2009年11月01日
自作小説『ネゴシエイション』第501話
今回投稿するシーンにもヒロイン片桐真希が登場。
モデルにさせていたいだいている松原渓さん、この後テレビの地上波に登場!
深夜3:05〜3:30、フジテレビにて、
タイトルは『FC東京VS川崎フロンターレ 通称「多摩川クラシコ」と呼ばれるライバル対決となったナビスコカップ決勝直前本拠地・地元探訪!KOが待ちきれない!!』
モデルにさせていたいだいている松原渓さん、この後テレビの地上波に登場!
深夜3:05〜3:30、フジテレビにて、
タイトルは『FC東京VS川崎フロンターレ 通称「多摩川クラシコ」と呼ばれるライバル対決となったナビスコカップ決勝直前本拠地・地元探訪!KOが待ちきれない!!』
・・・・・・・
デイヴィッド・R・レデュックと会長たちは、竹井節子が横井久の愛人ではないか確認しようとしたらしい。「愛人」という言葉からして、横井久は既婚者なのだろう。普通に考えれば、愛人であることをたしかめるのは弱味を握るため。
チーム真が美宇を守ろうとしているのであれば、彼女を狙う人物の弱味を握ろうとすることは十分ありえる。
ゼットたちが美宇と園香の血液検査の結果を知られたくない相手は、ゼットが世良と呼ぶ男ではなく、横井久なのだろうか。
越野悦美の共謀相手も横井なのか。
わたしは昨日、日下部圭介もチーム真のメンバーである可能性を考えた。越野悦美の仲介で美宇と見合いした彼は、越野悦美が美宇に危害をくわえる意図を嗅ぎ取り、それがきっかけでチーム真のメンバーになったのだろうか。
さらには、越野悦美が共謀している相手が横井久であることにも気づいて……
いや、越野悦美の意図に気づくのは別として、横井久の存在にまでどうやって気づいたというのか? 美宇と見合いしただけなのに。
見合い……孤児である美宇と違い、日下部圭介には父母も同席したはず。その日下部圭介は医者の卵。
医者の卵には政治家同様、裏口入学による世襲の者もいる。日下部圭介が裏口かどうかは別として、政治家の世襲には入り婿という形もある。政治家の娘と結婚することで義父の「地盤、看板、カバン」を引き継ぐ者がいるように、医者の娘と結婚することで義父が経営する病院や医院を引き継ぐ者も少なくないのだ。
日下部圭介の母親が病院経営者の娘で、なおかつ横井久の娘であれば、美宇に危害をくわえようとする者の仲間である可能性も考えられる。
いや、横井久は中年らしいので、日下部圭介の祖父ということはないだろう。
ただいずれにせよ、それらの推測が正しければ、あることにつじつまが合う。ゼットが美宇と園香に、大阪の病院で血液検査を受けさせようとしていることのつじつまが。血液検査の結果を横井久に知られること、それを恐れているのではないか。
携帯電話を取りだし、杏奈に発信した。
「亮太くんに至急確認してほしいことがある。横井久って名前に心当たりないか。悪いけど、メールで教えてくれる?」
席にもどり、水野に言った。
「失礼しました」
「片桐さん、やっぱ体調悪いんじゃないですか?」
「いえ、ちょっと酔っただけです。さっきの話ですけどデイヴっていう人、具体的にはどんな協力を水野さんに求めました?」
「節子ちゃんのこと教えてほしいってことだけ。でも、わたしから提案したの。もっといい方法があるよって」
「と言いますと?」
「節子ちゃんね、わたしの弟の家庭教師なの。でね、日曜日は愛人してる人に会いに行ってる感じだから、弟に勉強してわたしの家を出たとこ尾行すればいいよって」
「水野さんも一緒に尾行したんですか」
「だって、節子ちゃんが誰かの愛人してるなら、そんなことやめさせたいって思ったから。節子ちゃんのためでもあるし、相手の奥さんのためにも」
「なるほど。それで、結果はどうでした? 横井久という人が相手だったんですか」
水野はうつむいた。
「どうされました?」
「片桐さんに聞いてほしかったのが、これから言うことなの。誰にも言わないでね」
真希は無言で、うなずきすらしない。水野の言葉はあてにならない。むしろ話を広めてほしい、そう願いながら真希に打ち明け話をすることが多い。人生を舞台とみなし美談のヒロインや薄幸のヒロインを演じる彼女は、広報係である真希に話を広めるよう期待している。
水野の話によれば、竹井節子は水野愛美の父親と共にホテルニューオータニに入ったとのことだ。
「まさか、わたしの友達を愛人にしてるなんて……パパは結婚してから、ママ一筋だって信じてたのに」
ショックを受けるのも無理はない、そう思いつつ、真希の心は冷めていた。こんなこと、インストラクター以上の存在ではないわたしに話すことではないだろうに。父親と友人との不倫すら、悲劇のヒロインになりきるための道具なのか。
杏奈からのメールが着信した。
『日下部さんのお父さんが勤めてるのが横井総合病院ってとこで、お母さんの苗字が横井だって。その人は多分、お母さんの兄弟じゃないかって亮太くんは言ってた。ネットで横井総合病院を調べたら、横井久の名前が副院長として載ってる』
