今日はギャルゲーの感想を書きたい気分なんです。
糖分多めのことを考えていたいというか……

そんな私に、紅茶とケーキの甘さが絡むような、アンティーク喫茶を舞台とした正統派恋愛ゲーム;「ショコラ 〜maid cafe "curio"〜」のレビューをプレゼントw
いや何が言いたいのやら……;


 あっさりとしたシナリオ展開と、とっつきやすい魅力を備えたヒロイン達
アンティーク喫茶という舞台設定がよく生かされた、実に雰囲気の良いゲーム

けれど角のとれた良さばかりが、「ショコラ」の魅力ではありません。
ギャルゲーツンデレキャラの最高峰と言われる、2人のヒロインに関しては、非常に光るものがあります。
ダウナー系クールデレ腐れ縁系友達デレがお好きなら、忘れられないゲームになるでしょう



 高校卒業後、父の経営するアンティーク喫茶「キュリオ」に職を得ていた結城大介。
しかし平穏な日は突然、父の3ヶ月の再婚旅行で打ち破られる。

店長代理を務める必要性はもちろんのこと、どうやらこれはテストのようで、うまくいけば新規開店の2号店を任されるらしい。
ならばやってやろうと意気込む大介だったが、「キュリオ」のスタッフたちは、若い彼には扱いづらい同年代の女の子ばかりで…




 てな感じです。
喫茶店を舞台にした恋愛ADVというわけで、職場で起こるいろいろなことを経て、徐々に惹かれ合うという展開が基本です。

わりとちゃんと喫茶店してて、お店の雰囲気はよく出てるし、イベントでもしっかり舞台性が活かされます
別に本格的な描写というわけではないんですが、レジとかサーブとかオーダーとか、仕事に絡めた展開は多いです。


 ヒロインの構成はざっとこんな感じですかね。

真名井美里……どっかの家出お嬢様。純真で頑張り屋。けど世間知らずが酷い。保護したら懐かれて「キュリオ」で働くことに。
結城すず……再婚につき突然できた義妹。引っ込み思案で甘えん坊。お兄ちゃんのいる「キュリオ」でバイト。

桜井真子……少し年上のベテランスタッフ。ほんわかふんわり。あらあらまあまあ。頼ってしまいたい溢れる母性。
橘さやか……メガネっ娘パティシエール。緊張癖、不器用さん。守らなきゃ系。

大村翠……絶対に頭の上がらないフロアチーフ。男女関係を完全に通り過ぎた腐れ縁。明朗快活姉御肌。けれど本当は。。。
秋島香奈子……いつもダウナーな常連客。大介・翠とは高校以来の友人。素っ気ないのにだいたい大介のところにいる。


 6人ヒロインという、最近では逆に見ないですスタイルですが、昔は定番だった構成。
1人1人は短くなりますが、カバー範囲は広くなりますからね。
どれかは当たるんじゃないかと。



 「ショコラ」は実にシンプルで正統派というか、古き良きギャルゲーという感じで、平均的な魅力を持っています。
まずシナリオ展開ですが、出会いがあり、惹かれう過程があり、ともに迎える困難があり、それを乗り越える感動があるという王道なものです。

家出がバレて連れ戻されたとか、妹はヤバいだろみたいな、ありきたりなところを攻めてきますので、難しい内容はありません。
ただ登場人物たちは大真面目に取り組むので、コミカルというわけではなく、いわゆる“ハートフル”路線でしょうか。
どのキャラも癖の強くない、親しみやすい属性で固められているので、好みのキャラはいるはずですよ。


 ただこれらは、ともすれば“浅はか”と言われる面もあるかもしれません。
一部のギャルゲーに見られる、真剣な人間描写や、シリアスな心理描写を求める方には、魅力的ではないゲームかもしれませんね

キャラクターが抱える問題点の解決策にしても、短絡的なところが目立つシナリオもあります。
もうちょっと悩んでもいいんじゃないというか、それで解決かいというご都合もありますね。

ヒロインが主人公を好きになる過程も、実に早足w
ですがまあ、そういう側面も含めて、“正統派”の恋愛ADVではあると思います。



 一方で文句なしに魅力的なのは、舞台「キュリオ」の雰囲気と、シナリオ全体のイメージです。
あんがいしっかりとお店を描写していたというか、登場人物たちが全員喫茶店の関係者なので、日常描写もそれに絡めたものになります。

