February 10, 2012
語り継ぐべき人
山本兼一著「命もいらず名もいらず」を読了。
先日のNHKの番組で、熱い絆で江戸を救った男として、西郷と山岡の秘話を取り上げていた。その素材はこの書である。
幕末の三舟、勝海舟 山岡鉄舟 高橋呑舟 このうち海舟のみが著名なのは、司馬遼太郎と半藤一利の諸著作が影響しているのであろう。
江戸城無血開城でも、「西郷と勝」であって山岡の関与はあまり知られていない。
それは 「命もいらず名もいらず」という二人の生き様に加えて、西郷の存在は、明治政府にとって微妙なものであり、その西郷の盟友である山岡も表立って扱いにくい存在であったからであろう。
また天皇の役割が 従来の九重の奥の内裏雛から君主として国を統治する表の存在となる変革期にあった。その指南役は、オモテに出ない裏方に徹する人でなければならならず、それは山岡が適役であり彼はそれに徹した。
勝と山岡、いずれも剣と禅の修業を積んだが、二人は異質の存在であった。勝は、天下国家を大上段から俯瞰する能力 ゆえに幕府の幕引きが出来た。同時にその聡明さを世俗にも発揮したが、山岡は「精神の満腹」のみを求めた、そのチガイである。
それは秋山兄弟にも言える。真之の兄好古の生き様もまた、もっと評価されるべきであろう。

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先日のNHKの番組で、熱い絆で江戸を救った男として、西郷と山岡の秘話を取り上げていた。その素材はこの書である。
幕末の三舟、勝海舟 山岡鉄舟 高橋呑舟 このうち海舟のみが著名なのは、司馬遼太郎と半藤一利の諸著作が影響しているのであろう。
江戸城無血開城でも、「西郷と勝」であって山岡の関与はあまり知られていない。
それは 「命もいらず名もいらず」という二人の生き様に加えて、西郷の存在は、明治政府にとって微妙なものであり、その西郷の盟友である山岡も表立って扱いにくい存在であったからであろう。
また天皇の役割が 従来の九重の奥の内裏雛から君主として国を統治する表の存在となる変革期にあった。その指南役は、オモテに出ない裏方に徹する人でなければならならず、それは山岡が適役であり彼はそれに徹した。
勝と山岡、いずれも剣と禅の修業を積んだが、二人は異質の存在であった。勝は、天下国家を大上段から俯瞰する能力 ゆえに幕府の幕引きが出来た。同時にその聡明さを世俗にも発揮したが、山岡は「精神の満腹」のみを求めた、そのチガイである。
それは秋山兄弟にも言える。真之の兄好古の生き様もまた、もっと評価されるべきであろう。
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February 05, 2012
格差問題
「選択」二月号の巻頭は、マイケル・スペンス教授へのインタビュー
世界中にマネー資本主義が暴走しており、「格差の拡大」が止らず大きな社会問題となっている事に関して。
「格差の拡大自体は、グローバリゼイションの過程である程度予想されたこと。この過程で、平等性を確保しつつ社会の一体性を保持する取り組みが不足していた故に、歪みとしての結果である。今後は、「格差是正」を志向する政策への支持を通じて、ポピュリズムに縛られて動けなかった政治を転換するチャンスと捉えるべき。
安定、持続可能性、公平さという観点が見直され、多くの国が従来の自由放任のマネー資本主義から、国家による管理・規制を厳格化する国家資本主義へと移行を進める。即ち自由主義的な資本主義の存在は是としながら、ガバナンスを監視するグローバルな機関と、それを担保する政治、国家の役割が相対的に高まり、国際通貨制度や為替相場制度を、進化し続けるグローバル経済の現実に適合させる努力が必要になってくる」と。
最後に「施策はいろいろある。が国際的な協調の下で各国が何かを為し遂げたことはない。格差問題は解消できずとも、是正・緩和する努力は怠ってはいけない」と。
学者が当たり前のことを言うのは、万国共通か?

