あすなろ親父 ヤマトの細道

センチュリー21柳和スタッフの林が様々な歴史の事柄を画像と共にご紹介するブログです♪

2022年10月

ひさびさ?~その2~

まあなんとも不思議な話です。

『ダイアパレス京王堀之内』平成93月新築とあります。

1番抵当権住宅金融公庫、2番抵当権、年金福祉信用保証株式会社どちらもきれいに抹消され次の買い手に所有権移転されています。差し押さえも何もありません。

売却代金で公庫は返済した。その残ったお金で年金福祉に返済した。足りない分はごめんなさいです。俗にいうハンコ代で借金はチャラ。

20年以上も過ぎて借金の督促がくる?



ダイアパレス外観

ダイアパレスシリーズは今でも人気があります。


婚約者として住宅ローンの申し込みはできますが、融資の実行のときには入籍を証明する書類が必要です。考えられるのはダイアパレスの販売担当者が何らかの嘘をついた!

この場合は戸籍の改竄か?法務局備え付けの登記簿謄本の改竄事件もあったし十分考えられます。ん?待てよ、謄本記載は夫婦別姓だったぞ。すると唐井さんは中国人??

それとも抹消担当の職員が保証会社に虚偽の報告をした?謎だらけです。

いずれにしてもマンションを売る方も買う方も問題ありですが、金を貸す方も貸す方です。

おまけに抹消後の債権回収というあやつき!

 

『今度新築のマンション買うの。名義貸して~ん』としな垂れかかられたら男はイチコロです。オスはメスには弱い生き物。『うん。いいよ』と水割りで乾杯。
唐井さんが組んだローンは彼女が支払う約束です。そんなにうまくいくか?

飲み屋街

ボトルキープが命取り・・・


二十数年後にとんでもないツケが回ってきたのでした。ボトルキープのウイスキー1本が元本1400万円に延滞利息が年14.5%!に化けたのでした。

ひえー!怖くて計算できません。

 

ダイア建設のコマーシャルソング、クールファイブの『東京砂漠』の歌詞が甦ります。

 

東京砂漠



♪空が哭いてる 煤け汚されて ひとはやさしさを どこに棄ててきたの

だけどわたしは 好きよ この都会(まち)が 肩を寄せあえる あなた・・あなたがいる

あなたの傍で ああ暮らせるならば つらくはないわ この東京砂漠

あなたがいれば あゝうつむかないで 歩いて行ける この東京砂漠

 

ビルの谷間の 川は流れない 人の波だけが 黒く流れて行く

あなた・・あなたに めぐり逢うまでは そうよこの都会(まち)を 逃げていきたかった

あなたの愛に あゝつかまりながら しあわせなのよ この東京砂漠

あなたがいれば あゝあなたがいれば 陽はまた昇る この東京砂漠

あなたがいれば あゝあなたがいれば 陽はまた昇る この東京砂漠

あなたがいれば あゝあなたがいれば 陽はまた昇る この東京砂漠♪

 

クールファイブ

『あなた』を連呼する前川清 なつかしいなあ。


マアこれだけ『あなた』『あなた』を連呼されれば、マンションの一つくらい協力してやるか。俺も男だ!・・・・・これが巨大な落とし穴となったのでした。

結果はどうなったのでしょうか?

共産党の弁護士の先生の名刺を渡してから十日ほどたったころ唐井さんから連絡がありました。

「林さん。今日お伺いしたいんですが、午後はいらっしゃいますか?」

「ええ、大丈夫ですよ。」

唐井さん夫妻が事務所に訊ねてきました。

「林さん。ありがとうございました。あれから弁護士の先生がすぐ手続きをしてくださって無事解決しました。これはお礼です。」と言って奥様が菓子折りを差し出します

「それは良かった。費用はどのくらいかかったんですか?」

6万円を少し切ったくらいかしら。林さんから50万円くらいかかると言われていたから覚悟していったのよ。ホント助かったわ。」私に助けられたのか費用が少なくって助かったのか微妙なニュアンスです。