定番を取り揃えた感じで、職業そのものの魅力を描くという域ではないですが、喫茶店にいる雰囲気を楽しめて和みます
あとケーキや紅茶の話題がけっこう出てくるのも、喫茶店ぽくていいですね。


 実はこの、舞台が確立していて、登場人物たちがそこで役割を共有しているというのは、別の魅力も生み出しています。
というのも、一緒に働いているわけですから、キャラ同士の掛け合いが非常に多いんですね。

学園モノなんか、案外好き勝手やってるわけでして、実は横の絡みってあんまりありません。
ですが喫茶店は、1人では仕事をこなせないわけでして、自然シーンごとの登場人物が増えるわけです。


 これがシナリオ全体のイメージを、大きくほんわかとしたものにしています。
上述したように、深みのある関係性とかはないですが、いつもわいわいがやがややっている感じなので、キャラ同士が本当に仲良しに見える
そのおかげか、キレのあるギャグがあるわけじゃないのに、なんともプレイしていて面白く、飽きずにプレイすることができます



 欠点もあります。
とにかく気になるのはボリューム不足でしょうか。

シナリオそのものが短かいので、物足りないルートもかなりあります。
そして短さがここまで述べてきた、好きになる過程や問題解決の浅さを助長して、さらに空腹感を残します。


 これはしょうがないところもあって、実はこの作品、ライターが仕事を放棄した経緯があるのです。
代役として丸戸史明さんが大急ぎで書き上げ、数ヶ月という突貫工事で出来たのがこのシナリオであるそうです。

丸戸さんは現在、業界を代表するライターさんと言ってもいいわけですが、注目を集めることになったこの作品が、実はそんなやっつけだったとは驚きだったり。
逆にそれで面白いものが作れるのが、凄いと言うべきでしょうかね



 さてそれではメインデッシュと参りますが、キャクターについてです。
詳しくは後でネタバレ込みでやるとして、概ね平均的なヒロインが揃っています。

既に述べたように、とがったものはなく普通に可愛い感じで、難しいことを考えなければ普通に萌えられます。
「キュリオ」はアンティーク喫茶なわけでした、ウェイトレスさんはもちろんメイドと、格好も美味しいものですw
もちろん来店の挨拶は「お帰りなさいませご主人様」ww


 ただしかし、この評価は2人のヒロインについてはかなり変わったものとなります。
それは主人公の腐れ縁にして男女を超えた友人;大村翠とかつての想い人ながら願い叶わなかった人;秋島香奈子に関してです。

2人に共通することは、全般的な質の高さと設定の練度です。
他のシナリオとくらべて、心理描写も丁寧ですし、展開も駆け足になりすぎないよう配慮されています
香奈子シナリオなんか、Bad→Anotherを経ないとTrueに行き着かないという、手の込んだシナリオですし。

何より3人は高校時代の友人同士にして、香奈子は主人公がかつて好きだった人。
そして翠はそんな主人公をずっと目で追っていた、と関係に通時的なものがあるわけです。


 またキャラクター性だけをとりあげても、なかなか印象に残るものがあります。
翠は幼馴染系にありがちな妹っぽい感じも、主人公に好意を抱いているのがバレバレなわざとらしさもありません。

本当に主人公と友達。
軽口を叩き合い、隙を見つければ貶し合い、愚痴をこぼせば黙って聞いてやる。
ある意味理想的な“親友関係”にあるわけです。

しかしその心のうちには、“押し殺した臆病な恋心”がある。
高校時代には苦労していた設定のある主人公を、ずっと支えてきて、今も職場で力になっているという流れも含めて、滾るものがあるじゃありませんか(グッ)


 一方の香奈子はいわゆるダウナー系というやつで、今では長門以来クーデレは普及しましたが、当時は革新的な萌え要素といってもいいほど。
なんにつけ興味はなさそうなのに、いつもなんだかんだ主人公のところにいる。

マイペースなくせに構ってもらえないと拗ねる。
いやこれはヤバい……!

