広がる特殊詐欺 手口周知し被害の抑止を
毎日新聞 2026/3/3 東京朝刊

2025年に確認された「ニセ警察詐欺」の被害者の年代と、
特殊詐欺に利用された電話番号
特殊詐欺に利用された電話番号
誰もがだまされる可能性がある。横行する手口を周知し、被害を防がなければならない。
全国の警察が2025年に把握した特殊詐欺の被害額は約1414億円に上った。過去最悪だった前年の2倍近くに増えた。
目立ったのが電話などで警察官をかたる「ニセ警察詐欺」だ。被害額は全体の約7割に及ぶ。
「口座が犯罪に使われている」と電話をかけてきた後、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などのビデオ通話に誘導し、偽の逮捕状を画面越しに示して不安をあおる。「潔白を証明するため」などとだまして金を送らせる。
若い世代に被害が広がっているのが特徴だ。30代の被害件数が最多の2割に及び、20~40代で5割を占める。大半が高齢者だった従来の特殊詐欺とは様相が異なり、全ての世代で注意が求められる。

特殊詐欺被害などに注意を呼びかけるチラシを配る警察官(手前右)=千葉市中央区で2024年5月21日午後3時21分、近森歌音撮影
人と全く接触しないインターネットバンキングで金を振り込ませるケースも増えた。金融機関やコンビニエンスストアの現金自動受払機(ATM)で従業員らが声をかけるなどの対応では被害を食い止められなくなっている。
警察がSNSで連絡を取って振り込みなどを求めることは絶対にない。一人で判断せず、冷静に最寄りの警察などに問い合わせることが重要だ。
特殊詐欺では、犯行メンバーがSNS上で連絡を取り合う匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ=匿流)の関与が指摘されている。捜査の手が及びにくい東南アジアに拠点を置く組織も多い。25年の特殊詐欺に使われた電話番号の4分の3が国際電話だった。
各国と連携し、摘発を進める必要がある。闇バイトに応募して「かけ子」になる若者もいる。加担すれば、人生が台無しになるとの認識を持ってもらいたい。
被害金の回収を阻む仕組みの導入も急がれる。犯罪組織が振り込みに使う口座をSNSで募集している動きを逆手に取り、警察が開設した架空口座を提供して、引き出させないようにする手法なども検討されている。
被害に遭うと生活の基盤を壊されるだけでなく、精神面や家族関係にも深刻なダメージを受ける。根絶に向けて、力を尽くす必要がある。



