国旗損壊罪法案 「表現の自由」を脅かす
東京新聞 2025年11月8日 07時17分
日本を侮辱する目的で国旗などを傷つける行為を罰する「国旗損壊罪」を盛り込んだ刑法改正案を参政党が参院に提出した。
自民党と日本維新の会も「連立合意書」に来年の通常国会での同罪制定を明記しているが、憲法が定める「表現の自由」を侵害しかねない。法案撤回を求める。
参政党提出の改正案は、日の丸を損壊などした場合には「2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金」を科すとしている。
国旗損壊罪を制定する刑法改正案は自民党が野党時代の2012年に提出したが、廃案に。21年にも高市早苗首相ら自民党の右派議員らが提出の動きを見せた。
刑法92条には外国国章損壊罪が定められており、日の丸も同様に扱うべきだという主張だが、外国国旗の損壊を罰するのは外交への悪影響を避けるためだ。公訴の提起には外国政府の請求が必要となり実際の適用例もほとんどない。
官公庁などの日の丸を損壊すれば、器物損壊罪が適用される。
このため、国旗損壊罪創設には個人所有の日の丸を自身で損壊することを防ぐ狙いがあるが、多発の事実はない。立法事実に乏しいばかりか、芸術や政治的表現の自由を脅かす恐れがある。
日の丸が多くの人に尊重され、その損壊に不快感を覚える人があるにせよ、社会の常識を覆すことを狙いとする芸術表現もあり、国や政府への抗議に国旗を用いる手法もあるだろう。
表現の是非に踏み込む可能性のある立法を許してはならない。
戦前の植民地主義や戦争動員に利用された史実から、日の丸自体を否定的にとらえる人もいて、罰則の制定で国旗への敬意を強要することになれば「思想・良心の自由」を脅かすことにもなる。
さらに、改正案は「日本を侮辱する目的」を損壊罪適用の条件とするが、国家への侮辱という条件は曖昧であり、恣意(しい)的解釈を許さない刑法の原則に反する。
国旗への冒瀆(ぼうとく)行為を禁じる法律は米国にもあるが、連邦最高裁は1989年、表現の自由を保障した米憲法に反するとの違憲判決を出し、事実上無効化した。
国や郷土に愛着を持つことは、人々の自主性に委ねられるべきであり、権力が強いるものではない。寛容さや自由を尊重する国柄を守ることこそが、国に対する信頼を国民から得る道である。