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世界中にマネー資本主義が暴走しており、「格差の拡大」が止らず大きな社会問題となっている事に関して。
「格差の拡大自体は、グローバリゼイションの過程である程度予想されたこと。この過程で、平等性を確保しつつ社会の一体性を保持する取り組みが不足していた故に、歪みとしての結果である。今後は、「格差是正」を志向する政策への支持を通じて、ポピュリズムに縛られて動けなかった政治を転換するチャンスと捉えるべき。
安定、持続可能性、公平さという観点が見直され、多くの国が従来の自由放任のマネー資本主義から、国家による管理・規制を厳格化する国家資本主義へと移行を進める。即ち自由主義的な資本主義の存在は是としながら、ガバナンスを監視するグローバルな機関と、それを担保する政治、国家の役割が相対的に高まり、国際通貨制度や為替相場制度を、進化し続けるグローバル経済の現実に適合させる努力が必要になってくる」と。
最後に「施策はいろいろある。が国際的な協調の下で各国が何かを為し遂げたことはない。格差問題は解消できずとも、是正・緩和する努力は怠ってはいけない」と。
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January 30, 2012
最後の帝王
古川隆久著「昭和天皇−理想の君主の孤独−」を読了。
前作「大正天皇の評伝」(2007)に続くものであり、昭和天皇誕生110年、太平洋戦争70年である2011年の、サントリー学芸賞・政治経済部門受賞作である。
政治的には大正デモクラシーの思潮となった西欧的な諸思想を基盤として、協調外交を国是とする民主的な立憲君主国を理想としつつ、儒教的な徳治原則と生物学の進化論を信奉し、教え込まれた「帝王学」をそのまま実践し、崩御に至るまで職務に忠実たらんとした誠実な人物として評価している。
明治維新以来、薩長閥指導者達の自由民権運動への不信感、また一般国民の政治的能力への不信感から、「神国・日本」として天皇の絶対性を過度に強調することを国是として国家の制度を創設してきた。昭和天皇の「君臨すれども統治せず」の理想主義は、この「天皇の絶対性」を強調する勢力(右翼・政治家・軍・官僚)の狭い意義の国体論に押し切られて、あの戦争の悲劇をもたらした。、「
敗戦後、人間宣言や新憲法公布の勅語により退位せず留位が国民的合意となった。しかし対外的のみならず精神的にも、自らの戦争責任に関して崩御まで苦悩させられたが、この結果の副産物として改憲再軍備が出来なかった、との指摘は傾聴すべきものであった。

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前作「大正天皇の評伝」(2007)に続くものであり、昭和天皇誕生110年、太平洋戦争70年である2011年の、サントリー学芸賞・政治経済部門受賞作である。
政治的には大正デモクラシーの思潮となった西欧的な諸思想を基盤として、協調外交を国是とする民主的な立憲君主国を理想としつつ、儒教的な徳治原則と生物学の進化論を信奉し、教え込まれた「帝王学」をそのまま実践し、崩御に至るまで職務に忠実たらんとした誠実な人物として評価している。
明治維新以来、薩長閥指導者達の自由民権運動への不信感、また一般国民の政治的能力への不信感から、「神国・日本」として天皇の絶対性を過度に強調することを国是として国家の制度を創設してきた。昭和天皇の「君臨すれども統治せず」の理想主義は、この「天皇の絶対性」を強調する勢力(右翼・政治家・軍・官僚)の狭い意義の国体論に押し切られて、あの戦争の悲劇をもたらした。、「
敗戦後、人間宣言や新憲法公布の勅語により退位せず留位が国民的合意となった。しかし対外的のみならず精神的にも、自らの戦争責任に関して崩御まで苦悩させられたが、この結果の副産物として改憲再軍備が出来なかった、との指摘は傾聴すべきものであった。
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January 22, 2012
継続的発展:
井沢元彦の日本史講演より
伝統的に我が国は土葬である。「死者の復活」を望む者は、遺体損壊に当たる火葬はせず土葬にするからである。
我が国の天皇陵には、その祭られている天皇に関する墓誌は存在せず、故にどの天皇のものか確定するものはない。それは仏教伝来以前の日本人にとって、「死」ば「穢れ」であり、遺すべきものではないと考えたからである。
その御陵が近畿各地に点在するのは、その天皇の死によってその都を移転せねば「死穢」から逃れられないから、次の天皇は先代の都の場を捨て、一代限りで遷宮するのが習慣であったからである。
それでは一つの地域の継続的発展はない。伝統・習慣を変更自らの遺体を火葬することによって、「死穢」を遺さずに先代天皇である夫との夫婦合葬墓するよう命じ、その地を恒久的な首都として発展させんとした天皇として、持統天皇(女性であるが女系ではない)が講演のテーマであった。彼女のこの決断によって、我が国は、以後藤原京、平城京、平安京と首都地域の継続的発展がもたらされたのである。

