No Nukes 原発ゼロ

初代「No Nukes 原発ゼロ」 の後続版です。 政治・原発問題などを中心に、世の中の「気になる動き」をメモします。

原爆・原発

原発解体後の廃棄物 処分場選定に国も関与を
毎日新聞社説 2025/7/6 東京朝刊
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中部電力浜岡原発2号機の廃炉作業現場で、解体のため原子炉から取り外された圧力容器の上ぶた=静岡県御前崎市で2025年4月22日、木許はるみ撮影

 原発の廃炉は、建造物を解体するだけでは終わらない。大量の放射性廃棄物を処理するという難題が待ち受けている。

 運転を終えた中部電力浜岡原発2号機(静岡県)で、商業用原発としては初となる原子炉の解体作業が始まった。炉心にある制御棒などは遠隔操作で細断される。2035年度までに解体を終え、42年度に廃炉を完了する計画だ。
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放射性廃棄物のおおまかな分類と、それぞれの処分についての国の考え方=資源エネルギー庁の資料より

 原発の使用済み核燃料を再処理する際には、「核のごみ」と呼ばれる高レベル放射性廃棄物が発生する。それとは別に、廃炉作業では構造物や機材などの低レベル放射性廃棄物が出る。処分の責任は電力会社が負っている。

 放射線量が比較的高い制御棒などは「L1」という廃棄物に分類される。人体に影響を及ぼすリスクが長く残るため、原子力規制委員会は4年前、鋼鉄製の容器に密閉した上で地下70メートルより深く埋め、300~400年間管理するという処分の基準を定めた。


 処分場は着工から完成まで、最低10年はかかるとみられる。中部電はそれまでの間、原発敷地内に仮置きする方針だ。

 高レベル放射性廃棄物の場合、国が処分場を決めるとする法律が25年前にできたものの、今も見通しは立っていない。L1も地元自治体から受け入れの同意を得ることが難関となるが、候補地すら絞り込んでいない。長期の管理が必要なことを踏まえれば、対応を電力会社任せにせず、国が選定に関与する仕組みを構築すべきだ。

 L1より放射線量が低い廃棄物も、処分先は決まっていない。一般の産業廃棄物と同じように処理することはできず、当面は環境に影響が出ない形で敷地内の保管を続けるしかない。

 既に老朽化などで24基の原発の廃炉が決まっており、解体はこれから本格化する。廃棄物は1基あたり1万トン前後に上ると見込まれ、膨大な処分費用が必要となる。

 青森県で使用済み燃料の再処理工場が稼働すれば、廃液など処理が難しい廃棄物も新たに生じる。

 国は原発の新増設を進める方針にかじを切り、核燃料サイクル政策の旗も降ろしていない。しかし、厄介な「ごみ」処理の工程とコストを示さないままでは、原子力への国民の不信は解消しない。

<本音のコラム>恐怖の原発無責任体制
 鎌田慧(ルポライター)
東京新聞 こちら特報部 2025年6月17日 12時00分

 「政府は九州電力を念頭に『原発の建て替え』を促す考えだ」(「朝日新聞」5月20日)。川内原発3号機(鹿児島県)を建設させるとの記事だが、本気ですかと尋ねたい。石破首相、原発には消極的なはずだったが、以前とは別人のようだ。

 「(既存の)原子力を最大限活用する」との方針を超えて増設まで采配。まるで旧日本陸軍幹部のような無方針、無責任。福島第1原発のような悲惨な事故が発生しても経営者も政府も誰も責任を取らなかった。原発の最終処分場はいまだ決まっていない。使用済み核燃料は再処理して、また原発の原料にするという「核燃料サイクル」は完全に破綻している。

 青森県六ケ所村の再処理工場は1993年に着工されたが、32年がたってもまだ完成しない。仏の顔も三度までというが、実に27回も「今度こそ完成します」と延期してきた。噓も方便とか。

 2009年に3回続けて高レベル廃液ガラス固化建屋で、配管から放射性廃液が漏れる事故が発生。「固化セル漏えい液受皿(うけざら)の漏えい検知装置が動作不能なのに、速やかに廃液の移送を必要とする工程を停止する措置を行わなかった」と当時の原子力・安全保安院が違反を指摘して運転停止。

