本日はギャルゲーから、ぱれっと「晴れときどきお天気雨」を紹介したいと思います。「もしも明日が晴れならば」の精神的続編と言える本作は、ファンタジックな世界観が特徴で、また人間関係の機微の描写に長けた作品です。特に三角関係の表現は、ライター:NYAONさんのお家芸らしく秀逸で、非常に胸に迫るものがありました。

グラフィックも安心のくすくす絵で、ぱれっとらしい豊かな立ち絵表現と音楽表現も相まって、なかなか高品質の作品だと言えるでしょう。ただどうしても“もしらば”と比較してしまうところ、今一歩及ばなかったなというのも正直な感想です。


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 何の変哲もない海沿いの田舎町、御凪町。
そこに神様がやってくるとなって、町は歓迎ムードに浮かれていました。
ちょっとした願いを叶えてくれ、妖かしから町を守ってくれる存在。
そんな人々のことをこの国では、神様と呼び崇めてきたのです。

御凪学園に通う春日井裕也も、そんな神様を歓迎しようとしている1人でした。
けれどそれは生徒会役員としてであり、神通力の限界も知る彼は、おざなりな思いでその出来事を迎えていたのです。
そして神様が到着する電車の時刻。
しかし神様は駅のホームからは現れず、なんと空からふらふらと落ちてきて、裕也の上に落着したのでした。




 とまあ着任した神様はへっぽこで、歓迎式典でトラブった縁とかなんとかで、主人公と関わっていく……というのが展開です。いわゆる神道的不思議が当たり前に存在する世界で、前作「さくらシュトラッセ」と同じく、魔法的要素が存在する舞台設定がとられています。

ストーリー的にも神様が願いを叶える活動を応援するとか、誰かに悪霊がとりついて悪さしちゃうとか、わりと関わってきますね。それ以外は基本的に普通の学園モノで、生徒会役員という関係を中心に物語は進んでいきます。

あと今作もNYAONさんらしく、人間関係が非常にクローズドなのが特徴で、まずヒロインの1人は実の妹。しかも事故の後遺症で足が弱く、車椅子生活で介護が必要。そこに介護手伝いで家に出入りする幼馴染ヒロインが1人に、神様として関わろうとするヒロインが1人。最後に妹の親友がヒロインとして1人と、まぁ半家族みたいな間柄の中で、恋愛が紡がれていきます。


 とにかく人間関係が密接で、どのルートに行っても必ず三角関係が生じます。だいたいどのヒロインも友人関係ですし、かつ同じ役員の仲間だったりしますので、凄くごたっとしてる感じですね。さらに妹が介護が必要ということもあって、主人公の行動の自由度は低め。そこに嫉妬イベントが来たりもします。

そんな風に痛々しいシリアスさが面白味の中心なので、そこがダメな方は回れ右したほうがいいかもしれません。概ねヒロイン同士の絆もちゃんと描かれますし、主人公も大事なところはまぁ決めてくれるため、気分が重くなる作品というわけではないのですが……。それにまぁ、基本はほんわか学園路線ですし;



 さて概要はこのくらいにして、詳細レビューに移りましょう。順番的には直前と被りますが、やはり人間関係の描写から語っていくのがいいと思います。

まず型から説明していきますと、この作品は段階的に分岐するルート構成を取っています。どういうことかというと、あるヒロインのルート入り口で選択肢が出され、ヒロインを選べば個別ルートで、そうでないなら共通に戻り次のヒロインとの入り口に差し掛かると。丸戸さんなんかが得意とする型ですが、この構成、最後の方になるとヒロインの大半を振ったことになる構成なんですね。

つまり1人のヒロインの想いが、他のルートでなかったことにならない。完全分岐型の場合だと、潜在的にはヒロイン全員が主人公が好きということもありますが、個別ルートは個別ルートで独立してるのがもっぱらですからね。この方式は重たい雰囲気になりがちです。


 しかもそこに来て、人間関係が非常に密接で、おまけにNYAONさんの心理描写技術がくるので、凄まじいほどに面倒くさい雰囲気が構築されていきます。おまけに皆いい娘なので、あからさまな奪い合いにはならずに、互いに遠慮しながらも時にエゴを我慢できないというような……とにかくめんどい。

