2010年11月08日

ヘビー級でも苦悩をつきぬけて歓喜にいたれ

いのうえわたるそのとき、会場は割れんばかりの井上亘コールにに包まれた。
ヘビー級転向以来泣かず飛ばず。体を大きくしたのと共に大技に走り、
試合は単調。次第に空気に。
練習だけは怠らない、感じのよさも気付いてみれば37歳。
しかし努力は嘘をつかない。導く人さえいれば結果を出せる。
新日本・井上亘選手、G1タッグリーグ優勝の栄冠を獲得へ。
ジュニアヘビー級ではスーパージュニア優勝、IWGPジュニア王座獲得と結果を残した井上選手。
しかし2008年にヘビー級転向宣言すると、立場は一転。
ヘビーの割には小さな体、カバーしようと序盤から大技を出すも、まったく沸かない会場。
生真面目さはあだとなり、新技を編み出し空回りと、空転に継ぐ空転の大連続。
アイツの試合は相手次第。トイレ休憩にちょうどいい。ハイテンションは入場曲だけ。
ジュニアの時だって結局金本選手のパートナーの印象しかなかったよねとささやかれる始末だった。

翌年、G1出場直訴を経て、見かねた先輩・永田さんに声を掛けられ、落ちこぼれ軍団「青義軍」へ加入。
技の選定の見直しも図り、必殺技もシンプルなスピアー・オブ・ジャスティスへ。
はっきり言ってただのタックル。かわされることも非常に多いが、
この技にどうつなぐのか、どう成功させるのが見所となった。
シンプルゆえに、感情を乗せ、伝わる技となりえたのだ。

トイレ休憩だと思っていても、心のどこかに井上選手のひたむきさをファンは理解している。
それだけしか能がない。そうかもしれない。
しかし人はひとつでも秀でた部分があれば、すべてのマイナスは時にカバーできるものなのだ。

G1タッグリーグ開幕当初は「優勝候補」と書かれながら、どこか不安定さも残した青義軍。
5月のタッグ王座戴冠時も、3WAYだから取れたんだと後ろ指をさされたもの。
しかしこの日は後楽園ホールに響く井上亘コールに、師匠・永田さんも感極まって男泣き。
井上選手の放つ共感性や感情移入度。それはどんな選手にも負けない必殺技であったのだ。

井上「青義軍に入って……ツラかったですね、最初は。自分のプロレスがわかんなくなって、もがきました。やってる最中も光が見えなかったけど、『絶対この経験を活かすんだ』と。やってるうちに自分らしさを取り戻した気がします。永田さんに檄を飛ばされたときも、くやしかったですし。余計にもがいてしまって……ただ、ツラいこともあるんですけど、今日みたいに自分が思ってる以上の幸せを返してくれるのがプロレスなんで」(新日本公式
IWGPタッグ王座を狙うのもいいですが、その先のIWGPヘビーも狙ってほしい。
タッグで光る脇役が、主役に踊り出たっていいじゃない。
苦悩をつきぬけて歓喜にいたる。これはアニマル浜口ジムに書かれた教訓であり、
耳が不自由な中、名曲を残したベートーヴェンのことばである。

「優れた人間の大きな特徴は、不幸で、苦しい境遇にじっと堪え忍ぶこと。
そして優れた人間は、苦悩をつきぬけて歓喜にいたる」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
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この記事へのコメント
あの言葉は元々ベートーベンの言葉なんですか。
青義軍の優勝もビックリでしたがJJさんの博識ぶりにも改めてビックリです。
さぁJr.タッグでサムライガー組が帰ってきますね。
少なくともドンブラ組からは星を上げてほしいです。
Posted by TJS at 2010年11月08日 09:57
●TJSさんへ
なんか最近ベートーヴェンづいてますが、ベートーヴェンですね。
有名な歓喜の歌(これ自体はシラーの詩)もこのイメージだったり。

>さぁJr.タッグでサムライガー組が帰ってきますね。
レジェンドももちろんですが、ロメロ選手の帰還も嬉しいですねえ。
Posted by 漁師JJ at 2010年11月08日 10:20
まだまだこの国も“どん底を味わった人間の再起”に暖かいところもあるんじゃないかなと。
ただ、毎度の事ながら、亘は『歓喜に至っちゃうと、しばらくしたら元通り』ってケースが非常に多いんですよね…。

第一線になかなか定着しないのも困った事。人が良いだけではどうにもならないのは
我々の社会もプロレス界も同じこと。さあ亘の次の一手は。
Posted by トロピカリ at 2010年11月08日 11:15
ヘビーのシングルはまだだけど、ジュニアタッグ・ジュニア・スーパージュニア・タッグ・G1タッグとそれ以外はあらかた制覇した井上は実はすごい実力者のような気がしてきた。
Posted by いちふじ at 2010年11月08日 15:57
私にとって、井上の試合はKENTAとのシングル以降で印象深いものがないんですよね…。凄く良いものを持っている選手だし、気になる存在ではあるんですけど、活かし切れていない感を受けてばかりです(-_-;)
Posted by バグ at 2010年11月08日 17:40
やっぱり頑張っている人が報われた方が感情移入しやすいですね。プロレスって、そういう他にない魅力があるので続いているのでしょう。
いよいよジュニア。面白いメンバーが揃っているので非常に楽しみです。私もブラックタイガー時代からロメロ選手が気になっております。
Posted by プリンス at 2010年11月08日 19:49
見に行きました。
亘、おめでとう!デビュー時からのファンだけに、パッとしない現状にイライラ(いやまあ実際ヘビー転向後は酷かったですしね)
会場もハッピーでしたよ実に。
この勢いでシングル戦線にも入れればいいのですが、G1を見るにまだかなあという感じも。
ただスピアー・オブ・ジャスティスに入る時に「お、決まるか!?」という緊張感が出てきたのは大きいと思います。中邑選手のボマイェと同じく定着してきたって感じでしょうか(少なくとも僕の中では)
一度歓喜に至ると失速するのが今までの亘なので、これからはどんどん加速していってほしいですね。
ヘビー級にまた一人主戦力が増えた!と言われるように頑張れ、亘!
Posted by もょもと at 2010年11月08日 20:34
●トロピカリさんへ
対戦相手なりパートナーに影響されるタイプなので、
慣れない顔との対戦で真価を問われそう。
マシンガンズとか、ビアマネーとか。

●いちふじさんへ
パートナーや対戦相手に恵まれてますよねえ。
今度は井上選手が試合を作り、引っ張っていく展開に期待。
Posted by 漁師JJ at 2010年11月08日 23:56
●バグさんへ
お気持ちわかります。120パーセントの力のある選手なのに、
空転して平均50しか出せていないというか。

●プリンスさんへ
シリーズとしては振り返ると地味目だったかもしれませんが、
こういうスポットライトを浴びる選手が生まれるのがまた面白い!
Posted by 漁師JJ at 2010年11月09日 00:18
●もょもとさんへ
いずれは… というか年齢を考えれば今すぐにでも
IWGPシングル戦線へ入ってほしいのですけどねえ。
まずはタッグで自信をつけて、ふがいなさを消し飛ばしてほしいです。
Posted by 漁師JJ at 2010年11月09日 10:19