都議選告示 「裏金」など広く議論を
朝日新聞 2025年6月13日 5時00分
都内に設置された都議選のポスター掲示場=2025年6月8日、東京都渋谷区、前田史郎撮影
物価高対策や超高齢社会への対応、激甚化する災害への備えなど、首都が直面する課題の多くは全国の道府県にも共通する。候補者はもちろん有権者の責任も重い。
東京都議選がきょう告示され、22日の投票日に向け127議席をめぐって争われる。今年は参院選と重なる12年に1度の年で、結果次第では国政にも影響する。
都政で自民党が第一党を維持できるか。都民ファーストの会、公明党とあわせた小池百合子知事の支持勢力が過半数を得るか。共産党や立憲民主党などが過半数割れに追い込むのか。議席をもたない政党への支持も注目される。
今回の争点の一つは、政治と金の問題だ。
都議会自民党の政治資金パーティーをめぐり、都議らが収入の一部を政治資金収支報告書に記載せず自分の収入とする「中抜き」疑惑が昨年、発覚した。国政と同じ不透明な金の流れは批判を浴び、26人が報告書を訂正した。だが、詳細は明らかでなく、疑念は払拭(ふっしょく)されていない。
政治に使ったお金を国民の監視のもとにおくことは政治資金規正法の基本で、流用は有権者への裏切りだ。「裏金議員」の責任をはじめ他会派の対応など、都議会全体の自浄能力が審判を受ける。
各党はSNSや動画配信に力を入れ、支持拡大にどうつながるかも注目される。公認候補を公募して面接の模様を配信したり、著名人との対談を流したり、告示前からネット上の陣取り合戦の様相だ。
昨年の衆院選や首長選ではネットを駆使した党や候補が票を伸ばし、既成政治への不信を示す原動力ともいわれた。政策や人柄を知る手がかりが増えるのはよいが、ネットは利用者の関心領域に偏った情報が集まりやすく真偽不明のうわさや誹謗(ひぼう)中傷、デマが混在することもある。そうした特性も認識しておこう。
不確かな情報の真偽をチェックするのは私たち新聞の役割でもある。記事やテレビ、選挙公報など多様な情報源に触れ、判断してほしい。
先の都知事選では選挙ポスターの掲示枠が販売され、動物やほぼ全裸の女性写真が貼られるなどした。その後、公職選挙法の改正で品位保持規定ができたが、品位の定義はあいまいで実効性に疑問も残る。憲法の表現の自由を守りつつ公正な選挙をどう実現するか、試金石ともなろう。
前回の都議選の投票率は42・39%で、過去2番目に低かった。投票は民主主義の基本的な権利の行使だ。暮らしの先行きや将来の首都像を見すえ、自らの声を票に託そう。