応援しているかと思いきや、その人が諦めたら急に押してきたり。逆に我慢してるんだけどぎりぎりのところで泣いてしまったり。友情と愛情の狭間で揺れ動き、誰かを傷つけたり裏切ってしまったり。そんな少女たちの煩悩がこれでもかと描かれていきます。

なんというかギャルゲ世界観ではあるんですが、現実にハーレム構造が生じたら何が起こるかをシミュレートしてる感じですね。そういう要素が強調されすぎていて、辛いところはあるかもしれません。実際にそれを理由に低い評価を下す人も結構いるようです。


 ただまぁ、主人公のことをみんな好きなのに、個別ルートに入ればサラッと諦めている描写は、やはりアンリアルなのかもしれません。こういう風に悩む描写は瑞々しいですし、だからこそ友情や絆が光る部分だってあります

主人公とヒロインの絆ばかり強調される向きもありますが、ヒロイン同士の絆が表現される描写もけっこうあって、そのへんの葛藤を僕は好きだと思いました。そういうのが好きな人には、ぜひともお勧めできるシナリオたちですね。


 しかしその一方で、シリアスな描写に対応するテーマ性があるかと言われると、それは少し疑問であるところです。もちろんないわけではなく、個人的にこの作品のテーマは、他人の願いと自分の願いの矛盾にあると考えています。

神様であるメインヒロインを筆頭として、本作には他人想いのヒロインが多数出てきますが、三角関係の中でその想いは、自分の欲望と矛盾してしまいます。そういう状況の中で、いかにバランスをとっていくのか。そして何を大事として選択を決めるべきなのか。そういう風なシナリオ展開は多めで、青春+成長的なテーマを確保していたように思います。


 ただライターのNYAONさんは、もとより凝ったテーマ性を構築する人ではなく、どちらかというとお話の面白さを優先する方です。そういう点で、テーマは確かにあるとしてもまとまりはなく、そこに突っ切るものとはなっていません

そしてじゃあお話が面白いかというと、どうしても複雑な人間関係の辛い心理描写が多く、カルタシスが乏しいところです。確かに面白くてテーマも設定もいいのですが、いまいち内にこもってしまっているというか。シンプルに響くものがないというか……。

もしらばと比較するとして、一番感じたのはそんなところでした。もしらばも同じくしんどいお話なのですが、あの作品には喪失にどう向き合うかという大きなテーマがあったので、もう少し楽に鑑賞できた気がします。


 以上で内容についてはまとまったでしょうか。ここまで重めな作品として紹介してきましたが、重要なシーン以外がドタバタ劇みたいな調子が続き、そのあたりの緩急はしっかりしていると思います。ギャグパートはちゃんと面白いですし、会話にもキレはあるのでプレイしてだれるということはないと思います

ただここまで述べてきたように、いざメインに入ると心理描写が重すぎて、かつシンプルにこうだという枠組みも希薄であるために、感動が爆発しきれない感じは少し残ります。ぜんぜんいいシナリオなんですが、そこのあたりの練り具合がどうしても残念で、惜しまれるというのが最終的な感想になってしまうかもしれません。



 それ以外の要素は「ぱれっと」らしく良いの一言で片付けられるので、手早く済ませたいところでしょうか。まず絵ですが、相変わらずくすくすさんの絵は最高級ですね。パステルカラーを思わせる淡い色彩に、ふわっとした柔らかさを感じさせる造形。今作はそこに輪郭のシャープさも加わって、親近感が増したと言えるでしょうか。どのキャラもとても可愛らしいですし、これだけでこの作品には大きな強みがあると言えます。

キャラの造形以外に目を向けても、ぱれっと一流の立ち絵技術が非常に素晴らしいです。多彩なエフェクトに後ろ姿から振り返りまで。それにとにかくよく動くので、非イベントシーンでも目が飽きません。メッセージウィンドウにワイプ的な感じにキャラの顔が入ることもあって、表現の幅を更に広げてましたね。