まだたしかめるべき部分はあるが、真希の推測は大枠では間違っていないようだ。
水野愛美に言った。
「お父さまが竹井さんと入られたの、ニューオータニですよね? だったら、必ずしも不倫とは限りません。竹井さんが誰かの秘書のようなアルバイトをしていて、それで水野さんのお父さまを引き合わせた、そんな可能性も考えられます」
水野はかぶりを振って言った。
「会長の奥さんが撮影した映像観たら、不倫にしか見えなかった」
「でしたら、水野さんはどうしたいですか。わたしに話しても何の問題解決にもなりません。竹井さんとの不倫をお父さまにやめさせたいなら、二人が一緒にいるところを押さえて話し合いに持ちこむべきです」
「話し合い? わたしとパパとで?」
「わたしは部外者です。お母さまにも報告して家族会議に持ちこむか、それとも不倫をやめさせればそれでよしとするか、水野さんが決めるべきです。ただ、水野さんに協力することはできます」
「協力って、現場を押さえる?」
「わたし、クルマ持ってます。竹井さんが水野さんの弟さんに勉強教えた後、わたしと水野さんとで尾行するのはどうでしょう」
水野愛美はしばらく迷った様子を見せた。悲劇のヒロインとしての不幸自慢、あるいは武勇伝のストックを増やせるメリットと、父親と対峙するストレスの大きさと、天秤にかけているに違いない。
やがて水野は言った。
「まず、お父さんと節子ちゃんの関係をたしかめたい」
水野のようなタイプの人物は、いつ気が変わるか分かったものではない。明日には何事もなかったかのように振舞っている可能性すらある。
心変わりしないよう釘をさすべく、真希は言った。
「まず、竹井さんが弟さんの勉強を見に来る曜日を教えてください。それと、お父さまについての情報を」
「パパの情報?」
「まず、お仕事は何ですか」
「病院で働いてるの」
真希の心拍数が跳ねあがる。横井総合病院だろうか。
そうではなかった。御成門の近くにある私立大学の付属病院とのことだ。
「お医者さまですか」
「そうだけど、手術とかじゃなくて、薬を開発するために動物実験するのが仕事」
新薬開発のための非臨床試験のことだろう。横井久が美宇に危害をくわえるつもりとして、非臨床試験にたずさわる水野愛美の父親と接点があるのかどうか、現時点では判断できない。
それを含めて確認することにした。美宇や園香がかかえているトラブルの全貌をゼットたちから聞きだせないのであれば、水野愛美を糸口に知ることができるかもしれない。
水野愛美によれば、デイヴとはそれ以降連絡がとれないとのことだ。父親と友人との不倫現場を目撃させてしまった罪の意識からか、あるいは横井久とは無関係であると判断したせいか、いずれにせよ真希にとってはチャンスだ。ゼットたちに先んじて何かを知ることができるかもしれない。
(502話に続く)
デイヴィッド・R・レデュックと会長たちは、竹井節子が横井久の愛人ではないか確認しようとしたらしい。「愛人」という言葉からして、横井久は既婚者なのだろう。普通に考えれば、愛人であることをたしかめるのは弱味を握るため。
チーム真が美宇を守ろうとしているのであれば、彼女を狙う人物の弱味を握ろうとすることは十分ありえる。
ゼットたちが美宇と園香の血液検査の結果を知られたくない相手は、ゼットが世良と呼ぶ男ではなく、横井久なのだろうか。
越野悦美の共謀相手も横井なのか。
わたしは昨日、日下部圭介もチーム真のメンバーである可能性を考えた。越野悦美の仲介で美宇と見合いした彼は、越野悦美が美宇に危害をくわえる意図を嗅ぎ取り、それがきっかけでチーム真のメンバーになったのだろうか。
さらには、越野悦美が共謀している相手が横井久であることにも気づいて……
いや、越野悦美の意図に気づくのは別として、横井久の存在にまでどうやって気づいたというのか? 美宇と見合いしただけなのに。
見合い……孤児である美宇と違い、日下部圭介には父母も同席したはず。その日下部圭介は医者の卵。
医者の卵には政治家同様、裏口入学による世襲の者もいる。日下部圭介が裏口かどうかは別として、政治家の世襲には入り婿という形もある。政治家の娘と結婚することで義父の「地盤、看板、カバン」を引き継ぐ者がいるように、医者の娘と結婚することで義父が経営する病院や医院を引き継ぐ者も少なくないのだ。
日下部圭介の母親が病院経営者の娘で、なおかつ横井久の娘であれば、美宇に危害をくわえようとする者の仲間である可能性も考えられる。
いや、横井久は中年らしいので、日下部圭介の祖父ということはないだろう。
ただいずれにせよ、それらの推測が正しければ、あることにつじつまが合う。ゼットが美宇と園香に、大阪の病院で血液検査を受けさせようとしていることのつじつまが。血液検査の結果を横井久に知られること、それを恐れているのではないか。
携帯電話を取りだし、杏奈に発信した。