ただ主人公との関係は実はドロドロしたもので、解消されなければならないものがある
そこらへんを解きほぐしていくストーリーも、なかなか感動するものがありましたね。


 とにかくこの2人のキャラクターについては凄い印象深いものがあります
かのツンデレ大全でも、1.2を争うほど大きく取り上げられていましたし。

まあそれでも、やっぱシナリオのあっさり加減は変わらないのですがw
もうちょっとこのキャラをどっぷり活かすシナリオも見たかった気がしますねー。
ヒロインは4人くらいに絞って、より綿密な……ま、過ぎたことを言ってもしょうがないですが;;

声優に関してもこの2人の演技はなかなかですねー。
ただ録音に失敗しているのか、声がこもるのが残念ですが



 それでは残りのレビュー行ってみましょう。
まず映像ですが、まあ普通ですかね~

原画担当のねこにゃんさんは、けっこう癖の強い……というより癖の無さすぎる淡白な画を描くかたで、初見だとそれこそ下手に見える可能性もあるかもです;
プレイしていると、柔らかい線と優しい色使いに、なんとも安心感を覚えるんですけどね。


 背景その他にそんなに力は入ってない感じです。
イベCGも別に飛ばしてる感じはないですねー。

ただ作品の雰囲気とはあってますし、これはこれで十分では。
個人的にはキュリオのメイド服は、もっとシックでも良かった気がするんですけど。



 続いて音楽です。
こっちも普通かもですね;
でも映像以上に作品に合っているものがありまして、そこは高評価なところです。

喫茶店のイメージにピッタリな、同じ言葉になってしまいますが、優しくて柔らかい曲が多いのが特徴です。
窓からの心地良い日の光を感じながら、コーヒーを飲んでいるかのような曲調ですかねw


 一方のテーマソングは、実にPopで可愛らしいもの。
てかハズレ無しのI'v Soundな上に、ボーカルが今やプロボーカルとなったKOTOKOさんなので、間違いないですよ。

モタれそうになるほど甘口の曲ですけどねw
あんがい隠れた名曲扱いしている人も多いかもしれません。



 さて最後ですがシステム。
ただこれがちょっと難ありなんです。

ルート分岐まで4つのフィールドを選択し続けて、そこにいるキャラクターとイベントがあるかもという形式なんですが、これがダルい;
ゲーム内の時間経過が長いため、必然的に何もイベントが起こらない日が増えますし。
案外作業時間が積み重なる感じです。


 さらに!
たいていのイベントは、この5日の間にここに行けばというぐらいのスパンですが、重要なイベントはこの日のみというもあったり。

あと休日の行動が家か外かの2択ながら、けっこう分岐が複雑になっていて、重要イベント見逃す可能性高しです。
つまり何が言いたいのかというと、純愛系のくせに攻略がムズい

正直、攻略サイトは必須です。
プレイする場合は悪いこと言わないので、見たほうがいいです。
香奈子トゥルーなんて絶対に辿りつけない位置にあるのでw


 加えてキャラクターのところでも言いましたが、声優の音響があまりに酷い
メインヒロインたる香奈子・翠について特にそうですから、これは致命的な欠落かと。

スキップの2倍・3倍の存在やキャラごと音量の設定など、オプションはむしろ豊富なんですけどねぇ。
もっと基本的なところが……惜しい。



 「ショコラ」のレビューはこんなところです。
あっさりとした構成ながら癖のないシナリオ。
キャラも可愛く雰囲気が良いので、初めてのギャルゲにいいという評判はよく聞きますね。

ただ……ここまでレビューーしてきてなんですが、こうも古臭いと同じ系列でもっといい作品もあるのが実情です。
特に同じ世界観を共有した作品;「パルフェ」が完全に上位互換なので、わざわざこちらをやる理由が……

翠・香奈子ルートに関してだけは傑作ですからね、その2つだけやるのもありかもしれません。
ただ全部プレイしてこそ、特に主人公を支え続ける翠の魅力が発揮されるので……やっぱオススメゲームではありますが;