音楽もまた良かったですね。晴れやかな弦楽中心の音楽が、各シーンをきっちりと盛り上げます。強く印象に残る曲こそありませんでしたが、どれも良かったと思いますね。何よりここぞというところで入る、WHITE-LIPSの挿入歌が抜群に作品にあっていて、変わらずの安定感でした。



 最後にキャラクターについて。人間関係が重たい一方で、個々のキャラは割りと溌溂とした魅力を持っていて、非常にいいんです。皮肉を言ったりツッコミがうまかったりと、みんな知的で会話が面白かったですね。声優もそれぞれのキャラにハマっていて、けっこういい仕事だったと思われます。特に舌っ足らずなキャラが多くて、そこが魅力でしたね。

メインヒロインの香奈恵はダメ神様というキャラですが、本当にポンコツでけれど一生懸命なところが可愛かったです。声を当てた桜川未央さんも名演で、実にダメ可愛い演技を体現していました。
幼馴染の水希は、うるさい小姑的なヒロインですが、割りと頼りになる感じを表現出来てて良かったです。そして一度恋を自覚するとベタボレになるというのも、またこういうタイプの醍醐味。

妹の親友の絢音は、素直になれない優等生キャラで、心を開いていく過程が瑞瑞しかったですね。実はむっつりというキャラ付けも成功してて、一番素直に可愛いキャラだったかもしれません。クーデレはいいものです
妹のなずなは裏ヒロインと言っていい風格で、ウィットに富んだ変人という普段の立ち振舞と、介護が必要なことへの思いのギャップが激しい。彼女が兄離れできるかは、この作品の最大の主題でした。


 とまぁ各キャラはこんな感じです。後は主人公ですが、ちょっと鈍感すぎなところはあるかもしれません。特に言うべきを言わずに独白で済まし、まぁ伝わってるだろうと勘違いするところがかなりの曲者で、だいたいそれでヒロインが暴走したりします。

NYAON作の主人公ははだいたいこんな感じですけどねw そこで一言言うなり、白黒つけるなりしたりすると、ゲームじゃなくなるかもしれません。ちなみにファンの人には、グラがさくらッセでキャラはDMFと言えば伝わりますかね。



 はい、こんな感じです。割りと尖った作品だと思うので、好きになるかは人それぞれというところで、三角関係が好きな人にはいいかもしれません。けれどもう一歩突き抜けられてない感じはあるので、もしらばを想定すると少しこけるやもしれませんね。そんな感じですので、もし機会があればいかがでしょうかと、そんな締めとさせて頂きます。






 さて、ギャルゲーでは恒例にしている、ネタバレ有りの各キャラ語りを。今回は手短にいきたいですけどね。


 絢音シナリオ。

 よく出来たクーデレシナリオでした。好きになっていく過程は雑だった気もしますが、閉鎖的な優等生の心をひらいてあげて、そこから恋が始まると。定番ですかね。恋をする以前はクールだった割に、デレ成分はかなり放出するタイプで、感情が高まると暴走するし、あげく舌足らずになってしまうところがチャームポイントでした。

シナリオ自体はけっこう重めで、妹の介護が必要だというのに、それにすら嫉妬してしまうことを、親友として恥じるみたいな。しかもそれを察したなずなが兄離れを決意した直後に、そのせいで大変な目に遭うイベントとかが来て、NYAONさん意地悪だなぁと。

その後の香奈恵がグッジョブ過ぎました。なかなか驚きの感動展開で、不覚にもうるっと来てしまいましたね。作品全体の中でもスマートに良くまとまっていて、三角関係の構造もシンプルで良かった気がします。最初のヒロインらしいルートでしたね。



 水希シナリオ。

 ちょっとお節介な小姑、けれど面倒見のいい姉さん女房的な魅力が光ります。序盤はまずツンデレっぷりが、そして後半は胸焼けするほどのデレっぷりがまた良しと。つよきすの蟹やままらぶの小雪が思い出されました。あ、八重歯もチャームポイントですね。

