっかけがあれば、動く」
◇ ◇
進次郎氏のコメ安値路線はむしろ自民党の選挙基盤を弱体化させているとの見立て、なかなか興味深い。
おざわ・いちろう
1942年生まれ。立憲民主党所属の衆院議員。時々刻々の政治状況を鋭く捉え、長年政界のキーマンであり続けている
くらしげ・あつろう
1953年、東京都生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局、整理、政治、経済部を経て、2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員
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