2005年05月

2005年05月23日

香り

アロマは専門でないが,便利な使い方を教えてもらったのでやってみた.

ベルガモット2滴
プチグレン2滴
エタノール5ml
水20ml

をよく混和.長時間運転のイライラなどに効くとされている.

外来に来る患者さんは緊張していることも多いので,入室前にシュッシュとしとけば入ってきたときにスーと楽になる,というしくみだ.

”あまり待ち時間が長いので気分が悪くなった,早く診てほしい”などという患者がいたのでこれをやっておいたら,クレームらしいことをおっしゃることなく,とてもすんなりいった.

なにより自分が疲れてイライラしてることが多いので,自分の頭の上にやっておくといい.


2005年05月17日

バリアー(1)

70歳代の男性,脳梗塞の既往がある.ここ数年自分のまわりを”バリアー”が張ってるような感じがするという.

しゃべるスピードは普通なのだが,つかえたり間違えたりすることが多く,あわてているように感じられた.

最初はペースを合わせながら,その後だんだんしゃべる速度を遅くしていき,ゆっくりと”あなたのしゃべるスピードは他の人と比べて速くはない.ただ,あなたにとっては,速すぎるのではないでしょうか?”とお話したところ,

”ああ,そうかもしれません”とおっしゃり,その瞬間にバリアーがなくなったとのこと.

集中力を発揮するには自分のペース,間を保つ必要がある.ただ,多くの人は自分の間を失っており,実力を出し切れていない.


2005年05月16日

多用(1)

バッチフラワーは全部で38種類あるので,正確に使いこなすのは難しい.だが病院でこれがあればかなり便利だ,というのはあげられる.私の外来ではレスキューレメディはほとんどの患者に使うので最も使用量が多く,単体としては29を一番たくさん使う.その次に消費されるのが35と20で,以下37,30,7,17,21などといった順番だろうか.その他26,2などもあると時々重宝する.

外来にかかる多くの患者さんが不安をかかえているが,多くの人の場合は実際に妥当な程度の不安ではなく,心配しすぎのことが多い.医師が”それは心配ない”,といってもなかなか納得してもらえず,必要性の乏しい検査を望んだり,受診の回数が増えたりする.そういう患者さんにはどの医者も少なからず悩まされてるはずだ.

抗不安薬で穏やかになる場合もあるが,マイナス感情の根深い人は薬だけで性格を落ち着かせるのは無理だろう.病気に対する不安の訴えが強い人には35と20を使うといい.35は雑念のようにさまざまな不安が思い浮かぶ感情で,20は具体的な不安が向こうからやってくるという感情という違いはあるが,話をしていてこれが明確に区別できる場合は少ないので,両方飲んでもらってかまわない.

私は外来でレスキュー10滴に35と20を15滴づつというあんばいで使っている.根深い人のことを言い出すときりがないが,多くの人は4〜6回ぐらい外来をへると結構よくなるものだ.先日も”頭の中の雑念が少なくなり,スッと行動できるようになった”とまさに35そのもののことをおっしゃった方がおられ,バッチフラワーの効果を再確認したものだ.

患者ご本人がコツコツとバッチを飲み続けていただくのが一番だが,それが無理でも外来で続けていけばこのように効果が見られてくる.

2005年05月13日

裏技(1)

diazepamは便利な使い方がある.

18時〜22時くらいまでの当直帯に中年以降の女性が血圧の上昇,軽い頭痛(頭重感)などで受診することがよくある.血圧は確かに高いが190/ぐらいで危険ではない.自宅で寝といてくれればいいのだが,こういう人は寝とけば治るといっても承知しない.

以前は一過的な高血圧といえばアダラート舌下が一般的であったが,神経内科領域では脳梗塞の惹起や悪化をきたすのでそもそもされていない.現在は他の臓器に関しても悪影響が示され,禁忌となっているが,残念ながらまだまだ全国の病院で気軽に行われている.

さて,このようなオバサマたちは高血圧と言うより軽い神経症ととらえるとよい.ST3の200にdiazepam 5mg(1/2A)を入れて,2時間で落としてあげればスーと穏やかになる.当然血圧も下がる.diazepamは血管痛があるので,こういう人は過敏に反応することがあり,IVはおすすめしない.

そもそもdiazepamはちゃんと高血圧に適応をとっているので,保険的にも問題ない.

似たような使い方で,血圧の変動の激しい患者にも少量のdiazepamがよく効く場合がある.120/〜200/ぐらいに血圧が変動することはよくあるが,降圧薬を増やすと時に下がりすぎてしまうような患者である.こういう人にはdiazepam 6mg3xなどを併用するといい.いい感じで血圧の変動が少なくなるだろう.

穏やかになるので,外来も楽になるはずだ.


2005年05月12日

共感(1)

痛みの原因が器質的異常でない患者に対応するのは難しいときもあるだろう.私も以前は15番のマイナス感情が非常に強かったので,神経症的な患者には激しく苛立ったものだ.

苛立ちは多かれ少なかれ相手に伝わるものであり,しかも神経症的な人はおしなべて対峙している人間の感情に敏感なものである.こちらが苛立った状態で痛みの原因は体の異常ではないんですよ,ということを慇懃に理路整然とした説明をしてもなかなか理解してもらえるものではないし,どうしてもたまには患者が興奮するなどのトラブルが起こる.