 それではネタバレありのキャラ感想に参ります。
これが一番書いてて楽しいんですがw


・真名井美里ルート

 健気で頑張りやな箱入り少女、美里ちゃんです。
中肉中背ピンクのツインテールと、見かけからベタな彼女ですが、中身もまさにそれ。

明るく純真でやや天然ボケで、主人公のことが好きでしょうがないという、典型的なギャルゲーヒロインだと思います。
今となってはもはや古臭い感さえある、ある意味 直球なキャラです。


 ひねくれた気持ちを廃せばとにかく可愛いキャラで、世間のことを知りたいからと家出して、汗水たらして働く姿がまぶしいです。
最初は完全に役立たずだったのが、頑張りの積み重ねの果てに、接客業をマスターしていく展開も良いものでした。
大介と結ばれてからの展開も甘々で、これでこそギャルゲでしょうと。


 そしてオチは組の方の娘だったというw
お父さん娘さんを下さいも、命がけになるわけです。

そこに来てのキュリオの団結や、バラさんの無双っぷりもわりと面白かったです。
それになにより、お父さんを前にしての大介くんがカッコよかった
強面の父上を前にして、箱入りだった娘の成長をなぜ認めてあげられないのかと、啖呵を切るシーンは見せ場でしたね。



・結城すずルート

 振ってわいた義妹のすずちゃん、もといリンリン。
構って欲しい、けど遠慮しちゃう、だけどやっぱり寂しい、そして我儘だって言いたいという、これまたお手本のような妹キャラ
ちっこくてショートカットなところが、またベリーキュート。

美里ちゃんと被る評価ですが、これまた古臭い、けれど王道なキャラでした。
お兄ちゃんの言うことなら何でも聞いちゃう、家事だってよくこなす出来た妹で、独占欲も強し。
普段は大人しいのに、大介に近寄る女性にはけっこうエゲツないところも、またカワユシと。


 真髄は上述のような関係を経て、時折発生するようになる我儘モードですね。
風邪を引いた展開で甘々の看病を要求するシーンとか、今でも印象に残ってます。

すずシナリオの骨子は、ともに家族の不在(片親の死と、片親の多忙)を心の隙間として共有する2人が、本当の兄妹になっていくものなので、そこらへん実は重要な展開なんですけどね。
ぎこちなかった2人が、それなりにお兄ちゃん-妹らしくなっていく流れは、ハートフルでした。


 そんな2人が迎える問題が、まあ一言で言ってしまえば、欲情してしまったとw
兄妹という禁忌が大きく横たわるわけで、それとどう折り合いをつけるかが焦点となります。

これもある意味古いですよねw
最近は一般媒体レベルで、実妹だって構わず恋愛しちゃうこの頃ですから。


 ただ解決策はぶっ飛んでました。
家族への依存か男女の想いなのか分からなくとも、一緒にいたいという気持ち変わらない
兄妹仲なのか男女仲なのか分からないなら、男女仲は付け加えと考える

こりゃもう発想の転換といいますか、これはこれで筋は通ってるというか;
まあなんだかんだ可愛いヒロインだったなーって印象は残っています。



・橘さやかルート

 まあぶっちゃけ……いらないシナリオ1号w
ぐずぐずメガネっ娘があまり好きじゃないというのもありますが、いくらなんでもシナリオが薄い。

困っているところを助けたら、懐かれて、お礼が私をあげます……っておい!
このへんとかまた古さを感じますねw
今じゃもはやギャグにしかならねぇ……


 そんなこんなで、頑張り屋だけど自信がない彼女を支えながらの、二人三脚の日々。
そこに彼女の才能を見込んだ、パティシエールとしてのフランス研修の話が舞い込むと。
そっからの、悩みながらも、頑張ってこい、待ってるからの流れは王道でしたね。


 別に悪いところはないんですが、それこそ悪い意味で古いシナリオというところですかね。
飛ばすのもありかもしれません;
あ、でも声優さんはかわしまりのさん……




・桜井真子ルート

 金髪のほほん溢れる母性
……アリ○アさん?
いらないシナリオ2号ですね;


 「キュリオ」経営に弱気になった主人公が、真子さんに頼っている内に溺れちゃうという話です。
まあ大介くんにしては珍しく、全力でヘタレだったなと。

真子さんは実は大介くんのことは好きなんだけど、理想のご主人様にメイドとして嫁ぐという、謎の逆光源氏計画実施中でw
好き・愛してる・でも拒絶という流れが、大介君の心を苛みます;


