旧統一教会に解散命令 全面的な被害救済実現を
毎日新聞社説 2026/3/5 東京朝刊
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散を命じた東京高裁決定を受け、記者会見する紀藤正樹弁護士(右手前)ら全国霊感商法対策弁護士連絡会=東京都千代田区で2026年3月4日午後2時9分、西夏生撮影
教団の財産を全て把握し、霊感商法や高額献金などの被害救済を確実に実施すべきだ。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に解散を命じる決定を東京高裁が出した。教団側の即時抗告を退け、昨年3月の東京地裁決定を支持した。高裁決定により解散命令の効力が生じ、清算の手続きが始まった。
教団側は最高裁に不服を申し立てる方針だが、結論が覆らない限り手続きは止まらない。
解散後も宗教活動は続けられる。とはいえ、宗教法人の資格が剥奪される重い判断だ。信仰に使っていた施設が清算対象になり、税優遇もなくなるため、運営基盤が揺らぐ。
高裁は、教団側が通常の方法であれば達成できないような寄付金額の目標を定めて、信者らに勧誘させてきたと指摘した。
清算へ国の支援が必要
深刻な悩みなどを抱えた人たちに「先祖の因縁」と告げて不安をあおるなど、悪質な手口で献金を集めた。被害は長期に及び、地裁決定が指摘しただけでも200億円を超える。
教団側は昨秋に被害者への補償委員会を設けたが、高裁はこうした対応を不十分と一蹴し、「不法行為を防ぐ手段は解散命令以外に見当たらない」と結論付けた。
オウム真理教など過去の解散命令では幹部が刑事処分に問われたが、今回は民事上の不法行為が理由となった。法を守り、一般的な活動をしている宗教法人には影響を及ぼさない。組織の実態を丁寧に認定し、被害の甚大さを踏まえて解散を命じた高裁決定は妥当だ。
今後の手続きは、裁判所が清算人として選任した弁護士が担う。教団が保有する預金や不動産などを精査し、被害を届け出た人に弁済していく流れだ。教団側は解散請求に激しく抵抗しており、清算手続きの難航が予想される。
懸念されるのは清算人の権限が十分ではないことだ。
企業などの破産手続きにあたる管財人は、調査権限が法律で明確に定められ、企業側にも強制力を伴う協力義務がある。
しかし、宗教法人法は清算人の権限を具体的に明記していない。文化庁は昨年10月に旧統一教会を念頭に置いた清算の指針を策定し、調査妨害や財産隠しがあった場合の対応などをまとめたが、法的拘束力はない。
多数の被害者がいたオウム真理教の場合は、救済を進める複数の立法措置が執られた。今回も政府や国会の支援が欠かせない。
教団の資産は1000億円規模に上る。献金の多くは教団が創設された韓国の本部に送られてきた。資産の全容解明を図るため、教団トップの韓鶴子(ハンハクチャ)総裁を逮捕した韓国の当局などに協力を求める余地もある。
政治との関係は未解明
救済には被害者本人の申告が必要だが、教団側の報復を恐れてためらったり、自分が被害者だと自覚できなかったりする人もいる。文化庁の指針は、清算終了後に声を上げた被害者にも対応できるよう、弁済を続ける財団を設ける案を示した。全ての被害者の救済を図る手立てを講じる必要がある。

東京高裁を出て報道陣の取材に応じる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の福本修也顧問弁護士(中央)=東京都千代田区で2026年3月4日午前11時8分、西夏生撮影
教団を巡っては、信者となった親の下、苦難を強いられる「宗教2世」の問題が浮かび上がった。さらなる実態調査や相談体制の強化が急がれる。
霊感商法といった教団による被害は1980年代から指摘されてきた。だが、90年代に合同結婚式が話題になった後は注目されない時期が続いた。再びクローズアップされたのは、2022年に宗教2世の被告が安倍晋三元首相を銃撃する事件が起きたためだ。
問題を放置した国の責任は重い。過去の対応を検証し、高額献金などの被害再発を防ぐべきだ。
見過ごせないのは、政治との関係がいまだに解明されていないことだ。教団関連のイベントなどに参加したり、選挙で支援を受けたりする自民党議員が多くいた。教団にお墨付きを与えるような形にもなっていた。自民は22年に検証結果を公表したが、十分なものではなかった。
最近も、日本の法人が韓国の本部に報告した内容に基づく内部文書で、高市早苗首相をはじめ自民議員とのつながりが明らかになっている。
解散命令が出ても、教団を巡る疑惑が全て解決したわけではない。自民は事実関係を明確にし、説明責任を果たさねばならない。






