草原に吹くこえ・感想レビュー

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「The Long Dark」-冷厳な雪山遭難サバイバル-

 ここ数年、ゲームではサバイバルがずっと人気な気がするのですが、雪山遭難というのは新しかったと思います。今日はSTEAMでも配信中の、カナダ発のPCゲーム「The Long Dark」を紹介します。


 方向感覚の喪失。奪われる体温。雪と氷に閉ざされた世界において、プレイヤーの命はあまりに簡単に失われます。そんな真っ白な冷徹さが癖になる、雰囲気の良いシミュレーションですね。ただし、ゲーム性には難ありなところもあり



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 ここまで紹介した内容を、実にストイックに体現したゲームです。プレイスタイルとしてはFPSに近く、洋ゲーによくある主観視点の操作ですね。


スクリーンショット (9)



 プレイ開始からすでに雪山の中で、ほぼ着の身着のままろくな装備もなし。つまりぼやぼやしていると、すぐに体温を失い凍死してしまいます


 しかし地図もコンパスもない山の中ですから、右も左も同じ光景。おまけに雪深く木がまばらに生えるだけの白い世界では、あっというまに道に迷います


スクリーンショット (5)



 運良く山小屋にたどり着けた。けれどそこらの小屋に備蓄があるわけでもなく、水も食料もすぐに不足します。そして誰と出会うこともないのです。


スクリーンショット (8)



 伝わったかと思いますが、このゲーム、めちゃくちゃ難しいです。特に序盤はシビアで、おそらくなんどもプレイヤーは死ぬでしょう。


 具体的には体温・飢え・渇きの維持が難しく、だというのに物資がありませんので、積極的に移動を続けなければならない。かといって不用心に出かければ、道に迷って万事休すの可能性もありますし、吹雪に見舞われれば戻ることもままなりません


 あと狼が襲ってきます。プレイに関して困難しかないですね。マゾゲーとの評価があるのも納得だと思われます。



 ただその、無情なゲーム性から生まれるカタルシスが凄まじいんですね。真っ暗闇の中、奇跡的に小屋へとたどり着いたときの安堵感。食料を見つけたときの喜び。焚き木の暖かさ。ふと見上げた夜空の呆然とするほどの美しさ


 難しいからこそ達成感がある……とばかりではないと思うのですが、少なくともこのゲームは、不条理であるからこその喜びがあります。そのあたりのバランスのとり方が、絶妙だと思います。



 またそのようなゲーム性だからこそ、没入感も高まってきます。たった一つの判断ミスが死に繋がり、積み上げた生存への布石が無為となりますから、集中せずにはいられません


 そのため一つ一つシステムは、ゲーム化された遭難ということでデフォルメ化されているのですが、深い臨場感を生み出してくるわけです。一定のリアルさを感じるわけですね。


 冬場に暖房を切って、電気を消してプレイなんかすると楽しいですよ。あくまでゲームなんですが、存分にひとりロールプレイができます。



 ただし、ここまで褒めちぎった最高のゲーム性だからこそ、本当に残念という部分があるんですね。賛否両論ありますし、甘えなのかもしれませんが、個人的には批判したいのがオオカミ問題です。


 本作ではプレイヤーを襲うエネミーとして、オオカミが設定されています。ランダムでそこかしこに現れ、唸り声とともにとびかかってきます。


 対応を間違った場合、即ゲームオーバーに近く、難を逃れても衣服はボロボロ。体力を喪失したうえに出血だ病気だとデバフがかかり、リカバリーは困難となります。



 それ自体はいいと思います。野生のオオカミが“選り好みする”性格で、手痛い反撃を食らう可能性があるうえに、とくだん美味しいわけでもない人を襲う可能性が極めて低いとか、そういう批判はおいといてもいいと思います。(実はとんでもなく批判されたので、ゲーム冒頭に釈明が入ります;)


