5.  順序数,超限順序数,カントールのパラドックス

今まで,集合の要素として数を許してきたが,カントールは集合以外の一切の挟雑物を除いて,何もないところから出発し,集合論の基礎を築いた.何もないと言っても,集合という考え方はあって,最初に何もない集合すなわち空集合の存在だけを認めるのである.そしてそれから出発して,それ以外のもの,特にカントールが行ったのは自然数に相当する無限の順序数,さらに自然数に相当する無限の順序数を超える順序数,すなわち超限順序数を明らかにして,集合の濃度について道を開いた.同時に,集合概念に含まれる矛盾についても道を開いてしまい,それがラッセルのパラドックス,さらにはゲーデルの不完全性定理へのつながってくるのである.

集合の冪集合についてはすでに,導入済みであるが,カントールの集合論では最初に空集合から出発して,順にその冪集合を計算する.

zf(2): (setq one (power-set +empty+))
{{}}
zf(3): (setq two (power-set one))
{{{}},{}}
zf(4): (setq three (power-set two))
{{{{}},{}},{{}},{{{}}},{}}
zf(5): (setq four (power-set three))
{{{{{}},{}},{{}},{{{}}},{}},{{{}},{}},{{{{}},{}},{}},{{}},{{{{}},{}},{{}},{}}, ...

今ここでは適当に one とか two とかのシンボルに代入したが,空集合を zero と見做したとき,我々はこのようにして自然数と同型の集合を実際に得ることができる.今 one とか two に変えて,仮にギリシャ文字と数字を使って,α,β,とすれば,この文字の順番で冪集合の手続きの出現順に1対1対応を取るものとすれば,次のようになって,そのとき,文字の順序と冪集合の部分集合における順序が全く同型であることがわかる.

zf(12): (setq α (power-set +empty+))
{{}}
zf(13): (setq β (power-set α))
{{{}},{}}
zf(14): (setq γ (power-set β))
{{{{}},{}},{{}},{{{}}},{}}
zf(15): (setq δ (power-set γ))
{{{{{}},{}},{{}},{{{}}},{}},{{{}},{}},{{{{}},{}},{}},{{}},{{{{}},{}},{{}},{}},{{{}},{{{}}},{}},{{{{}},{}},{{{}}},{}},{{{{}}},{}},{{{{}},{}},{{}},{{{}}}},{{{{}}}},{{{{}},{}},{{{}}}},{{{}},{{{}}}},{{{{}},{}},{{}}},{{{}}},{{{{}},{}}},{}}
zf(16): (char< #\α #\β)
t
zf(17): (subset-p α β)
t
zf(18): (char< #\β #\δ)
t
zf(19): (subset-p β δ)
t

そればかりか,カントールの集合のようにすべての要素が空集合から出発して冪集合で作られた集合の場合には,上記のような部分集合であるのみならず,低位の集合は高位の集合の要素でもある.

(defun in (member set)
  (not (null (member member (member-of set) :test #'equals))))
zf(22): (in α β)
t
zf(23): (in α γ)
t
zf(24): (in β γ)
t
zf(25): (in β δ)
t

今たまたま,ギリシャ文字における計算機内部でのchar< 順序と1対1に対応した集合をつくることができたが,このように我々が持っている自然数の順序概念に対応したものを,空集合と冪集合および部分集合の概念から作ることができる.

では,これの極限で得られるものはなんだろうか.つまりこのような手続きを無限回行って,その極限において得られる順序数である.通常集合論ではそれはオメガ ω と表記される.0を空集合,1を1回目の冪集合,2を2回目の冪集合として,ω は自然数全体に相当する集合である.常に α ∈ β ,α ⊂β だからもちろん α ∈ β ∈ω ,α ⊂β⊂ω である.このω のさらに冪集合を得ることができるだろうか.ここからがカントールの仕事を諾とするか否とするかの分かれ目になるのだが,カントールはさらにω+1,ω+2,...,ω+ω ,...と考えていくのだ.自然数の大きさは可算個無限,あるいは付加番無限と呼ばれ,その大きさ(無限だから濃度という)アレフ0 と言われる.ω を含む順序数は通常の順序数の範囲を超えているので超限順序数と呼ばれる.(続く)