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伝統的に我が国は土葬である。「死者の復活」を望む者は、遺体損壊に当たる火葬はせず土葬にするからである。
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その御陵が近畿各地に点在するのは、その天皇の死によってその都を移転せねば「死穢」から逃れられないから、次の天皇は先代の都の場を捨て、一代限りで遷宮するのが習慣であったからである。
それでは一つの地域の継続的発展はない。伝統・習慣を変更自らの遺体を火葬することによって、「死穢」を遺さずに先代天皇である夫との夫婦合葬墓するよう命じ、その地を恒久的な首都として発展させんとした天皇として、持統天皇(女性であるが女系ではない)が講演のテーマであった。彼女のこの決断によって、我が国は、以後藤原京、平城京、平安京と首都地域の継続的発展がもたらされたのである。
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January 15, 2012
「大正」という時代
岡崎久彦著「百年の遺産」を読了。
幕末以降、世界に類を見ないスピードで近代化を為し遂げた先人達の業績。その業績を現在のそれではなく、その人の生きた時代の尺度に合わせてその軌跡を追うことで、はじめて歴史の真実に迫ることが出来、それによって日本の将来はどうあるべきかの姿も見えてくる、というのが著者の本書の狙いである。
それぞれの人物評価には、目を見開かせられるものもあった。
特に、「大正」という時代への評価は傾聴すべきものであった。
「軍人は日清日露の戦いを経て国家の干城としての誇りを持ち、外交官は世界の一等国として国民の安全と繁栄を守る環境を創り上げた自負を持ち、経済界は近代産業国家を創り上げた自信に満ち、そして、政党は自由民権運動以来の苦闘を経て国家権力を担っていた。国民は中産階級が勃興し、日本の文明史においても精神文化芸術文化の華が開いていたし、自らの国家に誇りを持ち社会の安定と平和を楽しんでいた時代である。」
愛国主義と理想主義、国権主義と国際協調主義、エリート主義と平等主義、これらが全て併存とチェックアンドバランスの取れていた「大正」という時代を、再評価すべきというのである。

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幕末以降、世界に類を見ないスピードで近代化を為し遂げた先人達の業績。その業績を現在のそれではなく、その人の生きた時代の尺度に合わせてその軌跡を追うことで、はじめて歴史の真実に迫ることが出来、それによって日本の将来はどうあるべきかの姿も見えてくる、というのが著者の本書の狙いである。
それぞれの人物評価には、目を見開かせられるものもあった。
特に、「大正」という時代への評価は傾聴すべきものであった。
「軍人は日清日露の戦いを経て国家の干城としての誇りを持ち、外交官は世界の一等国として国民の安全と繁栄を守る環境を創り上げた自負を持ち、経済界は近代産業国家を創り上げた自信に満ち、そして、政党は自由民権運動以来の苦闘を経て国家権力を担っていた。国民は中産階級が勃興し、日本の文明史においても精神文化芸術文化の華が開いていたし、自らの国家に誇りを持ち社会の安定と平和を楽しんでいた時代である。」
愛国主義と理想主義、国権主義と国際協調主義、エリート主義と平等主義、これらが全て併存とチェックアンドバランスの取れていた「大正」という時代を、再評価すべきというのである。
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