 それから16年、建屋内はなお高濃度に汚染されたまま。「来年度末、完成します」というのだが、出口なし。

東電元役員の賠償否定 不問にできぬ事故の責任
毎日新聞 2025/6/10 東京朝刊
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 株主代表訴訟の控訴審判決で、東京電力の旧経営陣に13兆円超の賠償を命じた1審判決が取り消され、心境を語る原告・弁護団=東京都千代田区で2025年6月6日午前11時42分、幾島健太郎撮影

 事故の責任が明確にならなければ、地震大国で原発を稼働させることへの不安は拭えない。

 東京電力福島第1原発事故で、元役員らの賠償責任を否定する判決を東京高裁が出した。4人に対し、13兆円余を東電に支払うよう命じた1審判決を取り消した。
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東京電力福島第1原発事故を巡り、東電株主が旧経営陣の責任を問う株主代表訴訟で控訴審判決が言い渡された東京高裁の法廷=2025年6月6日午前10時57分(代表撮影)

 株主が経営責任を問うために起こした裁判だ。津波による事故を予想できたかどうかが争われた。

 事故の9年前、政府が地震予測の「長期評価」を公表し、巨大津波を起こす地震が発生する可能性を示していた。これに基づく東電の試算でも、敷地の高さを大幅に上回る津波が想定された。

 だが、旧経営陣は外部の専門家に改めて確認する方針を決め、対策を先送りした。

 高裁は、長期評価は十分な根拠が示されていなかったり、異なる見解もあったりしたと指摘した。

 事故を防ぐには原発を停止させるしかなかったとした上で、それほどの切迫感を抱かなかったのは、やむを得ないと認定した。取締役としての職責を怠ったとは認められないと結論づけた。

 長期評価の信頼性は高く、津波の襲来は予想できたと認めた1審の判断を覆した。旧経営陣の刑事裁判でも、今回の判決と同様の考え方により、最高裁で無罪が確定している。

 しかし、原発でひとたび事故が起きれば、放射性物質が広範囲に飛散し、甚大な被害を招く。運転する電力会社の経営陣は、万が一にも起こさない措置を講じなければならない。

 高裁は、福島の事故を経験した今なら、取締役は一層重い責任を課されるべきだと付け加えた。

 ただ、津波の正確な予測が難しいことは、事故前から分かっていたはずだ。あらゆるリスクを想定し、より安全な対策を取ることが経営陣の責務だろう。高裁の結論には疑問が残る。

 事故から14年が経過しても帰還困難区域が設けられ、多くの人々が避難生活を送る。廃炉の見通しは立たず、除染ではぎ取った土の最終処分地も決まっていない。

 こうした課題に東電は正面から向き合うべきだ。刑事上や民事上の責任を免れたとしても、人々の暮らしや故郷を壊した社会的責任を不問に付すことはできない。

東電株主訴訟 原発事故の責任どこへ
東京新聞 2025年6月7日 07時04分
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 東京電力福島第1原発事故を巡る株主代表訴訟で東京高裁は旧経営陣の賠償責任を認めなかった。刑事裁判の無罪確定に続き、当時の幹部が誰も法的責任を負わないことになる。到底納得できず、原発への不信は増すばかりだ。

 一審の東京地裁は、過去最高額とみられる13兆円超の賠償を命じた。正反対の判決となったのは、巨大津波を予見できたか否かの判断が分かれたためである。

 東電は2008年、国の地震予測である長期評価を基に、津波が最大約15メートルに達するとの試算を得たが、旧経営陣は原発を停止せず、津波対策を先送りした。

 高裁判決は、長期評価には積極的な根拠が示されておらず、信頼性が不十分だと結論付けた。「巨大津波は想定外」という旧経営陣の主張を丸のみした形だ。

 しかし、長期評価はトップレベルの専門家らがまとめた見解である。地震や津波の研究には未知の領域が多いとはいえ、それに基づき対策を進めるべきだった。

 原発事業者が、他企業とは比較にならないほど重い安全義務を負うことも忘れてはならない。重大事故が起きれば地域社会が崩壊し、国全体も揺るがす。

 原発事故後、福島の多くの人々が故郷を離れざるを得なかった。避難中に死亡したり、自殺した人もいる。事故処理費用の一部は電気料金に組み込まれ、全国の家庭や企業が負担している。旧経営陣を免責した今回の判決は、国民の感情を逆なでしている。