二人は手短かに挨拶をして事務所を出ていきました。

女は年老いた男の過去の過ちを赦してくれました。

 

ダイアパレスもバブルの崩壊とともに資金繰りが悪化。なんでもありの販売をしてたんだなあ。

ダイアパレスの友の会で招待を受けたときは都心の某ホテルの大広間に1000人くらいの不動産屋が集合していたっけ。下津社長が名刺配りのハイレグ網目タイツのバニーガール2名を従えて会場を練り歩いていたのが目に浮かんできます。

 
ダイア建設

TVコマーシャルもバンバン流してたなあ・・・



♪あなたがいれば あゝあなたがいれば ビルまた建つの この東京砂漠♪

その何年後かにダイア建設は倒産し、その後始末のため何十年もかけて債権回収している部隊がいます。

 

旧客との出会いは、サービサーのビックリ仰天のお話で幕を閉じたのでした。

ひさ-びさー??

 

ひさびさ? 終わり

 

 

 

ひさびさ?~その1~

不動産の話です。

寒い冬がようやく終わりを迎えた二月下旬のある日会社の電話が鳴りました。

「林さんはいますか?」年配の男性の声です。

「私が林ですが?」

「ああ良かった。唐井ですよ。随分前にシオダ商会で、京王堀之内のマンションの売却でお世話になったあの唐井ですよ。」低音の声に聞き覚えがあります。

「えーと・・・あっ思い出しましたよ。どうしたんですか?唐井さん。随分お久しぶりですね。」

「実はお会いしてお話したいんですが都合の付く時間はありますか?」

「どうぞどうぞ。場所は分かりますか?」

「ええ。タクシーで行きますから大丈夫です。」

唐井さんの都合の付く日時を決めて事務所で会う約束をしました。

親族が不動産を探しているのかしらん?又は処分の相談かな?勝手に想像します。

 

3月に入った平日の午前中に唐井さんが事務所にやってきました。

ホームベースのような顔と濃い眉毛は二十数年前の面影と変わりありません。

「いやあ、久しぶりですねエ。今も朝日町にいらっしゃるんですか?」

朝日町の賃貸マンションは自分が紹介した場所です。

「ええ、住むのに快適だからってうちの奴が動かないんですよ。あの時はいろいろお世話になりました。」と改めて頭を下げます。

「ところが困ったことが起きてそれで相談にシオダ商会に行ったらこちらに移られたということで電話をさせてもらったんですよ。ほら、これが送られてきてうちの奴がパニックになっちゃったんですよ。」と言って手提げ袋から何やら封筒を取り出します。

 

「あの時マンションを売ったのにその返済が終わってないって内容の書類がきたんです。元本だけで1400万円近く残ってるって書いてあるんですよ。利息は別だというし。どうなってるかさっぱりわからないんでうちの奴がすぐ林さんに相談しなさいって。」

 

すぐに書類に目を通します。オオ!債権回収だ!ちょうど今、別件で同じような仕事に取り掛かっている最中です。

「唐井さん。この保証会社に連絡しましたか?」

「いえ。うちの奴が林さんに聞いてから。下手に動いちゃダメっていうんで。どこにも連絡してないです。いやあ林さんが見つかってよかった。あの時これでローンは終わったと言ってましたよね。」

「ええ。だから司法書士が抹消して買主に所有権移転できたんですから。あの時の司法書士の先生は誰だったかなあ。とにかく古い話だから私の方で調べてみますよ。この書類を預かってもいいですか?それとこの会社から連絡があっても絶対出ないでくださいね。」

債権回収屋

悪徳回収屋が頭をよぎりました。


「分かりました。うちの奴には責められるし。じゃあ連絡待ってますから。」

七十半ばになった唐井さんは随分小さくなりました。

タクシーの運転手をしていた頃は小柄でしたががっしりしていてラガーマンのような雰囲気がありました。

唐井さんを見送って書類をジックリ見ます。

売却代金で住宅ローンは返済したはずだよなあ・・・

よーし!調査開始だ。売却が二十数年前となりますと登記情報のコンピューター化前です。

古い情報を知るためには閉鎖謄本が必要になるため、南大沢の登記所へ車で向かいました。


八王子登記所

隣の町は相模原です。遠すぎ・・・これもサービサー?