そういう時,さらに一生懸命説得しようとすると失敗が大失敗になってしまうものだ.なので,あらかじめ神経症的な患者だと分かっているときや,問診表から推察できるときは自分の気持ち,姿勢,呼吸などを整えておいたほうがいい.また診察の途中でも自分のステータスが狂ってきてないどうか,自分の感情にも敏感になっておくことが大切だ.

問題の多い患者と接するときには前もって自分もレスキューレメディを飲むといい.私は診察中に飲むこともある.


2005年05月10日

分析(2)

精神科の診断基準であるICD-10を参考にうつ病をマイナス感情で分析してみる.まず,一般的な症状として抑うつ気分,興味と喜びの喪失,活力の減退と易疲労感などがあげられており,これらは以前記載したように17,23,21,29,37,11などが関与している.

その他の症状としてあげられているのは以下の項目で,それぞれに対応するマイナス感情をあてはめてみた.

(a)集中力と注意力の減退:29や37
(b)自己評価と自信の低下:10が近いか
(c)罪責間と無価値感:24と11
(d)希望のない悲観的な見方:13や30
(e)自傷あるいは自殺の観念や行為:自傷は6,自殺は21
(f)睡眠障害:35で悪い考えが頭から離れない
(g)食欲不振:?

その他にうつを悪化させるマイナス感情としては22があげられる.つらい状況でもがんばってがんばって,余計にうまくいかなくなり,その他のつらいマイナス感情も刺激されやすくなる.これはわかりやすい.うつに「がんばれ」は禁句だと教科書にも載っているし,休養の大切さも説いてある.もう1つの代表的な精神病の診断基準であるDSM-IVではうつ病とこのがんばる性格の関係を強調している.

わかりにくいが大切なのは4.イヤな上司,病気の家族,業績不振の会社,悪質なクレーム,劣悪な環境などに影響をうけてしまい,うつが顕在化してくるというわけだ.患者自身も周囲の人間も問題の本体に気づきにくいので厄介な感情である.


2005年05月05日

気虚(1)

生きる意欲のない患者を元気にさせるのは難しいが,うまくいった一例.

70歳代後半,主訴は食欲低下.めっきり元気がなくなり,食事量が減って,体重もどんどん落ちていく,かかりつけでは異常ないと言われるとのことで来院.痩せが目立ち,診察と脳CTからは血管性パーキンソニズムおよび脳血管性の痴呆であるが,特別な神経内科疾患はない.採血検査上も異常はない.入院して食べなくなるタイプと似ていたが,かかりつけでは内科の他に脳外科などにもかかっているそうなので,当院で特別にみることはなく,かかりつけ医に戻す.

3ヵ月後ぐらいに4科の紹介状をもって再来院,まったくよくならず,今後はそちらで見てほしいと.るいそうが顕著で,しっかり両手をもっても車椅子から立てず,表情は乏しい.呼びかけに反応はあるもapathy(無為)な状態.漢方的にはひどい気虚.家族からは本人を前にしても邪魔者あつかいな発言が目立つ.

再度の診察にても診断に変更はなく,意欲の低下や逃避が主因と思われた.そのときの思考は以下のような内容になる

[ 内科はそれまで受診していて,癌などは発見されていない.]
[ 自分の診察と採血でも内科的な異常はない.]
[ このスピードで筋力低下や痴呆が進む神経疾患その他はそもそもないし,はっきり病名がつくような神経疾患を見逃していることはない.]
[ 例えばギラン・バレーを発症し,加えて脳梗塞が進行したなどどいうことでは説明できない. ]
[ 訴えは少ないもののうつ病ではない,,,,,, ]

などをごく短時間で考えているわけだ.

私は初見の印象を重要視しているので,精神的なものが原因だと感じている時は,思考ルーチンのなかでは逆に器質的疾患の除外について重きをおくようにしている.そうすることでわかりやすい誤診が減る.

家族にむけてのデモンストレーションもかねて,顔面マッサージと手指マッサージを行いながら患者に声をかけていく,少し表情が出てきて呼びかけに対する反応が良くなってくるので,脳そのものの障害というより,やはり意欲の低下なのだとわかる.しっかりマッサージをして,声をかけてあげてくださいと指導し,補中益気湯7.5gとl-dopa(カルビドパ合剤)を100mg処方した.


ryuoh777jp at 23:08|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)漢方 

2005年05月04日

分析(1)

うつというのはかなり大雑把な概念である.うつ病と診断される患者ごとによっても意欲のなさが目立つ人,絶望が強い人,疲労感をうったえる人,突然自殺をこころみてしまう人などいろいろで,とても1つの疾患概念とは言えない.マイナス感情で分析してみると

37:無気力,無力感,意欲がない
30:深い絶望感,挫折感
17:重苦しい人生,楽しさとは無縁
23:すべてに無関心,精神的・肉体的疲労
21:突然の抑うつ,気分の落ち込み
29:ささいなことでも傷つく,逃避する.
11:空回りの意識
13:人生に幻滅,退廃的

などのうち,複数のものを強く持っていると,医学的にはうつと言われる症状を呈する.うつ病と診断されても人によっては結構異なったマイナス感情を持っているということになる.

上記したマイナス感情はすべて生きる意欲に乏しく,姿勢が消極的なものに分類される.しかし実際の症例ではさらにいくつかのマイナス感情が加わって,うつ状態を悪化させている.

古来よりこれだけ多彩な症状をもったものが,単にうつと表現されていたことは,感情に対する理解がいかに難しいかということをよく示している.