 旧経営陣が対策を先送りした背景には、目先の利益優先の姿勢がある。建屋の水密化などに相応の費用がかかり、運転停止で収入が見込めなくなるからだ。

 一方、東電が背負った事故処理費用は廃炉や除染、被災者への損害賠償などで計23兆円余と天文学的な金額に上る。経営判断を大きく誤ったのは明白だ。

 経営者が常に正しい判断ができるとは限らない。判断を誤った際に、絶対に償うことができない巨大なリスクを抱えていることが、原発の不条理の証しである。

 原発事業の未来は明るいとは言えない。安全対策費用は膨らみ、事故時の住民避難計画は実効性に乏しい。核のごみを処理する核燃料サイクル計画も破綻している。

 国は「原発回帰」に舵(かじ)を切ったが、矛盾が膨らむ現実を直視すべきである。

福島の除染土 社会的な合意へ熟慮を
朝日新聞 2025年6月4日 5時00分
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福島県大熊町の中間貯蔵施設。奥は東京電力福島第一原発
=2025年2月15日、朝日新聞社ヘリから

 東京電力福島第一原発の事故の後、除染作業で出た膨大な土をどうするか。政府が、再生利用と福島県外での最終処分に向けた基本方針を決めた。ただ、受け入れ先を見つけるのは難しく、道筋は描けていない。社会全体で向き合うべき重い課題だ。

 福島県内の除染土は復興の妨げにならないよう、原発周辺に設けられた中間貯蔵施設に集められた。量は東京ドーム11杯分にのぼる。政府は地元の理解を得ようと、2045年までに土を県外に運び出して最終処分する方針を示し、県知事は「苦渋の決断」として受け入れた。

 県外処分を「国の責務」と定める法改正には、国会で多くの会派が賛成した。深刻な環境汚染やふるさとを失う苦しみを背負わされた被災地への約束は、重い意味をもつ。

 ただ、実現性を疑問視されるなか、政治主導の見切り発車だったのも確かだ。

 処分の期限まであと20年、当面は最終処分の量を減らすための再生利用が課題になる。総量の約4分の3にあたる放射能濃度が1キロあたり8千ベクレル以下の土を各地の公共事業に使う計画だ。今回の基本方針には、国が率先する姿勢を示すため首相官邸での活用も盛り込んだ。植え込みで使うという。

 政府は安全性を十分確保するため、工事の作業員らの被曝(ひばく)を国際基準以下に抑え、土の飛散や流出の防止策などもとる、としている。とはいえ科学的な安全を強調するだけでは、理解は進まない。

 環境省は首都圏で実証事業を計画したが、近隣住民の反対で頓挫した。最近も再生利用基準への意見公募に不安や疑問が多数寄せられた。

 原発事故に伴う放射能のリスクをめぐっては、農産品や処理水放出でも鋭い意見対立があった。政府はお仕着せの発信ではなく、自治体や市民との丁寧な対話を通じて懸念を払拭(ふっしょく)し、社会的な合意へ努力を尽くす責任がある。

 その先の最終処分も、議論を本格化させる時だ。再生利用も含む費用や負担、完了後の原発周辺の地域像など、課題は多い。

 除染土の扱いは、事故の処理でとりわけ大きな難問だ。環境省の調査では、県外処分の方針を知る人の割合は福島県外で4人に1人で、県内の半数強と差が大きい。

 14年前の大事故は「安全神話」のもと、日本社会が原発を使い続ける中で起きた。福島第一原発の電気は主に首都圏で使われていた。その後始末を全国で受け止め、どう解決につなげていくのか、熟慮する必要がある。

原発のごみ問題 次世代につけを回すな
東京新聞 2025年6月2日 07時35分
東京新聞2023-07-28 085056
 廃炉プロセスにある中部電力浜岡原発2号機(静岡県)で、国内の商業炉としては初めての原子炉解体作業が進んでいる。作業の進行に伴い、危険な放射性廃棄物が大量に発生するが、その行き先は決まっていない。政府は、使用済み燃料を含めた「ごみ問題」を先送りしたまま進める「原発回帰」の危うさを直視すべきだ。

 中電は、安全対策にかかる負担が大きいとして2008年、老朽化した1号機と2号機の廃炉を決定。翌年、作業に着手し、タービンや発電機など、周辺設備の解体撤去を進め、今年3月から、廃炉作業の「本丸」と呼ばれる原子炉の解体に取り掛かった。生身の人間は近づくこともできないため、遠隔操作で作業を進めて35年度までに原子炉解体を終える計画だ。建屋撤去などを含めた廃炉完了は42年度を予定している。