加えて、水希はとても不器用なキャラクターだったりします。他人の恋を応援したかと思ったら、突然自分で出張ってきたりと忙しく、“蝙蝠”なんて批判もあるキャラです。ただ個人的には、むしろ地についた感じがあっていいかなぁと。

近しい人の間で感情が交錯してしまったら、当然ああなってしまうと思いますし、むしろそこで可能な限り他人に合わせようと努力するあたり、心根は綺麗だと思います。そして身勝手な感情に抗おうとするけれども、負けてしまう弱さもまた人の愛おしさじゃないかなと。


 シナリオはとっても重めな感じでベネでした。なずなの怪我の原因っていう、シナリオ全体に関わる大きな罪を背負っていて、そこからの解放のシナリオは感動的でした。ただ水希の煩悶の向かう先が、あくまで主人公に向けられていて、なずな向きじゃないのが少し気になりました。

なずなシナリオなんかでは逆に、やっぱり水希にとってもなずなは妹なのかなって描写があるので、そのへんのさじ加減は残念かなと。そのあたりのバランスが極端に悪いのが、この作品の弱いところです。



 なずなシナリオ

 個人的にはベストシナリオだったと思います。なずなのキャラクターはよく練りこまれていて、気を凄く遣うけれど、甘えもあったりと一面的でない。鋭いところもあるし常識的な判断もできるし、周囲に忠告だってする。けれどやっぱり顔色は伺っていて、その辺り境遇故なのかって感じもあって、なかなか深いキャラです。

単純にキャラクターとしても可愛くて、ちょっと変な感性の小柄な子っていいですよね。基本元気だしノリもいいし、僕もこんな妹が欲しいですw ただその言葉には、介護を引き受けるという大きな覚悟が必要なわけですが。

なずなには介護が必要というのはこの作品の骨子で、意志に関わらずなずなは兄に“甘えざるを得ない”わけです。そこが他キャラとの深刻な三角関係になりますし、なずな自身も兄への執着のせいで、そこから独立することができない。そのあたりの描写が濃くて良かったですね。


 シナリオも笑いあり、切なさあり、脇役のカッコよさありと隙がないです。会長が絡んでくるってのは、さすがに三角関係こじらせすぎだろ呆れましたが、まぁ後の展開も含めて悪くはなかったと。香奈恵や水希にも見せ場がありますし、なかなか感動的でしたね。

特に水希との関係はいいアクセントでした。三角関係ということも含め、素直になれない水希ですが、それでもどうしてもなずなのことが気になってしまう。むしろなんとかしなくてはと、敢えて甘えたいだけだと突き放し、自分で決めさせようとする。

水希はなずなの姉ではなく兄だったのかもしれませんね。
「あんたが迎えにきたんじゃ、意味がないから」
ラストシーン。学校まで車椅子は押してくるけど、最後は助けてあげないって絶妙な塩梅に涙腺が緩みましたよ。



 香奈恵シナリオ

 ダメ神様。けれど凄く頑張る子。そういう子の保護者的ポジションってのが憧れですねw 桜川さんの演技もかなりいいです。慌ててるときとへこんでいるとき、それと真面目モードの声の使い分けが、どれも魅力的でした。

香奈恵けっこう気が利く子というか、基本アホの子なのに、素直だから1番の解決法をさらっと持ってくるというか、ほっこりさせられるシーンが多いです。やはりメインヒロインというか、一生懸命で優しいところがいいですね。そして隠れた芯の強さも魅力でしょうか。


 一方のシナリオは案外平和だったんですよね。三角関係と、自分と誰かの願いの矛盾がこの作品のテーマですが、それが香奈恵ルートには薄い。ゆみかが消えてしまうって展開は、まぁ感動的でしたけれど。ただ、いろんなシナリオでずっと誰かの願いを願い続けていた香奈恵が、最後の最後で全員に幸せを願われて幸せになるってのは、いい展開だとは思いました。

あと珠美さんが、いつもウチはこんな役目やって言ってましたが、実や明穂を思い出してんのかなと。ちょっとしたファンサービスでしたね。もしらばファンとしては、もっと活躍してくれても(ルートありでもw)良かったのですが。



 以上、簡単ですがキャラ語りでした!