「亮太くんに至急確認してほしいことがある。横井久って名前に心当たりないか。悪いけど、メールで教えてくれる?」
席にもどり、水野に言った。
「失礼しました」
「片桐さん、やっぱ体調悪いんじゃないですか?」
「いえ、ちょっと酔っただけです。さっきの話ですけどデイヴっていう人、具体的にはどんな協力を水野さんに求めました?」
「節子ちゃんのこと教えてほしいってことだけ。でも、わたしから提案したの。もっといい方法があるよって」
「と言いますと?」
「節子ちゃんね、わたしの弟の家庭教師なの。でね、日曜日は愛人してる人に会いに行ってる感じだから、弟に勉強してわたしの家を出たとこ尾行すればいいよって」
「水野さんも一緒に尾行したんですか」
「だって、節子ちゃんが誰かの愛人してるなら、そんなことやめさせたいって思ったから。節子ちゃんのためでもあるし、相手の奥さんのためにも」
「なるほど。それで、結果はどうでした? 横井久という人が相手だったんですか」
水野はうつむいた。
「どうされました?」
「片桐さんに聞いてほしかったのが、これから言うことなの。誰にも言わないでね」
真希は無言で、うなずきすらしない。水野の言葉はあてにならない。むしろ話を広めてほしい、そう願いながら真希に打ち明け話をすることが多い。人生を舞台とみなし美談のヒロインや薄幸のヒロインを演じる彼女は、広報係である真希に話を広めるよう期待している。
水野の話によれば、竹井節子は水野愛美の父親と共にホテルニューオータニに入ったとのことだ。
「まさか、わたしの友達を愛人にしてるなんて……パパは結婚してから、ママ一筋だって信じてたのに」
ショックを受けるのも無理はない、そう思いつつ、真希の心は冷めていた。こんなこと、インストラクター以上の存在ではないわたしに話すことではないだろうに。父親と友人との不倫すら、悲劇のヒロインになりきるための道具なのか。
杏奈からのメールが着信した。
『日下部さんのお父さんが勤めてるのが横井総合病院ってとこで、お母さんの苗字が横井だって。その人は多分、お母さんの兄弟じゃないかって亮太くんは言ってた。ネットで横井総合病院を調べたら、横井久の名前が副院長として載ってる』
まだたしかめるべき部分はあるが、真希の推測は大枠では間違っていないようだ。
水野愛美に言った。
「お父さまが竹井さんと入られたの、ニューオータニですよね? だったら、必ずしも不倫とは限りません。竹井さんが誰かの秘書のようなアルバイトをしていて、それで水野さんのお父さまを引き合わせた、そんな可能性も考えられます」
水野はかぶりを振って言った。
「会長の奥さんが撮影した映像観たら、不倫にしか見えなかった」
「でしたら、水野さんはどうしたいですか。わたしに話しても何の問題解決にもなりません。竹井さんとの不倫をお父さまにやめさせたいなら、二人が一緒にいるところを押さえて話し合いに持ちこむべきです」
「話し合い? わたしとパパとで?」
「わたしは部外者です。お母さまにも報告して家族会議に持ちこむか、それとも不倫をやめさせればそれでよしとするか、水野さんが決めるべきです。ただ、水野さんに協力することはできます」
「協力って、現場を押さえる?」
「わたし、クルマ持ってます。竹井さんが水野さんの弟さんに勉強教えた後、わたしと水野さんとで尾行するのはどうでしょう」
水野愛美はしばらく迷った様子を見せた。悲劇のヒロインとしての不幸自慢、あるいは武勇伝のストックを増やせるメリットと、父親と対峙するストレスの大きさと、天秤にかけているに違いない。
やがて水野は言った。
「まず、お父さんと節子ちゃんの関係をたしかめたい」
水野のようなタイプの人物は、いつ気が変わるか分かったものではない。明日には何事もなかったかのように振舞っている可能性すらある。
心変わりしないよう釘をさすべく、真希は言った。
「まず、竹井さんが弟さんの勉強を見に来る曜日を教えてください。それと、お父さまについての情報を」
「パパの情報?」
「まず、お仕事は何ですか」
「病院で働いてるの」
真希の心拍数が跳ねあがる。横井総合病院だろうか。
そうではなかった。御成門の近くにある私立大学の付属病院とのことだ。
「お医者さまですか」
「そうだけど、手術とかじゃなくて、薬を開発するために動物実験するのが仕事」
新薬開発のための非臨床試験のことだろう。横井久が美宇に危害をくわえるつもりとして、非臨床試験にたずさわる水野愛美の父親と接点があるのかどうか、現時点では判断できない。
それを含めて確認することにした。美宇や園香がかかえているトラブルの全貌をゼットたちから聞きだせないのであれば、水野愛美を糸口に知ることができるかもしれない。
水野愛美によれば、デイヴとはそれ以降連絡がとれないとのことだ。父親と友人との不倫現場を目撃させてしまった罪の意識からか、あるいは横井久とは無関係であると判断したせいか、いずれにせよ真希にとってはチャンスだ。ゼットたちに先んじて何かを知ることができるかもしれない。
(502話に続く)