 まあ母性に溺れる的なのが好きな人にはいいのでは?
ちょっと抜けたところのあるお姉さん系としては、典型的な魅力を有していますし。

あと見どころは、完全にヘタれた大介を叱咤する、「キュリオ」の面々ですね。
そこからの大介の成長と、「キュリオ」のファミリーらしさを楽しめるシナリオ。



・チロルルート

 実は好きなんですよ、チロル。
喫茶店に住むロリ妖精なんで、この発言は危険ですがw


 何が好きかというと、この作品で随一の献身的なヒロインだったなぁと。
大介くんも、最初はうるさい小バエぐらいにしか思ってなかったのに、明るく素直で元気いっぱいの様子に次第に癒されていくという。

基本「ショコラ」は主人公の大介が頑張る展開ですし、翠の支えも男性的(w)なものなので、女性的な献身が描かれているシナリオは新鮮でした。
大介とのやり取りも和みますしね


 何より香奈子シナリオにつながるシナリオとして、それを盛り上げる効果を持っているのが大きいです。
チロル自身の想いも、香奈子ルートに束ねられた感じがして、なんとも切なく感動するものがある。
香奈子ショートストーリーで、このチロルについて触れられたのもよかったと思います。




・秋島香奈子ルート

 ギャルゲー史に燦然とした足跡を残す伝説のダウナー系ツンデレヒロイン
黒髪ロングの綺麗系で、ふっくらとした印象も受けるナイスバディー。


 とにかくこのダウナー・デレの個性につきます。
クーデレこそ普及しましたが、だいたいはキリッとしたタイプが主ですからね。
やる気ない だらしない 社会不適合というのは、それこそ“さくら荘”のましろが有名なぐらいでは。

絶対に自らのペースを譲らない孤高の人格。
だけど1人では物理的に生きていけないので、誰かが構わないといけないw


 魅力の真髄は、かようにオン・マイ・ウェイなタイプの癖に、内に秘めた想いは頑固なほどに強いところでしょうか。
なんの気ないふうに見せて、とにかく大介に絡みますからね。

そして構われないと拗ねるんですが、認めたくないから怒って帰ったり、分からないようドイツ語で文句を言ってみたり。
あれ、こう書くと面倒な子……?

まあ、いい意味での不器用って印象になりますね。
感情表現は苦手で、言葉も4単語ぐらいしか話さないんですが、無感情では決してない。
そのあたり、ぶっこんで来てくれた大介への想いは強いんでしょう。


 “ぶっこみ”ってのはまさにそれで、シナリオの土台は不良・ミーツ・優等生にあるのも味噌ですね。
過去の荒んでいた時代、けれど心優しさは変わらない大介の想いが、自分を好きになれない香奈子の影った心を解きほぐし、開放する。

けれど親や教師の反対もあり結ばれない2人は、駆け落ちを決意する……。
うおお、駆け落ち、駆け落ちですよ!
王道! 古典! 正統派!


 ……ですが失敗した上に、大介がギリギリのところで裏切ったという誤解を香奈子に残すという、最悪の結果を経ての2人の関係だったとは;
オープニングで勝手にシャワー浴びてる姿を見ても、そんなドロドロな過去があったとは、想像もできませんでしたがw

実はこの駆け落ち失敗が、翠の手によるというのも味でしたね。
その辺もう少し描いても面白かったと思うんですが、いかんせんシナリオが短い。
残念。


 しかしてそんな2人が誤解と重苦しい過去を乗り切って、改めてやり直す展開は、非常に感動的なものでした。
電車に乗って旅立とうとするところを、ギリギリのところで捕まえるというのもベタですなー。
だがそれがいいw




・大村翠

 神。
下品な言い方ですがそれほどです。
神キャラクター。


 私が友人発恋人エンドが好きなのもありますが、そうでなくとも翠には惹かれるものがあるのでは。
主人公の腐れ縁の大親友で、口を開けばお互いに罵詈雑言。
だけど誰よりも互いのことを分かっていて、辛い時も弱っている時も支え合える。

男勝りの頑張り屋で、気配り上手で誰からも頼りにされる。
こんな友人が公私ともに傍にいるなんて、羨ましすぎる!