往復半日仕事ですが報酬はありません。自腹でサービスです。

ありましたありました。唐井さんともう一人の女性の名前が。当時の買主はその後売却し今の所有者は3人めです。

問題の住宅ローンはきれいに抹消されているぞ。それなのに住宅ローンの返済が終わってないって?ふしぎ発見!です。

帰りに京王堀之内の高尾タンメンを食べて帰路につきました。塩ベースで野菜がたっぷり入っててうまかったあ!

高尾タンメン

寒い冬の味方!


一週間後、唐井さんが来社されました。

 

今回は奥様同伴です。奥さまとは面識がなく初めてお会いすることになりました。

「台湾飯店の店長と私が知り合いなの。名前を貸しただけなのにマンションのローンが払えないからって相手の女の巻き添えを食ったのよお。この人ったらこの顔で人がいいからいいように騙されたのよ。それで林さんにマンションを売ってもらってやっと終わったと思ったのにい。もうあれから二十数年もたつのよ。この年になってこんな借金が来るなんて、そりゃもうビックリよ。とにかく林さんに相談してって尻を叩いたのよ。」奥様の怒りは収まりません。唐井さんは他人ごとのような顔をしています。聞こえないふり作戦か?

「名前を貸すほどいい女だったの?」

そのまま感情丸出しで、旦那さんを睨んだり落ち込んだり早口になったりでマア大変です。

唐井さんはじっと嵐が過ぎるのをまってます。女性が興奮すると男は勝てないからなあ。

ここは努めて事務的に話します。

「ちょうど今青梅で同じような話をやってるんですよ。そこは消費者金融のアイフルからの借入でしたけど借地人が亡くなっちゃって相続になったんです。その建物についている債権がサービサーに譲渡されてたんですよ。そちらは相続人の旦那さんが連絡してしまったんで残った借金を払う羽目になったという話です。」

サービサー
金融機関救済の新法を作りました。


「いくらくらい借りてたの?」

4百数十万円だったかな?もっとも残債がいくらかは分かりませんが利息がバカになりませんからね。とにかく唐井さんは債権者に直接連絡をしなかったんでそこは良かったですね。」

「そうなの。林さんがすぐ見つかってよかったわ。」

「貸した側から見ると唐井さんは連帯保証人になってるので借りた本人が払わない場合連帯保証人に請求できるんです。唐井さんはずーっと借金を返済してないんですから時効になってますよ。」

「それなのにどうして元金だけで1400万も請求が来るんですか?」

「何らかの手違いで借金の証書が残ってるんじゃないかなあ。これを解決するには時効の援用しかありませんね。」

「林さんがやってくれるんですか?」

「弁護士か司法書士しかできませんね。司法書士は費用が安いんですが140万円が上限です。今回は1400万円だから弁護士しかできませんよ。」

「いくらくらいかかるの?」

4050万くらいじゃないですか?」

二人で顔を見合わせため息をつきます。

「何もしなければ解決しませんよ。相手は唐井さんの住所も知ってるんですから裁判を起こされると負けますよ。自分の知ってる共産党の弁護士を紹介しますよ。」

と言って名刺の保管箱から立川の弁護士の名刺を取り出し渡しました。

「困った市民の味方が共産党ですから。安くやってくれると思いますよ。」

2時間ほど話をして唐井さん夫妻を見送ったのでした。

 

ひさびさ?~その2~へ続く

 

 

 

 

 

 




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