 解体で、1、2号機合わせて約2万トンの再利用不能な「低レベル放射性廃棄物」が発生するとみられているが、「低レベル」とはいえ、炉内構造物や燃料棒など放射能レベルが低いとは言い難いものも含まれ、原子力規制委員会は、地下70メートル以深の安定した地層に埋設、300~400年にわたる管理が必要との基準を定めている。

 浜岡に限らず福島第1原発を含む24基の廃炉が決まっており、ごみ問題は文字どおり山積の状況。特に福島第1原発の廃炉に伴って発生する放射性廃棄物の総量は約780万トン、通常の原発600基分に相当するとの試算もある。

 一層深刻なのは、使用済み核燃料を再処理した後に残る廃液をガラス固化した「高レベル放射性廃棄物」の扱い。10万年の管理が必要とされる極めて危険な「原発ごみ」だが、最終処分場は、受け入れ先となる自治体の公募開始から23年経てもなお、候補地の見通しさえたっていない。

 使用済み燃料を再利用する「核燃料サイクル計画」は事実上破綻し、最終処分場のめども立たない以上、ごみの発生量を「減らす」しかないのは自明の理。なのに、政府は逆に「増やす」道、新増設を含む「原発回帰」を急いでいるのだから、到底間尺に合わない。

 電力需要増などを理由に挙げるが、利益は今の世代が享受し、負債は後の世代に押しつける姿勢というほかない。政府がまずなすべきは原発の「ごみ問題」解決に道筋を付けること。それにつきる。

東電と原発事故 責任貫く道筋を示せ
朝日新聞 2025年5月26日 5時00分
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東京電力の看板

 原発事故を起こして国の管理下に置かれた東京電力の再建が、不透明さを増している。業績は目標に届かず、再建計画の見直しも遅れる。

何十年も続く後始末の責任を、まっとうできるのか。政府と東電はいまの枠組みを検証し、原発に頼らない持続的な道筋を示す必要がある。

 14年前の福島第一原発事故で東電は経営危機に陥ったが、損害賠償や除染・廃炉に支障が出ないよう、政府が実質国有化して延命させた。事故処理費用の想定は総額23兆円あまり。賠償費を国が立て替え、後から全国の電気利用者が払う料金で実質的に回収する制度をつくるなど、異例の政策支援を続けてきた。

 国が認定した再建計画は年4500億円の利益を目標に掲げるが、近年の実績はほど遠い。設備投資の支出がかさみ、厳しい資金繰りが続く。事故処理や脱炭素、供給力強化に必要な資金を安定的に稼げるか、懸念は強まる。

 いまの計画は24年度内に改定する予定だったが、今年度にずれ込んだ。業績向上の柱と期待する柏崎刈羽原発をいつ再稼働できるか、見通せないためという。だが、原発頼みそのものに無理がある。

 1基が動くと年1千億円の収支改善効果を見込む一方、安全対策費は計1兆円を超え、重荷になっている。不祥事が相次いだ東電への地元の不信は根強く、再稼働に必要な新潟県知事の同意の手順ははっきりしない。テロ対策施設の建設も予定より4~5年遅れ、期限に間に合わない見通しだ。現実的な再建計画へ、見直しは避けられない。

 東電は原発事故の被害者への償いと福島復興の使命を成し遂げるため、存続を許された特殊な企業だ。経営陣の社会的責任は重大で、業務効率化の徹底はもちろん、成長分野である再生可能エネルギー拡大や新たな収益源の開拓、他社との事業再編など、あらゆる努力が求められる。

 事故処理の枠組み自体も点検が欠かせない。もともと政府が急ごしらえしたもので、実現性や責任のあいまいさなど、多くの問題を抱える。

 処理費用は上ぶれを繰り返してきた。特に廃炉は、どれほどのお金と年月がかかるか、誰にもわからないのが実情だ。東電の株価も低迷し、国有化から抜け出す展望は開けない。

 その場しのぎを続ければ、事故処理の基盤は揺らぎ、国民負担がいたずらに膨らみかねない。計画見直しは、めざす姿と必要な手立てを練り直す好機だ。政府と東電は、各自の役割と説明責任を果たさなければならない。

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