 わざとらしさがないのがこのキャラクターの魅力だと思います。
幼馴染でも腐れ縁でもいいですか、だいたいこういうジャンルだと、なんだかんだ男女の仲だったり、想いが見え見えだったりするのですが、翠にはそれがない。

本当に大介とはまず友人同士で、それは土台として確立している
心のうちには強い想いがあるわけですが、それで大介を縛ろうとはしない


 友人の義理を優先しますし、なにより大介のために立ち回ろうとする。
10年間もずっとそれを続けてきたというのは、もはや泣かずにはいられないキャラですよねー。

きっと心の中では、色々な想いの揺れ動きがあっただろうに、決してそれを表に出さず、良き友人として振舞って……くぅ~
そのあたり、翠以外のルートに行くと堪能出来ますね。


 例えイチャイチャするようになっても、ふいにそれを友人目線で見て爆笑してしまったり、恋人らしい行為に違和感を感じてしまう描き方も良かったです。
決して気まずいわけではなくて、愛情に加えてなんじゃこれという、面白さを同時に感じているという体で、むしろ2人の仲の良さを表しているかのようでした


 ですが!
そんな彼女にだって、自分をこそ見てもらいたい気持ちや、誰かに頼りたい気持ちだってあるわけです。
その辺りの弱さも描かれていたところが、個別ルートの醍醐味ですね。

ひょんなことから一夜を共にしてしまい、なし崩し的に友達以上恋人未満のような関係になっていく2人。
次第に想いが深まっていく一方で、どうして互いに踏み込めない。


 互いに友人という思いが強すぎて、どうしても恋人という関係になれないわけです。
特にあまりに長い片想いだった翠は、大介が自分を好きになるわけがないと思い込んでいる

なにより翠は、大介は香奈子とこそ結ばれるべきだと思っている
ここが辛いところですよねぇ。
さらに駆け落ちに関しての裏切りが負い目となって、まるで不倫のような関係にとどまってしまう

このあたりのアンバランスな描写は、非常に瑞々しいものでした
案の定シナリオは薄味志向なので、いまいち描ききれてはいませんが、それでも十分なもの。
もっと描いて欲しかったという気持ちは、もちろん強いんですが。


 そんな2人の“これまで”を、大介が飛び越える。
むしろ“これまで”だからこそ好きなんだと翠に納得させる
この過程は感動的でした

今でも忘れられない、告白のシーンです。
精神的に追い込まれ、ついに本当は香奈子が好きなんだろうとなじってしまう翠。
それに対して、

「香奈子さんは、思い出の宝石箱。お前は、手元に置いとく道具箱。俺が生きてくのに、どっちが必要なのか……考えるまでも、ないよな」

確かに翠の言うとおり“信じられない例え”ですが、2人の関係を描いて、それで生まれた想いを表現するに、これ以上の台詞はないでしょう。
やっと心から結ばれた2人に、もう心の底から感動しました。

やはり個人的には、「ショコラ」一番のシナリオは、翠ルートだと思います。
エピローグが翠と大介のその後というより、翠と香奈子の和解という描写だったのも心憎いところです。



 そういえば、続編に特典として追加された香奈子ルートのエピローグがあるんですが、これは翠ファン必見の内容となっています。
結婚前夜という体で、翠と最後の独身会を開く2人を描いた内容が主ですが、ここでの翠が切なすぎる。

最後の手段ということで、大介を酔わせて襲うかとすら考えている翠。
そんな流れの糸口として、酔ったら私のこと襲っちゃう? とおどける翠に対し、朦朧となりながらも大介は、こんな台詞で友情を強調します。

「たとえ世界が滅んでお前と二人だけになっても決して―――お前とは」

切なすぎる!
もう泣きます。
泣くしかない……


 そんなこんなで、「ショコラ」のキャラ別感想もこんなところです。
最後の締めとして、香奈子ショートストーリーにおける、翠屈指の名台詞と言われる、別れの言葉を。

―――――
さよなら…さようなら大介。
お前と知り合ってもう10年だよ…
嬉しくって、楽しくって…哀しかったよ
―――――