 問題は開発陣の意地のようなものに合わせて、強化が繰り返されたことです。本作のテーマは遭難で、プレイ性を厳しくしたいというのは基調として当然だろうと思います。


 けれど水は低い場所を見つけるというわけで、無情なゲーム性の中でも、やっぱりゲーム的な突破口をプレイヤーは見つけてしまいます。手製の地図をつくるとか、リセマラするとか全裸ナイフするとか。


 ただそれへの対抗策として、狼の出現率やAIがやたらと強化されてしまい、最終的にオオカミにいかに対処するかというだけのゲームとなってしまった。それがすごく残念だったのです。



 というわけで、かなりハマったゲームではあったんですが、途中でバッサリ飽きてしまったゲームでもありました。私がやめてしまった後に、難易度調整等の救済措置がなされ、もう少しバランスは取り戻されたと聞いていますが、やはり否定的な意見は残っているようですね。


 そのあたり、雰囲気に興味を惹かれた人にはぜひにと勧める一方で、不条理なゲーム性に血圧があがるタイプの人には勧めにくいところもあります。そんなに値段が高いソフトではないので、とりあえずというのもいいとは思うのですが。



 さて残りのポイントですが、ゲーム性の要素と関連して、グラフィックと音楽性に関しても素晴らしい品質だと言えますね。ややアニメ調の、少しマットっぽさのある作風なのですが、その素朴さが逆にいい


スクリーンショット (6)



 遭難プレイをするうえで、煩わしさがない感じで、臨場感を逆に高めてくれるんですね。その一方で、シンプルなデフォルメの中にも拘りの描き込みがあり、グラフィッカーの美意識を感じます


 音楽に関しても同様ですね、ゲームの雰囲気的にBGMは少ないんですが、風の音や雪を踏み分ける音、薪の燃える音などなど、環境音の凝り方が半端ない。テーマ的に大事なところでしょうし、力を入れたことが伺えます。



 ストーリーやキャラクターについては、実はそこまでよく知らないんですね。当初このゲームは、これらの要素なしの体験型だったのですが、ここ最近ストーリーが追加されてきていると。


 少しだけプレイしたのですが、ゲーム性を壊さない粗削りで、けれど温かみも感じさせる、そんな程よい感じでしたね。まぁやっぱりおつかいミッションさせられるのにオオカミだらけで音を上げたのですが;



 「The Long Dark」に関しては以上のような感じです。がらく売上ランキングでも上位層に位置していますし、ハズレと感じる可能性は低いゲームなのは間違いないと思います。今はPS4でも発売されているらしいですね。


 たとえオオカミに追いかけ回されても、独特の心細さと生き残ることの喜びは、他では味わえないゲーム性だと思います。いちどはプレイしてくださいませ。

いしいしんじ「トリツカレ男」

 確か梨木香歩関連で手に取ったような気がする、いしいしんじ「トリツカレ男」です。ときどきは、こういう添加物の少なそうな本も読むべきかとは思います。



 主人公ジュゼッペは、いちど関心を抱くと、すべてを投げ売って取り組んでしまう“トリツカレ”男。そんな彼が、恋という最大のトリツカレに見舞われて、どうなるか。そんな素直な話です。


 いろいろあるんですが、それまでのトリツカレがこうじて事がうまく運びます。そういう、人生万事塞翁が馬的な愉快さと、愚直な取り組みが功を奏する説話的な。


 純真なヒロインがいて、口が悪い狂言回しがいて、登場人物のバランスも良いです。起承転結も組まれているので、面白い童話小説としてすっと読めると思います。



 一方でもう少し味付けの濃い話を読みたいと言うか、手の混んだ料理も食べたい気もしてきます。添加物が少ないというのは、単純であるとも言えますしね。


 子どもの本棚なんかにおいて、一緒に読んでも悪くないような感じです。興味をひかれるところがありましたなら、読んでみてはいかがでしょうか。


トリツカレ男 (新潮文庫)
いしい しんじ
新潮社
2006-03-28





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